5:憧れの……
「じゃあ、クリス。その拓けたポイントへ、案内してもらえるか?」
ウィルに促されたクリスは「もちろん」と答え、私の手を取ると、ゆっくり、黒い森へと歩みを進める。
今日は、クリスがブルンデルクに来て、初めて迎える週末だ。
私はクリスとの放課後制服デートを目論んでいたが……。
クリスがやってきたということで、夕食会が行われたり、晩餐会が行われたりで、放課後にデートをする暇など皆無だった。ならば週末にデート!と思ったが。
ウィルは、コンカドール魔術学園に在籍することを認められたが、その代わり「面倒な仕事も押し付けられた」と言っていた。それは、黒い森にいる守護霊獣の保護活動だ。
クリスの報告によると、黒い森には、それなりの数の守護霊獣が存在しているという。国内のいろいろな場所から、この森へ守護霊獣を捨てにきた人間が、それだけいたということだ。そして銀狼と同化していた時のクリスは、守護霊獣を喰らったりしていない。だから守護霊獣は、召喚者との契約が切れていないまま、黒い森の中を彷徨っている。
ウィルは守護霊獣を保護し、召喚者との契約を魔法で辿り、森へ守護霊獣を捨てた不届き者を出頭させるという仕事を、今回任されていた。ウィルは地道に放課後、私と二人で黒い森へ通い、保護活動をするつもりだった。だがクリスが来たことで、状況は変わる。クリスがいれば、放課後ではなく、土日を使い、一気に守護霊獣を保護できるだろうと考えたのだ。しかも、ジェシカはもちろん、アンソニーも協力を申し出てくれた。
その結果、天気も良く、まさにデート日和に思えた週末だったのだが。
私達は守護霊獣の保護活動を行うことになった。そしてクリスと私を先頭に、ウィルとジェシカが続き、アンソニーとウィルの護衛についた魔法騎士達を連れ、黒い森へ入ることになった。
二人きりのデートは、できていない。
でもクリスがブルンデルクに来てからは、毎日一緒に登校し、授業を受け、お昼も一緒に食べている。もちろんその時は、ウィル、ジェシカ、アンソニー、メグなど、他の生徒もいる。それでも帰宅し、夕食の後の1時間は、クリスと二人きりで過ごすことができていた。しかも毎日。だからこれ以上を望むのは、贅沢というものだ。
それに今だって。
みんなが後ろをついてきているのに、クリスは当然のように私と手をつないでいる。かつその手のつなぎ方は……。マジパラをプレイしていた時から憧れている「恋人つなぎ」だ。
手の平をあわせ、互いの指を絡めるこのつなぎ方は……。
ネモフィラの花畑で少年クリスと歩いた時には、したことがない手のつなぎ方だ。
こんな手のつなぎ方をできるなんて……。
クリスが大人になったのだと、実感してしまう。
「ニーナ、久々の黒い森が嬉しいの?」
「えっ!?」
「だって、とてもいい笑顔をしているよ」
クリスの指摘に、黒い森について考える。
黒い森に再び戻ってきたことについては……。
この森で、喜怒哀楽のすべてを経験した気がする。
何よりこの森でクリスに会えて、気持ちが通じ合い、奇跡も起きた。あの四聖獣を目の当たりにしたし、クリスの圧倒的な魔力も実感した。そしてこの森で、クリスと初めてキスをしたわけで……。
短期間ながら鮮烈な思い出がこの森にあるのは確かだ。
でも、今、私が嬉しそうにしていたのは……。
もう1話「ヤバイ!甘々な声に変わっている!!」を時間差で公開します!
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