地球帰還
3511年に地球帰還後、まず気になっていたセラフィーヌの席を会長秘書室に置いた。その後財産贈与をセラフィーヌに行い、その金額の中で株式譲渡をした。それでもぼくの株は51%以上を維持しており、セラフィーヌは一躍大株主になったというわけだ。これは地球で大きなニュースとなり、金を山ほど持っていながら使わないケチなあの万年白衣の会長が、資産贈与までしてセラフィーヌに株式譲渡したと一部では様々な憶測が飛んだ。中には会長秘書室は女の園だとか、酒池肉林だとか。うるさいやい。
また、一部の航空マニアでは会長の新しいパールホワイトのアルカ・エリュシオン号に、下向きの両刃剣の両側に天使の羽が3対6枚羽ばたくようにエンブレムが金色に描かれていることが話題になっていた。6枚の羽で熾天使を意味しながら剣を下向き持つ意味とは何か?という話だ。『封印者』の意味だよ。小型なのも彼らのお気に召したらしい。未だに光速の壁を越えられないどころか光速にすらほど遠い速度の推進機関しか持たない地球人が、時空を超える船を2艦も保有しているのは不穏だ、技術開示すべきだとする三流論説もあった。ぼくにも仕組みは分かんないんだよ。というか、単に時空を超える船など宇宙にいくらでもある。その中でもアルカ・エリュシオン号とアルカ・ソフィア号は最速最強だと言いたい。無論、マルののどかなイオ級艦もだが。
佃のタワーマンション最上階に帰った僕たちは定期的にハウスクリーニングされていた自宅でくつろいでいた。マルは4次元由来の謎金属でできた虹色ハンドスコップで、ぼくは普通の鍬で花壇を耕しては種を植えていた。マルが小さい両手でハンドスコップを持ちながら、ぽく、ぽくと掘り返して耕している。ぼくが鍬を持ちながら、ざく、ざくと耕す。一通り耕し終わった花壇の土に、マルが小さい手で穴をあけ一つずつ種を入れて土を被せていく。全部終わった頃には3時間ぐらい掛かっていた。あとはマルと水を撒く。昔、人間だった頃にこんな詩を書いたっけ。
「水まき」
水をまく水をまく
栓をいっぱいひねって水をまく
サアサアサアと水をまく
シュウシュウシュウと水をまく
ゴオゴオゴオと水をまく
梅の実が目を丸くするほど水をまく
木々がハッとするほど水をまく
草がドッキリするほど水をまく
セミの子どもよ目を覚ませ、パンジーよ立ちあがれ
水滴のちいさな流星うち上げて、
水滴のダイアサファイアばらまいて、
水滴のひとつひとつに太陽をのせて、
この庭に虹を掛けながら水をまくびしょ濡れのぼく。
マルとぼくはびしょ濡れになりながらだだっ広い温室に虹を架けまくったのだった。




