21:できるよ。今すぐ、この場で。君が望むなら
「ほ、本当に、遠視にしている魔法を解術できるのですか?」
「できるよ。今すぐ、この場で。君が望むなら」
「解術して欲しいです! 眼鏡はもう卒業したいですから」
「まあ、年頃だしな、ニーナも」
「あ、でも……」
突然、眼鏡をつけなくなったら、みんなどう思うだろうか……?
「僕は魔力が強いことで有名だろう? ニーナには何かの手違いで目を悪くする魔法がかけられていた。そのことに僕が今日、こうやって話すことで気づいた。だからその魔法を解術した。以上だ。誰も文句は言うまい」
……! ウィルって人の心が読める!?
もちろん私の表情の変化を読み通っただけだろう。
だがこうやって機微を感じられるなら、皆に慕われること間違いなしだ。
社交術に長けていると思ったけど、この細やかな気遣いができる点も、ウィルの大きな魅力と思えた。
「確かにそうですね。ではお願いしても……?」
「勿論だとも」と答えたウィルは、私に眼鏡をはずすように言った。そして私に目を閉じるように言い、魔法の詠唱を始めた。この場で解術できると言われたので、すぐに終わるかと思ったその詠唱は、5分近くかかった。
魔力を抑える魔法よりは難易度が低い。
でも遠視にする魔法も相応に複雑な魔法だったということだ。
「よーし、完了だよ。ニーナ。目を開けていい」
「はい。その、ありがとうございます」
返事をして、ゆっくり目を開けると……。
あああああ!
眼鏡なしでも近くがちゃんと見える。
笑顔でウィルを見ると、額の汗をぬぐい、微笑んでいる。
「ウィル、もしかしてものすごく魔力を消費したのでは!?」
「まあね。彼がかけた魔法だ。一筋縄ではいかない。しかしなんでまた遠視になんかにしたのか……。本当に謎だよ」
そう言うとウィルは、ローテーブルに置かれた皿からチョコレートをとり、パクリと口にいれた。
魔力を大量に消費した後は甘いものが食べたくなる。
これは魔法を使える人間あるあるだ。
私も転生して初めて知ったのだけど。
マジパラの公式にはない設定だ。
「それで次は、と。ニーナは『ネモフィラの花畑の約束』について知っていることがある。それを聞かせてもらえるかな?」
「勿論です。その、私が勝手に『ネモフィラの花畑の約束』と呼んでいることなのですが」
そう切り出した私は、記憶に鮮明に残されているのに、約束した相手が誰か分からず、また何を約束したか分からない出来事について話した。そして今日、アンソニーと話したことで、新たに分かったことも話した。
謎の約束を交わした花畑には、ここに来たばかりの8歳の頃、一人で屋敷を抜け出して行ったようであること。その場所にもう一度行こうとして、辿り着くことができなかったこと。でもどうしてもそこに行こうとして、春になる度に探していたこと。だが14歳の春に花畑を探すのを止めたこと。さらにこの一連の行動の記憶が自分にはないこと。そしてどうやらアンソニーは私が言う花畑を見つけたらしいということだ。
「なるほど。これは一気に情報が集まってきたな」
ウィルが前のめりの姿勢で顎に手をやり、思案する。
「さあて、この情報をどう整理すると答えが導き出せるのか……。ああ、その前に、彼を探すためになぜここへ来たのか。そこをニーナに話す必要がありそうだ」
そう言ってウィルが語った内容はこうだ。
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