誰?
ここから、物語は始まる
山賊の討伐依頼……とは言っても、その残党の存在確認が主な目的だ。
そもそも依頼が古いからそのような状況になったらしく、依頼料は割増される。もちろん山賊がいなくても割増だ、これは美味しい。
その山賊についてラディリエさんから詳しく話を聞いたが、なかなかに素晴らしい功績を残している。…もちろん皮肉だ。
その山賊は15年以上前からこの山を拠点として活動しているらしい、私が転生する前からとはかなり驚きだ。古参どころでは無い。
奴らは圧倒的な数と山賊とは思えないほどの統率で力を伸ばしていたらしい。
まるで軍隊だとラディリエさんが言っていたが、まさにその通りであり、国を抜けたとある軍人がならず者や山賊を取りまとめて反旗を翻し、できあがったのがこの山賊一味だとか…何という謀反……国に対する忠誠は無かったのか…。
王国は奴らの襲撃を迎撃することしかできず国民は日々怯えて生活することを強いられていたらしい。
しかし、そんな恐怖はある1人の魔導士によって打ち砕かれた。
その魔導士、老齢であれど老獪。
数多の魔術を駆使し、山賊一味を相手に善戦していくその姿、まさに戦神の降臨であると言っても過言ではない無双であった。
しかし、その戦神も歳には勝てず。
善戦も時間とともに互角となり、遂に数に押されていく魔導士。
劣勢を感じた魔導士は、最期に一際強い魔術を山賊一味に放ち力尽きた。その瞬間、彼の体は強く発光し、その姿を消したと言う。
死して遺体を残すことを嫌ったのか、それとも失った体力を回復するための一時的な逃避なのか……その答えを知る者はいない。
ただ一つ言える事は、今も山賊は少なからず存在している可能性があり、私はその残党を探し出して殺すためにこの山に来た。
しかしこの山……どこか既視感がある。
前に来たことがあるような…いや、そんなはずは無いか…ただの気のせいだろう。
もっと集中して依頼に取り組まないと、残党とはいえ王国を恐怖させた山賊一味だ。
私は、十分注意して山の中を歩いた。
前世では2年間も山の中を走り回った人間だ、山の歩き方などは知り尽くしている。
山で迷うような事は絶対にない。食料や水もちゃんと持ってきている…2日分だけど。
それ以上の荷物は逆に負担になるから持っていけない。武器も持たないといけないし。
山での山賊の捜索は難航した、2日分の食料などあっという間に尽きて、狩をしなければならなくなった…水はすぐに川を見つけたから問題は無かった。
…なぜかすぐに見つかった。
そして、山での生活は一週間を過ぎた。
そして見つけたのがこの穴ぐら、中には生活していた痕跡はあるが、今はもう使われていないだろう。かなり古い穴ぐらだ。
山賊はきっとここで生活していたが、今はもう住んでいない…つまり、もう山賊はこの山にいない。…ということになるだろう。
きっと他の山に拠点を移したか、それとももう死んでしまったのか。
どちらにせよ、これで依頼は完了だ。
帰りのために動物を少し狩って食料を補充しておこうかな…。
そう思って山の中を少し歩き回ると、小さな小道を見つけた。
人が踏みしめてできたような小道。
どこか、見覚えがある気がする。
草が生えて道が消えないように自分なりに作った除草剤を撒いて、雑草が枯れなくて凹んだが新たに草木が増えなくなって少し効果が違うと笑った記憶……私は小道を走って進む。
そして……辿り着いた。
「……こ、ここは…まさか…。」
ボロボロだけど、面影が残っている。
屋根には穴が空き、扉は開きっぱなしだ。
よく手入れしていても隙間風があるほどボロかった壁も穴が目立つ。
奥の方には荒れ果てた畑…よくトマトを育てていた。
そうだ、既視感はあって当然だ。
気のせいでは無かったのだ。
ここは…
「ここは…僕らの家……。」
前世で生活していた僕達の家だ。
懐かしさで自然と笑顔ができてしまう。
私は、半開きの扉を開き中に入る。
「だ、誰!?」
「シェリア様、私の後ろに!」
そこには、怯えた様子の金髪紫眼の少女、そしてそれを庇うように立つ金髪紅眼の少女の2人が警戒してこちらを見ていた。
しかし、誰?と言われても。
「…誰?」
私も同じ感想なんだけど……。
ここから、物語は始まる




