チュートリアル ②
脳内補佐官の【エー・エー】先生と、技能の実践チュートリアルを通して、失われた左足の義足を創成すべく奮闘中です。
しかし異世界情報の整理にてんてこ舞いです。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ふむふむなるほど、それなりに素材を使って義足を創成するわけね。
で、アイテムボックス的な特性を持つ【隠蔽した飾り窓】に入ってる素材のストックを消費するってことか。
チュートリアル進行のためにも張り切って道具設計図を進めたいところだが……根っからの貧乏性が顔を出した。
そんなにバンバン使って大丈夫なんかい?
希少素材って言うからには、手に入りづらい素材ってことだろ?
『A:今回のプランニングで使用する希少素材において収集難度が高い素材は【ランク7:蜘蛛魔人の糸】並びに【ランク8:赤竜の肉】と報告です』
『両素材共に収集難度レベルは「最高」と評定:ただし両素材共に【隠蔽した飾り窓】の保持数において充分な余裕がある事実を報告です』
え?マジで? そんなに余裕がある感じなのか……ならプランC選んじゃうよ? なんかお手軽すぎて怖いけど……他にリスクってない? ないなら行っちゃうよ?
『A:リスク想定確認……完了:プランCのみ創成難度が希少創成道具へとランクアップする事実を報告です』
『創成実行時に要求される消費魔力の増大を推定です:実行時に現在の使役者の魔力最大値を上回り「状態異常:魔力枯渇」となるリスクを報告です:具体例を例示するにーー目を回して倒れるーーと報告です』
倒れるんかい!?……ダメじゃねーか!
『プランCでチュートリアルを進行する場合のみ魔力最大値を一時的に増大させる必要があります:現条件において「魔法薬もしくは魔力錠剤の使用」が該当です:よって魔法薬創成を推奨です』
えーっと、魔法薬ってことは……服用? することで一時的に魔力最大値を増やせるのか。ポーションとはまた……メジャーアイテムきたなあ。
ん?……ポーションもタブレットも創成出来るワケだろ?……タブレットではなくてポーションを推奨する理由は何よ?
『A:創成可能な魔力錠剤は特許周期の保護期間にある事実を報告です:タブレット創成実行時に創成履歴が能力表示カードに記録される仕様です:よって能力表示カードの非所持者による創成はアーテラにおいて拘禁事由です:現時点で能力表示カードを所持出来ない使役者にとって魔力錠剤の創成は問題行動となる可能性を進言です:よって忌避を推奨です』
なんだって!?……能力表示カード!? やっぱりあるのか!?
異世界=ステータスカードだよなやっぱ!
あれ?……現時点で取得出来ないって……どうしてだ?……ひょっとして……異世界テンプレか?……冒険者ギルドとかにいかなきゃ発行出来ない……とか?
『A:肯定と否定です』
『アーテラ各国に存在する冒険者ギルド並びに各種ギルドにて能力表示カードの発行が可能である事実により肯定と報告です』
『例外として「ベーテラ人」は特殊条件として「王国の庇護」を得て称号「越境者」を獲得する事を達成した時点において能力表示カード発行が可能となる事実により否定と報告です』
『補足情報を報告です:【エー・エー】の保持情報による推定では使役者が「王国の庇護」を得るためには能力表示の偽装が必須条件と進言です』
ふぁ!? なんだって?
ステータスカードを得るためにステータスの偽装をしなきゃいけない?……聞き逃せない情報だったぞ……なんでだ?
『A:チュートリアル終了後に問題解決への移行を予定と報告です』
『現在状況においてチュートリアル実行に障害事案が発生する可能性を報告です:【エー・エー】はチュートリアルの早期進行を希望です使役者』
え? え?
障害が発生……?それって……まさか……近くにファンタジーな魔物がいてヤバイ……とかじゃ……ないよな?
『A:「じゃない」を否定です:呼称「小鬼」複数と、呼称「大猪」単体の存在を確認と報告です』
異世界に来た……来てしまったと現状認識した時に、いつかあるのだろうと想定はしてたがついに来たか……これは……魔物との遭遇イベントだ!
しかも超メジャーな小鬼か。きっと背が低くてガリガリのアレだよな……こんなこと言うと見も蓋もないが、初エンカウントとしては最適か。でも……いざとなれば……怖いぞ!
『チュートリアルの速やかな進行を進言です』
了解です!【エー・エー】先生!
チュートリアル続行お願いします!大急ぎで!
チュートリアルを急ぐことにしたオレは、道具設計図を実現させるべく初めての創成を行うことにした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
不思議な感覚だった。
技能を使用する……単純な比喩だが、オレが感じたのは……例えばダッシュ後の息切れや疲労だ。
魔力を消費しているから、目眩や頭痛が起こるかと想像していたら、肉体的に疲れた。義足を創成するのにかかった時間はたぶん数秒だ。
『チュートリアル②:「道具設計図を消費し創成を実行してみましょう」です』
イメージした道具設計図に【エー・エー】先生のチュートリアル②にしたがって魔力を流し込むように念じた。
2分ほど魔力を捉えることが出来なかったが、【エー・エー】のナビに従って感知を続け、なんとなく……これかな、と思ってからは一瞬だった。
技能が発動する。イメージの中だけにあった道具設計図が目の前に展開していく。
まるで宙に淡い光で描いた魔方陣のようだった。
そして現出した設計図から、創成が成功した義足と魔法薬が出現する……。
結局オレが選択したラスト・プランは、ランク8素材を使用したプランCだ。
おかげで、慌てて創成した魔法薬を飲み干しても魔力がごっそり持っていかれる感覚が押し寄せて……疲れたわけだ。
こうしてオレは、初めての道具創成に成功した。
創成した義足は……はっきりいって滅茶苦茶だった。
使用した希少素材の能力らしいが、オレの脚のマーブル模様の断面に『ビタッ』とくっつき、うねうねと接合を行い……3秒経った頃には感覚があった。
見た目は、接合から先は……急に不健康そうな浅黒い脚だ。
所々にオレ「ゴトー」が「創成した証」の模様が入ってる……が、オレには読めない文字らしい。
【エー・エー】補佐官に聞いてみたら「ゴトー」「赤竜」「蜘蛛魔人」「エー・エー」を意味する文字がマーキングされてるらしい……ちょっと【エー・エー】の自己主張が強くて怖いぞ。
ぱっと見、ダサ目のタトゥーにしか見えない……ヤバい……父ちゃんプールとか銭湯に入れなくなっちゃったかも……Exプランをもうちょっと煮詰めて見た目が他の皮膚に合うようにしとけばよかった……機会が来たならコーティングになる疑似皮膚でも創成しようかな……。
まるでそこだけ露出して日焼けマシンで焼いたかのようでちょっと笑える。なんとなく『フランケンシュタインの怪物』を連想してしまった。……しかし、バケモノっぽい見た目はともかくとして、性能こそが本当のバケモノだった。
まず驚くことに、触った掌側に伝わる感触も肌の質感のそれだった。義足にも、触れた箇所に……感触がある。そっと触っても解る。生身の時と同じか、それ異常に鋭敏かもしれない。
凄いのは、引っ掻いてみたりつねってみたりした時には感覚が大幅に遮断されることだ。マイナスの要素は極力抑えられているらしい。
くすぐり攻撃とか効かないんじゃないかな?……これなら無敵を誇る娘とのコチョばせあいにも勝てちゃうぜ。
これが……初めて創成したオレの道具。状況に応じて「変形」する義足だった。
やったぞ……スキルを発動してオレが創成したんだ……。
『チュートリアル③:「創成した道具を操作し動作確認してみましょう」です』
ひとしきり感覚を確認した後は、【エー・エー】のチュートリアル③にしたがって動作確認だ。
常に魔力を意識して義足を操作する。歩き、曲げ、ひねり、振り、ステップを踏み、体重をかけ、感覚を肉体に近づけるように創成道具の使役を繰り返すことによって……気がつけば、違和感なく肉体の一部のように動かせていた。
【エー・エー】先生が教えてくれたが、先生の補佐があってもあり得ないような早さで義足が馴染んだ秘密は、オレのもうひとつのスキルだった。
『「操作もしくは装備」が必要となる創成道具を使役することは越境者が基本所持している技能道具使用により可能と報告です:しかしながら上級技能「道具支配」を所持している使役者においてはまさに別次元であると賞賛です』
上級技能……上級だけあってやはり高性能ってことか。「創造主」と「道具支配」。……オレが持ってるこのスキルの組み合わせって、地味だけど……上手く活用すれば……いわゆるチートスキルになるんじゃないか……?
『チュートリアル④:「創成した創成道具「義足」を運用しての攻撃行動を実行してみましょう」です:これをもってチュートリアル終了と報告です使役者』
攻撃行動か……「剣と魔法」の異世界だもんな……戦闘が想定される状況が多いってことかな。それに、エンカウントイベントが近い可能性を【エー・エー】補佐官が示唆してた。
オレは一般人のおっさんだ。ちょっと下っ腹も出てる。ぶっちゃけ弱い。戦闘技術を習得するのは重要だ。ここは出来るだけ真剣にやろう。
『体術の試行を進言です』
【エー・エー】に促されたオレは……空手で得意だった中段蹴りをイメージして構え……《義足》で蹴った。
ドビュン!
風を引き裂いて蹴りが走る。……太股辺りは生身のはずなのに、蹴りは凄まじい切れ味で走った。まるで【義足】の性能が延長線上にある肉体の性能も引き上げてくれたような……これ、魔物も蹴り殺せちゃう威力があるんじゃないか……?
『【エー・エー】が補佐した【エー・エー】印の創成道具は、使役する者との親和性と相互影響性において有象無象の創成道具とは一線を画すと自負かつ自尊すべき逸品であることを報告です』
……そ……そうなんすか……【エー・エー】先生……自意識高い系っすね……。
オレはその後、【義足】での跳躍も試し……気づいたら4mぐらいジャンプして、背後の木の枝に綺麗に着地していた……バッ○マンにでもなった気分だよ……いつかあんな全身スーツとマント創成しちゃおうかな……。
『チュートリアル「創成道具の創成と使役」クリアです:おめでとうございます使役者……テケテテン……テッテーン!』
どうでもいいけど……そのチュートリアルの効果音……火サスぽいなと思ったらクスっと笑ってしまった。……なんか余裕が出てきたよ。ありがとう【エー・エー】。
どうやらオレは……異世界でもなんとか生きていけそうだ。




