69 石に眠る魔力
「とりあえず、何を作るのかは大体方向性は決まったな。あとは材料か」
「そうですね。具体的には何が必要になりますか?」
僕はガンズに尋ねた。
「まぁ、そうだな。池や水路については、ある程度魔法で土を整地して固めればどうにかなるだろう。
肥溜めも形状さえ決まれば作れると思うな」
ガンズは顎に手を当てた。
「水船だったか?まずはそれ用の石材が必要だな」
「石材ですか。何か特定の石材という指定はありますか?」
「そうだなぁ、石材といったら、だいたいマーブルかグラナイトだな」
「マーブルとグラナイト?」
「外で使うなら雨風に強いグラナイトだ。逆に建物の中ならマーブルの方が見栄えがいい」
「じゃあ今回は外に置くのでグラナイトですね」
「そうなるな」
「どこで採取できますか?」
「普通は山や川へ行って、地表に出ている岩を削って採取するだがな」
ガンズは腕を組んだ。
「今回は大量に必要なわけじゃない。アルセリア川の河川敷で大きめの岩を探して持ってくるのが早いだろう」
「すぐ見つかりますかね?」
「まぁ、グラナイト自体はこの辺りにもポツポツあると思うぞ。ただ、大きいものがあるかどうかだな」
(確かに、上流なら岩がゴロゴロしていると思うが、この辺りは中流域だ。そんなに大きな岩が転がっているイメージはない)
「一緒に探してもらうことって可能ですか?」
「そうしたいのはやまやまだがな」
ガンズは苦笑する。
「俺は残りのスラム住民のための長屋も建てなきゃならん。特徴を教えるから、お前たちで探してきてくれるか」
僕とケイト、ミリスは頷いた。
「そうだな、ちょっと待ってくれ」
ガンズは先ほどほった井戸の横に積まれた土を掘り返した。
「確か、この中にも小さいがグラナイトがあったはずだ」
しばらく探した後、小さな石を拾い上げる。
「おおっ、これだ。これがグラナイトだ」
(おっ、お……)
(と言うか普通の石にしか見えない……)
「なるほどー。これを見つけるのですね。間違えそうですね」
「だねー」
「うんうん」
ケイトとミリスも少し自信がなさそうだ。
「そうだな」
ガンズは僕を見た。
「さっき水脈を見つける時、お前さん、流れが見えていると言っていたな」
「はい。おそらくクリアスライムとの連携スキルだと思いますが……」
「なら、同じようにこの石も見てみたらどうだ?」
「石ですか?」
「元々グラナイトは地中深くのマグマから生まれると言われていて、魔力を帯びている言われているんだ」
「えっ、そうなんですか?」
「まぁ、グラナイトに限らんがな。鉱石ってやつは大抵、特徴的な魔力を帯びているものだと思う」
(それなら、《臨床検査》の応用で見つけられるかもしれない)
「やってみます」
皆が見ている中、僕はスキルを発動した。
「《臨床検査》!」
ボワん。
確かに、石の中には微弱な魔力が存在していた。
ただ、生物のように流れているわけではなく、魔力の分布そのものに特徴があった。
「これが、グラナイトなんですね」
僕は別の石を拾った。
「じゃあ、こっちの石はなんですか?」
「どれどれ」
ガンズは石を受け取る。
「んー、そうだな。これはライムストーンだな」
「ライムストーン?」
「そうだ。少し脆いが、簡単な石壁や低い塀なんかには使う」
「《臨床検査》!」
確かに魔力の分布がグラナイトとは違っていた。
「おもしろいですね」
「えっ、何?ノアには何が見えてるの?」
ミリスが興味津々で覗き込んできた。
「ええっと……ガンズさん。もう少しだけ教えて欲しいのですが……」
「もちろんだ」
「じゃあ、これは?」
「おっ、それがマーブルだな」
「これは?」
「スレートだ」
「これは?」
「サンドストーンだ」
「じゃあ……」
「おいおい、もしや全部やる気じゃないだろうな」
ガンズが苦笑する。
「あっ、すみません……」
ワハハハハ。
ククククク。
ガハハハハ。
周囲から笑い声が上がった。
「またノアの悪い癖が出たね」
「ほんとほんとー」
ケイトとミリスが笑う。
リノとマルも楽しそうだ。
「じゃあ、一旦これが最後なんですけど……」
僕は二つの石を差し出した。
一つは、キラキラと輝く石。
もう一つは、薄い緑色で半透明の石。
「おおっ!?」
「これはどこで見つけたんだ?」
「キラキラした方はこの土の中です。緑色の方は、この前アルセリア川の源流へ行った際に拾いました」
「それは……もしかすると、もしかするぞ」
「なんですか?」
「まず、この緑色だが、ヒスイだな」
「ひすい?」
「宝石として取引される石だ。加工すればかなり価値がある」
「ええっ!?」
ケイトが驚く。
「ノア、いつの間にそんなもの拾ったのよ?」
「ノアずるい」
ミリスが頬を膨らませた。
「で、このキラキラした方だが……」
ガンズはニヤリと笑った。
「シルバーだな」
(シルバーって……銀!?)
「食器とかに使う銀ですか?」
「食器だと?」
ガンズが吹き出す。
「そんな贅沢ができるのは一部の貴族くらいだぞ」
(やばい。つい実家の銀食器を思い出してしまった)
「もちろん食器にも使われるが、何より銀貨の材料だ」
「うへっ……」
「どんな声出してるの?」
いつもなら全肯定のミリスも若干引いていた。
「とにかく」
ガンズは真面目な顔になる。
「もしこの辺りで銀が採れるなら、一大事事業になるかもしれん」
(夢があるな……と言うか、スラムの人たちの新しい仕事になるかもしれない)
そんなことを考えているとーー
(天の声)
《スキル《鉱石解析》を取得しました》
(でしょうね……)
一通り石材と鉱石の知識を得た僕たちは、グラナイトを探すため、アルセリア川の河川敷へ向かった。
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