22:あの少年の正体は……
ウィルの誕生日は4月14日だ。そして18歳になった。
メリア魔法国は18歳で成人と認められ、家督を継ぐことができ、結婚が可能となる。成人を祝うパーティーは毎年8月に行われている。前世で言うところの20歳のつどいみたいなお祝いのパーティーだ。
その18歳になったその日に、絵葉書が届いた。
それは彼からの絵葉書で、表面には美しいネモフィラの花畑の写真、裏面にウィルへのメッセージ、そしてメッセージと一緒に書かれていた日付は今から3年前の4月14日。でもはがきの消印は今年の日付。そして消印に書かれていた地名はブルンデルク。
つまり、彼は3年前の4月14日にこの地にいたことになる。そしてこの地で絵葉書を書き、未来への配達日を指定していた。
彼は何のためにブルンデルクへ来ていたのか?
それはその絵葉書に書かれたメッセージと、彼自身の言葉からも分かっている。
彼の誕生日、それは4月4日だった。
この世界では不思議な言い伝えがあり、4月4日に生れた子供は魔力がとんでもなく強いとされている。でも4月4日に生れる子供は100年に一度いるかいないかという確率。
だからウィルの言う彼は、正真正銘の魔力の強い人物であり、この世界でいう『奇跡の子』だった。
その彼が4月4日の誕生日を迎えた翌日、突然「『ネモフィラの花畑の約束』、これを果たしたら、王命を拝する」と置手紙を残し、姿を消してしまう。
3年前のこの日、彼は成人である18歳を迎えていた。
彼はその魔力の強さから、成人の年齢に達したら、国王陛下自らが命じるある職務に就くことを求められていた。それなのに、『ネモフィラの花畑の約束』なるものを果たすために姿を消してしまった。でもその約束を果たせば、王命を拝すると言っているのだから、待つことにした。
ところが。
月日は流れるが、彼は戻って来ない。
国王陛下は密かに彼の捜索を命じた。
公にしなかったのは、彼の存在がこの国の切り札であったからだ。
『奇跡の子』がいる国は、ある意味、最強だ。
言ってみれば『奇跡の子』は前世の核兵器みたいなもの。
『奇跡の子』の持つ魔力は圧倒的。
それは『奇跡の子』を有しない国からすると、とんでもない脅威となる。
『奇跡の子』がこの国にはいる。
ただそれだけで、大陸における発言権も強くなる。
ゆえに『奇跡の子』が失踪したなんて、他国には知られたくない。
だから秘密裡の捜索が続いた。そして今も続いている。
そんな中で届いた絵葉書。
これまで彼がどこに向かったか、まったく不明だった。でも初めて、彼が3年前のその時いたと分かる場所が、消印から明らかになった。
ブルンデルク。
しかも絵葉書のメッセージに書かれていたことは……。
「ウィル、君も今日、18歳になったのだろう。おめでとう。晴れて君も大人の仲間入りだ。大人になるということは、自分のした約束を果たせる年齢になったことを意味する。僕は6年前、ある約束をした。『ネモフィラの花畑の約束』だ。この約束を果たすため、この地にやってきている。この絵葉書が届く頃には、僕の約束が果たされているはずだ。その未来が楽しみでならない。ウィルも18歳になったこの日、自分がどんな大人になりたいかよく考え、自分を信じ、行動してほしい」
間違いない。
彼は『ネモフィラの花畑の約束』を果たすために、ブルンデルクへ来ていた。
ウィルはすぐ様、国王陛下、つまりは自分の父親にこの絵葉書を見せ、彼を探すためにブルンデルクへ行くことを願い出た。
もしウィルが王太子だったら、自ら出向くことは難しかっただろう。
でもウィルは第三王子。だから許された。そしてこの地へやってきたわけだ。
「ここまで話すと、彼が誰であるか……予想はついてしまうかもしれないが、これは機密事項。このまま彼という言い方で話を進めさせてもらう。それでニーナの話とこの絵葉書のことを踏まえて考えると……。彼の言う『ネモフィラの花畑の約束』と、ニーナの言う『ネモフィラの花畑の約束』は一致していると思う。つまり、ニーナが8歳の時に出会った少年、それは12歳の彼なのだと思う」
ウィルの言う彼と私が出会った少年が一致している……。
ウィルがそう判断する理由って……?
それに彼が誰であるか、予想はついているだろうとウィルは言うが。
まったく予想はついていない。でも機密事項で明かせないというなら、別に名前が分からなくても構わない。何より『奇跡の子』などという設定は、マジパラでも明かされていないことだ。
予想なんてつくはずがない。
「ウィルが彼と私の会った少年が同一だと考える理由、それは何ですか?」
「そうだね。それを話す必要があるな。だがその前に」
そう言ったウィルは、まず彼の生い立ちについて語りだした。
本日もお読みいただき、ありがとうございます!
次回は「彼の目的は?」を公開します。
謎の彼についてじわじわと情報が出てきます。
それでは明日もよろしくお願いいたします!
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