残菊登高(残菊の遠望)
「男子は二十歳にして冠す」という。
二十歳で冠礼を行い成人することが儀礼書に定められているわけだが、諸々の理由により早めることも認められる。花采蓉は結婚であり、景廷毅の場合は受験だった。科挙は三年毎に行われるため、機会を逃すと三年後を待たなければならない。
十九歳で秋の府試、二十歳で春の省試・殿試に合格する前から、景廷毅の人生には阿る者と敵視する者がついて回った。どちらもその理由は同じ──天乾であり、名家の出身だからである。
男の媚と嫉妬は、女のそれより醜いが、何より景廷毅と家族を煩わせたのは、地坤を子に持つ親たちだった。天乾であれば、いずれ必ず香妻を娶る。ならばうちの地坤を是非、というわけである。
進士及第してから、その攻勢はますます激しくなり、子供の結婚を取りまとめる一家の女主人の労を、徒らに増やした。
自身が愛妻家の夫は、正妻でも香妻でも息子の望む人を迎えなさいと言い、自慢の息子は、今は仕事を優先したいと言う。しかも、時期が来たら相手は自分で見つけるから、持ち込まれた縁談はすべて断ってほしいと一顧だにしないのである。
勝手ばかりの男衆の条件に合致する嫁を迎えるまで、苦節九年。──とうとう景大夫人に、反撃の時は訪れた。
「いいですか、廷毅。今日はのんびり、時間を気にせず楽しんでいらっしゃい。芳修が望むことは、すべてさせてあげるのですよ」
「はい、母上」
優等生の返事はおざなりではなく、誠意と敬意に満ちているから余計にタチが悪い、と景大夫人はため息をつく。
「……まったく。これほど待たせておきながら、婚礼の支度には百日しか与えないなんて。しかも『景大人』ですって? 祝いの御品を賜っているというのに、陛下のお耳に入ったらどうするつもりなの」
「婚暇明けにすぐ、新婚なのに冷え切っているのかとお叱りを受けるでしょうね」
「廷毅っ」
にこりと返す息子に、景大夫人は眦を吊り上げた。
景廷毅は従五位、門下省起居郎である。つまり皇帝に近侍し、その御言葉を記録する秘書官である。父親は朝廷でも五指に入る高官ということもあり、皇帝の命を受けた中使が行列を仕立て、婚礼まで何度も祝い品を届けに訪れていた。
禁色の黄旗黄傘を立て、禁軍が運ぶ荷が連なる様子は、一目で恩賜品の行列だとわかる。開封の街中を皇帝の祝いの行列が賑々しく通ることは、その結婚が《《公認》》された特別なものである、と周囲に知らしめる絶好の機会である。
花家との約束──花采蓉の身の安全を確実なものにするためには、実に有効な手段であったわけだが、覚えがめでたい分、何かあれば口を挟まれることにもなる。
そして、こうしてまた息子が母親に呼ばれ、お小言を頂戴する羽目にもなる。
妻が夫を「景大人」と呼ぶのは、部下が「景起居」と官職で呼ぶのと変わらないため、その心理的な距離を心配するのはもっともなのだが──。
「そうならないように努めるつもりです。義兄上の援護射撃も得られないようですし」
「当たり前ですよ。経緯はどうあれ、もう景家の嫁なのですから。花先生のお手を煩わせるなど、あってはなりません」
「承知しています。……ところで、もういいですか。待たせているので、そろそろ行かないと」
「はいはい、朗報を待っていますよ」
追い払うように手を振られ、景廷毅は丁寧に拝礼すると母の居所を出た。
九年前、学問を司る星──文曲星を宿す一族と讃えられる景氏からとうとう麒麟児が出た、と人々は畏怖の念すら抱きながら噂し合った。
五代に亘り一族の男全員が科挙に合格してきた、奇跡の一族。その上、二十歳で進士及第するような強い陽の者が現れたなら、均衡を保つために、一族に必ず陰に呑まれる者が出るだろう──。
無責任な噂は正しく、景家の歯車は、水面下で静かに狂い始めた。進士及第よりももっと前──やがて麒麟児と呼ばれる子供が生まれた時、その種はすでに蒔かれていた。
武家の出身であり、気丈なことで知られる景大夫人は、嫁いで以来万事に手抜かりなく家政を執ってきた。
夫婦仲はいいが、それでも心郎が堪えないわけがない。態度には出さなくても、阿慎を見つめる顔は時折翳り、その肩は一回り細く見える。
兄も自分も、そして今は幼い甥も、血の繋がらない嫡母の庇護の下、その慈愛を惜しみなく注がれて生きている。
彼女こそが、景家の良心であり柱梁だった。その寛容な愛に比べたら、天乾の血など、人一人を育てるのに何の役にも立たない。
だからこそ母を──血は繋がらないが、心から敬い大切に思う母を、望む形で安堵させてあげたい。
十の年から、景廷毅はそう願って生きてきた。
科挙に合格し、出自の正しい地坤を娶り、天乾の跡継ぎを抱かせてあげる。それが一番の孝行だとわかっていた。
しかし、幼い頃に刻み込まれた地坤に対する忌避感は、努力したところで抑えられるものではない。吐き気がするほど濃厚な信香も、耳を覆いたくなるような恨み言も、今でも不意に思い出すのだ──あれから二十年が過ぎようというのに。
だから、わざと信香を抑えずに名家の天乾に近づこうとする地坤も、その親にも、憎悪に近い感情を抱いた。香妻選びごときで母を煩わせるのも許せなかった。
花家の兄弟と知り合うまで、景廷毅は地坤という生き物を嫌っていた。憎んでいたといってもいい。
太学(最高学府)に通うようになり、そこで初めて、天乾に媚びない地坤と清涼な信香を知り、見方を改めたのである。
地坤である花家の兄弟に科挙の受験資格はなく、学堂に通うのは儒医となるためだったが、志は高く、勉学に対する意欲も群を抜いていた。特に兄の方は、すでに天才として名を馳せていた景廷毅と肩を並べて論を張るほど優秀だった。
彼らは「地坤」ではなかった。若き「文人」であり、得がたい「学友」だった。
香妻を持たなければならないなら、友として尊敬できる花家の誰かがいい。
漠然とそう思うようになったものの、同年代の上の二人は、景廷毅が科挙を受ける前に結婚し、下の弟は十一も年下の子供である。縁がないものと諦めていた。
それがこうして、その末っ子を正妻に迎え、ご機嫌取りのために出掛けようとしているのだから、人生はわからない。──否、これは天意だ。
どれほど嫌がり拒もうと、花采蓉は天乾を受け入れ、妻になるしかない。その代償として、朝議を休む羽目になるほど痛烈な花采琳の拳を、景廷毅は黙って受け入れた。
猛烈な自己嫌悪を招いた過去の過ちも、今は妻に対する余裕となり、それが初夜の取引に繋がっている。
──五年前から、花采蓉は景廷毅の番だった。婚礼計画の直前に打ち明けた花采琳以外、誰も知らない。
深く歯を立てる前に理性を取り戻したため、薄くなりもう消えてしまったが、そのほっそりとした項には、かつて本人も知らない噛み痕があった。
対の天乾──番がいる地坤は、それ以外の信香には反応しない。反応どころか、吐き気を催すほど拒絶する、強制的な貞節の証が項の噛み痕である。
消えてしまっても、天乾に噛まれ番となれば、地坤の体は変質する。この五年、注意深く見守ってきたが、花采蓉にはその兆候があった。たった一度の過ちで、景廷毅を捕らえ、自らの番に定めたのだ。
番の信香は抗えない媚薬となり、理性を溶かし、肉体を支配する。
今夜から彼は、夫の操る信香に包まれ、悶えながら眠ることになる。抱かれなければ癒えない疼きに、一晩中身を焼かれるだろう。
何日かは耐えるかもしれないが、信香に導かれ天乾を求める地坤の本能は強烈だ。強引に発情期を誘発され、交合を求め縋りついてくるのは、遠い夜ではない。
地坤を嫌悪しているのに、信香で捩じ伏せるように惑わされた屈辱を、景廷毅は忘れていない。
獣のような天乾、哀れな獲物の地坤。惑わせる地坤、抗えず引きずられる天乾。
いずれも自分とは縁がない。
妻の居所に足を踏み入れる前に、一呼吸する。
獣は、地坤。無様に引きずられ、のたうち回るのも地坤なのだ。
開封の東南、外城の外にある高台に、九層六角形、雲を凌ぐ二十五丈(約八十㍍)の塔が建つ。天清寺塔と呼ばれる、堂々たる巨塔である。
重陽の登高の名所であり、一年の厄を払おうと多くの人で賑わうが、節句を五日も過ぎた今日は人影もまばらである。
息を弾ませながら、塔内部の階段を最上階まで登り、外に出れば、ぐるりと一周するように歩廊が渡されている。節句当日なら大混雑する展望台ものんびりと回れ、新婚夫婦は京城を眼下に見下ろす壮大な眺めを満喫する。
婚礼の日から四日。
昨日は何の行事もなく、二人はようやく十分に休息できた。婚礼の疲れが取れた今日、満を持して、夫婦の深化作戦が進行中というわけである。
二人とも、一見して名家の御曹司とわかる出で立ちでの登高である。ただし、その色彩は対照的だ。
景廷毅の長身を包むのは、秋の深まりを思わせる薄縹色の襴衫。腰には精緻な細工の革帯を締め、提げられた玉佩は、歩を進めるたびにかすかな涼音を立てる。
涼やかな目元には深い知性が宿り、すっと通った鼻筋と引き締まった口元が、誰もが息を呑むほどの美丈夫たらしめている。金門の才子と称えられても決して奢ることのない、湖面のように波立たない静けさが、その端正な容貌に一層の深みを与えている。
対する花采蓉は、桃花のように可憐な美貌と若さに相応しい、淡緋の襴衫に、翡翠の玉佩。艶やかな黒髪を白玉の小冠でまとめ、黄色の菊を挿している。夫は墨玉の小冠に白菊なので、細部に亘って対を成す、重陽の装いである。
相変わらず妻は夫を「景大人」と呼んで余所余所しいが、──許せないはずの天乾にぴったりと身を寄せている。眺めは楽しみたいが、歩廊の柵からなるべく遠ざかりたい、盾となるものが欲しい、といった様子だ。
景廷毅は子供が苦手だが、花家の末っ子だけは昔から例外だった。自分の後ろに隠れて袖を握り、覗くように顔を出している──こうした仕草に苛立つどころか、いちいち庇護欲を掻き立てられるのだ。
彼が地坤として目覚める前からそうだったから、無意識の甘えは本人の資質──歳の離れた兄たちに溺愛された結果と言える。母の顔も覚えていない末っ子を不憫に思い、二人の兄は三弟を大切に慈しんできたのだ。
「──芳修は、高所が苦手だったかな」
「……違います。風が冷たいだけです」
強がる様子はまるで子供だが、後ろに隠れたまま出てこない。
高所だけに確かに風は強く、景廷毅の悪戯心に火がついた。
「ならば、こうしよう」
「あっ……」
腕を取って胸の前に引き寄せ、小柄な体を後ろから抱きしめる。長身と広い袖で包むように、秋風から遠ざける。
新婚の夫、しかも天乾に突然密着されては、嫌でも相手を意識せざるを得ない──はずなのだが、本当に少し寒く感じていたらしい。驚きはしたようだが、花采蓉が素直に体を預けてくる。
胸に受ける、心地好い背の重みに、景廷毅は失敗を悟った。花家の末っ子は、一度心を許した相手には、小動物のようにとことん距離が近いことを忘れていた。
階段を上る時に汗をかいたせいか、ほのかに香る少年の匂いがいつもより甘い。地坤は信香を発していなくても、こうして甘い匂いを漂わせる。それは劣情を催すものではなく、嫁いだ彼らが香妻と呼ばれる所以でもある。
番のいない地坤は、普段から蠱惑的な匂いで天乾を探すが、花采蓉のそれは、誰にとっても心地好い、春の訪れを告げる桃花を思わせる。
──花家の三番目も、出来損ないじゃないのか?
かつて嘲笑うようにそう言った、同僚の天乾がいた。
その場で、花家の三兄弟は大切な友であり、「三番目」はその長兄に託された弟分なのだと告げて謝罪を求めたが、おざなりだった詫びを景廷毅は許してはいない。ニヤつきながら頷いた者も発言を咎めなかった者も含め、頭の中に一覧にしてある。
その「三番目」が景家の正妻となることが明らかになり、彼らは慌てて、改めて未来の宰相候補に詫びに来た。おかげで、記憶違いはないことを確認できたその一覧を、そろそろ紙に書き出し、吏部尚書である父に渡す頃合いである。
全官吏の人事権を握る父は公明正大な人柄で知られ、私情に流されることはないが、愛妻に関することは例外である。
気に入りの嫁に対する謂れのない中傷を、景家の女主人は絶対に許さないであろうし、愛妻の耳を汚す噂話を流す者を、父は確実に始末する。朝堂を汚す品位しか持たない官吏であれば、尚更である。
一覧に名がある者たちは、遠からず僻地に飛ばされ、景家の力が及ぶ限り、中央に戻ることはないだろう。
哀れな彼らは知らないのだ。「三番目」にはすでに番う相手がおり、変質した体は淡い匂いしか漂わせず、天乾を誘うあざとさがないことを。
「──景大人と呼んでも、こうして触れるのは嫌がらないのだな」
番の腕の中にいるとは夢にも思わない花采蓉は、回された腕を無防備にきゅっと掴む。
「こうしていたら、景大人も寒くないでしょう?」
不思議そうに問い返されて、景廷毅は言葉に詰まった。
悪戯な企みとも知らず、夫をちょうどいい防寒具とでも思っているようだ。
「体温を分け合う仲なのに、景大人と呼ばれるのは少々寂しいな」
「……僕は寂しくありません」
可愛げのない答えでも、黙り込むよりはよほどいい。
婚家の寛容さ、夜の務めを免れる「取引」、そして阿慎との出会い。
婚礼の日は頑なな態度を崩さなかった花采蓉だが、この数日で本来の朗らかさを取り戻しつつある。
兄たちに愛されて育った末っ子は、当然のように甥をとても大切にしている。そして、同じく両親を失い、広い屋敷に取り残された寂しい子供にも、深く心を寄せていた。
「蔵書楼は素晴らしいし、義母上はおやさしい。挨拶に伺えば、阿慎と遊べます」
血の繋がらない長男が外で作った庶子を、一族の冷眼を避けるように、しかし慈しんで育てる景大夫人。
立場的に疎んじても仕方のない義理の甥を、初対面で抱き上げ、すぐに打ち解けよく面倒を見ている花采蓉。
嫁姑の互いの評価は、阿慎を介して天井を突く状態となっている。つまり夫を差し置いて、母と妻と甥は順調に仲を深めているわけである。
「改めて、あの子にも重陽糕をありがとう。花家の気遣いに、母上は涙ぐんでいたよ」
「だって二哥ですから。それに景大人も、阿月にやさしくしてくれたでしょう」
背後の夫にすっかり凭れながら、花采蓉の声が和らぐ。
いつでも遊びに来なさい、と義叔父に快諾されて、阿月は安堵したらしい。里帰りの帰路は、涙の別れにならずに済んでいた。
「だからお返しに、僕も一つやさしくします。義父上義母上の前では、『景大人』と言わないようにします」
「……父上と母上の前では、何と呼ぶつもりだ?」
「勿論、景哥です」
他の呼び方なんてありますか?と言わんばかりに、顎の下の小冠が傾く。
つまりそれが、譲歩の限界なのだろう。意に沿わない結婚を強いられ、それでも婚家に居場所を見つけて、馴染もうと努力する新妻の。
──彼が地坤である以上、夫の信香に狂わされれば、そのように他人行儀ではいられないだろうが。
これまで彼と会う時は、万一に備え、信香を抑える清心丹を服んでいた。念には念を入れ、同じ効能を持つ安神香の香嚢も携えた。そうした配慮のない状態で、しかも信香を開放した天乾と同衾して、地坤に何も起こらないはずがない。
「お二人にはよくお仕えしますから、安心してください。できないこともあるけど、できることは努めるつもりです」
はっきりと、花采蓉が一線を引く。
この潔癖で清らかな少年が、見境なく夫の愛を求め縋りつく雌に成り下がる。──あの人と同じ、醜悪な雌に。
そう思うと、哀れみと嫌悪が込み上げた。
しかし五年前、景廷毅を惑わし番にしたのは、彼だ。
相手が幼く、また花家当主という断崖絶壁もあり、他の天乾に奪われる恐れがない中、積極的に娶る気にはならなかった。頼りになる年長者の立場で、健やかな成長を見守ってきた。
しかし、《《あの件》》が起きた。望まない縁でも、これが潮時だった。
可愛い弟分である花采蓉に、別れを告げる時が来たのだ。
「……そろそろ下りよう。今日は大相国寺の縁日だから、市を見に行かないか」
「古本市を見たいです! あと、屋台も」
「買い食いはほどほどにしておきなさい。夜は礬楼の最上階に席を取ってある。好きなものを頼んでいいから」
「本当⁈」
食べ盛りの十八歳が、腕の中でくるりと回って向き直る。
彼の憧れの礬楼は、三階建の五棟の楼閣が空中回廊で結ばれた、開封随一の巨大な高層酒楼である。
夜になると無数の赤い燈籠が灯され、室内の蝋燭とともに、その偉容を浮かび上がらせる。城内では、皇宮に次ぐ高さを誇るため、酒と料理を楽しめる登高所として人気があった。
「じゃあお昼は、『曹婆婆の肉餅』で軽く済ませましょう。肉汁たっぷりで皮はサクサク、とっても美味しいんです。礬楼は、まず菊花酒に洗手蟹でしょ。それから……」
生き生きと話し始める様子は冠礼前と変わらず、やはり距離が近い。
十一も年下の──まだ子供なのだ。
愛らしい少年を、自らの手で最も嫌悪する生き物に変える皮肉に、昏い愉悦がもぞりと蠢く。どれほど理性が拒んでも、番の地坤を得る悦びが、腹の奥底でじりじりと熱を持つ。
嫌悪してもなお求め合う──それが天乾と地坤なのだと、今宵花采蓉も思い知るだろう。
初夜以来絶えていた夫婦の営みは、その夜再開された。
宿直で夫が不在となる夜以外、それは毎夜の日課となった。新婚夫婦が子作りに勤しんだところで、励まされることはあっても咎める者などいない。
「取引」に従い、妻が望まなければ交合はしない形での営み。
それは数日で呆気なく終わり、二人は深く結びついた真の夫婦となる──という夫の読みは、しかし見事に外れた。
日々は淡々と流れ、二人は一線を越えないまま新年を迎えた。
さらに季節は巡り、街中や運河沿いの柳が一斉に芽吹き、薄緑色の帳のようになった。
「桃紅柳緑」と呼ばれるに相応しい鮮やかな対比で、桃と柳の並木が御街を彩り、道行く人々が春の装いに替える頃。
花采蓉の出立の日が訪れた。




