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人生をあきらめていた男  作者: 眞姫那ヒナ
~冒険者ギルド試験編~
20/218

男は、試験を受ける。part2

男は、試験者3人と作戦会議を始める。

男は、これまでの経験や洞察力を活かし、自分たちが受付から今に至るまで試されている事実を告げる。

試験者側の情報は漏洩し、試験者側は不利な立場にあった。一方、試験者側は、試験官側の情報なし!

男は、打開策を練る。

『決闘場 控室』


「先程は、すいませんでした。 あんなこと・・・。」

カイルは、俺に謝罪する。


「気にするな。 慣れてる。 謝罪は不要だ。」と彼に言う。

そう、俺に暴言や八つ当たりをしても意味がないのだ。

前世で俺は、『慣れてしまっている。』


「それよりも、作戦会議だ。」

と俺は切り替える。

『次いで』で試験に参加している俺であるが、


なんとしてもカイルを合格させなければならない立場にある。

『あれだけ、説教じみた事をベラベラと言って置きながら、「落ちました」じゃ、洒落にならない!』

しかし、俺は、今回の試験が初めてなわけで、実技試験がどんなものかいまいち把握できていない。

ここは、2回目の彼らに聞いてみよう。


「俺は、 実技試験の内容をいまいち把握できていない。ガラン詳しく教えて貰えないか?」

俺の質問にガランが答える。


「そうだな。 レイダスは今回が初めてだし・・・いいだろう。

まず、受付嬢が言っていたように、実技試験は、試験官と1対1の決闘ルールで行われる。」


『FREE』の世界には、1対1で戦闘を行う決闘システムが存在している。

決闘を行う前に、互いに『縛り』をかけたり、戦闘をするにあたり不正を防止する『規制』をかけたり等ができる。それが『決闘ルール』だ。

『決闘ルール』で指定されたルールを破った場合、自動的にその者が敗者となる。


「決闘ルールの内容はこうだ。」

とガランは説明する。


1、消費アイテム使用不可

2、どちらかが戦闘不能になるまで、戦闘は継続する。

3、戦闘不能の相手に追い打ちをかける行為を禁ずる。

4、相手が降伏した場合の追い打ちを禁ずる。

5、事前に強化魔法を施す事を禁ずる。

という内容だった。


「戦闘不能になったかどうかは監督役が判断する。消費アイテムが使用不可なのは、回復や強化、様々な効果があるからだ。 あくまで実技試験は、試験者の実力を測るもの。 冒険者ギルド側からしてみれば、ドーピングによる不正だ。」

とガランは語る。


「なるほどな。」

と俺は頷く。

『消費アイテムの効果は絶大だ。レア度の高い物になればなおさらだ。』

消費アイテムの効果は、使用者問わず、誰でも効果を得られる。

それは、ガランの言ったように『ドーピング』だ。

『決闘ルール』にも、『事前の強化魔法は禁止』とある。これは、『剣士』職や『騎士』職が試験前に魔法による強化を付与して貰う行いを防止する為だろう。


「そうなると、強化魔法を使える者は、有利になるな。」

ガランは、俺の言葉を肯定する。


「どういうことですか?」

カイルは、気づいていないようだ。

俺がカイルに説明する。


「決闘ルールの内容をよーく思い出してみろ。 『事前に強化魔法は禁ずる。』つまり、開始後は使っていいってことだ。強化魔法が使える試験官に当たったら、厄介だ。」

カイルは、俺の説明を聞いて、

「・・・あ! 確かに!」

と納得する。


俺は、カイルに説明してから、ガランに尋ねる。

「強化魔法が使える試験官に当たったことは?」


俺の言葉にガランは、目をつむり、沈黙する。

沈黙が答えだった。

「・・・あるんだな?」

俺はガランに言う。


「ああ。 俺たちが落とした試験で、強化魔法を使える試験官にあたった。」

ガランは悔しそうな顔をしている。『強化魔法が使えるなんて卑怯じゃないか!』と

フェノールも無口でしゃべらないが、表情に出ている。


おそらく、ガランたちが装備に力を入れているのは、『強化魔法対策』だ。

前回の試験で彼らは、強化魔法を使える試験官の攻撃力や防御力を上回ることができなかったのだろう。

『決闘ルール』に装備の規制は特にない。

俺の勘は当たっているはずだ。


俺は、ここである質問をする。

「試験官の指名はできるのか?」


「あ? なんでだ?」

ガランは、不思議そうに言う。

「試験を始める時に自然と試験官が出てくる。」とガランは言う。


俺はガランに言ってやった。

「ガラン、お前は『強化魔法が使える試験官にあたった』と言ったな?

という事は、試験官が試験者に合わせてきているということだ。」


「なにがいいたい?」


「まだ、分からないのか? 相手は、俺たちの情報を持っているんだ。試されているんだよ俺たちは。」

ガランは、俺がここまで言ってようやく理解したようだ。

黙ってそれを聞いていたカイルも驚きと動揺で焦点が合っていない。

動揺していたカイルが「どういう事なんですか!? 分かりやすく説明してください!」と言う。


「『冒険者ギルド』の受付で「ご用件は?」と聞かれた時、なんと答えた? おそらくお前たちはこう答えただろう。『俺は、~職の○○です。』と。」


「「!?」」


「俺も聞かれたけど、その時は「試験を受けたい」としか言わなかった。職が知れただけでも、職の特性を理解していれば、対策は立てられるんだ。だから―――――――—」


「俺たちの失態ってことだな。」

俺が言い終わる前にガランが言う。

悔しさがさらににじみ出ている。


そう、これは彼らの失態だ。

ゲームにおいて、情報とは力だ。俺は、前世でもそれを痛感している。


『FREE』をプレイしていた当時は、相手の職を知っているだけでも、所持しているスキルや魔法が分かったりする。

『この世界でもそれが共通しているのかは微妙だが・・・。』

lvが低いとなおさら――――—

lvが上がれば上がるほど所持しているスキルや魔法は増え、対策は立てづらくなる。


前世では、情報は『脅し』に使える。

『前世で俺は、よく脅されていた。「ばらされたくなきゃ いう事聞けやああああ!!」みたいな?』

だから、情報は、決して相手に与えてはならない。


ゲイルが言っていた。

「冒険者ギルドとしては、弱い冒険者はデメリットでしかない。」

冒険者ギルドとしては弱い冒険者や『成長の見込みがない冒険者』は要らないから『登録させたくない。』

その為の試験。その為の―――――—『振るい』

俺は、よくできた試験だと感心する。


「よくできているよこの試験は。 受付嬢も試験官に今頃情報提供しているんだろう。」

俺は、想像していた。――――笑みを浮かべて、『絶対そうだ』という確信があるのだから。


「じゃあ・・・。どうするんですか?」

カイルが不安そうに俺に尋ねる。

しかし、俺には、試験官側に対抗する為の『作戦』があった。

情報を提供してくれたガランたちのおかげだ。


「なあに、さっきも言ったが不安がる事はない。 俺には作戦がある。情報提供してくれたお前たちに感謝しないとな。」

俺は、笑顔を向ける。


「感謝だなんて! そんな!」

と慌てるカイル。一方ガランは俺の『作戦』という単語に酔っていた。


「作戦!? 作戦があるのか!!」

先程の悔しそうな表情が一変し、俺に掴みかかりそうな勢いで迫ってくる。


『顔がこわい!! そして近い!!!』

俺はガランの顔を押しのける。


「ああ。 ただし、この作戦は、あくまでお前たちにとって戦いやすい試験官を割り当てるだけだ。それ以降は自力でどうにかするしかない。」


『戦いやすい試験官を割り当てるだけ』という作戦にガランとフェノールは「それだけでもいい!」

と賛成してくれた。


一方、カイルは不安という表情を浮かべている。

『前世の俺にほんと似てるよな~。』


「カイルには、戦闘についていくつかアドバイスしよう。 ゲイルとイリヤからも頼まれているからな。」

俺がそういうと、カイルは元気よく「はい!」と返事をした。


それから控室で――――—約15分後―――――



―――――――――――—俺の作戦はここから始まる。――――――――――――

受付嬢が控室に姿を現す。

「長くお待たせさせてしまい、申し訳ありませんでした。試験官の方々の準備が完了しました。決闘場に来られましたので、これより実技試験を開始したいと思います。」


受付嬢の言葉に俺は「待った。」をかける。


「実技試験を始める前に、試験者のささやかな願いを聞いて貰えないだろうか?」

という俺の言葉に受付嬢は言う。


「何でしょう? 冒険者ギルドの役員として可能な範囲でお願い致します。」

『かかったな』と俺は心の中で笑みを浮かべる。


「俺は、試験官にこちらの情報が洩れているのを知っている。」

受付嬢は、無表情なまま。

しかし、俺は見逃さない。彼女の表情は、一瞬動いた。


「冒険者ギルドとしては『これも』試験の一環と言いたいのだろう。『情報が漏洩している状況下で、試験者が臨機応変に、どう対処するのかを見定める為』だと、実際合格者もいるらしいし・・・・。」


「・・・・・・・・・・・・。」


「しかし、些か―――――—不平等だ。」

俺は、受付嬢に一瞬ではあるが圧力をかける。


受付嬢は、「ごもっとも」と無表情のまま頷く。


「何がお望みでしょう?」


「試験官側と試験者側 を一度対面させたい。あと試験官を指名する権利を試験者側にくれ。これで、試験者側の情報漏洩はチャラだ。試験官側の情報はいらない。」

と俺は受付嬢に言った。


無表情だった受付嬢がふと笑ったような気がした。

「畏まりました。 では、冒険者ギルドに連絡し、了承を得次第、実技試験を開始したいと思います。」

受付嬢はそう言って控室をあとにする。

数分が経過――――――受付嬢が控室に戻ってきた。


「冒険者ギルドから了承を得ました。 試験官と対面のため決闘場のフィールド内に案内いたします。」

こうして、試験者側は、試験官側と五分五分の立場となった。


『よかった~・・・・。超緊張した。頑張ったな俺!』

と心の中で俺は安堵する。

しかし、作戦はまだ終わりではない。

作戦の最初の段階をクリアしたに過ぎないのだ。


――――—いよいよ試験官と試験者の決闘が始まる。――――――――


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