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囚人ちゃんと盲目お嬢  作者: 睦月微糖
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脱獄大問題

同時刻、バルトスカ監獄。




夜が開けた監獄内の中央にある大広場にて、囚人達が集められていた。起床の時間より少し早いというのに看守に叩き起されたせいで寝ぼけ眼を擦る者、絶え間なく出る欠伸を噛み締める者、立ったまま寝惚け眼でうつらうつらと舟を漕いでいる者。広場には、囚人達の様々な朝の姿が見られた。




「囚人ちゃん、どこに行ったんだろう……」




そんな中、鳥が不安げな表情で周囲を見渡していた。起床時間になったら必ずと言っていい程赤龍が鳥の所にやってくるのだが、今日は一向にやって来ない。それどころか、広場に赤龍の姿すらない事に疑問を抱く。




「おい、そろそろ時間だ」




看守が広場の中心へやって来ると懐中時計を見て時刻を確認し、囚人達を見やって時間が来た事を教える。監獄内の囚人達はゆっくりと広場に集まっていくが、何度探してもその中に赤龍の姿がない。




「あの看守さん、囚人ちゃ……じゃなかった、NO.1046さんがいないようですが……」




鳥は看守に近寄って尋ねる。しかし看守は特に気にした様子もなく、それどころか苛立ちを含んだ表情で鳥を睨みつけてきた。




「あいつなら、消えた」


「え……?」


「夜のうちに煙のように消えたんだとよ、どこ探しても見つかんねえしよぉ、ったくもう……手間取らせやがって……」




舌打ちして悪態を吐く看守を見て、鳥は驚きを隠せない様子で呆然と立ち尽くす。それは他の囚人達も同じで、ざわつき始める。




「消えたって脱獄か?……でも、あの赤龍が??」


「じゃあもう監獄にはいないんだな?俺達の枷もなくなったのか!?」


「けど看守が脱獄しようとした奴を黙って見過ごすなんて事するか?いや、しねぇだろ」


「じゃああいつが逃げたってのは嘘か……?でもなんでそんな事……」




囚人達が口々に話す中、鳥は青ざめた表情で看守に詰め寄った。




「ほ、本当にいなくなったんですか!?そんな筈ありません!囚人ちゃんは、そう簡単に脱獄するような人じゃ……!」


「ピーピーうるせぇぞ!!」




しかし看守は鳥の胸ぐらを摑むと、そのまま壁に叩きつけた。背中に鈍く響く痛みに耐えながら鳥が顔を上げて看守を見ると、その怒気に満ちた表情を見て息を吞んだ。




「いい加減にしろよてめぇ!赤龍について詳しいのはいいがな!あいつはもうこの監獄にはいねぇんだよ!」


「っぐ……」




胸ぐらを摑まれていた手が乱暴に離され、鳥は力なくその場に崩れ落ちた。看守は舌打ちしながら鳥から離れた後、広場の中心に再び戻って行く。




「おらお前ら!さっさと並ばねぇか!」




囚人達を急かす看守の声に反応して、他の囚人達もぞろぞろと集まり始めた。しかし皆一様に困惑した様子で顔を見合わせており、不安や恐怖が入り混じった表情を浮かべている。中には赤龍が本当にいなくなったのか疑問を抱いている者や、自由になれるという喜びを静かに感じている者もいた。




「おら、お前もさっさと並べ」


「……はい」




看守は鳥の肩を叩いてそう言うと、他の囚人達と共に並びながら俯き地面を見つめる。




「(囚人ちゃん、どうして……)」




昨夜の事を思い出すが、やはり赤龍が逃げ出したとは思えない。自分が何か気に障るような事をしてしまったのだろうかという考えすら浮かぶ程だ。しかし理由もなく逃げるような人でもないという事もまた事知っている鳥は、赤龍の身を案じて不安な気持ちになる。




「(絵本の読み聞かせ……してあげるって約束したよね……)」




昨夜の約束を思い出し、鳥は俯いていた顔を上げて広場の中央を見る。しかしやはりそこに赤龍の姿はなく、ただ朝日が差すだけ。




「おい貴様ら、静かにしろ!」




看守の声で囚人達は一斉に口を閉じて静粛な空間になる。別の看守が広場を見渡した後、ダルげに息を吐くとメガホンのスイッチを入れた。




「あー……聞こえてるか?……囚人諸君……」




看守の気だるげな声が広場に響くと、囚人達は無言で耳を傾けた。




「知ってる者もいると思うが、赤龍の囚人NO.1046が突然姿を消した。どこを探しても見当たらない所を見るに、恐らく脱獄したと見ていいだろう」




ざわつく囚人達をよそに看守は続ける。




「知ってると思うが監視の目は常にお前ら囚人諸君を見ている、脱獄しようものならすぐに発覚して罰を与えられる。脱獄は不可能だ」




看守がそう言うと、囚人達は当然だと言わんばかりな表情を浮かべて互いに顔を見合わせる。しかしただ一人……鳥だけは不安げな表情を浮かべたまま、周囲の囚人達の顔をチラリと見てると壁際に見覚えのある白髪が目に映る。




「(べニ、ちゃんさん……?)」




そこには昨日図書館で赤龍の体調を見てくれたクラゲの姿があった。壁に寄りかかりながら他の囚人と同じく看守の言葉に耳を傾けてるようだが、時々口に手を当て肩を揺らしてる。




「(……笑ってる)」




何故笑っているのだろうか。





赤龍が脱獄したというのに、それを知って楽しんでいるようにも見える。その笑みが不気味に見えて鳥は思わず視線を逸らした。

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