表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
81/81

80 銀鉱脈

翌朝。


共同浴場には、まだ昨日の余韻が残っていた。


煙突から立ち上った最初の湯気。

住民たちの歓声。

そして、新しい街が動き出したという実感。


だが、今日の僕たちは別の場所へ向かっていた。


あの日、銀鉱石を見つけた場所。



「ようやく本題だな」


ゴルドが上機嫌で言った。


背中には既に採掘用の道具が括り付けられている。


「まだ銀鉱脈と決まったわけではありませんよ」


僕が言うとーー


「いや、決まっている」


即答だった。


「なんでですか」


「勘だ」


「それは根拠になりません」


「職人の勘は根拠だ」


横でガンズがため息を吐く。


「始まったな」


ドラムも苦笑していた。



やがて例の場所へ到着する。


川幅はそれなりに広い。

水の流れも速い。


一見すると、どこにでもある川だ。


だが僕は既に感じている。この川の下に眠る微かな反応を。


「ミリスお願い」


「任せて」


ミリスは嬉しそうに杖を構えた。


最近、水魔法を披露する機会が増えている気がする。


「《ウォータースプリット》」


ザバーーーーン!!


轟音と共に川が割れた。


左右へ押し分けられた水が壁のように立ち上がる。


何度見ても異様な光景だった。


「やっぱりお前の魔法はおかしい」


ガンズが呟く。


「褒め言葉だね」


ミリスは満足そうだった。



露出した川底へ降りる。


僕は岩盤へ手を当てた。


「《鉱石探査》」


視界の奥に無数の光が浮かび上がる。


前回よりも鮮明だ。


川底。

岩盤の下。

さらにその奥。


銀色の反応が連なっている。


「あります」


僕は断言した。


「《鉱石解析》」


ーーーーーーーーーー

名称:銀鉱石

純度:高

埋蔵量:不明

ーーーーーーーーーー


「やっぱり銀だ」


ゴルドがニヤリと笑う。


「しかも質が良さそうだ」


ドラムも感心したように頷く。


「これだけでも十分な発見だな」



だが僕は違和感を覚えていた。


銀鉱石の反応だけではない。


その奥。


さらに深い場所に、妙な空白がある。


「ん?」


僕は眉をひそめた。


「どうした?」


ガンズが尋ねる。


「何か変なんです」


再び探査する。


銀。


銀。


銀。


銀。


その先。


突然反応が消える場所がある。

まるで巨大な空洞のように。


「地下に空間があります」


「空間?」


「はい」


僕は地面を指差した。


「かなり広いです」



ゴルドの目が変わった。


職人ではなく、鉱夫の目だった。


「自然洞窟か」


「それとも地下水脈か」


ドラムが言う。


しかしゴルドは首を振った。


「違うかもしれん」


「どういうことだ?」


「この辺りでも、昔は鉱物を掘ったりしていたと聞いたことがある」


ゴルドは川底を見回した。


「もし銀があるなら、昔の誰かが掘っていても不思議じゃない」


「つまり?」


「古い坑道だ」


その言葉に全員が黙った。



「確認するか」


ガンズが前へ出る。


土魔法の使い手である彼なら、地形そのものを動かせる。


「川の流れを少し変える」


「そんなことできるんですか?」


僕が驚くとーー


「ドワーフを誰だと思っている」


ガンズは鼻を鳴らした。



両手を地面へ、魔力が広がる。


ゴゴゴゴゴ……


鈍い音が響いた。

川底の岩盤が盛り上がる。

土が動く。

石が組み変わる。


やがて川の流れの一部が迂回し始めた。


「すごい……」


思わず見入る。


僕が水脈を探し、ミリスが川を割り、ガンズが地形を変える。


みんな得意分野が違う。

だからこそ面白い。



しばらくして、川底の奥に隠れていた岩壁が姿を現した。


その時だった。


「おい」


最初に気付いたのはゴルドだった。


「見ろ」


全員の視線が集まる。


岩壁の一部。

そこだけが不自然に削られていた。

自然にできた形ではない。

誰かが掘った跡だ。


「まさか……」


僕は近付く。


土を払い落とす。

さらに岩を退ける。


すると。


ぽっかりと口を開けた穴が現れた。


人が一人通れるほどの大きさ。

その先には闇が続いている。



「坑道だな」


ゴルドが呟いた。


その声には興奮が混じっていた。


「間違いない」


ガンズも頷く。


「しかもかなり古い」


「アルセリア地下銀鉱山……」


僕は思わず呟いた。


誰が掘ったのか。

いつ作られたのか。

なぜ放棄されたのか。


何も分からない。

だが一つだけ分かることがある。


ここには銀がある。

そして、まだ誰も知らない何かも。



「入るか?」


ゴルドが笑う。


今にも飛び込みそうな勢いだ。


だが僕は違和感を覚えていた。


「待ってください」


「どうした?」


ドラムが振り返る。


僕は目を閉じた。


「《生命反応感知》」


静寂。周囲の魚。鳥。小動物。


それらの反応が見える。


だが。


地下の坑道の奥。

さらに深く。


ポツン。


反応。


さらに。


ポツン。


ポツン。


ポツン。


数が増えていく。

僕は思わず息を呑んだ。



「います」


「何がだ?」


ドラムの声が低くなる。


「分かりません」


僕は正直に答えた。


「ただ……」


坑道の闇を見つめる。


「人ではありません」


空気が変わった。


ゴルドは笑っている。

ガンズはため息を吐く。

ドラムは剣の柄へ手を添えた。


ミリスだけが少し楽しそうだった。



坑道の奥は暗く静かだ。

だが確かに何かがいる。


銀鉱脈の先に広がる未知の地下世界。


そこには、まだ誰も知らない秘密が眠っているのかもしれなかった。


僕は無意識に唾を飲み込む。


(これは本当に、銀鉱脈だけの話じゃないかもしれない)


アルセリア地下銀鉱山。

その発見は、新たな冒険の始まりだった。

読んでいただきありがとうございます!

面白かったらブックマーク・評価いただけると嬉しいです。

次回もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ