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元婚約者、デブハゲ王太子(元)に元悪役令嬢は再会する。

「ルード、どうした?」


「ほら、こいつを連れて来てやったぞ、アイン」


「……へ? レイモンド王子? おいルード!」


 一応宮廷魔法使いのアインは私の知り合いだ。

 アイン・リッカー、今は32歳、伯爵令息だったが、魔法の腕をかわれ、今は宮廷魔法使い筆頭だ。

 お前やっぱり彼女に振られたか、今独りなんて……。


「ほら、レイ、帰って来たぞ」


「シアさんひどいです。沈黙の魔法なんて!」


「説明しろルード、どうして王子がここにいてというかお前が連れてくる!」


 長い銀の髪、金の瞳の美男子、私と同い年くらいに見えるが独身、魔法馬鹿の性格がたたって彼女に振られっぱなしだ。

 ばたばた暴れる王太子、ガキだな。


「こいつ、研究所まで一人でやってきた。おい、アイン、お前王族の管理どうなってるんだ!」


「管理って、僕の管轄じゃねーし」


「取りあえず、こいつなんとかしてくれ」


「……ルード、お前とうとう年下に……」


「転向はしとらん」


 私はポケットから今度はブランデーの瓶を取り出す。

 お、上物とにやりと笑うアイン、飲むか? と聞くと頷く。


「僕、絶対に諦めませんから!」


「なぁ、レイお前、王太子になったんだろ?」


「はい!」


「ならさ、もう少し考えろよ。私みたいなのを王太子妃なんぞできるわけなかろう?」


 金色の髪を掻きあげる。うんうんとアインも頷いているぞ、私は黒ズボンから今度はカードを取り出す。


「おい、アイン、この前の賭けの続きやるか?」


「あれは僕の勝ちだった!」


「無視するのやめてください!」


 暴れるのをやめてレイは今度はぷんすか膨れ出した。

 いや、というかそういえば研究所で可愛らしい男の子みたんですとかエリスのやつが言ってた記憶が。

 私の同僚だが、しかし見間違いだろとか笑い飛ばした私を呪いたい。

 絶対こいつだ。


「お前、数か月前から私のこと見てたとかあるか?」


「見てましたよ!」


「……アイン、管理体制をなんとかしろ」


「僕の管轄じゃない!」


 宮廷魔法使いの私室、実は来たのは初めてじゃない。

 あはは、ルード・エルとなってからは通ってはいた。

 容姿があまりにも変わりすぎて誰も気がつかないもんでつい。


 こいつ結構いい常連なんだよ。


「ルード、レイモンド王子と結婚するか? 別に止めないが」


「するわけないだろ馬鹿」


 実際、私は結婚なんぞ視野に入れとらん、研究に一生をささげる。

 私はふうとため息をつくと、剝れる子供を早く帰れと冷たく睨みつけた。


「僕、兄上は間違っていると思います。だから王太子妃に相応しいシアさんを僕の!」


「……どうするポーカーでもするかアイン?」


「いやさすがにそれは」


「じゃあそうだな」


 レイを無視して、私がカードを机に並べ出すと、絶対嫌ですと暴れるレイモンド。

 いやあ、私とて流石にこんなに簡単に王子が抜け出せる状態は駄目だと思う。

 予算が少ないと思っていたら、かなり赤字になってるんだな。衛兵もかなり減っていた。

 いや忙しくて半年ほど通ってなかったんだ。

 アインは研究所に最近割と来てたしな。

 一応、王族とはエリアが違うから全く会ってはいない。

 じゃないと一応通うのは躊躇するからな。


「そういえば、王太子妃の浪費で財政がかなり逼迫したのも廃太子の原因らしいよ」


「ふうん」


 私達がポーカーに興じていると、レイがちょこんと椅子に座りこちらを見ている。

 まるで子犬だな。


「諦めたか?」


「諦めません!」


 どうせすぐ諦める。私なんぞを王太子妃にしようなんて馬鹿いるまい。

 そう思ってポーカーをしていると扉が乱暴に開いて、久しぶりとも言える天敵のディーンが入ってきた。


 いやディーンか? ああ、禿げて腹も出ているがおもざしはな……。


「兄上!」


「おい、私はまだ王太子だ。レイモンド納得なんぞしてない!」


 ああ、うん……しつこいやつだな、そういえばそんなのだった。ちらっと私がディーンを見ると、こいつら誰だ? と聞いて来た。アインのことくらい覚えておけよ元王太子。


「えっと宮廷魔法使いのアインさんと、後……」


「よっ、久しぶり、元婚約者殿、私はアデリシアだよ」


「は?」


「ルード!」


「久しぶり、太って禿げたな。お前の父上そっくりだ」


 クスクスと私が笑ってカードを見せると、おい男がアデリシア? とか混乱している。

 驚きの表情の元婚約者に私はにやりと笑顔を返したのだった。

 しかし門番にレイのことを話したのが失敗だったか、かぎつけてこいつが来るとは……一応避けてたんだぞ?


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