第十六話 宝島、遺跡には宝と秘密と果てなき闇と
翌日、真昼間から飲んでいた水原先生は二日酔いでダウンしていた。
「う~。飲みすぎた~。そんなわけで後は好きにしてくれ」
そんなわけで俺たちは全員部屋に集まって何をするか会議することになった。
「で、どうする?」
全員に疑問を投げかける。琴峰と佐藤も参加している。
「そうですね。どうしましょう?」
「はい! はい! はい!!」
馬鹿が飛び跳ねながら手を上げる。
「なんだ?」
「ツイス――」
「却下だ」
「なんで!!」
「何が悲しくてこんなところまで来てツイスターをしなくちゃいけないんだ」
「いいじゃないか! 好きなんだから理由はいらない!!」
「他にないか?」
馬鹿を無視して話を進める。
「そうだな我は山に行ってもいいと思うが、どうだ?」
「山か。とりあえず桜崎メモってってくれ」
「はい」
ノートの切れ端に桜崎が丁寧な字で書き込んでいく。
「はい!!」
佐藤が手をあげた。
「なんだ?」
「漫才大会とかどや!」
「一応書いておいてくれ」
「はい」
これも一応貴重な意見だからな。
「そうね。私はまた、海とか行きたいわ」
綾崎が言った。
「海っと」
桜崎がメモする。
「私、いいかしら」
赤羽が言った。
「いいぞ」
「実はこの辺りに無人島があるらしいんだけどそこに遺跡があって財宝が隠されているって話があるらしいの。それを探しにいってみない? お金になりそうだし」
「そんな話誰からきいた?」
「企業秘密よ」
大方ここの従業員だろう。
「違うわ。そこら辺にいた子供をいじめてはかせたのよ」
「謝って来い!!」
「大丈夫よ。ちゃんと女王様って呼ぶように言っておいたから」
「大丈夫じゃない!!」
「でも、いい案だと思うけど?」
言っておくが女王様の話じゃないからな。
「確かにな。じゃあ、他にないか? 琴峰さっきから黙ったままだがないのか?」
「私は若輩者だからな先輩たちが決めたことに従う」
「いいのか?」
「ああ」
「そうか。西園寺は?」
「私はこういうことはあまりしないのでお任せしますわ」
「わかった」
狭間先輩? 狭間先輩は寝ると最初に提案してそれを実行している。
「じゃあ、多数決とるぞ」
多数決で赤羽の案に決定。
「とういうわけなんですが」
水原先生に報告する。
「あ~。いいぞいいぞ。ただし死ぬなよ~」
とだけ言って許可した。
「許可はとれた。で、赤羽その無人島はどこなんだ?」
「ついて来なさい」
赤羽について宿泊施設を出て海沿いに歩いていくこと20分。
「あそこよ」
赤羽が指差す。肉眼で見える距離に島はあった。
「なかなか大きいな。で、どうやって渡るんだ?」
「劉斗がボートを用意しているはずよ」
「準備いいわね南雲」
綾崎がそう言ってボートに乗る。
「さて、行くぞ」
俺達は無人島に向かった。
島は完全円形で自然に出来たものとは思えない。島の中心には正方形の遺跡がある。各地にも同じようなものが数多く残されている。いつどのような目的で作られたものなのか全て謎に包まれている。
「じゃあ、宝探しと行きましょうか」
とりあえず遺跡へと向かう。
「ん?」
不意に誰かの視線を感じた。
「どうしたんですか?」
「いや、誰かに見られている気がしてな。気のせいか」
考えるのをやめて進む。
「いまさらだがこういう場所って普通一般人は立ち入り禁止だと思うんだが」
「大丈夫だ。我がきちんと許可とった」
「そうか、なら安心だな」
「着いたわ」
赤羽が言った。
目の前には何で作られているのかわからない黒い遺跡。だが、所々風化が酷く損傷が激しい。
「うわぁ! すごいです!」
驚きの声を上げる桜崎。
「すげえ! すげえ!!」
すげえしか言わない馬鹿。
「やばいははねこれ」
綾崎が言う。
「やはりこれを解析すれば売れそうだな」
劉斗が悪い顔をして言った。
「それはいいかもしれないわね」
それに賛成する赤羽。このふたりには光景を楽しむって気持ちはないのか。
「ない」
「ないわね」
声をそろえていった。
「お前らな」
「……」
狭間先輩は黙って遺跡を見ている。
「どうしたんです?」
「……」
聞いても何も答えなかった。とりあえずほうっておく。
「こういう場所は何度か来たことがありますがやはりすごいですわね」
「ほう、先輩は何度か来たことがあるのか」
「まあ、父の仕事についって行ったくらいですけど」
「そうか。他にもあるんだな」
「なんや自分、知らんかったんか?」
「ああ、私は走ることに専念していたからな」
琴峰よそれはどうなんだ。
「なんや。けったいな人生やなあ」
「入り口ありましたよ!!」
桜崎が入り口を見つけた。
「さあ、行きましょうか」
「専門装備でもあるのか。なかは結構くらいと思うが」
「我がそんなミスをするとでも」
既に懐中電灯など全て揃っていた。
「じゃあ、行くか」
遺跡探検開始。
遺跡内部はどこからか光が入ってきているのか割と明るかった。懐中電灯なしで見えるほどではないが。
「いったいいつごろ作られたんだ?」
「この遺跡は最低でも400年前に作られたそうよ」
赤羽が言った。
「それって江戸時代位じゃないか」
「そうよ。その時代にこんなものを作れたとは思えないから学者はとても不思議がっていたわ」
「詳しいな」
「………………ええ、これも子供をいじめて聞いたの」
さいですか。良い子はマネするなよ絶対に。
細長い通路を進んでいくと不意に開けた場所に出た。円形で奥には四つの通路が見える。中央には何かを収めていたと思われる台座がある。天井には穴が開いておりここから光が入っていたようだ。
「何かの儀式でもしていたんでしょうか?」
桜崎が台座に近づいていく。
「古い遺跡なんだから床が崩れるかもしれない。気をつけろよ」
「大丈夫ですよ」
その瞬間桜崎の立っている場所が崩れた。
「え!? きゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーー!!」
「桜崎ー!!」
桜崎は落ちて行った。
ドボン。
水に落ちたような音が聞こえた。ひとまず大丈夫そうだ。
「うわぁー!! どうしようどうしよう!!」
馬鹿が慌てふためいている。
「落ち着きなさい洋平!!」
綾崎が殴って黙らせる。
「手分けして探しましょう。水に落ちたみたいだから生きているはずよ」
赤羽が言い全員が頷いた。
「じゃあ、行こう劉斗!!」
「我に命令するな」
馬鹿と劉斗が四つの通路の左端に入っていった。
「あ! ちょっと待ってよ!!」
綾崎が二人を追った。
「じゃあ、うちはこっちに行くで!」
「うむ、私も行くぞ!」
佐藤と琴峰が左から二番目の通路に入っていく。
「では、私はこちらに行きますわ。ほら、先輩行きますわよ」
「うん~」
西園寺と狭間先輩が右端の通路に入っていった。
「じゃあ、隼人は私とね」
「ああ。行くか」
「ええ」
俺と赤羽は右から二番目の通路に入っていった。
「思ったんだが。これ、全員迷ったらどうするんだ」
「死ぬかもね」
「おい」
「まあ、大丈夫よ。携帯は繋がるみたいだし。それにあの人たちが殺して死ぬような人たちに見える?」
「それもそうか」
それで納得してしまうのが怖いところだな。
「でも、はぐれないようにしてないとね」
「そうだな――って!?」
言った矢先に赤羽がいなくなっていた。
「赤羽ー!!」
携帯にかけて見るが出ない。
「どこ行きやがったんだよアイツ」
テキトーに進んでいると下に行く階段を見つけた。
「まあ、目的地は同じだから合流できるだろ。心配しないでも大丈夫な奴だし」
階段を降り地下へ。
****
「はい、はい、そうです。遺跡に。はい、目標の観察を続けます」
暗がりで電話をかけている男。かけ終え立ち上がる。その時。
カチャ。
「!?」
「動かないで」
女の声と供に男の顔の横には黒光りする鉄の塊が突きつけられた。。
「な、何のマネだ。そんなおもちゃを突きつけて」
「生憎と本物よこれ」
「……」
男が押し黙った。黒光りする鉄の塊を突きつけていた女――赤羽紫苑は言う。
「ここで何してたのかしら」
「なにってこの格好を見てわからないか?」
男はどこからどう見ても観光客だ。
「そんな嘘は聞きたくないわ。今まで“私”を監視していたのはあなたでしょう」
「……」
「だんまりね。肯定と受け取るわ。聞かせてもらおうかしら。一体誰の命令で私を監視してたのかしら」
「……」
「言わないのが得になるとは思えないけど――ああ。撃てないと思ってるんでしょう」
紫苑の目から感情が消える。
「見くびらないことね。お前たちの部下と思われる奴らはみんな殺してきた。今さら躊躇うわけないでしょう」
それは感情のない冷たい声。本気だ。
「……まさか、このところ我々の仲間が行方不明なのは!」
「ええ、そうよ」
「何のために!?」
「あなたに質問を許した覚えはないけどいいわ答えてあげる。10年前、あなたたちはとある夫婦とその子供を殺したはずよ。一般的には事故死扱いだけど」
「まさか!?」
男の顔が驚愕に染まる。
「生きていたのか!!」
「ええ」
「ありえない! 殺したはずだ!!」
「あら、失礼ね。ならここにいる私は何なのかしら」
男は信じたくないよというように首を振る。
「それで、あなたたちのボスは誰?。10年前赤羽夫妻を死に追いやったのは」
その言葉には憎しみが込められていた。
「い、言えない」
「……そう。言う気はないのね」
引き金に指をかける紫苑。
「なら、あなたにも用はないわ」
パーン。
乾いた音が遺跡に木霊した。
「紫苑、私はあきらめないわ。絶対にあなたの仇を討つ。たとえ世界が私の敵になったとしても」
紫苑はそう呟いた。
****
パーン。
乾いた音が遺跡に響いた。
「なんだ?」
俺は音のしたほうに向かった。
「赤羽」
「あら、隼人」
そこには赤羽が立っていた。
「なんでこんなところに」
「ごめんなさいね。ちょっと用事があったから先に言ったの」
「そうか、で、さっき音がしなかったか?」
「ええ、したわ。たぶん何かが落ちた音じゃないかしら。さっきそこの穴に石が落ちたから」
見ると赤羽の横に穴が開いていた。
「そうなのか。それより桜崎は見つかったのか?」
「いえ。でも、水の流れる音がするからもうすぐと思うわ」
「なら、急ごう」
「ええ」
赤羽と水の流れる音がする場所に向かった。
広い場所に出た。水のたまった広い空間で元は何のための場所だったかはわからないが発光キノコの光で幻想的な雰囲気に包まれている。
「あ! 隼人君」
桜崎は瓦礫の上に座っていた。
「大丈夫そうじゃねえか」
「慣れてますから」
「そうかよ」
「じゃあ、私はみんなに連絡してくるからちょっと待ってなさい」
赤羽が来た道を戻っていく。ここじゃ電波が悪いらしい。
「しかし、すごい場所だな」
周りを見ると壁に何か書かれていた。
「なんだ? 文字みたいだが読めないな」
「……神はそこにいました。人は神になりました。しかし、元神はそれを許しません。元神は獣を放ちました。神は獣を退けました。しかし世界は限界を迎えました。神は桜を植えました」
桜崎が小さく呟いた。
「なんだって? 聞こえなかったからもう一度言ってくれ」
「い、いや、なんでもないです」
「そうなのか?」
「は、はい、大丈夫です」
「だが――」
「隼人、みんなすぐ来るそうよ」
赤羽がやってきたのでとりあえず保留しておこう。
その後すぐに全員がやって来た。
「大丈夫だった。心配したよ~」
「大丈夫です。すみません。馬鹿君心配かけて」
「安心しろ桜崎。我は心配してなかったからな」
「南雲。思ったんだけどセバスチャンさんなら助けられたんじゃないの?」
「ああ、当たり前だ」
「じゃあ、何でしないのよ!」
「面白そうだからな」
「あんたねえ」
劉斗の言葉にあきれる綾崎。
「結衣ちゃん大丈夫~」
「先輩それならきちんとした格好で言わなければ効果がありませんわよ」
ボロボロの西園寺と狭間先輩。大方狭間先輩が余計なことでもしたのだろう。
「それは失礼~」
「そうですわ。六道隼人」
「心を読まれた!!」
「まあ、何やみんな無事やったんやそれでええやないか」
「うむ、それが一番だな」
「じゃあ、一度上に戻るか」
「なら、近道があるぞ」
琴峰が言った。
「そんなのがあるのか?」
「ああ、私がぶちに抜いてきた通路だ」
見ると壁に大穴が開いていた。
「化物だな」
「お褒めにいただき恐縮仕るぞ」
「ほめてない!!」
そんなわけで化物――いや、琴峰があけた穴を通り地上に出た。かなり時間が経っていたのか既に夕暮れ時だ。
「戻るか」
時間も時間なので宿泊施設に戻った。水原先生はというと酒飲んで寝てた。こんな大人にだけはなりたくないな。
食事後みな眠りについた。
****
「紫苑」
「あら、劉斗なにかよう?」
中庭のベンチに座る紫苑に劉斗が言った。
「やったのか」
「あら、気づいていたの?」
「ああ、音が聞こえたからな」
「そう、それでどうするの? どうせ、あなたのことだから私が何をしているのか全部知ってるのでしょ」
「ああ」
「私を止める?」
「いや、我は止める気はない」
「そう。なら、何を言いに来たの」
紫苑が聞く。
「やめる気はないのか?」
「それ、さっきの言葉と矛盾してない?」
「ただ聞きたいだけだ」
「そう」
紫苑は目を瞑り開く。
「答えはNOよ。たとえ世界を敵に回してもやめる気はないわ」
「そうか、ただそれが聞きたかっただけだ。後は好きにしろ」
「ええ、好きにするわ」
劉斗は部屋に戻った。
「ええ、好きにするわ。私は紫苑ではないのだから……あなたは私を紫苑と呼ぶ、だけど私は紫苑じゃない。だから好きにさせてもらうわ。そうよね紫苑……」
その呟きは誰にも届くことはなく夜の闇に消えた……。
うら☆てん
赤「惚れ惚れするわね今回の私の活躍には」
隼「自分で言ってたら世話ないな」
赤「もう、私って何て凄いのかしら」
隼「黒い鉄の塊を手に入れたことはな。一体どこで手に入れたんだよ」
赤「禁則事項です♪」
隼「どこかの未来人みたいに言うな!!」
赤「可愛いから良いじゃない。読者サービスよ」
隼「それのどこが読者サービス何だよ」
赤「読者はきっと私のことを妄想して悶えるはずよ」
隼「いや、わけわかんねえし」
赤「まあ、それはいいとして次回は何だっけ?」
隼「ああ、肝試しの話だ」
赤「ああ、隼人が私に告白した」
隼「してねえよ!!」
赤「あの木の下で言ったことは嘘だったの。あんなに愛してくれたじゃない」
隼「勝手に嘘の記憶を捏造するな」
赤「では、次回をお楽しみに」
隼「勝手に終わるなー!!」