発動
……よし……オレはスキルが使えるのか……やってみようじゃないか。
方法はまったくわからないが……あえてポジティブな方向に思考の舵をきる。レッツトライ! だ。
そろりそろりと匍匐前進のようにして移動し……実際には片腕片足で不格好であったが、なんとか近くにあった大木へと背を預ける。
周囲に気を配り……OK、誰も、何もいないハズだ……よし、ここでいいか。
まずは……超能力者にでもなった気持ちで、スキルをイメージして念じてみる。
《道具創成》!
とりあえず……なにかしらの道具でオレの手足の補助がしたい!……なんか……創成してくれ~!
……沈黙の空間に風の音と犬の遠吠えが響いていく……そりゃそうか……まあダメだよね……失敗の気配に気持ちが萎えかけたその時。
『ピコピコピコーーン!』
「……うわあぁぁ!」
突然鳴り響いた『音』に驚いて、口から出てしまった悲鳴が木々の間に木霊していく。
な……なんだこれ?。
驚くオレの頭に、続けざまに謎の声が響いていく……。
『《道具支配》発動確認しました』
『《鍵道具》登録開始します』
『創魔の魔術杖の回収を希望します』
……なんだって?……なんだこれ……?
それは耳でとらえた音じゃなかった。機械的で女性的な……まるでカーナビの音声だ。それが……オレの……頭の中に響いてる?
これが……スキルなのか!?
『創魔の魔術杖の回収を希望します』
……え?……え?……なんすか?……創魔の魔術杖?
『創魔の魔術杖の回収を希望します』
だ……だからなんですかそれ!?
慌てふためき狼狽えまくるオレ……突然頭の中に干渉される感覚があった。映像というか、明確なイメージが浮かび上がる。
銀色に輝く金属のパーツ……空き缶みたいな形状で……表面に細かい模様が刻まれていて……
猛烈な既視感。オレ……これ見たことあるぞ……?
頭の中に映し出されたイメージが更新される。
……これはあの時だ……あのネズミ頭の魔王、創成の魔王をぶった切ってしまった瞬間だ……。
そして、倒れ伏す創成の魔王の傍らに、銀色に光るものが落ちているのが見えた。
……あ! 思い出した! 蹴っ飛ばしちゃったあれだ!?
『記憶映像投影成功:希望対象はそれです:現在地点はここ……対象はここです:速やかな回収を希望します』
イメージにうながされるまま這って進み……草刈り機の隣に……あった。
オレは、おそらくスキルが発動したということに対して……抑えられない高揚感を感じ、未知なる体験をしていることに興奮していた。
指示されるまま、何も考えずにそれに手を伸ばす……。
『ピコピコピコーーン!』
おお!?
『《鍵道具》:《創魔の魔術杖》登録完了しました』
登録?
『《使役者》:《ゴトー》登録完了しました』
マスター?
『《識者たる指揮者》:ナビゲートモード終了:チュートリアルモードに移行します』
……ナビ?……チュートリアル?
『はじめまして《使役者》:《ゴトー》』
……ゴトーってオレだよな……?……オレ……《使役者》なの?……は、はじめまして……。
『チュートリアルモードに移行しました:チュートリアル開始:→yes / no 』
……ちょ、ちょ、ちょっと!まってくれ!
『待機します』
……あの……質問……いいすか?
『《保持情報群》展開:質問どうぞ』
……えっと……なにから聞いていいのやら……パニックだ……。
とりあえず……ここは……アーテラ?ってところ……てゆーか異世界なんすか?
『A:開始:肯定です《使役者》』
……そ……そうか……ところで……あの、あなた……なにですか?
『A:開始:私はあなたを補佐する道具と表明です』
アイテム???
『開示出来る情報は3つです』
……はい
『私の固有名は《識者たる指揮者》:先代使役者である創成の魔王が創成し使役していた創成道具と報告です』
先代……創成の……魔王……
『全条件達成により現在の使役者は《ゴトー》です:継続使役条件は技能《道具支配》と鍵道具:《創魔の魔術杖》の所持・使用と報告です』
オレが……マスター?
『先代使役者により設定された呼称は《エー・エー》と報告です:私が保持する擬似精神に計上された適応レベルは最高値と報告です:よって継続呼称を希望です』
エー……エー……
『以上をもって回答完了です』
……もちろん……速攻で心の整理作業を行ったのは言うまでもない。
オレが会話しているのは、頭から響く声だ。姿形のない《識者たる指揮者》と会話をしている……つまり、頭の中から響く声と会話をしているわけだ。
古典的だが、ほっぺたをつねって見た。……痛い。ちゃんと痛い。
オレ……大丈夫かな……傍から見れば……馬鹿みたいに口を開けて宙を見上げて、一人でブツブツやっているわけで、かなりアブナイおっさんな状況だが……。
不思議と、少しワクワクしている自分がいた。




