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転生先は魔王の娘でした。  作者: 成瀬イト
八省編
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第二話 文官の試験

エレノアは魔王の瞳を真っ直ぐに見つめ頭を下げた、そして魔王は暫く思案するように眉を寄せる


「エレノア、他国との外交は現状

この場で約束できるものではない。


お前の意見も一理あるが同時に

聖者をチラつかせた人間国が武力で不平等な条約を嗾けて来てもおかしくは無い。


軍事力は国の発言権そのものだ。

そしてこの国が人間国によって揺るがされる

この状況下で他国との交流が深まれば

魔族は魔王国が人間国に擦り寄っているように見えてもおかしくは無い。


それに外交を築くとしてお前は現状、

それが可能だと言えるか?


魔族が人間を軽蔑するように

人間もまた魔族を恐れ差別するだろう


そのような状況下で

人間国は調査を受け入れるか?


そもそも調査員として

どれほどの魔族が集まる?


仮にお前にその省の長官である卿の官位を与えた所で7歳のお前に魔族が従うと思うか?


魔王を降りたお前は

年端もいかぬただの小娘だ。


お前はその事を理解しているか?」


魔王の言葉にエレノアは言葉を詰まらせる。

勿論これが簡単なお願いではない事は

重々承知だ。


父の問いの答えを納得いく形で

返せる自信もない。


エレノアはただ魔王の瞳をじっと見つめた。

魔王は少女の真紅の瞳を暫く凝視するも

根負けしたように嘆息した。


「現実的に考えて今のお前に省をやる事は出来ん。魔族の成人である13歳になるまでの

6年間はここでこの国のことを学べ。


そして、それまでに魔王国の

文官になる試験を突破しろ。

海外への使節の話をするのはそれからだ。


省をやるのはお前にその資格があると

判断出来てからだ。


私は情で官位をくれてやるつもりは毛頭無い。

いくらお前が別世界の記憶を所有し、

二神の加護を得ていたとしても、だ。


それまでは他国の情報収集は密偵だけに任せる」


エレノアは目を瞬かせて魔王を見た。

こちらが頼んだとはいえ、

まさか父が私のような年端もいかぬ子供の言葉を受け入れてくれるとは思わなかったのだ。


他国への使節の許しを得られた事は大きな一歩だ。


エレノアは歓喜に瞳を揺らめかせ

満面の笑みで魔王を見た。


「お父様ありがとう!大好き!」


魔王は瞠目した後瞳を訝しげにに伏せ首を傾けた。


「私はお前に法外な要求の要求をしている。

礼を言うのは試験に受かってからだ」


エレノアは眉を下げて頷く。


父は13歳で文官の試験に受かる事はあり得ないと言いたいのだろう。


13歳と言う若さで試験に受かれば

間違いなく最年少合格となる。


だがエレノアには

試験に受かる自信があった。


「私頑張ってこの国のことを学ぶわ。

勇者の被害にあった街や村の復興もしなければならないしね」


今後の目標も決まったし、

やるべき事は山のようにある。


幸い軍事同盟のおかげで太陽の国は

魔王国に暫くの間は手出し出来ないだろう。


やっと落ち着いて学ぶ時間を得られた訳だし

傾いた魔王国の立て直しに協力する事は勿論だけど

魔王国の文官の任に付けるように真剣に勉強しよう。


魔法や使役ももっと磨いてそう簡単に呪印の支配を受けないような術を見つけよう。


そして今、何より重要なのは

魔族達に外交の重要性を

分かってもらう事だ。


父に使節の許しを得た6年後までに

私にできる事を一生懸命やっていこう。


「それとお父様、

勇者と悪魔の処遇なのだけど...」


その言葉に魔王は凍るような冷ややかに瞳の色を変えた。


エレノアはその視線に気圧されつつ

その瞳を逸らさないまま静かに見据えた。


「あの二人に武官としての教育を

施して欲しいの」


「お前は自分が何を言っているのか理解しているか?」


魔王の静かな怒りが魔力の覇気から伝わってくる。

父の命を奪いかけ、

大切な仲間を奪われたのだ。


勇者と悪魔は人質としての役目を終えれば処刑される手筈だったのだろう。


それを覆すなど

魔族に示しが付かない行為だ。

エレノアの言葉が理解できるはずも無い。


「許されない要求をしている自覚はあるわ。

この処遇についてはお父様に全て委ねる。

ただあの二人の話をよく聞いて欲しいの。


あの二人はもうこの国に仇なす存在では無いわ。


お父様の気持ちも考えず

こんな発言をしてしまってごめんなさい、


でもあの二人は今後の魔王国のために使える存在だと伝えたかったの。」


エレノアの言葉に魔王は厳しい瞳を変えなかった。


ただ小さく「分かった」と伝えると、

それから食事に戻った。



**********************



あれから3年という月日が経った頃、

エレノアは10歳になっていた。


父のおかげで魔王国の復興も進み

エレノアも勉学に勤しんだおかげで

この国の経済事情や内政が分かってきた。


「エレノア様、そろそろ試補になる気はございませんか?」


それはある日の昼下がり、

カタストロフに家庭教師をしてもらっていた時のことだ。


自ら政を行う父が戻り、仕事に余裕が出来たカタストロフは時々ライリーの代わりにこうして勉強を見てくれている。


「試補?それって文官見習いのことよね..?」


「私が推薦しましょう。

大丈夫です、エレノア様は7歳のうちに

基礎学力をすでに持っておられ、

この3年間でこの国の知識もある程度身につけられましたから。」


エレノアは目を丸くして

カタストロフを見る。


「推薦してくれるのはありがたいけど..

でもあまりに早すぎないかしら..」


試補になると言う事は

文官の試験を受けると言うことだ。


この国は優秀な人物を高官が推薦し、

その人物は試補となり何年かの間、

文官見習いとして文官の仕事を任される。


数年間の間にその業績が認められれば

文官となれるのだ。


勿論業績が伸び悩めば

クビになり、文官の官位は得られない。

寿命の長い魔族特有の試験形式と言えるだろう。


「早すぎる事はありません、

むしろこれ以上遅くなればエレノア様は13歳までに文官になるのは難しくなります。


試補となって認められるのに

最低1年以上はかかるでしょうから」


カタストロフはエレノアの瞳をまじまじと見ながら説き伏せる。


「そう、よね..

分かったわ、宜しく頼むわね

カタストロフ」


予想以上に早い推薦に戸惑いつつ、

カタストロフがくれたチャンスに感謝する。


「それと魔王様が

勇者である結城一哉とヴィルカーンを武官の試補に推薦するそうです。」


「...!そう....良かったわ...」


父である魔王は私の話を聞いて

勇者とヴィルカーンの話を聞いたそうだ。


それから勇者達は処刑を免れ

償いの名目で魔王国の被害にあった各地に

変身魔法をかけられ向かわされていた。


武官に推薦したと言う事は

二人の仕事ぶりを認めてくれたのだろう。


勇者や悪魔が変幻して復興に協力していることは

魔王国中の噂になっていたため、

以前のように見かければ殺そうとするものもかなり少なくなって来たようだった。


エレノアが安堵の息を零すと

カタストロフは瞳を僅かに細めた。


「エレノア様も魔人としてはあと3年で成人ですね。思えば太陽国と条約を結んでからはや3年、ご立派に成長なされました」


「そう..かしら」


確かにあの頃と比べれば背丈も伸びて少し大人らしくなった。

まだまだ、小娘に変わらないが..

改めて言われると少し照れる。


エレノアは頬をほのかに染めて礼を言うと

カタストロフはにこりと微笑んだ。


あれからカタストロフとは進展はない。

あたり前ではあるが..


こうしてカタストロフが

自分の成長を認めてくれるのは少し嬉しい。


これから成長していく先に少しでも女性として見てもらえるようにエレノアは美容にも

もっと気を使っていこうと心に誓った。


幸い美しい父と母の間に生まれたお陰で

容姿には恵まれて育っている。


この容姿に胡座をかかないように

頑張らなきゃね..


だって相手はあの国宝級の容姿を持つカタストロフなのだから。

並んでも恥ずかしくない存在になりたい。


エレノアは無意識にぼんやりとカタストロフを見つめているとカタストロフは疑問げに首を傾けた。

エレノアが10歳になりました。

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