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コミュニケーション

 オレ「ゴトー」の目の前に、異世界の女忍者が現れました。


 これは初めて異世界の人間と対話するチャンスだと思うのですが、オレには異世界の言葉を発音するスキルがありませんでした。




 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「年、齢、は……40、歳、で、す……どーぞ!」


 オレは今、先ほど創成した【翻訳機】を使って女忍者とコミュニケーションを取っている。


 今は彼女の質問に答えているところだ。


 ちなみに間の抜けた話し方をしているのは、何度か試行した結果、この話し方がこちらの意図を伝えるのに最も適していたからだ。


 現在オレと彼女は【翻訳機】を挟んで向かい合って座っている。


 初めてコミュニケーションを取る異世界人同士が、のんびり座って対話をしているなんて、なんとも緊張感に欠けるシュールな構図だがしかたない。

 【翻訳機】を介した対話を行うために、お互いがファックスホンみたいなデザインの【翻訳機】から伸びた金属っぽいケーブルの先端についているリングを握っているのだが、そのケーブルが短いのでこんな態勢になってしまったのだ。

 もうちょっとケーブル長めに創成するべきだった。この反省は次回があったら生かそう。

 ちなみに、対話する者がケーブルの両端を握っているのは【翻訳機】を使用するために必要な条件なのだが……最初に握ってもらうようにジェスチャーで誘導するのにはものすごく苦労した。


 そして肝心の対話だが今のところ順調だ。


 まず目の前の女忍者だが、彼女の名前はアマエラというらしい。


 先程まで覆面に隠れていた素顔もさらけ出している。彼女もある理由を持ってオレに接触したため、礼儀を示してくれているのだろう。


 ちなみに驚いちゃうくらいの美人さんだった。

 クリックリにウエーブがかかった金髪にデッカイキラキラのたれ目。

 あんまり見たら怒られちゃうけど、胸もバイーンと主張している。

 治療中の少女もそうだけど、ひょっとしたらこっちの世界って美形揃いな設定なんじゃないだろうか?


 何ターンかの質疑応答を繰り返した結果、割りと打ち解けたと自負している。


 これもオレの努力の賜物だ。


 クレーム処理職の時代に学んだが、こちらに全く非がないとしても誠心誠意を尽くす姿勢で頭を下げれば気持ちは汲んでもらえるものだ。

 ちなみに余談だが、よく「目を見て話せ」と言う奴がいるがあれは嘘だ。

 目での会話は必殺技だ。

 ずっと必殺技を出して戦うヒーローがいるか?

 そんな奴はクレーマーの澱んだ目には反抗的で気に入らない相手に映るだけなのだ。

 目を見て訴えるのは1回だけ。

 それもこちらの主張を伝える際の1回だけに絞るのが、頭のぶっ飛んだクレーマーとの正しい会話方法だ。


 ということで、オレはアマエラの目をしかと見据えて


「しょ、う、じょ……は、だ、か……オ、レ、ち、が、う!」


 と訴えた。


 アマエラがスライムボールの中でブクブクしている裸の少女を隠すように立って、性犯罪者を見るような眼でオレを睨んできたからだ。


 冤罪である事をオレは誠心誠意伝えた。


 最近は満員電車でも両手で吊革持ってないとすぐに痴漢認定される世の中だ。

 冤罪からは己で身を守らないとな。


 そしてこのスライムはオレが創成した治療用の道具で、怪我をしていた少女を治してることを伝えた。

「創成魔法か!?」とアマエラは驚いていたが、魔法ではなくてスキルを希少道具の補佐を受けながら使用している、と説明するのが大変そうなのでとりあえず頷いておいた。


 この一件からアマエラの態度が目に見えて軟化した。危ないところだった。


 ちなみに、ゴブリン達にひどい目に遭わされていた少女を助けたことも見ていたらしい。


 その件でオレが話の通じないバケモノではないと判断したようだ。

 だから彼女もオレとコミュニケーションを取る決意をして姿を見せてくれたそうだ。


 彼女の格好はまるで時代劇の忍者みたいだなあと思ったが、あながち間違いではなかった。

 彼女はこの「ヤーマーナの森」を領地に持つ「ケウシプス王国」の密偵らしい。


 さっき「魔力」が込められた分厚い免許証みたいなステータスカードを見せてくれた。

 そこに記載されていたのは……


【アマエラ・ポリーシュ:人間:25歳:ケウシプス兵】

職業(ジョブ)=アサシン】

技能(スキル)=隠密行動:レベル8 暗殺術:レベル5 交渉術:レベル5 短剣使用:レベル6 炎魔法:レベル4】


 ーーとあった。

 見たことの無かった文字だが()()()

 不思議だったが【エー・エー】先生曰く『「アーテラ汎用言語理解」の関連付けがされているから』らしい。正直あまりよくわからない。


 女忍者は、正しくは女暗殺者だった。

 ……ちょっと引いたよね。

 

 このステータスカードに表示された戦闘能力についてはよくわからないが、隠密能力レベル8については大したものだとわかった。


 【エー・エー】が誉めたのだから間違いないだろう。


 ちなみに【エー・エー】は数km離れたゴブリン達を探知出来る程の探索能力があるらしいのだが、アマエラを探知出来なかったのが不思議で聞いてみたら……


保有情報群(データベース)に「個体情報:アマエラ」を登録完了と報告です:次回探索時より保有情報群(データベース)補正にて技能(スキル)「隠密行動」を無効化可能です』


 ……とのことだった。ラーニングして強くなっていくってことなんだな【エー・エー】は……。


 ともかく、データベースの補正がなければ【エー・エー】でも探知出来ない程にアマエラの隠密スキルのランクは高いってことらしい。

 まさに女忍者……いや女暗殺者だな。


 それにしても密偵職についているものが自ら密偵と名乗るなんて馬鹿げた話なのだが、彼女は誠意として自らの身分を明かしたとのことだった。


 オレに危険がないと判断したアマエラにとって、素顔を晒しステータスカードと立場を明かしてまでオレと話す必要があったのだ。


 つまりオレは勧誘を受けているのだった。



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