01 静かな日常
0章プロローグ(01-04)
転生前の導入を書いていますので、不要な方は1章(05)からでもお楽しみいただけます。気軽に読んでいただけると嬉しいです!
血液が入った採血管を遠心機にかける。
すると、黄色く透明な「血清」と赤黒くどろりとした「血餅」に分かれる。
その採血管を隣接する自動分析装置にセットし、ボタンを押す。
すると、機械が血液成分を自動で分析する。
こうして得られた数値は、人体が正常か、あるいは異常かの判断材料となるわけで、この一連の行為が臨床検査であり、私の仕事である。
「あと4時間か…」
今日も地方の小さな臨床検査室の片隅で、いつも通りのルーチン作業をこなしている。
午前中は外来が混み、検査オーダーも多い。
だが昼を過ぎると、一気に落ち着く。
都心の病院や大学病院では一日中忙しいこともあるらしいが、この病院ではそんなことはまずない。
勤務終了までの時間。
ーーどうやって過ごすか。
そんな贅沢な悩みを抱えながら、今日も時間が流れていく。
正直、この仕事は悪くない。
「臨床検査技師」と呼ばれるこの職業は、れっきとした医療系国家資格の一つだ。
だが、一般の人にはあまり知られていない。
それどころか、院内の他の医療職でさえ、何をしているのか理解していないこともある。
それでもいい。
無理をし過ぎることもなく、生活に困らないだけの給与はある。
休みもきちんと取れる。
そして何より、人との会話は最小限。
自分の世界に没頭したまま、一日を終えられる環境も嫌いではない。
そして、この仕事には別の意味でのやりがいもある。
例えばーー
検査結果を過去のデータと照らし合わせることで、異変にいち早く気づくことができる。
再検査が必要かどうか。
その「違和感」を誰よりも先に察知できるのは、臨床検査技師だ。
ただし、その先には超えてはいけない領域がある。
医師ではない以上、診断や判断に踏み込むことはできない。
だから、異常をアラートとして医師や看護師に伝える。
ーーそこで終わるというわけだ。
中には、「余計な仕事だ」と、データだけを出して何も言わない技師もいる。
逆に、積極的にコミュニケーションを取る者もいる。
「余計なことして、怒られたら嫌だし…」
私の場合はどちらかと言えば前者で、トラブルのタネにならないよう、波風を立てない。
ーーそうやって、やってきた。
「帰ったら、アニメの続きをアマプラで見るか・・・」
今日もいつもと変わらない平和な一日が過ぎていく。




