64:すべてが終わった
一度は撤退しようとしたが、その場で待機となった。
すると離れた場所から、断末魔が聞こえてきた。
皆、魔女が現れたのだと思った。
展開されている防御魔法を見たウィルは「とんでもない代物だ。こんな魔法、解術するには百年かかる」と絶句していたと言う。
魔女もそれにすぐ気が付き、解術を諦めた。
代わりに、防御魔法の中を、突き進む手段に出た。
つまり、強行突破だ。
火柱が上がり、大地が揺れる。
濁流の音が聞こえ、閃光が駆け抜ける。
とんでもない防御魔法が起動していると、その場にいた全員が、感知することになる。
それでも突き進む魔女に、皆、凍り付いた。
断末魔は続き、これはいつ終わるのかと思ったら……。
ようやく静寂に包まれた。
でもそれは、魔女が防御魔法を突破したということでもある。
次期大魔法使いと魔女が対峙している。
どうなるのか。
皆が固唾を飲んでいると……。
おぞましい霊獣の姿が上空に見える。
その醜悪さに、目を逸らす者も多かった。
だが、すぐに四聖獣が動いた。
四聖獣は次々とおぞましい霊獣を瞬殺していく。
しばらくは四聖獣とおぞましい霊獣との戦いが続いた。
戦い……と言っていいかは甚だ疑問だ。
何せ四聖獣は、こちらが瞬きしている間にも、霊獣を倒しているのだから。
ようやく四聖獣が落ち着いた。
静寂が戻った。
だが、強い魔力の気配は消えない。
ところが、唐突に防御魔法が解除された。
四聖獣も姿を消している。
「終わったようだ。次期大魔法使いとニーナを迎えに行こう」
ウィルの出発の合図に、部隊は、黒い森の中へと歩みを進めた。
「黒い森の中に、危険なものは何もなかった。ただ、とにかく暗かった。ウィリアム第三王子は、ハヤブサの合図で、次期大魔法使いさまとニーナの場所を把握していたのだが……。何度も迷ってしまった。そしてようやく、ようやくたどり着けたのだよ」
父親の話を聞きながら黒い森を抜け、そして用意されていた馬車に乗り込み、屋敷に戻ったところで丁度話が終わった。
「ニーナ、疲れただろう。今日はもうゆっくり休むといい。さらわれた後、何があったのかは、明日、ウィリアム第三王子、ウィンスレット辺境伯に報告すればいい」
父親にそう言われた私は、出迎えてくれたジェシカとアンソニーと抱き合い、そのまま部屋に戻ると、すぐに入浴を行った。侍女のケイトが用意してくれた寝間着に着替え、食事をとった。
父親や王都から駆け付けた魔法騎士は、ウィンスレット辺境伯家の離れに滞在している。
クリスは、ウィルと同じ離れに向かったと聞いている。
今日はもう、クリスに会うことはできないだろう。
それが分かると、食事を終えたこともあり、私の瞼は重くなっていた。
いつもなら起きている時間なのに、早々にベッドで眠りについた。
本日もお読みいただき、ありがとうございます!
黒い森パートが終わりました。
いかがだったでしょうか(*´꒳`*)
次回は「出会いの記憶~9年前の春~」を公開します。
甘々展開が始まります。
それでは引き続きよろしくお願いいたします!!

























































