システム
オレ「ゴトー」は三つめの魔法道具の存在を知りました。
直近の目標を達成するためにも……その道具【拘束された世界】を起動してみようと思います。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
オレが「創成の魔王」から受け継いだ3つめの道具【拘束された世界】の説明を聞いていて思ったことは……例えばどうしても勝てないような強い敵との戦闘状況にあったとして、いざとなったら「ラボ」に逃げ込んで時の経過を待てば……勝てない相手にも負けないんじゃないか?ってことだ。
『A:前使役者の称号「不死なる魔王」「神出鬼没」は「ラボ」を活用した行動の結果により伝播拡散された呼称である事実を報告です』
やっぱりか!
オレは家の裏で出会った、ネズミ頭の小さな「創成の魔王」の姿を思い出す。
あんなにちっちゃかったら戦闘なんて不得意だったのかもしれないな……「ラボ」に引きこもってたとしても当然か。
『A:「創成の魔王」は前回の「魔王大戦」の覇者として4体の魔王を殺害・吸収した強大な存在と報告です使役者』
え!?……そうなのか!?……「魔王大戦」だって?……名前の強さが半端無いなあ……。
つまりアーテラの魔王同士が殺しあったってことか。
しかもその覇者だって?……あのちっこいネズミ頭……強いのか……。
そういえば、オレを殺したあのキラキラした光の騎士の攻撃も……本能的にというか、絶対に関わっちゃいけないような恐怖を感じたっけ……。
魔王の名は伊達じゃないってことか。
それにしても「魔王大戦」が起こるようなこっちの歴史は……面白いかも知れない。
思いっきりファンタジーの世界だしな。
企画のシナリオの参考になりそうだし……今度ちゃんと調べてみよう。
ちなみに……【エー・エー】が「創成の魔王」を補佐してたのっていつまでだよ? オレの家……ベーテラでオレと「創成の魔王」が出会ったのは知ってるのか?
『A:前使役者を補佐していたのは「魔王大戦」終結時までです:また【エー・エー】のように、スキルにより創成された|道具「アイテム」は、アーテラの「システム」外では例外|「ラボ」を除き活動不可と報告です』
じゃあオレが「創成の魔王」と遭遇した時は【エー・エー】は起動してなかったってことか……。
……引っかかることがあるんだよなあ。
なんで「創成の魔王」はベーテラーー地球にいたんだ?。
アーテラからベーテラに越境することが出来たってことだろ?
つまり「越境者」は相互に存在するってことだよな?
『A:総じて否定です使役者:アーテラに生きる生命の「システム」は活動に対して魔力が必須です:魔力が供給・補給共に不可能であるベーテラにおいては長期生存が不可能と報告です:つまりアーテラからの「越境者」は存在しません:「システム」の差異が障害です:よって前使役者がベーテラへ行った事実も目的も整合性に欠けます:【エー・エー】には解析不可能です使役者』
えーっと……【エー・エー】が解析不可能な事なんてあるのかよって感じなんすけど……。
とりあえず二つの「世界」に「システム」の差が存在することは覚えとこう……。
そして……「システム」は……
……誰が作ったんだ?
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【エー・エー】とのミーティングを経て、どうしても「ラボ」を起動してみたくなったオレは、「南ヤーマーナ村」まで5分の距離まで近づいた辺りで【エー・エー】のナビに従って実行してみることにした。
ちょうどいいからアマエラに頼まれた|魔導兵「ゴーレム」も「ラボ」で創成しよう。
『アマエラはん、すんませんけど、ちょっとこの【翻訳機】を預かって貰えやしまへんか? すぐに済みますさかい』
「それは構いませんが……何かをなさるのですか? 」
『南ヤーマーナ村の中へアマエラはんは同行出来ないんでっしゃろ? ワテもあまり人前で創成魔法を使うわけにはいきませんのや』
その説明で察してくれたアマエラが【翻訳機】を預かってくれた。
不格好にズボンの腰口に挟んでいた【創魔の魔術杖】を右手に構える。これを格好良く収納出来るような道具も作りたいなあ。
【エー・エー】の説明通りだと、「ラボ」を起動して、「ラボ」に行って、「時の進行」を行わずに、アマンダの護衛ゴーレムを創成してからこっちに帰ってきた場合だと……この場所で瞬間的に「創成魔法を使用してゴーレムを産み出した」様に見えるハズだよな? ……問題ないよな?
『A:否定です:「ラボ」への転移は派手さに欠けます:【魔法演出】使用を進言です』
あーそうか。了解了解。
ちなみに【魔法演出】とは、創成魔法を使ったっぽく見せる為だけに創った道具だ。
さっき忍者セットを創成した時に使ってた派手な演出がこれだ。
スキル創造主の能力を試すついでに創成した。
創造主には道具創成に加えて、進化と合成の能力があるのだが、まだ未体験だった合成を試すついでだった。
合成とは、簡単に言うとオレが創成した道具同士を合体させて機能拡張するスキルだ。
【エー・エー】のナビで創成した道具には「将来の拡張性を保持する」という指針があり、いわば余白が残してある。
それを知ったオレは初めて創成した【義足】と【義手】の余白に、いくつかの拡張スペースを用意した。
アーテラの「システム」の根幹を為す魔力をフル活用するためだ。
魔力を使って起動する魔法道具は形状があまり意味を成さない。
例えば短剣の形状をしてるのに起動するとただただ光るだけのトーチだったり、手榴弾のピンを抜いて起動したら芳しい薔薇の香りが放たれるだけだったり、要するに「スイッチを入れた瞬間に現象が起きるような道具」を創成する場合、その道具は言わば純粋な魔力の塊だから、極端に言えばどんな形でもいいってことだ。
だからオレは、開発したスマホゲーのシステムをまるまんまパクって、3サイズの魔法珠システムを構築した。
ゲームでは、S・M・Lの3サイズのオーブに魔法の力が込められていて、MPを消費して使用したり、組み合わせで強攻撃を発動したりする。
大きいオーブの方がランクが高く強力だが、その分コストが多くかかるため装備数が限定されるし燃費が悪くなる為に継戦能力が低下する。
主力・支援等の種類とオーブの能力とのバランスを自分好みに組み合わせてキャラを育成して遊ぶシステムだ。
このシステムを丸パクリして、形状はオーブに統一し、能力によってSMLどれかのサイズを創成し、【義足】と【義手】に合成していっちゃおうってのがオレのアイデアだ。
【義足】には足裏・踵・膝にMサイズ、腓腹にLサイズの拡張スペースを用意した。
【義手】には各指にSサイズ、掌・前腕にMサイズ、上腕にLサイズ。
これでSサイズ5点、Mサイズも5点、Lサイズは2点の「魔法珠」装備が可能だ。
オレはとりあえず【魔法演出】を【義手】の小指に装備してる。起動条件は小指に魔力を流すだけだ。
チャラチャラチャラーン
小指に魔力を流し【魔法演出】を起動すると、設定したSEと共に七色の光が「創魔の魔術杖」を掴んだオレの右手を包むこむ。
アマンダがキラキラした目でオレを見てくる。
きっと派手な魔法を使ったように見えたのだろう。
よし、完璧だ。
ではいざ……【拘束された世界】を起動だ! 【創魔の魔術杖】に魔力を集中して起動させた。
胸の辺りに魔力が注ぎ込まれる感覚があると思った次の瞬間……オレは「ラボ」にいた。




