16 求婚
「ホセ、どうしますか?
あなたがお断りになるのなら、無理は言いませんが・・・」
そう尋ねたクレアを綺麗に無視し、ホセは、フレッドを見つめた。
「王太子殿下、クレアのこと、幸せにしてくださいますか?」
「もちろんだ。
君の分まで幸せにしてみせる」
「クレア、こんなこと言いたくないが、・・・フレデリック殿下の妃になれ」
この可愛い異母妹は、ずっと重荷を抱えていた。
辛かった筈だ。
その荷物をこれからは、自分が持ってゆこう。
「俺、気づいたんだ。
クレアに対するこの想いは、女に対する想いじゃなくて、家族の親愛なんだって」
そう、この言葉は、心からの言葉だった。
いつの間にか、クレアの父親気取りになっていたらしい。
「可愛い妹2人もできるし、身分だって高くなる。いいことずくめじゃん。
お前はなんも責任なんて感じなくていいんだ。
それに、お前、殿下のことが好きなんだろ?」
「え?」
「そうなのかい?
クレア」
「そんなことないです!」
すると、フレッドは、クレアに近づき、頤を持ち上げ、耳元で甘く囁く。
「ドキドキしない?
嫌じゃない?」
国内随一の美声に操られるように、クレアは頷いた。
「それが好きってことだよ?」
そう言われると、心に、「好き」という言葉がすっと入ってくる。
「クレア、大好き、愛してる。
結婚してくださいますか?私の女王様」
「はい。
王子様」
そして、2人はずっと幸せに暮らしましたとさ。




