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質問

展開が早い?

内容が薄い?


知らんな。

「…誰?」

そう聞いてくる黒髪紅眼の少女。

ネリアナ、いや…アンナの姿越しだが、敵意はなさそうに見える。

しかし…なぜこの場所に来たの?

ここを知っている人物なんて私とお兄ちゃんくらい……強いて言えばお爺様もいるけど。

「シェリア様…いかが致しましょう。」

アンナはまだ警戒を解いていない。

いつでも彼女を殺せる状態を維持している。

「ねぇ、あなたは何故ここに来たの?」

しかし取り敢えずは質問だ、会話ができるならしておくに限る。

幸いにも相手が女性の為、こちらも会話ができる。これが男性だったらこちら側が会話できなった可能性がある。

「…山賊の…調査に来た。」

「山賊?」

「シェリア様、かなり昔はここに山賊の拠点が存在していました。彼女はその残党狩りをしていたのでしょう。」

「山賊……山賊ね…。」

「……シェリア様?」

少し体が震えてきたが、問題ない。

山賊…私たちを殺した奴らだろうか、彼女はその残党狩りに来た…なるほど、怪しい者ではないかも知れない。


「私はシェリア、こっちにいるのがアンナよ。アンナは私の従者をしているの。……あなたの名前は?」

アンナは私の紹介に合わせて一礼、しかし決して彼女から目を逸らしていない。


「……ナナ。」

「ナナさん…でいいの?」

彼女…ナナさんは頷く、無口な人らしい。

「じゃあナナさん、ここに山賊はいないわ。だから他を当たった方がいいわよ?」

…少しきつい言い方だが、この場所にあまり他人を入れたくないのだ。

ボロボロだが…ここは私の聖地だから。

そして、ここに私の欲した『答え』があるはずだ。

私が何故生まれたのかを知る答えが。


しかし、彼女は頷かなかった。

その上彼女は私たちの横を通り過ぎ、以前お兄ちゃんが使っていた椅子の背もたれに触れた。…優しく撫でるように。

「…懐かしい。」

「……え?」

懐かしい……確かにそう聞こえた。

小さな呟きだったが、確かにそう聞こえた。

何故?彼女は山賊の残党狩りでここに辿り着いたはずだ、懐かしむ物など存在しない。

「……ねぇ、あなた…ここに来たことがあるのかしら?」

気づけば、既に質問していた。

「……。」

しかし、ナナさんは答えない。

喋らず、じっと私を見つめている。

「お嬢様、一体何を…。」

「黙ってて。」

「…承知しました。」

アンナには悪いが今は説明している余裕が無いのだ、今はナナさんについて知りたい。彼女は一体何者なの?


「…ナナさん、貴女はここを知っているの?」

「貴女は…ここに初めて来たの?」

「貴女はここの何を知っているの?」

質問攻めに彼女は何も言わない。

しかし、

「貴女は……貴方は誰?」

この質問に、彼女は口を開いた。



「…庭のトマト…枯れちゃったね。」

答えになっていない?

だけどそれが一番の答えだった。

ナナさんは…紛れもなくお兄ちゃんだった。


気づけば、私は彼女に抱きついていた。


「…ただいま、あと…おかえり。」


「ほんとに……ほんとにお兄ちゃんなの?」

「……そう、みたいだね。」

お兄ちゃんの声は私に優しく響いた。

「お兄ちゃん…ただいま。」

「…うん、おかえり。」


抱き合って、泣き合った。

そして…笑い合った。





「お兄ちゃん?…ただいま?え、何で?」

戸惑っているアンナを一人残して。


その後、アンナに謝りながら2人で事情を説明したことは言うまでもないが、突拍子も無い内容に百面相するアンナが珍しく、私がアンナを茶化してしまったため、なかなか説明が進まなかったことをここに述べておきます。

怒ったアンナは可愛かったです。

…でもやっぱり怖かったです。

そして、怒られた私を見て笑ってるお兄ちゃんが可愛くて…少し複雑でした。

だって私より可愛いお兄ちゃんって……いや、良いかも?



その後、依頼終了の報告をする為に王国に帰るというお兄ちゃんに付いて行く事になり、私はお兄ちゃんが冒険者をしていることに再び驚きながらお兄ちゃんの宿の場所を聞き、今日はそこに泊まってお兄ちゃんの帰りを待ちました。


ここからは、そこで起きた一幕。

お兄ちゃんから聞いたアンナとの会話。

私が熟睡している時にしていた会話です。


「ナナさん。」

「…なに?」

お兄ちゃんはアンナと話す時は敬語じゃないのです。…何故でしょうか?

「あなたは、前世でシュリエ様と共に暮らしていたのですよね?」

「…そう。」

「…2人で、ですか?」

「……うん。」

「シュリエ様は…その時のことを理想郷と言っていました。」

「……理想郷?」

「いえ、明言はしていません。ただ、あの方は『理想郷』を再び取り戻すことを自身の夢にしていました。私は、それを聞いた時は何のことか分かりませんでしたが、あなたと一緒にいるシュリエ様を見て確信しました。あの方が取り戻したかった理想郷はあなたなんだと。理想郷とは場所でも記憶でもなく、あなた自身なんだと確信したのです。」


それを聞いたお兄ちゃんは笑ったらしい。

「…馬鹿だなぁ。」

「……え?」

「理想郷…あの生活を理想郷か。」

「ナナさん?」

「アンナ…教えて。」

「…何をですか?」


その後、お兄ちゃんが何を聞いたのかは教えてくれませんでした。アンナに聞いても笑ってはぐらかされる為、私には知る由もありません。しかし、一つだけわかることがあります。


それはきっと、優しいことなんでしょう。





「シュリエは…今まで幸せだった?」

「…いいえ。」





「今が一番幸せですよ…絶対に。」

「…私も、今が幸せ。」

少し、小ネタ(閑話)を入れるかも。

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