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三賢者同盟VSアミステリア連合 招宴の裏で・・・編

東条みゆき…拓斗の幼馴染で剣道の達人、見た目は和風美人だが中身はじゃじゃ馬、戦闘により死亡したがレオの力でゾンビとして行動している、しかしマスターであるレオにも遠慮なしの態度で接している

ステファン・レオ…闇の龍装備を付けるダークドラグナイト、闇の者には絶対的な支配力を発揮し夜の闇でこそ一番力を発揮できる、しかしなぜかみゆきには頭が上がらない

ラインハルト・カナ・ロマーヌ(沢渡香奈)…白剣姫ホワイトソードプリンセスとよばれるアミステリア公国最強の美少女剣士であり軍の最高司令官、そして国民的英雄でもある、拓斗の妹

チャングイ将軍…アミステリア公国の猛将、若いころは”暴走獣”と呼ばれたほどの猪突猛進型の戦士でアミステリアの双璧といわれている一人、ゲルハート将軍とは何かと言い争う事が多いが仲は良い

ゲルハート将軍…アミステリア公国の知将、ナイトの称号を持っている程の手練れだが指揮官が自分で戦う事を良しとしない、計略やはかりごとが得意アミステリアの双璧といわれた一人

フォレスト・シャーロット…ローゼフォン公国の最高司令官兼国務大臣を務める、冷却系魔法が得意で世界三大賢者の一人”氷壁の魔女”の異名があるが本人はそう呼ばれることを凄く嫌っている

ローゼフォン・ソレリア・フローラ…ローゼフォン公国の女王、歳も近い事からシャーロットとは仲が良く二人とも美人である事から”ローゼフォンの双華”と呼ばれている

リチャード・ハウゼン(ジェームズ・マクシミリアン)…世界の魔法使いのトップである”世界三大賢者”の一人で”スタネールの大賢者”と呼ばれている。

鳴沢栄治…脳科学の権威でワールドファンタジアの制作&管理をおこなっていた会社の創設者、この世界のデータはほとんど頭に入っている

ジェームズ・ハワード…第64代アメリカ合衆国大統領

コンラート・ヴィ・リードヴィッヒ…スタネール共和国の第一王子で次期国王、精鋭騎士団”烈風の牙”のリーダー

須賀之清長…ジパングの摂政を務める陰陽師のトップ、”史上最強の陰陽師”と呼ばれていてハウゼン、シャーロットと同じ”世界三大賢者”の一人


アミステリア側とスタネール側の会合はフローラ王女の気転により事なきを経て終結した、一時は両陣営による全面戦争にまで発展する寸前までいった為、そこにいた全員に安堵の空気が漂っていた、しかしハウゼン達にとっては最悪の結果にはならなかったというだけであり、当初の目的は果たせなかった、それ故に安易に喜ぶこともできず徒労感と虚脱感に苛まれていたのだ、そして進行役も兼ねていた香奈が挨拶と共に会合を締めくくった

「皆様お疲れ様でした、この後ささやかではありますが招宴の用意がありますのでそちらでお楽しみください、招宴は二時間後に開始いたします、各自お部屋を用意してありますので招宴開始までの間そちらでおくつろぎください、本当にお疲れ様でした」

香奈の締めの挨拶と案内を皮切りに皆席を立ちぞろぞろと会議室を出て行く、歩きながらも皆口々に“良かった、良かった”と胸を撫で下ろしていた様子であった、そんな和やかな雰囲気の中でほとんどの人間が会議室を出て行くと、つい先程まで熱気を帯びた議論が繰り広げられた会議室には一転して閑散とした雰囲気が漂っていた、ほぼ全員会議室より退場していったが、未だに椅子に座ったまま動かない人物達がいた、ハウゼン、清長、シャーロットの”世界三大賢者”と呼ばれる三人である、ハウゼンは天井を見上げ焦点の合わない視線を向けていて何かを考えているのか?単に呆けているのか?わからない様子であった、清長は目を閉じ腕を組みながらピクリとも動かない、シャーロットに至ってはうなだれながらうつむき誰が見てもわかるほど落ち込んでいた、そんなシャーロットの様子にようやく気付いたハウゼンが思わず声をかける

「シャーロット大丈夫ですか?随分へこんでいるようですが・・・」

「うん、まあね・・・今日は本当に自分が嫌になったわ・・・」

元気の無い声で返答するシャーロットにハウゼンはかける言葉が無かった

『確かに・・・我々の当初の思惑は外れるし自分より年下の女性相手に有利なはずの議論で抑え込むことができなかったですからね、ドラグナイトの力を知り改めて己の力よりもはるかに強大な存在がある事を思い知らされた挙句、最後にはフローラ女王から叱責に近い注意を受けてしまったわけですからねぇ・・・本来守ろうとしていた者から逆に守られたというのもこたえたのでしょう・・・自己嫌悪に陥るのも無理からぬことではありますけど・・・』

するとそこまでジッとして動かなかった清長が口を開いた

「なあマクシミリアン、あの鳴沢という男の言う事は本当なのか!?ドラグナイトの伝説は知っていたが所詮はおとぎ話程度と考えていたのだが・・・」

「残念ながら真実です、正直いくらドラグナイトが強いと言っても我々三人がかりで倒せない者なぞいる訳がないと考えていましたから、私自身も少なからずショックを受けていますよ・・・」

「そうか・・・世の中は広いな、私自身少し思い上がっていたのかもしれんな」

「柄にもなく殊勝な事を言いますね!?あなたらしくも無い、フォローする訳ではありませんが一言言っておきますとあなたとあのレオという青年にそれほどの差がある訳ではありません、ドラグナイトという装備が特別なだけなのです、そこを勘違いしないように」

清長は思わずフッと笑うと

「まさか貴様から慰められるとはな、この私も落ちたものだ・・・」

その言葉を聞くか聞かないかのタイミングで席を立つハウゼン

「私は招宴の時間まであちらに用意された部屋に戻っています、あなた方はどうしますか?」

その言葉に呼応するかのようにスッと立ち上がる清長

「そうだな、私も戻るとしよう、で?お前はどうするのだ魔女?」

「えっ!?うん・・・私はもう少しここにいるわ、先に言ってて頂戴」

いつもなら清長の”魔女”という言葉に猛烈に反論するはずなのだが力なく返事するだけのシャーロット、そんな彼女を見て軽くため息をつくハウゼン

「わかりました、あまり落ち込んでいてもしょうがありませんよ、招宴会ではあなたも出席しない訳にはいかないでしょうから、早めに部屋で休むことをお勧めします」

「うん、わかってる・・・」

目線を下に向けたまま返事するシャーロット、これ以上はかける言葉も無いので仕方なく彼女を一人残して部屋を出る二人

「酷い落ち込みぶりだな、ロマーヌとかいう小娘を論破できなかったことがそれほどショックだったのか?それともドラグナイトの強さに衝撃を受けての事か?いずれにしても落ち込みすぎだろ、私の”魔女”という言葉にすら反応が無いとは・・・」

少し笑いながら首を振るハウゼン

「いえ、あれはそのどちらでもないでしょう、彼女があれ程落ち込んでいるのはフローラ様に言われた事がショックだったのでしょう・・・」

「しかしあれは話の流れで仕方なく言った事であって、そこまで怒っていた訳ではないであろうに、寧ろフローラ殿の気転によって我々は救われたと言っても良いほどであろう、そんな事もわからん程馬鹿でもあるまいに・・・」

「彼女もちゃんとわかっていますよ、それでもね・・・清長、もしあなたが正成様から”黙れ‼お前には失望したぞ!?”と言われたらどう思いますか?」

清長はビクッと反応ししばらく言葉が出なかった

「そうか、そういう事か!?」

「はい、そういうことです、しばらくそっとしておいてあげましょう・・・」

2人はシャーロットを置いて会議室を出るとそれぞれ用意された部屋に入っていった、部屋に入ったハウゼンは部屋の中を見渡すと非常に品のいい家具や装飾品で彩られていた、決して派手では無いが落ち着いた雰囲気の部屋に感心するハウゼン、もちろん盗聴の様な無粋な仕掛けがしてある様子は無かった

「なるほど、この部屋はまるでアミステリア公国という国をあらわしているようですね・・・」

そんな独り言をつぶやくと一旦椅子に座ることも無くすぐさま部屋を出た、ハウゼンはそのままフローラ王女の部屋に向かった、廊下の角を曲がると部屋の前で警備兵に話しかけている人影が目に入った

「おや?清長、あなたも来たのですか!?」

「なんだ貴様もか、考えている事は同じの様だな」

ハウゼンと清長という大物2人の訪問に緊張する警備兵、そんな警備兵にすぐさま話しかけた

「申し訳ありませんがフローラ様に面会したいのです、マクシミリアンと清長が来たとお伝えください」

「はっ、かしこまりました、少々お待ちください」

警備兵が部屋のドアをノックして中のフローラに話しかけようとした時、ガチャリと部屋のドアが空いた、それは部屋の外からの話声が聞こえたフローラが不思議に思いドアを開けて出て来たのだ

「あの・・・何かあったのですか?まぁこれはマクシミリアン様と清長様、お二人揃ってどうかなされたのですか?それにシャーロットは一緒ではないのですか?」

部屋のドアから顔を出しシャーロットの姿を探してキョロキョロするフローラ

「はい、ご休憩の所を申し訳ありません、実は先程の件でシャーロットがひどく落ち込んでしまいまして・・・いまだに会議室でふさぎ込んでいるのですよ」

その報告に驚くフローラ

「まぁそうなんですか!?普段は何があってもすぐ前向きに開き直るシャーロットが・・・会談が思惑通りにいかなかったことがそんなにショックだったのでしょうか?」

「いや違う、あの馬鹿が落ち込んでいるのはあなたに叱責された事が余程こたえているのだ」

「えっ!?あれは叱責では無く話の流れで仕方なく・・・本当なんですか?」

フローラの問いにうなづくハウゼンと清長

「彼女の消沈を慰めてあげられるのはフローラ様だけと思いこうして参上したまでです」

「あの馬鹿がずっと落ち込んでいるとこの後にも支障をきたすからな、何とかしてほしい」

そんな二人の言葉に思わず微笑むフローラ

「シャーロットは本当にいい友人を持ちましたね・・・わかりました私がシャーロットに話します、お心遣い感謝します」

そう言うとフローラは深々と頭を下げた

「あいつとは友人などではない‼単なる同盟国の戦力として・・・」

テレながら慌てて取り繕う清長、しかし取り乱すその態度こそ寧ろ滑稽でフローラのいう事が図星である事を証明してしまっていた、そんな清長の右肩にポンと手を載せるハウゼン

「今更遅いですよ清長、もうバレバレです」

「なっ!?貴様まで、私を侮辱すると許さんぞ‼」

そんなやり取りを唖然とした顔で見つめる警備兵、そしてクスクス笑うフローラだった


フローラを護衛がてら会議室までついて行ったハウゼンと清長、会議室の前に着くとそんな二人に対してフローラが無言でぺこりと頭を下げる”もう一人で大丈夫ですよ”といわんばかりのその態度にハウゼンは軽くうなづき清長と共にその場を去った、清長は”少し外の空気を吸ってくる”と言って兵に案内されながら城内の中庭に向かった、今度こそ部屋に戻ろうと一人廊下を歩いていたハウゼンは前方に見覚えのある人物を見つけた、それはキシェロの代表として一緒に来ているバレンシアという男である

「バレンシア殿、こんな所でどうなされたのですか?」

突然声をかけられ驚いた様子のバレンシア

「これはマクシミリアン殿、いえ招宴会まで時間がありましたので少し中庭でも歩こうかと思って部屋を出たのですが、少し迷ってしまいまして・・・いやはやお恥ずかしい」

「そうですか、中庭でしたらそこの角を曲がって階段を降りれば行けるみたいですよ、今ちょうど清長もいるはずです」

「そうなんですか!?ありがとうございます、では」

軽く頭を下げそそくさと足早に立ち去るバレンシア、ハウゼンもふと”私も中庭に行ってみようか!?”とも思ったが清長がいると気が休まらないかも?という可能性を感じたので当初の予定通り部屋に戻ることにした


アミステリア側では招宴の用意の為に城内はてんやわんやの大忙しであった、料理や式場の準備はもちろんの事、席の配置や演奏の内容や順番、衣装の手配に至るまでやる事は山ほどあった、なにせこの会談は二日前に決まった事である、本来国賓級の招待客となると何日も前から準備が必要であり相手の好みや習慣的にタブーな物など色々な下調べもしなければならない、それを全てすっ飛ばしての招宴なのだから当然である、料理人や会場の準備の人間から色々な質問や要望が次々と香奈の元に寄せられる、香奈はそれをテキパキとこなし的確な指示を出していく、香奈と拓斗の両親はイギリス大使館に務めている外交官である、そんな事もあって国賓級の人物を迎えるパーティーなどには何度か参加したことがあった香奈はその記憶を必死に思い出しながら指示を出していく

『こんなことならもっとパーティーに出ればよかったな、まさか自分がホスト側に回るなんて思ってもいなかったし・・・』

そんな時ドアを叩く音がして外から聞き覚えのある声が聞こえた

「香奈ちゃん、みゆきだけど入っていい?」

「みゆきさん!?はいどうぞ」

ガチャリと扉を開けみゆきが部屋に入ると正面の机の上には大量の書類が山積みになっていてせわしなく種類に書き込みながら隣の兵に指示を出している香奈の姿が見えた

「うげっ!?凄いね香奈ちゃん、私にもできる事無いかな?って思って来てみたんだけど・・・邪魔なだけだったかな?ゴメンねもう退散するわ頑張ってね・・・」

そそくさと部屋を出て行こうとするみゆきを慌てて呼び止める香奈

「待ってください‼みゆきさんにどうしても手伝って欲しい事があるんです‼」

「えっ!?そうなの?私にできることならなんでもするからさ」

香奈に頼られて嬉しそうに答えるみゆきのその言葉に香奈の目がキラリと光った

「今なんでもするって言ってくれましたよね?ちょうどよかったです、みゆきさんにどう頼もうかと考えていたところでしたので・・・」

その香奈の言葉に少したじろぎやや後悔し始めたみゆき

「えっ!?いやその・・・言ったけどさ、一体私に何をさせるつもりなの?」

「安心してください、そんな大層なことではないですし、これはみゆきさんにしかできない事なんですよ」

その言葉が余計みゆきを不安にさせた、昔から香奈は頭も要領も良く、みゆきにとってはやりたくない事までやらされている事を思い出したのだ、もちろんそれは香奈がみゆきのためを思っての事なのだがみゆきにしてみれば”大きなお世話”といった事も少なく無かった、しかし香奈の悪気のない性格からくる頼みにはいつも弱くて”しょうがないなぁ・・・”で進んでしまっていた、それを思い出し少し表情が歪むみゆき

「そんなに構えないでくださいよみゆきさん、全然大したことじゃないんですから」

「わかったわよ、で?私は何をすればいいの?」

「それはですねぇ・・・」

香奈の頼みの内容を聞き、やはり少し後悔したみゆきであった。


世界の情勢を揺るがしかねない会談が終わってから二時間が過ぎた、アミステリア側の準備もギリギリ間に合い華やかな招宴が始まるところである、体調を崩し会談を欠席していたアミステリア国王サラボルンが招宴の開始と挨拶の為に皆の前に立ち会場の人々に語りかけた

「皆様、今回は色々ありましたがここにいる全ての国が手を携えて共に歩める日が来る事を信じて明日を迎えましょう、それでは皆様ささやかではありますが招宴をお楽しみください‼」

その声に呼応して大いに盛り上がる会場、昼の会談では両陣営による全面戦争の一歩手前までいったのだからこの喜びは心からのモノであった、そんな喜ぶ人たちを遠巻きに見ながら壁際でグラス片手に見つめるハウゼンと清長

「我々の思惑とは全く違うモノとなったが、結果的にはこれでよかったのかもしれんな・・・」

「確かにそうですねぇ、まだあちら側と共闘するという所まではいきませんでしたが、そのきっかけとしては十分です、我らがあれこれ小賢しい考えを振りかざすよりもフローラ様の一存に救われましたからね」

2人がそんな事を話していると会場がさらに”ワッ”と盛り上がった、フローラ女王とシャーロットが満を持して会場に姿を現したのだ、ピンクのドレスに身を包んだフローラと赤いドレスを纏ったシャーロット、その姿は”ローゼフォンの双華”の名にふさわしい美しさであり、その華やかさは会場を一層きらびやかなものへと変えていった、遠巻きに見とれる者もいれば我先にと近づいて行く者もいて、それはアミステリア、スタネールといった両陣営の垣根を越えた光景だった

「良くわからんが女は得だな、あんなじゃじゃ馬魔女でも黙ってドレスを着ていれば皆からチヤホヤされるのだから・・・アイツの恐ろしさを知らない訳でもないだろうに」

清長が半ばあきれ顔でつぶやく

「以前にも言いましたが男という人種はいつの時代も美しい女性には弱いものですよ」

そんな二人の姿を見つけたシャーロットが次々と近づいて来る人々をやんわりと断りながらハウゼンと清長の元に近づいて来た

「アンタ達こんなとこにいたの?しかし二人ともこんな華やかなパーティー会場でも本当に冴えないわね、その辛気臭い顔何とかならないの?それより見てよこのドレス、向こうが用意してくれたものなんだけどさ私すっかり気に入っちゃって、フローラのドレスも凄く素敵でしょ!?ローゼフォンに帰る時にこのドレス買い取れないか聞いてみるつもりなのよ、あなた達は精々場の雰囲気を壊さないよう気を付けなさいよ、じゃあね」

好きな事を言うだけ言って嬉しそうに戻って行くシャーロット、目を閉じため息をつく清長と目を細め半ばあきれ顔でシャーロットの後姿を見つめるハウゼン

「あの馬鹿はさっきまで落ち込んでいたはずだよな?我々の気遣いは何だったのだ!?」

「逆にあれが彼女の気遣いなんだと思いますよ、彼女もあなたと同じで素直ではないですからねぇ・・・」

「今のあの態度でか?本当にそう思うのか?」

「う~ん・・・おそらくですが・・・」

2人がそんな会話をしている時フローラがハウゼンと清長に気づき微笑みながら会釈をした、フローラが二人に対して感謝の意を示したのだ、その行為に少し救われた気がした二人、そして清長が皿を手に取ると

「私は少し料理を見てくる、最近正成様が他国の料理に興味津々でな美味い物ならばそのレシピを聞いて正成様に食べていただきたいのだ⁉︎」

そう言うと皿を片手に料理の方に歩いて行って物色し始める清長、その姿はどことなく楽しそうだった

『シャーロットも清長も主君の事となると人が変りますねぇ・・・』

ハウゼンはそんな二人が少しうらやましく感じた、そんな清長と入れ替わる様にハワードと鳴沢の二人がハウゼンに気づき声をかけながら近づいて來た

「ハウゼン君こんな所にいたのか!?ところで私も大統領時代には仕事柄様々なパーティーに参加したがこのパーティーはどことなく地球のモノに近いと思うのだがどう思うかね?」

「はい大統領、私もそう思いますよ、これはおそらくロマーヌ殿の指示でしょう、彼女は地球の人のようですからね・・・」

ハウゼンのその言葉に驚きを隠せないハワード

「それは本当かね!?じゃあこの国は地球人が軍と政治の中心にいるという事なのかね?」

「はい、そういう事になりますね、彼女が地球人なのはほぼ間違いないと思いますよ・・・」

ハウゼンとハワードがそんな会話をしていた時、衣装合わせの為少し遅れていた香奈とみゆきが会場入りするところであった

「ちょっと香奈ちゃん・・・本当にこの格好で出るの?」

「はい、良く似合っていますよみゆきさん‼」

「そうかなぁ・・・私普段Tシャツにジーパンじゃない、こういうの絶対似合わないって・・・」

「そんなことありませんよ、みゆきさんは黙ってれば本当に美人なんですから」

「ちょっと香奈ちゃん、今さりげなく何か言わなかった?」

「あっ!?いえその・・・さあ行きますよ‼」

会場の扉が開き香奈とみゆきが入って来た、すると会場の人々は感嘆の声と驚きの声が入り交じりちょっとした騒ぎになった

「何だあの衣装は?今まで見たことも無いぞ!?」

「あれはアミステリアの民族衣装なのか?しかし・・・」

「いや我がアミステリアでもあんな服は見た事がない、というよりロマーヌ様があんな服を着ているのも初めて見たぞ・・・しかしなんと美しい・・・」

香奈とみゆきは和装の着物で入って来たのだ、香奈はイメージカラーである白の生地を基調とし所々に花をあしらったデザイン、みゆきは薄い緑の生地を基調とし鳥と花が入っているデザインであった、今まで和服など見たことも無い人間が多かった為その衝撃は凄まじくインパクトなら”ローゼフォンの双華”を遥かに凌いだ、それを見たハワードが思わず両手を上げ

「オー、ビューティフォー ジャパニーズキモノ‼」

「あれがキモノと呼ばれる物ですか!?生で見るのは初めてですが・・・」

その時鳴沢が思わず口走った

「あれは”カガユーゼン”じゃ!?まさかこんな所でお目にかかれるとは・・・」

「何ですか博士、その”カガユーゼン”というのは?」

鳴沢は感慨深そうに語りはじめた

「あの”カガユーゼン”は実は装備品の一つでな、以前に期間限定の課金アイテムとして限定発売した物なのじゃ・・・」

「装備品!?あれがですか?そんなに凄いモノなのですか?」

ハウゼンの質問に笑いながら首を振る鳴沢

「いや装備品としてはそれほどでもない、というより防御レベルとしてはかなり低い物なんじゃ、だがデザインや材質にかなりこだわっていて装備レベルの割に値段が高価でな完全に趣味の世界の物じゃ、それゆえに全く売れなかった・・・ワシがどうしても作って欲しいと頼んだものだっただけに、全然売れなかったときは開発班にかなり文句を言われたもんじゃ・・・懐かしいのぅ、しかしこうしてあの二人の姿を見ると作ってよかったと心から思えるぞい‼」

うんうんと満足げにうなづく鳴沢、少し興奮気味のハワードが

「ハウゼン君、鳴沢博士、彼女たちに会いに行きましょう、さあ早く‼」

ハワードに促されるように香奈とみゆきの元へ訪れる三人、2人の周りには人だかりができていたがハウゼンの姿を見ると皆道を空けて引き下がった、今回の会談において両陣営のリーダー格である二人の対面に皆が遠慮したのだ、しかしそんな空気を読むことも無くまずはハワードが香奈に握手を求めた

「初めましてミスロマーヌ、とても素敵な衣装ですね!?」

「ありがとうございますミスタープレジデント、私もお会いできて大変光栄です」

その言葉にさらにテンションが上がるハワード

「オー、私の事を知っているとは!?本当に地球の方なのですね?見たところ東洋人のようですがどちらの方ですか?中国ですか?」

「いえ私は日本人ですよ、ハワード大統領」

「何と!?鳴沢博士と同じ日本人ですか、我がアメリカの同盟国じゃないか!?そうかそうか、今後も是非仲良くしていきましょう‼」

香奈の両手を強く握り嬉しそうに何度も握手している手を動かすハワード、そして鳴沢が話しかける

「初めまして、鳴沢英治と申します、まさかここで”カガユーゼン”を見る事ができるとは、しかもあなた達の様な美しい女性に着けてもらえると開発冥利に尽きます、ありがとう」

「いえこちらこそ、鳴沢博士の御高名は常々うかがっております、こうしてお会いできた事がとても光栄です、我々人類の救世主ともいえるお二人には本来感謝しなければいけないのですが、立場上色々失礼な事も申しまして本当に申し訳ありません」

そういうと頭を下げる香奈、そんな香奈を見て逆に恐縮するハワードと鳴沢

「いやいや顔を上げてくだされ、そちらの立場よくわかっているつもりです、これを機会にお互い仲良くなっていきたいものですな」

「本当に・・・」

その後ハウゼンが香奈に握手を求めた

「この度は色々ありましたがお互い協力していきたいと思っている事は本心です、なるべく早いうちに実現できるよう努力しましょう、私もドラグナイトと戦うのはごめんですから」

「はい、是非・・・もしやマクシミリアン様も地球の方なのですか?」

「はい、本名はリチャード・ハウゼンといいます、NASAに在籍していたアメリカ人です」

「まぁそうなんですか!?地球人同士争っている場合ではないですもんね、また近い内にお会いできますよう努力します、もちろん戦場では無く同盟の為の会談で」

まさかこの時の香奈の言葉がフラグとなってこの二人が戦場で会いまみえる事になるとはこの時点では予測できる者はいなかった、香奈は三人にみゆきを紹介した、アメリカ大統領と対面する時が来るとは思いもしていなかったみゆきは今更ながら緊張して手が震えるほどだった、逆にそれが嬉しく感じたハワードは終始上機嫌だった、その後ハワード達が香奈とみゆきから離れるとそれを見計らったように複数の人たちが二人に群がる様に集まって来る、香奈とみゆきの美しさとその来ている着物の物珍しさに寄って来た男性から嵐の様な質問とダンスへの誘いが止む事は無かった、そんな二人の様子をシャーロットとフローラが見つめていた

「ねえフローラ、パーティーで私達が主役を取られるなんて初めてのことじゃない?」

「そうね、いつもは煩わしさすら感じていたけど、こうなると少しさみしいわね、人間って勝手なものね」

「それはそうとあの変わった服一度来てみたいと思わないフローラ?あなたならきっと似合うわよ!?」

「その気持ちは無くは無いけど・・・そんな簡単に借りられるものじゃないでしょ!?」

「聞いてみりゃいいじゃないダメもとでさ、私が聞いてあげるから、ねっいいでしょ?」

『シャーロットすっかり元気になったわね・・・やっぱりシャーロットはこうじゃないとね』

そんな事を考えながらまたクスリと笑うフローラ、その謎の笑いに首を傾げるシャーロットだった

次々と来る複数の男性からのダンスの誘いにやや困惑気味の香奈とみゆき、そんな光景を遠巻きに見ていたコンラートが後ろからの気配に気づき振り向く、するとそこにはハウゼンと清長がいた

「コンラート、あなたの出番ですよ!?早くあそこに行って彼女たちをダンスに誘ってください」

「その通りだ、王子の誘いを断る女などいないだろうからな」

二人の意外な言葉に困惑するコンラート

「な、なにをいっているんですか!?私は武一辺倒の武骨者、女性とダンスなんてとても・・・」

「コンラートこれは外交の一種なのですよ、相手との距離を縮めるにせよ相手から情報を引き出すにせよ友好関係を築く事が非常に重要なのはわかりますよね?その役目にあなたほどの適任者はいません、ダンスにしてもレッスンは受けた事があるでしょ?何を躊躇しているのですか!?」

「確かにレッスンは受けた事がありますが実際女性と踊った事はありません、ましてや女性と距離を縮めるとか情報を引き出すとか私みたいなものにできるはずがないでしょう!?そういう事はお二人の方がお得意だと思いますが・・・」

その言葉にハウゼンと清長がお互いに顔を見つめ合いため息をつく、まずハウゼンが清長を指さし

「あのですね、こんな胡散臭いおじさんと踊りたいと思う女性がいると思いますか?常識で考えてください」

今度は清長がハウゼンを指さすと

「あのな、こんな陰気くさいオッサンとダンスなんて死んでも嫌だというのが女性という生き物だ、貴様はもっと女性心理というモノを勉強した方がいいな」

お互いそう言い合った後、ジッと睨み合うハウゼンと清長

「客観的に見ても私はあなたよりは女性ウケすると思いますが」

「馬鹿を申すな、どう考えても私の方がマシだ、貴様は自分の顔面を生物学的に判断できないようだな、もう少し正常な美的感覚というモノを身につけた方がよさそうだ」

「ほぅあなたにそのような事を言われるとは・・・なんでしたら私が今からあなたの顔面を美しく彩ってあげましょうか?真っ赤な色で・・・」

「面白い、なんなら私が貴様のその陰気くさい顔面をユニークなモノへと変えてやろうか?なぁに貴様との仲だ特別無料でやってあげても良いぞ!?」

段々険悪になっていく二人を見て思わず叫ぶコンラート

「わかった、わかりましたから言い争いは止めてください‼私が行きますから!?」

コンラートを仕向けるのに成功したのは当初の予定通りだが何か釈然としないハウゼンと清長、コンラートは一度深くため息をつき心を決めて香奈とみゆきの所に向かおうとした、その時コンラートの肩に手を載せ引き留めるハウゼン、コンラートが何事かと振り向くと真剣な顔でハウゼンが問いかけた

「コンラート、あなたは私と清長どっちが女性ウケすると思いますか?」


コンラートは足取り重く香奈とみゆきに近づく為会場の中央に向かう、相変わらずの人だかりの中かき分けるように近づくとちょうどみゆきの前に出る形となった、みゆきもコンラートの存在に気づきいきなり目の前に現れた事にやや驚いていた、それゆえにお互いの目線が合ってしまった為、今更もう逃げ出す事ができないと悟ったコンラートは思い切って切り出した

「私と一曲踊っていただけないでしょうか?」

一礼をして丁寧に誘いをかけるコンラート、知らない人から見たらそれはまるで普段から女性を扱いなれているかのような仕草にも見えた、コンラートがスタネールの第一王子であることはこの会場にいる誰もが知っている、それゆえにみゆきがどういう返事をするのか皆の注目が集まった、なぜならみゆきはそれまで全ての人の誘いを断り続けて来たからである、コンラートもそれをずっと見ていた為知っていたのだ

『どうせ私も断られる、誘って断られたのならあの二人にも言い訳が立つだろう・・・』

と考えていた、するとみゆきが少し考えた後に

「私でよければ」

と微笑みかけて来たのだ、会場は一斉にどよめいた、”さすがはスタネールの王子、女性の扱いも天下一品だ‼”などと的外れな事を叫ぶ輩も出たほどである、誘いを受けられたコンラートもみゆきに対して微笑み返すが内心は

『えっ、そんな嘘だろ!?俺女性と踊った事無いし・・・相手にも恥をかかせてしまうぞ⁉しかし今更止めませんか?とは言えないし・・・』

コンラートはすがる様な思いでハウゼンと清長をチラリと見ると二人は椅子に座りうなだれてドップリ落ち込んでいた、一体何があったのか?と思ったが今のコンラートにそれを確かめる術は無かった、実は先ほどコンラートに対しての”どちらが女性ウケすると思うか?”というハウゼンの質問に

”女性の気持ちは女性に聞くのが一番なんじゃないでしょうか?”

と当たり障りなくかわしたのだが、2人はその意見をまともに受け、よりにもよってシャーロットに聞いたのだった、返ってきた返事は”どっちも嫌、死んでも嫌”という辛辣なモノだった、しかもそれは全女性の総意であり二人がどれほど女性に嫌われるか!?という事を理論的に事細かく説明したのだ、そんな事があったとはつゆにも知らないコンラートは覚悟を決めてみゆきと踊る事を決意した

「さすがにこの格好でダンスは無理ね・・・チェンジ装備解除‼」

みゆきがそう言うとみゆきの姿が光に包まれる、再び現れた時には目にも鮮やかな緑色のドレスへと変わっていた、周りからは”おぉ~”という感嘆の声が上がる、その美しさにコンラートさえも少し見とれてしまっていた

「お待たせしました、さあ」

みゆきの差し出した手を受け取る様に握るコンラート、優雅な音楽が流れダンスが始まる、するとコンラートは自分が驚くほどスムーズに踊れたのだ

「あら?さすがに王子様、ダンスお上手ですね、相当色々な女性と踊り慣れていらっしゃるのかしら?」

「御冗談を、私は女性と踊るのは今日が初めてですよ、自分でも驚いているところです」

「へぇ~そうなんですか、実は私も男性と実戦で踊るのは初めてなんですよ!?」

「それにしてはお上手ですね、ダンスを習ったのはどうして?」

「ウチのおじいちゃ・・・剣の師匠の教えでして”ダンスと剣には通じるものがある”というモノで、だから少し習っていたんです」

「へぇ~それは!?私も父から同じことを言われました、まさか同じような境遇の人がいるとは!?何か嬉しく思います」

コンラートとみゆきのダンスは会場にいる皆の視線を釘付けにした、元々みゆきは美人でありその緑のドレスが優雅に舞う姿がとても美しかった、そしてコンラートはスタネール一の剣士であり長身でイケメン、そして正真正銘の王子様なのだ、その華やかな二人の踊りに魅了される観客達、一緒に踊っていたものさえもダンスを止めて見入る次第であった、しかしそんな周囲の思惑とは裏腹に二人の会話はあまり優雅とは言えないものへとなっていく

「あの・・彼は来ていないのですか?」

「彼?あぁレオの事?あいつはこんな場には来ないわよ、今頃部屋で寝てるんじゃないかな?」

「そうですか・・・そう言えば昼間は失礼しました」

レオの不在にどことなくホッとしたような残念な様な複雑な表情を見せるコンラート

「別に気にしてないし、かまわないわよ・・・そういえばアンタ、レオの強さを一目で見抜いたわね!?一体どうしてわかったの?」

「私達の一族は相手の強さをある程度肌で感じる事ができるという能力を持っているんですよ・・・」

「へぇ~凄いわね、でもそんな事私に話しちゃってもいいの?」

「別に隠す程の事ではありません、ですからあなたが相当強いという事もわかるんですよ、できればこんなダンスじゃなくて剣士としてお相手したかったです」

「それは戦場でって事?」

「いえ、本気で戦えれば模擬戦でも何でもいいんです、でも真剣勝負を所望します、俺は王子様とか言われてますけど本当は単なる剣術馬鹿なんで・・・」

「そんな所も私と似てるのね、今度機会があればお相手仕りますわ、でも私が言うのもなんだけどレオとは戦わない方がいいわよ・・・」

コンラートの表情が険しいモノへと変わる

「はい、それは重々承知しています、彼には今まで味わった事の無いほどの強大な力と邪悪なモノを感じました・・・そして戦うとか目指すとかの次元じゃない事を悟りました・・・あれが伝説のドラグナイトですか、伝説は決して大袈裟じゃない・・・寧ろ伝説の方が控えめになっているのでは!?と思える程でしたよ・・・」

傍から見ていると二人のダンスは非常に優雅できらびやかなモノであったが会話の内容はそれとはかけ離れた色気の無いものだった、そんな二人のダンスを見ていてどんどん息苦しくなる者がいたフローラである、二人を見ているとどうしようもなく胸の中にモヤモヤしたものが湧き出してくるのだ、自分でもそれが何であるのか全く理解できなかった、踊りながらも何やら楽しげにそして真剣に話している二人を見てどうしようもなく嫌な気分になってしまうのだ、それがみゆきに対しての嫉妬だと分かったのはまだ先の事なのだが・・・

ダンスの音楽が終わり二人がポーズをとると会場は割れんばかりの歓声と拍手が起きた、誰もが二人を褒め称えた、そんなみゆきとコンラートが最後にお互い見つめ合って言葉を交わす

「今度は剣で」

「えぇその時は容赦しないわよ」

その後二人は本当に戦場で相対することになる、しかしそんな二人を見ていられなくなったフローラは会場を後にした、その事に気付いたシャーロットが後を追う

「どうしたのよフローラ!?気分でも悪いの?」

「わからない・・・わからないけど・・・」

なぜ自分が泣いているのかすらわからないフローラ、そんなフローラにしばらく寄り添い肩を抱きかかえるシャーロット

「大丈夫よ、あなたは必ず私が守るから・・・何があってもね」

「ありがとうシャーロット、ごめんなさいもう大丈夫だから・・・」

自分のふがいなさに腹を立て気持ちを奮い立たせるフローラ、するとその時もう一人会場から出てきた人物が目に入った香奈である、何か思い詰めた表情で会場を後にする香奈を見て不思議に思っているとそれを追う様に清長が出てきた

「ねえ清長、一体内があったの?」

「それは判らん、だからそれを確かめに行くんだ」

「確かめるってどういう事よ?」

「ホスト国でありその中心であるロマーヌが招宴の途中で抜け出す何てただ事じゃないはず、しかもあの思い詰めた表情、何かあったに違いない、だからこそ不可視化の術を使って真相を探るのだ」

「ちょっと待ってよ‼じゃあ自分を見えなくして後を付けるって事!?」

「そう言ったであろう、何か問題があるのか?」

「大有りよ‼相手は年頃の女性よ‼もし着替えとかだったらどうするのよ!?それにもしバレたら私達の陣営に”変態除き親父がいる”なんてことになるじゃない‼そんなの国際的な信用が無くなるなんてもんじゃないわ大恥よ大恥‼そんなの絶対ダメ‼」

「私がバレるようなヘマをするわけなかろう、それにあのような小娘の裸体なぞ全く興味ないからな問題ない」

「ダメったらダメ‼どうしてもというなら私が行くわよ、同じ女性だし・・・いいわね!?」

「そこまで言うならこの役目貴様に譲ろう、しかしこの手の術は私の方が得意であろうに」

「得意とか不得意とかの問題じゃじゃないわよ‼全く・・・私が行くから待ってなさいよ、いいわね‼」

シャーロットはそう言うと術を開始する、足元には白く光る魔法陣が発生し段々と光を増していく

「光の精霊偉大なるファルミューゼよその慈しみの思いをわが身に授けん、無垢で清らななる愛情をその身に注ぎ親愛なる心をもってわがその身の全てを捧げんことを”ヒューマリアル・ファーボルマン”‼」

呪文の詠唱が終わるとシャーロットの姿がその場に溶け込むようにスッと消え見えなくなった

「まぁシャーロットが消えた!?」

その術の効果に驚くフローラ

「じゃあ行って来い、ヘマするんじゃないぞ!?」

「わかってるわよ、うるさいわね‼」

何もない空間からシャーロットの声だけ聞こえる、その現象に再び驚くフローラ、それに対して清長が呆れたように忠告する

「言ったそばから馬鹿なのか貴様は!?その術は感情の起伏は厳禁なのだろうが‼」

「あっ!?そうだった・・・アンタが余計な事言うから、じゃあ行って来るわね」

姿を消しながら香奈の後を追うシャーロット

『でも実際は清長の言う通りなのよね、この呪文やたら魔力の消耗が激しい癖に感情が高ぶると術が解けるっていうデメリットがあるし・・・本当は清長の方がこういうの得意なんだろうけどさ、さすがにアイツに女性を覗き見させる訳にはいかないもんね・・・』

そんな事を心の中でつぶやきながら香奈の後を追うシャーロット、香奈は一人控室の様な所でベンチの様な椅子に腰かけぐったりしていた

『何か失敗でもしたのかしら?そんな風には見えなかったけど・・・あれ!?誰か来た‼』

姿を消しながらも再び息をひそめるシャーロット、ガチャリという音と共に扉が開き聞きなれた声が聞こえた

「大丈夫香奈ちゃん!?」

香奈の座っているベンチの後ろのドアからみゆきが入って来た、その声に振り向きながら驚く香奈

「えっ!?みゆきさん?どうしてここに!?」

微笑みながらゆっくり近づいて来るみゆき

「香奈ちゃんが相当辛そうだったからさ・・・心配でね!?」

「そんな、私は辛くなんか・・・」

香奈が返事をしている途中で座っている香奈を後ろから抱きしめるみゆき

「私の前でくらい無理しなくていいよ・・・良く頑張ったね、うん本当に良く頑張った」

その途端香奈の目から大量の涙がポロポロと零れ落ちる

「みゆき・・・ざん・・・わたし・・・わたしね・・・」

涙ながらに喋ろうとする香奈の口元に人差し指を当てて遮るみゆき

「香奈ちゃんが私の事”姉に等しい人”って言ってくれたでしょ、嬉しかったよ本当に・・・だから今ぐらい昔みたいに”みゆきねえちゃん”でいいよ」

その言葉に香奈の感情が爆発し大声を上げて泣き出した

「うあぁ~~んぁ~~みゆきねえちゃん~~あぁ~~~ん」

みゆきの胸にすがり付きながら泣きじゃくる香奈、それを優しく抱き締めて頭を撫でるみゆき

「みゆきねえちゃん~わたし・・・わたしね、誰にも死んでほしくなくて・・・どうしてもみんなを戦争に巻き込みたくなくて・・・でもわたしが間違えるとみんな死んじゃうかもしれないし・・・でもどうしていいか・・・わたしのせいでみんなが・・・みんないい人なの、みんなやさしいのよ・・・だから死なせたくないの、でもどんどんおかしなことになりそうで、私恐くて恐くて・・・でもそんな不安な態度は見せられないし・・・」

「うんわかってるよ、香奈ちゃんは頑張った、みんなわかっているよ・・・私がついてる、お姉ちゃんだけはいつでも香奈ちゃんの味方だから・・・」

二人のやり取りを見ていたシャーロットは感情を抑えるので必死だった、この二人の関係はどうしてもフローラとその姉シェリルを彷彿とさせてしまう、シェリルの最後の言葉”フローラをお願いねシャーロット”という言葉がシャーロットの頭の中を駆け巡る、しかし今は感情を抑えきれないと術が消滅してしまうのだ、慌てて部屋を出て二人から離れるシャーロット そこから少し離れた所で術が消滅し姿を現すと本人も気付いていなかったがその目には大量の涙があふれていた、そこに清長とフローラが近づいて来た

「まぁ一体どうしたのシャーロット!?そんなに涙を流して・・・いつもあなたにばかり辛い役目をさせている私がいけない・・・えっ!?」

ハンカチを差出し涙を拭いてあげようとしたフローラに思わず抱きつくシャーロット

「ど、どうしたのよシャーロット、一体何が・・・」

「ごめんなさいフローラ、本当にごめんなさい・・・あなたは必ず私が守るから、この命に代えても必ず・・・」

小柄なフローラが壊れてしまうのではないかと思えるくらい強く抱き締めるシャーロット、少し困惑するフローラだがその雰囲気で理解した、姉のシェリルが死んでからというものシャーロットは異常なまでにフローラの事を心配するようになった、成り行きとはいえシェリルを殺してしまったという罪悪感でシェリルの遺言がまるで呪詛のようにシャーロットを苦しめている事をフローラはずっと心苦しく思っていたのだ、フローラは力いっぱいシャーロットの腕を引き離す、涙でぐちゃぐちゃになっているシャーロットの顔を両手でつかむと自分の顔の目の前に近づけた

「いいですかシャーロットこれから私の言う事を良く聞きなさい、いいですか!?お姉さまでは無く私の言う事を聞いてください、あなたが一番に考える事はまずローゼフォンという国の事、その次が自分の事、私の事はその次でいいです、わかりましたね!?」

「嫌よ、私があなたを守るのよ・・・シェリル様に頼まれたのよ、私の責任なの・・・だからお願い、そんな事言わないでフローラ」

「ダメです‼あなたは私の言う事とお姉さまの言う事どちらが大事なのですか!?」

その質問には答えず涙を流しながら首を振り続けるシャーロット

「私があなたをこれほど苦しめていたのですね・・・本当にごめんなさい、でもこのままだとあなたが壊れてしまいます、あなたは私にとってかけがえのない人なんです・・・ならばこうしましょう、もしあなたが死んだら私も死にます、いいですね?これはローゼフォン女王としての宣言です絶対に覆しませんよ、あなたも私が頑固なのは知っていますよね?私を助けたいのなら自分の心配をしてくださいシャーロット、私だってあなたの為に命を賭けたいんです、でもありがとうシャーロット、私はあなたの事が大好きですよ・・・」

そう言うとニコリと微笑むフローラ、フローラの言葉を聞き何もかも力尽きてぐったりとするシャーロット、そしてフローラの言葉に小さくうなづいた、横で黙って見守っていた清長もとりあえず一安心したのか、そそくさと香奈逹のいる部屋に向かおうとした、その時うなだれて下を向きながらも不意に清長の腕を掴んで制止するシャーロット

「お願い、二人だけにさせてあげて」

絞り出すようなか細い声でお願いするシャーロット、しかしその清長の腕を掴んでいる手には今の状態からは考えられないほどの力と意思を感じた、清長は軽いため息をつきシャーロットをジッと見つめて

「わかった、どうやら私の取り越し苦労だったようだしな貴様の言う通りにしよう」

「ありがとう・・・」

シャーロットはボソリとつぶやいた、その事にとても驚いた清長、シャーロットからお礼を言われるなんて初めての事である、というよりこの先もおそらくないであろうと思ったからだであった。


しばらく泣いていた香奈がようやく落ち着くつとみゆきがベンチに座り香奈をひざまくらして頭を撫でながら考えていた

『そりゃあ16歳で国の存亡とか国民の生命とか背負わされたんだもんね・・・本来なら学校帰りに友達とお茶でもしながらキャッキャウフフしてる年齢なんだし・・・歳なら私も大差ないけどさ・・・』

そんな事を考えている時ふと香奈が顔を上げみゆきを見つめた

「なあに香奈ちゃん?」

「あのさぁみゆきねえちゃん、今からお兄ちゃんの彼女になるって事は無いの?」

あまりに予想外でぶっ飛んだ質問に動揺するみゆき

「な、何を言いだすのよあんたは!?そんなことある訳ないでしょ!?何でそんな事聞くの?」

残念そうにスネた顔を見せる香奈

「だってさ、そうなればみゆきねえちゃんが私の本当のお姉ちゃんになってくれる可能性も出てくるじゃない・・・」

理由を聞きクスリと笑うと優しく答えるみゆき

「それはダメだよ、今の拓斗の彼女はね私の親友なの、凄くかわいくて凄くいい子なのよ、会えばきっと香奈ちゃんも気に入ると思うわ」

「ちぇっ!?つまんないの・・・じゃあさみゆきねえちゃんが私をお嫁にもらってよ‼それならいいでしょ!?」

「なに馬鹿な事言ってるのこの子は、あなたにもきっと素晴らしい人が現れるわよ」

「うん、でもね今は恋とか彼氏とかそんな事言ってる場合じゃないのよ、必ずアミステリアの人たちを守ってみせる、そしてこの世界で一番の剣士になるわ、見ててねみゆきねえちゃん‼」

「香奈ちゃん、あなたそれを私の前で言うの?」

「うん、みゆきねえちゃんに聞いて欲しかったの、今度こそ必ずみゆきねえちゃんに勝つからね」

「でもそれは譲れないわね、あなたには一生負けてあげないんだから!?」

「えぇ~今日は優しくしてくれるんじゃなかったの?」

「調子に乗るな、剣以外の事なら聞いてあげるから」

そんな二人のやり取りの中、香奈を心配して来たチャングイとゲルハートがドアの間からひょっこり顔を出して様子を見に来たのだ、その事に香奈は気づかなかったがみゆきは二人に気づき咄嗟に人差し指を口に当て”静かに”という仕草をすると”お願いだから出て行ってください”というジェスチャーをした、二人は顔を見合わせうなづくとそ~っと音を立てず出て行った、国を預かる将軍二人が香奈の為にそんな事までしてくれてる事に嬉しくなるみゆき

『本当に愛されているんだな香奈ちゃんは、ちょっと焼けちゃうね』

そんな時外から”ドーン”という大きな音が聞こえた、何やら爆発音の様である、その瞬間今までの顔つきから一変した香奈がスクッと立ち上がり足早に部屋を出て行く

「何ですか今の音は!?」

近くの兵がとっさに答える

「わかりませんが東門の方で爆発があったようです」

「すぐさま被害状況を調べて知らせてください、念のため東門付近の市民を安全な場所に誘導してください‼各国の来賓の皆様とサラボルン陛下には大聖堂に避難するよう案内を‼チャングイ将軍とゲルハート将軍はいませんか!?各隊は不審な者を見かけたらすぐに私に報告を、この混乱は他国が侵攻する為の搖動という可能性もあります各方面敵影を見つけたらすぐに私に報告ください‼それから・・・」

大混乱の中次々と指示を出す香奈、そんな姿を優しく見つめるみゆきが思わずつぶやく

「かなわないなぁ香奈ちゃんには、本当に何でもできるんだから・・・せめて剣だけは勝たないとね」


香奈達の対処も虚しくお祝いムードが一変してパニックのような混乱に変わる、まさかの事態に慌てて避難する人々だったがそんな中で避難する人々とは反対の方向に進む人物がいた、人の流れに逆らい人混みを掻き分けながら進んで行くのはキシェロ公国の代表者であるバレンシアだった、バレンシアはようやく人が少ない場所まで移動すると地下へと繋がる階段へと向かった、地下室へ向かう為にはその前に大きな扉があり、その扉には大きな南京錠にも似た物理的な鍵と魔法処理によって封印されている結界で二重に守られていた

「こんな旧式の鍵なぞ俺にかかればなんのことはない・・・」

バレンシアは懐から二本の棒状の道具を取り出すと鍵穴に差し込みカチャカチャと動かす、すると2分ぐらいで”ガチャ”という音と共に鍵が開いた、バレンシアはニヤリと笑いその外れた鍵を一度手に取ってから通路の隅に放り投げた

「まぁここまではいつもの事だ、さて・・・」

扉には魔法による結界が張られており強引に物理的な破壊をおこなうと逆劇を喰らう仕組みである、結界の中心には魔法陣の刻まれた宝石、いわゆる魔法石が埋め込まれていて決められた呪文を唱えないと絶対に開かない仕組みである、バレンシアは再び懐を探ると一枚の紙を取り出した、それは縦20㎝、横10㎝ほどの縦長で表面に魔法による文字が隙間の無いほどビッシリ書かれていた、バレンシアはその紙を右手の人差し指と中指の二本で魔法石にピタリと押え付けると反対の手にナイフを握りその紙を押さえている自分の指を軽く切った、バレンシアの指先から血がにじみ出てきてそれが紙に吸い込まれるように流れて行く、すると白かった紙はどんどん赤く染まっていった、そしてその紙が血と同じ深紅に染まると紙の表面から血液があふれ出してきてそれが徐々に形を成していった、最終的には大きさ3㎝程の血液による女性の顔が出来上がる、その女性像は目を見開き口を大きく開けると静かに歌い始めた、その血液による女性の歌に呼応するように魔法石が光り始め魔法による結界がどんどん解け始める、その歌が終わる頃には結界は完全に消滅してしまっていた

「ふう、完了したか!?コイツを失敗すると大量の血を流し損って事になるからな、いくら今勢いがあるとはいえアミステリアの魔法レベルはまだまだだから助かったぜ!?」

結界を破り奥の部屋の中に入るとそこは魔法による動力炉があった、うっすらと緑色の光を点滅させながら“ブーン”という低い音を発生させ起動している動力炉、ここはボレルガン城の中枢であり発電所みたいなモノなのである

「さて、ここを爆破して各所に仕掛けた爆弾と連動させればこの城は・・・クックック、しかもそれがキシェロの代表がやったとわかればどうなるか!?スタネールとアミステリアの連合など永遠に無理だろうぜ!?・・・」

笑いが止まらないと言った様子のバレンシア、再び懐に手を伸ばす、その時

「そこまでですよ、ようやく尻尾を出しましたね!?」

その声に驚いて振り向くと入口に立っているのはスタネールの大賢者マクシミリアンことハウゼンであった

「ど、どうしてここに?・・・」

「あなたの目的がわかるまでずっと泳がしていたんですよ、まさか私が気付いていないとでも思ったのですか?」

あまりの驚きに言葉が出ないバレンシア、そのままハウゼンがゆっくり近づこうとすると

「動くな‼それ以上動いたら各所に配置した爆弾を爆破させるぞ‼」

さっきまでの余裕は完全に消え失せ目を血走らせて脅すバレンシア

「各所に配置した爆弾というのはこれの事か?」

今度は清長が入ってきた、足元には身長15cmほどの小鬼が十数匹付き従っている、その小鬼は頭に爆弾を抱えたまま踊る様にぴょんぴょん飛び跳ねていた

「爆薬を詰めた物に魔法による遠隔発火か・・・随分稚拙な物だが、これも“魔導科学兵器”というのか?」

清長の質問に歯ぎしりするバレンシア

「そんな馬鹿な・・・くそっ‼︎こうなったら貴様らもろとも道連れだ‼︎」

素早い動きで懐から小さな玉の様な物を取り出すと即座に地面に叩きつけた、しかしそれは床に衝突後に跳ね返り“カーン”という高い音が地下室に響いただけで結局何も起こらなかった、玉はコロコロと床に転がりながら壁にぶつかって動きを止めた

「馬鹿な⁉︎これが弾けて全ての爆弾が爆発するはずなのに・・・」

爆弾が爆発しない事を不思議に思ったバレンシアが床に転がった玉をよく見てみる、すると玉が完全に凍ってしまっていたのだ

「あのねぇ、そんなちゃっちい紛い物と私の作った“魔導科学兵器”を一緒にしないでよ‼︎」

今度はシャーロットが部屋に入って来た、すでにバレンシアの起爆装置の玉を凍らせていたのだ

「もう平気なのですかシャーロット?」

「うん、もう大丈夫よ、心配かけたわね」

「別に私は心配などしておらなかったがな」

三人がバレンシアを前にして余裕の態度で会話していた、その間バレンシアは辺りを見回し逃げる算段を探している様であった

「無駄だ、我々三人から逃れられるとでも思ったか!?」

「そうよ、これからじっくりお話し聞かせて欲しいんだから、もう観念したらどうなの!?」

その時バレンシアは右手と左手の人差し指を立てて顔の前で重ねた

オン‼」

そう叫ぶとバレンシアの姿はその部屋に溶け込むようにスッと消えていったのだ

「えっ!?うそ、不可視化の魔法なの?こんな一瞬で??」

バレンシアの術に驚くシャーロット、しかしハウゼンと清長は動揺する様子もなく落ち着き払っていた

「これは魔術では無い・・・どちらかというと忍術だな」

清長はそう言うと右手の人差し指と中指を立て額に当てた、そして少しの間動かずジッとしていたが急に二本の指を前に突き出したか思ったら大きく目を見開き叫んだ

「破‼」

その声と同時に空中に五芒星が発生しそれれがバチバチと火花を上げはじめる、そしてに何か焼けたような臭いと煙が地下室を覆って行く

「ぐあっ!?」

五芒星の出現した場所から叫び声をあげて現れたバレンシア、片膝をつきその顔は苦痛で歪んでいる、どうやらダメージを負っている様子でその背中はブスブスと焼けていて少し煙が出ていた

「風牙忍法 霧隠れの術か・・・」

その清長の言葉にギョッとするバレンシア

「ほう、風牙忍法?という事はこの人は忍者ですか?なるほど、道理で隠密行動に長けていた訳ですね!?」

「へぇ~忍者なんて始めて見たわ、忍術って凄いのね!?」

三人が会話している隙にダメージから回復したバレンシアはすかさず逃げようとしたが足が動かない事に気づく、慌てて足元を見てみると膝から下が完全に凍っていて動けなかったのだ

「クソッ!?いつの間に、何だこれは動けないぞ‼」

「あら?こんないい女が引き留めてるのに帰ろうとするなんてつれないおじ様ね!?」

その言葉にハウゼンがため息をつくと一言つぶやくように

「スペルバインド・・・」

その言葉と同時に無数の蔦がどこからともなく発生しバレンシアの体に次々と巻き付いて行く、最後には顔だけ出た状態で足元を氷で固定され体はミノムシの様に蔦でぐるぐる巻きにされたバレンシア、まるで不細工なオブジェの様に部屋の真ん中に備え付けられたようである

「もうあなたは首から下は指一本動かせないでしょう?さて色々聞きたい事がありますが、あなたはバレンシアではないですね?本物のバレンシアさんはどうしました?」

「ふん、本物のバレンシアは今頃海の底で魚のエサになっておるわ」

「じゃあ貴様は何者だ?一体誰の命令でここに来た?」

偽バレンシアの口元が緩み軽く笑った後吐き捨てるように

「そんな事べらべらと喋る訳なかろう‼私から情報を聞き出せるなどと思うなよ‼︎」

「あら?そんな事言っていいのかしら?女を怒らせると怖いわよ!?」

「私の尋問は少々キツイぞ!?本当に耐えられると思っているのか?」

「馬鹿め、私は拷問や魔法による尋問にも耐えられるよう訓練されている、どんな手を使おうと無駄だ‼」

そう言い放った後ニヤリと笑う

「そして・・.貴様らもここで道連れだ‼死ね‼」

偽バレンシアがそう叫んだ時、口の中の奥に黒く光るモノが見えた

「いけません、口の中に起爆装置を仕込んでいたようです‼」

「なんだと!?」

「そんな!?止めなきゃ・・・でも間に合わない‼」

魔法や陰陽術はその特性上防御結界やシールドは瞬時に発生させることができるが攻撃の際にはどうしても一呼吸必要とする

「くっ!?間に合いません・・・致し方ない」

三人は瞬時に防御シールドを展開する、しかしこれだと自分の身は守る事ができても爆発事態は防げない、ここに集められた爆弾が一斉に爆発するとボレルガン城は大ダメージを受け死傷者も相当数出る事が予想された

『しくじってしまいました・・・まさかこんな事に・・・』

偽バレンシアが口の中の起爆装置をかみ砕いて起動させようとしたその瞬間、いきなり顔が後ろにのけぞり顎が跳ねあがった、そして偽バレンシアはぐったりとしたまま全く動かなくなった、予測された爆発は起こらず不気味な静寂が部屋を支配する、一体何が起こったのかわからない三人は困惑した

「全く・・・ツメが甘いんだよ」

部屋の入り口からの聞き覚えのある声に振り向くとそこにいたのは腕を組み入口の壁に背を付けもたれかかっているレオの姿であった、三人に緊張感が走りレオを見つめる目が鋭いものに変わる、レオはそんな三人を無視するかのように部屋に入って来た

「起爆装置を奥歯に仕込むなんてよくある事じゃねーか⁉︎」

レオの突然の登場に硬直していたハウゼンが我に返りぐったりしている偽バレンシアを見つめる、それに呼応するかのようにシャーロットも偽バレンシアに近づきその状態を確認した、すると額の真ん中に3cm程の穴が空いていて完全に絶命していた、念のため首の脈を取るが当然反応はなく、シャーロットはハウゼンの方を向きゆっくりと首を振る

「そうですか・・・あの状況では致し方ないですね、アミステリアに被害が出なかっただけ良かったと考えましょう」

「しかしどうする?この男が何者で誰の仕業によるものなのか・・・手掛かりはなにか持っているのか?」

シャーロットが死体の衣服を探ってみるが手掛かりになりそうな物は見つからなかった

「それらしい物は持ってないみたい、魔法処理されてる呪符が一枚あるけど・・・これ一枚じゃ素性を探るなんて無理だろうしね・・・」

少し残念そうな表情を見せたハウゼンが改めてレオの方を向き言葉をかけた

「とにかくあなたのおかげで助かりました、ありがとうございます」

レオはその言葉にも全く無反応のまま偽バレンシアに近づいて行くと無作為に右手を横に振った、すると偽バレンシアを拘束していた蔦と氷が粉々に砕け散った

「なっ⁉︎私のスペルバインドが⁉︎」

「私のアイスフェターズがこんな簡単に⁉︎」

糸の切れた操り人形の様にドサリと床に崩れ落ちる偽バレンシア、レオはイラつく様な態度を見せると死体に語りかけた

「おい、いつまで寝てやがる、さっさと起きやがれ‼︎」

そんなレオの呼びかけに慌てて立ち上がる偽バレンシア

「はい、失礼いたしましたマスター‼︎」

顎を引き指先を揃えて背筋をピンと伸ばす偽バレンシア

「こ、これは⁉︎」

「なんだと⁉︎」

「何これ⁉︎」

あまりの出来事に驚愕する三人を尻目にレオが偽バレンシアに質問を始めた

「お前は何者で何の目的で来た?」

「はいマスター、私は風牙忍者頭目“ウルシガワ・サイゾウ”と申します、目的はこのボレルガン城にて爆破テロをおこないこの会談を妨害してスタネール側とアミステリア側の仲を決定的に悪化させることであります‼︎」

「そうか、で一体誰に頼まれた?」

「はい、ジランシア王国皇帝サランディアでありますマスター‼︎」

それを聞いたレオは“チッ”と舌打ちをする

「またアイツか⁉︎いい加減イラつくな・・・おいサイゾウとやら、お前は爆弾を持ってサランディアの前に行って自爆してこい、いいな!?」

「イエス、マスター‼︎」

「おい奴に爆弾を渡してやれ」

レオは爆弾を持っている小鬼達に顎で指図した、すると小鬼達は爆弾を抱え次々とサイゾウの元に集まって来たのだ

「なっ⁉︎お前ら何をしている、止めんか、私の言うことを聞け‼︎」

清長が小鬼達に命令を出すが全く聞く様子はなく着々と爆弾がサイゾウの元に集まっていく

「ダークネスインターセプト・・・」

思わずハウゼンが呟いた、その言葉に反応したレオがニヤリと笑う

「ほぅ、さすがスタネールの大賢者様、よくご存知で」

二人がそんな事を言っている内にありったけの爆弾を抱えたサイゾウは足早に部屋を出て行った、爆弾を渡し終えた小鬼達は全員レオの足元で跪いている、レオはそんなサイゾウの走り去るのを見送ると、くるりと振り向き三人に語りかけた

「まぁこんなもんだろ・・・今回はアンタらと戦う事は無かったが、できれば次は相手してくれよ、まぁその度胸があればだがな」

レオはニヤリと笑い含みのある言葉を残すとゆっくりと地下室から立ち去った、その後ろ姿を黙って見守る三人だった。


翌日ハウゼン達一行が国に帰る為ボレルガン城の入口に集まっていた、それを見送る為香奈を始めチャングイ、ゲルハートやみゆきも来ていた

「昨夜は工作員のテロ行為を未然に防いでいただいたようで、本当にありがとうございます」

香奈がハウゼン達に対して深々と頭を下げた

「いえ、工作員は我々の一団に紛れ込んでいたのですから我々が処理するのは当然の事です、それに結局レオ殿に助けてもらった形になりましたし・・・」

ハウゼンがそう言うと清長とシャーロットの顔がわずかに曇った

「へぇ〜あのレオがねぇ・・・どうせまた失礼な事言ったんでしょ?」

そんなみゆきの言葉に苦笑いで返すハウゼン、みゆきはその態度でレオがどんな態度をとっていたか大体わかり少し申し訳ない気持ちになった、みゆきとハウゼンがそんな会話をしているとコンラートがみゆきの前に歩いて来て右拳を差し出す

「今度会う時は・・・」

「えぇ、約束だね」

みゆきもコンラートの差し出した右拳に右拳をチョンと合わせた、この時フローラの表情が僅かに曇った事を誰も気がつかなかった

「我々も今度会う時は本格的に和平への連合の話が出来るといいですね」

「本当におっしゃる通りです、しかしこれは決して夢物語ではありませんから近いうちに必ず実現させましょう」

各陣営のリーダー格であるハウゼンと香奈がガッチリ握手をした、その光景が周りの人に希望を与え少し雰囲気が明るくなった、しかしそんな和やかな雰囲気になりかけたその場の空気を壊す様にレオがひょっこり現れた、レオの登場に清長とシャーロットの顔が強張りハウゼンもやや顔をしかめた

「あら?アンタがこんな場に来るなんて珍しいじゃない、どういう風の吹き回し⁉︎」

「別に見送りに来た訳じゃねーよ、昨日聞き忘れた事があったからな、それを聞きに来ただけだ」

ぶっきらぼうにそう言うとゆっくりとハウゼン達の方に近づいていくレオ、にわかに緊張感が高まる、そしてレオは鳴沢の前で立ち止まった

「なんじゃ、ワシに用か?」

「昨日聞き忘れたからな、夜の俺とも互角に戦えるっていうフロストドラグナイトの奴の名前を教えろ」

その質問に含み有りげな笑いを浮かべる鳴沢

「そんな事聞いてどうするのじゃ?」

「どうだっていいだろ、さっさと教えろ」

鳴沢は少し考えた後満面の笑みで

「それはやはり言えんな、個人情報の漏洩になるからの」

その答えに顔が引きつるレオ

「このジジイ・・・なんなら力づくで言わせてやろうか?」

「ほぅ⁉︎そんな事言っていいのか?上を見てみい、お天道様はまだあんなに高いぞ」

空を指差してレオの顔を覗き込む鳴沢

「今こっちには“世界三大賢者”が揃っておるのだぞ、それでもヤル気なのかの?」

しかし昨夜あれ程の力を見せられた三人は思わずレオから目線を逸らしてしまう、しかしその後の鳴沢の話に雰囲気が一変した

「今のお主ではこの三人を相手にしたら逃げの一手じゃろうが⁉︎」

その言葉に驚いて思わず鳴沢の方を見る三人

「えっ⁉︎そんな事が⁉︎」

「それは誠か⁉︎」

「なっ、本当なの⁉︎」

深くうなづく鳴沢

「本当じゃとも、今の時間なら間違いなく有利じゃな」

「しかし博士、昨日は昼に三人がかりでも“倒す事は可能・・・”という微妙な言い回しでしたから、この時間でもギリギリの勝負になるのかと・・・」

笑いながら首を振る鳴沢

「イヤイヤ違う違う、言い方がマズかったかの⁉︎もし君達三人とあ奴が戦う場合、明るい時間であれば、あ奴が逃げて君達が追うという展開になる、しかし暗くなるまで逃げられたら攻守交代じゃ、あ奴が追って君達が逃げる・・・さらに明るくなるまで逃げ切れたらまた攻守交代といった具合じゃな」

さらに清長が食い気味に鳴沢に問いかける

「しかし昨日は私一人では絶対勝てないと⁉︎・・・」

「そりゃあそうじゃ、いくらダークドラグナイトが昼弱いとはいえさすがにお主一人では勝てんよ、だが二人がかりならかなり有利に戦えるし三人ならもう圧倒できるレベルじゃな」

その言葉を聞いた途端清長とシャーロットの顔つきが変わる

「おい聞いたかシャーロット⁉︎」

「えぇ聞いたわ、昨日は随分ナメられたもんね私達、彼にはちょっとお仕置きしてあげたい気分だわ」

そんな二人の態度に対して不敵に笑うレオ

「おっ、勝ち目が出て来たと思ったら急にヤル気になったのか⁉︎ザコ感丸出しだなお前ら」

「ほぅ、そんな態度をとってよいのか?」

「お姉さんを怒らせると怖いわよ、謝るなら今の内よ〜」

いつのまにか清長の両手には複数の呪符が握られていた、そしてシャーロットの両手からは冷気が溢れてきていてそこにいる人たちには体感温度が5度ほど下がった気がした、そこにハウゼンが口を挟む

「言っておきますが私はやりませんからね⁉︎」

「ふん、腰抜けが⁉︎まぁ良い二人でもかなり有利らしいからな」

「あんなのほかっておきましょう、そんな事よりどうやってイジメてやろうかしらねぇ・・・」

二人がヤル気満々で今、正にゴングが打ち鳴らされようとした時、それを切り裂くような高い声がボレルガン城に響いた

「シャーロットいい加減にしなさい‼︎」

ビクリと首をすぼめ恐る恐る振り向くシャーロット、そこには厳しい表情でこちらを睨んでいるフローラがいた

「今さっき仲良くやっていきましょうと言っていたばかりじゃないの、あなたも聞いていたでしょう⁉︎」

「で、でもフローラ、これにはね・・・深い事情が・・・」

「深い事情ってなんですか?そんなものあるはずないでしょ、全く貴方という子は・・・本当に申し訳ありません、ローゼフォンの女王として代わりに謝罪いたします」

ペコリと頭を下げて謝るフローラ、立場が無くなりどうしていいかわかずオロオロするシャーロットにクスクス笑いながら近づく香奈

「シャーロット様、フローラ様 親展の証としてお二人に差し上げたい物があります、これを・・・」

香奈はそう言いながらシャーロットに2枚のカードを手渡した

「これは何?もしかして⁉︎」

「はい、これは昨夜私達が付けていた“カガユーゼン”の別バージョンです、気に入っていただけたら嬉しいのですが・・・」

その瞬間シャーロットの表情がパッと明るくなり急にテンションが上がる

「えっ⁉︎本当に、アレと同じ物くれるの?ねぇどうやって着るの?ねぇ⁉︎」

鬼気迫る程グッと顔を近づけて質問するシャーロットにやや気圧されながら苦笑いの香奈

「えぇ〜っと、それは装備品ですのでカーソルを開きC装備で登録してください」

「わかったわ、カーソルオープン、C装備を変更‼︎」

シャーロットがそう叫ぶと目の前に数々のウインドウが展開していく、そこのC装備の部分にカードを合わせて登録する

“C装備登録完了しました”というアナウンスが言い終わるか否かのタイミングでシャーロットが叫ぶ

「チェンジ、C装備‼︎」

その声と同時に光に包まれると赤い着物を着たシャーロットが再び現れた、それは赤い生地に大きな花があしらってあり牡丹をイメージした物のようだった

「凄い凄い、キレイな着物じゃない素敵〜来週の魔法学校の創立記念式典に着て行こうかしら、ねぇフローラも着てみてよ早く‼︎」

プレゼントされた“カガユーゼン”にテンションが上がりっぱなしのシャーロット、取り残された形になった清長が

「おいシャーロット、コイツと戦うって話はどうなった?」

「えっ⁉︎あぁそんなのパスパス、フローラに怒られちゃったしね、それより見てよこの着物を⁉︎素敵でしょ、そうだ来月のフローラの生誕祭に2人で着たら・・・」

全くヤル気が無くなったシャーロットに見捨てられた形になってしまった清長

「だってさ、どうするよ陰陽師のオッさん⁉︎」

ニヤニヤしながら話しかけるレオ、清長がチラリと鳴沢を見て問いかけた

「私一人では勝てないのだよな?・・・」

「勝てんよ絶対にな」

清長の背中に冷や汗が流れる、楽しくて仕方ないといった表情で清長を見つめるレオ、その瞬間レオの表情が歪む、背後からみゆきが耳を引っ張ったのだ

「アンタって奴は⁉︎なんでいつもいつもケンカばっかしてるのよ‼︎仲良くしようって言ったばかりでしょ⁉︎大体アンタまだ怪我が治ってないのよ‼︎」

「痛ててて、放せこの馬鹿女‼︎怪我人とわかっててその仕打ちはなんだ⁉︎」

その言葉に思い出したかのように慌てる香奈

「申し訳ありませんレオ様、バタバタしていて怪我の治療がまだでしたね、この後すぐに神官を手配して・・・あっ⁉︎」

香奈は何かを思い出したかのように気がつく、そのタイミングで香奈の横にゲルハートが近づいて来てささやく

「お気づきになりましたかロマーヌ殿⁉︎神官達は月一度の“降祝祭”の準備で全員出払っております、しかも昨夜の騒動で避難場所として大聖堂を使用しましたから今月は前準備もできておりません、おそらく今日は一日がかりの作業になるかと・・・」

少し考えた後、レオに対して頭を下げる香奈

「申し訳ありませんレオ様、神官達は今日一日は空かないようでして・・・明日になってもよいでしょうか?」

「あぁ構わないぜ、この際一日伸びるぐらいどうってことない」

ぶっきらぼうに答えるレオに再び香奈が頭を下げる、その会話を聞いていたシャーロットが両手を腰に当て軽く溜息をつくと

「しょうがないわね、私がやってあげるわよ」

その言葉に全員が驚いた、特にハウゼンと清長が凄く驚いていた

「できるのですか、貴方に⁉︎」

「普通の回復呪文とは違うのだぞ、神官が使う高等術式の治癒魔法だぞわかっているのか⁉︎」

「わかってるわよそのぐらい馬鹿にしないで 高等術式の治癒魔法なら魔法学校の在学中に全て習得してるわ」

サラッと言い放ったその言葉にまだ目を丸くして驚いているハウゼンと清長、そんな二人を見てハワードが鳴沢に問いかけた

「鳴沢博士、彼女程の凄い魔法使いが高等な治癒魔法を使える事がそんなに凄い事なのですか?同じ魔法でしょう?」

その質問にフッと笑い嬉しそうに説明を始めた

「彼女が使う巨大な攻撃魔法と高等術式の治癒魔法では求められる資質がまるで違うのです、わかりやすく例えるならオリンピックで100m走と42.195kmのフルマラソンの両方で金メダルを取るみたいな感じです、または現役メジャーリーガーでありながら天才外科医・・・みたいな感じですね」

「そんなに凄い事なのかね⁉︎じゃあハウゼン君にもできないのかね?」

その質問にハウゼンは首を振りながら

「もちろんできません、しかし彼女には本当に驚かされる・・・」

シャーロットはレオに近づき腕を捲ると

「早く怪我の箇所を見せなさい」

その言葉に渋々ながら右腕を上げ服をまくって怪我の箇所を見せるレオ、するとシャーロットの両手が白く光り治療箇所を触ると両手の指が複雑な動きを始めた、それはまるで楽器を弾いているかの様な優雅さすら感じる動きであった、半ば呆れながらそれを見つめる清長

「全くお前は・・・馬鹿な癖に優秀というか」

「なによそれ⁉︎馬鹿にしてるの?」

シャーロットの動きを見ながら再びハワードが鳴沢に問いかけた

「鳴沢博士、彼女の今おこなっている高等術式の治癒魔法と普通の回復魔法とは何が違うのですか?」

「う〜ん、それは説明しにくいですな、魔術の深層に刻まれる標仁の魔力を・・・スミマセン、上手く説明できません」

ハワードに理解できるよう説明できずに謝る鳴沢、その時治療を行いながらシャーロットが口を挟んできた

「治癒の魔法で怪我を治すというのは汚れを落とすのに似てるのよ・・・」

ハワードが驚いて聞き直す

「汚れですか⁉︎それは一体?」

「そう汚れ、普通汚れを落とす時って布で拭き取ったり洗剤をかけて水で洗い流したりするでしょ、それが一般的な回復魔法だったり市販されてる治癒系のポーションだったりする訳、 でも中にはそれらでは治せない怪我もあるの、こびり付いて中々落ちないしつこい汚れみたいな感じね、伝説の武器や呪いのアイテムなんかでダメージを与えられたりするとたまにあるんだけど・・・そういったモノは身体の深層に傷を刻み付けていくから普通の回復魔法じゃ治せないの、だからこうやってゆっくり丁寧に少しづつ剥がしていく様に取り除いていくのよ・・・こ、これは⁉︎」

シャーロットが一瞬厳しい表情を見せた、そして一旦目を閉じ意を決したように目を大きく見開く

「少し痛くなるけど我慢しなさいよ」

そう言うとシャーロットは指に力を込めた

「痛ててててて、おいもう少し優しくできないのか⁉︎」

「我慢しなさい、男でしょ⁉︎」

そう言い放つと右手をぐいっと引き抜く様な仕草を見せた、するとその右手の先に黒い結晶の様な物が見えたがそれは空中でスグに消え去った

「ふぅ終わった・・・もう大丈夫のはずだから動かしてみてよ」

シャーロットの言葉を受け、レオは今まで上げていた右腕をゆっくり回し何度も腰をひねる

「ふむ、なんともないな・・・」

「感謝しなさいよね、こう言っちゃなんだけど魔法文化の遅れてるアミステリアの神官じゃこの怪我は治せなかったと思うわ、でもアナタこんな怪我で私達と戦うつもりだったの?やってたら本当に死んでたわよ・・・もう大丈夫なはずだからいくらでも清長をブチのめしていいわよ」

「おいコラ‼︎お前は何を言ってるのだ⁉︎」

慌てる清長、そんなシャーロットの様子を見て鳴沢がハワードに話しかける

「我々のいた世界では国にとって必要な物は資源、技術、領土、システム・・・色々な事がありますが、この世界は一にも二にも人材なんですよ」

しみじみと語る鳴沢、それにうなづくハワード

「シャーロット様、本当にありがとうございました」

レオの代わりに香奈が頭を下げた、それに対し

「別に構わないわよ、こんな素敵な着物もらっちゃったし・・・あとこれもあげるわ」

シャーロットは懐から直径5センチ程の平ぺったい缶バッチの様な物を3つ差し出した、その表面には魔法による呪文が刻印されていてその文字の部分がうっすらと赤く光っていた

「これは一体?」

「これは私が作った魔導科学品なんだけど、ローゼフォンの特産鉱物であるアンキロナイトに私が独自の魔法処理を施した物よ、これを持っている者同士はどこにいても会話ができるって代物なの、半年後にまた魔力処理を施さないと使えなくなっちゃうけどね」

その説明に驚く香奈、アミステリアの国宝である”天界樹のやまびこ笛”より遥かに実用的であり優秀な品なのだ、この世界では遠方への連絡手段は魔法使いによる使い魔しかなく、伝える側と伝えられる側の両方に魔法使いがいなければ連絡できないうえに文字数にも限度がある、それこそこれは国宝級と言っても差し支えないほどの品なのだ

「そんな凄い物もらっていいのですか⁉︎」

微笑みながらうなづくシャーロット

「あなたにも大切な人がいるのでしょう?それに使ってちょうだい」

香奈はみゆきの方をチラリと見てシャーロットに深々と頭を下げた、それを、見届けるとハウゼンが口を開く

「ではそろそろ行きましょうか、ロマーヌ殿なるべく早い内にまたお会いしましょう」

「はい、是非」

二人は笑顔で再開を約束して別れた、スタネール側の人たちもアミステリア側の人たちも近い内にこの両陣営が協力し巨大連合を作るであろうと確信していた、そしてそれは世界的な紛争の終結に向けて動き出しているという事に他ならない、皆が歴史的瞬間に立ち会っているのかも!?という喜びと明るい未来の展望に胸を膨らませていた、この時点ではまさか戦場で敵として再開するとは誰も想像できなかったのであった。





今回もっと短くなると思っていたのですが思いのほか長くなってしまい気が付くと過去最長の話になってしまいました・・・アミステリアとスタネールの両サイドの人間達が同時に出るのは初めてなので私自身非常に楽しく書けました、内容が伴っていたかはまた別ですが(笑)次作は本来の主人公拓斗の話です、少し重い話になりますが又お付き合いいただけると嬉しいです、では。

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