男は、試験を受ける。part4ーフェノールvs試験官ー
男は、ガランに「おめでとう。」と言う。
ガランは何故か泣き崩れ、カイルに支えてもらう始末。
次は、フェノールが試験を受けることに!無口でほとんど話さないフェノール。
試験官vsフェノール彼女の本性が明らかになる!!
『決闘場 控室』
「はっはっはっ!」
ガランが笑いながら控室に入ってきた。
「勝ったぞ!試験官に!っしゃああああああ!」
『テンション高すぎるだろ!? どんだけ嬉しいんだよ!!』
と俺は心の中で突っ込む。
そして俺は、ガランに怒る。
「俺の従魔が寝てるんだ! 静かにしろ!」
ガランは俺の発言に、しょげる。高ぶっていた感情が一気に抜けた感じだ。
そこにカイルがフォローを入れる。
「実技通ったんですね! おめでとうございます!」
「おう! ありがとな。」
ガランは、実技試験を通過した。これで晴れて冒険者だ。
俺も一応言うべきか。
「まあ。昔は知らんが、今のお前なら、簡単に実技を通過するだけの実力がある。それに、倒しやすい試験官を当てたんだ。勝てて当然だ。」
『む・・・。違う。俺が言いたいのはこんなんじゃない・・・。』
「な!・・・・なんだとお~!」
『中々出てこないな・・・・。むーーー』
「そう怒るなよ・・・。取り敢えず勝てたんだ。・・・おめでとう。晴れて冒険者を名乗れるな。」
『俺、言えたよ。』
ガランが口を開けて固まっている。
俺だって、『おめでとう』ぐらい言えるぞ。
そして、急に涙を流し始めた。
「あ! お、おい!」
「ガ、ガランさん!?」
驚いたのは、俺だけではなかった。カイルも驚いている。
カイルは、泣き崩れそうなガランを支える。
何故泣き出したのか理由が分からない俺とカイル。
ボソッとガランがつぶやいた。
「なんか・・・お前に・・・そう・・言ってもらえると・・・うれし・・すぎてよお~。涙が止まらねえええ・・・・・ぐすん。」
『そんな理由かよ。』
俺は、試験官を選べる権利を勝ち取った。
試験官のステータスを鑑定し、勝てる確率を上げただけだ。
ただそれだけだ―――――――—
試験は、あくまで本人の力で勝たなければならない。勝てたのは、ガラン自身の力だ。
俺は、他人を信用しない。
逆の考え方をすれば、俺のやっている行いは、『他人の力』を信用していないということになる。
『勝てると信じていないから勝てる状況を作る。』
だから、俺は、他人に感謝される筋合いがないのだ。
『不思議だよ――――――――—人間という―――――――――—生き物が・・・・。』
ガランが泣き崩れそうになるのを支えるカイル。
それを気にする素振りもなく、無表情に受付嬢が控室に入ってくる。
「試験官の治療が終わりましたので、次の試験者の方はこちらへ。
どなたを希望いたしますか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
フェノールは黙っている。
代わりに俺が受付嬢に答える。
「次の試験者は、ここにいるフェノールが行くらしい。希望する試験官は、対面したときの・・・・。えっと、左から2番目の試験官だ。」
受付嬢は「かしこまりました。」と軽く頭を下げる。
「それでは、こちらへ」
受付嬢にフェノールはついて行く。
控室を出る前に、フェノールの視線が俺を見ていることに気付く。
俺は、『念話』でフェノールに確認を取る。
『相手の試験官は、『騎士』職だ。『魔導士』職のお前からしたら分が悪いように見える。それは、そう見えるだけだ。俺はお前の事をよく分かっている。』
俺は、真剣な目でフェノールを見る。
俺の放った念話には、『ある意味』が込められている。
フェノールは、コクッと頷いて決闘場のフィールドに向かう。
「あー。 試験官が可哀そうになってきた・・・。」
心の声が漏れる俺である。
カイルは俺の独り言を聞いていたようだが、理解できず、首をかしげるのだった。
――――――――――――—『決闘場 フィールド』―――――――――――――――
フェノールの銀の髪が風で揺れる。
まるで聖女のごとく透き通るその髪は、誰もが魅了されるだろう。
相手の試験官もまた魅了されるのだった。
ボーーーっとしていた試験官が我に返る。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
我に戻った試験官は、無口なフェノールにどう声をかければよいか戸惑っていた。
「試験を始めていいかい?」
フェノールは試験官の言葉にコクリと頷く。
「監督役! 始めてくれ!」
試験官が監督役に言う。
「分かった! それでは、これより実技試験を開始する!」
試験官は臨戦態勢に入る。
一方フェノールは『棒立ち』
『動こう』とする意思があるのかも定かでない。
「開始!」
監督役の合図が出る。
試験官は、棒立ちのフェノールに一直線に突っ込んでいく。
『魔導士』職は攻撃魔法が攻撃手段である。魔力と魔力量に依存する為、
魔力量が底を尽いたとき、『魔導士』職は、じり貧になる。
『魔導士』職で武器『魔導書』を装備している場合の魔法攻撃力は、威力が高い。
しかし、魔法に共通する『魔法を唱える時間』は、覆ることはない。
発動時間を短縮することは可能だ。
しかし、強大な魔法を唱えようとすれば、『魔導士』職といえど、時間がかかるのだ。
その他にも至近距離で唱えることができない魔法が存在するというデメリットが存在している。
これは、魔法の種類にもよる。
それを知った上で、試験官は、直進していったのだ。
『魔法を唱える時間を与えない。』
それが、試験官の作戦だった。
フェノールはボソボソとつぶやくが
すぐ目の前で、試験官が剣を振りかぶっていた。
「斬り裂いてやるよ! 嬢ちゃん!」
ド―――――ンと凄まじい音が鳴り響く。
試験官が振り下ろした剣の衝撃だ。試験官は『騎士』職といえど、武器の性能の高さで、『剣士』職に引けを取らない攻撃力を有していた。
砂埃が立ち込める。
ボフッ——―——
とフェノールが砂埃の中から飛び出してくる。
フェノールは、試験官の攻撃を避けていたようだ。
「ごほっ!・・・ごほ・・・・・・。」
砂埃で咳き込んでいる。
砂が風で流されていく。
試験官はフェノールに言う。
「今の一撃をよく避けたな!」
試験官の剣は、フェノールのすぐ目の前まで迫っていた。『確実に斬れる!』
そう思っただろう。フェノールは、それを避けた。
試験官は、称賛しているのだろう。
しかし、フェノールは無言を貫く。
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
そんなフェノールに監督役はため息をつく。
「フェノール・スタレイン! あなたには決闘をする意思があるのか?」
監督役の問いにフェノールはボソッとつぶやく。
それはフェノールにしては他人に聞こえるつぶやきだった。
「もう・・・・・おわってる。」
フェノールの発言に監督役は
「え?」
と呆けた。
「なんだこれは!?」
監督役は、試験官の方を見る。
そこには、試験官を中心に魔法陣が展開されていた。
「う、うごけない・・・!!」
試験官は、金縛りのように動かない自身の体を必死に動かす。
がびくともしない。
「なんだ!この魔法は!!」
試験官は、フェノールに言葉を放つ。
『魔導士』職は、攻撃魔法で攻撃することから、攻撃魔法しか使えないと思われがちである。
低lvの『魔導士』職なら、攻撃魔法しか唱えることができない。
しかし、低lvでもある条件を満たせば、『ある魔法』を習得できる。
その魔法は、使用者とlv差が上下5以内であれば敵の動きを一時的に止めることができる。
『魔導士専用魔法/第1番:閉鎖魔法陣』
フェノールが、試験官の攻撃をギリギリまで避けなかったのは、『閉鎖魔法陣』を設置する為である。
この魔法は、『トラップ』系の魔法なのだ。
習得条件は――――――――――――———「冷酷かつ残酷であること」
フェノールは、試験官に向けて手をかざす。
手の平に魔力が集まっていく。
試験官は背筋がゾッとした。
今から、攻撃魔法を受けるというだけなら、悪寒なんて感じなかっただろう。
今のフェノールの表情を見るまでは――———
フェノールは静かに笑みを浮かべる。その表情はまるで――――————
『このゴミをどう焼却してやろうか・・・・。』
そんな表情だった。
フェノールは小さくつぶやく。その声は監督役に届かない。試験官にだけハッキリと聞こえる声だった。
「燃えろ・・・ごみ・・・。」
試験官は、金縛り状態でありながら、自分の命を守るために、盾を装備している腕を必死に上げようとする。
「うおおおおおおおおおあああああああ!!!」
ギチギチと腕が軋む・・・。
試験官は、なんとか盾を構えることができた。しかし――————―――
『魔法/第1番:ファイアボール』
『魔法/第1番:ファイアボール』
『魔法/第1番:ファイアボール』
『魔法/第1番:ファイアボール』―――――――――――
『魔法/第1番:ファイアボール』――――――――――――――――――
フェノールの魔法を試験官は耐え続けたが、耐えきれなかった。
盾が壊れ、魔法が試験官に直撃する。
それでもフェノールは、『魔法/第1番:ファイアボール』を放ち続けた。
監督の「やめるんだ!」という声がかかるまで―――————
フェノールは、手を下ろす。
試験官は黒焦げで見る影もない。監督役は急いで、試験官に駆け寄る。
「大丈夫か!!」
監督役の声に試験官は反応した。
重度のやけど状態――――死んでもおかしくない状態でありながら、試験官には息があった。
監督役は判断に苦しんだ。
しかし、実力がある者を冒険者ギルドは欲している。
無残な試験官を癒しながら、監督役は唇を噛みしめて、フェノールの勝利を宣言する。
「実技試験! 決闘!勝者『フェノール・スタレイン』」
フェノールは特にいう事もなく。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
控室に去って行った。
神様「今回グロすぎないか? グロすぎないか? 私見てられない・・・。」
男「俺もいやだよ。知りたくなかったよ。あの女超怖いよ。」
神様「お主、いつ頃あの女の本性に気付いた?」
男「ん? ああ。 ガランが決闘している時かな。心配そうにしてるなーと思ってたんだけど、あれ違ってたんだ。」
神様「というと?・・・・・。いわんでいい。 やっぱり言わんでいい(察し)」
男「『自分の決闘相手をどう調理しようか』考えていたんだよ。鑑定してなかったら気づけなかったな。ハハハハ。」
神様「言わんでいいと言っただろおおおおおお!! (聞きたくなかったああああ)」




