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【長編版】悪役令嬢は乙女ゲームの強制力から逃れたい  作者: 椰子ふみの


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キャンプの定番

「朝ご飯ですよー」


 ヴィオラはトムとピーターのテントに声をかけたが、なかなか起きてこないので匂いで起こすことにする。

 昨日のカレーの残りを使ったスープの鍋を持って、前をウロウロする。


「朝ご飯ですよー」


 すぐに動きがあった。


「すぐ行きます」


 きちんと返事したのはピーターだ。ヴィオラは鍋を元に戻して、お茶を用意する。

 身支度を整えたピーターが出てくると、すぐにトムのテントに入っていく。やはり、トムのお世話係なんだろう。

 すぐに二人は出てきた。


「おはよう」と挨拶しあってから、ヴィオラは朝ご飯を配った。


「ありがとう。朝早くに大変だっただろう」


 ピーターがねぎらってくれる。


「いつもと同じ時間に起きただけだから」

「生徒会のメンバーで訓練をしているんだろう。そこまで鍛える必要があるのか?」


 トムは鋭い目つきでヴィオラを見た。


「武闘会で引き分けになったことにジョージが意地になっているだけで、後のメンバーは真面目なだけかな」

「王太子を呼び捨てか」

「学園内ではそういう決まりでしょ。それより、どうぞ」


 晩御飯の時に距離が縮まったと思ったのは勘違いだったのかもしれない。ということで、また、食事で懐柔だ。

 チーズを炙って、昨日の残りのナンの上にのせて渡す。


「昨日の残りか」


 信じられないといった様子だが、ピーターが毒見する。


「ん。おいしい」

「でしょ」


 ピーターの反応を見てから、トムも食べる。ほらほら、カレーは次の日が一番なんだから。二人がたくさん食べたから、残りが少なくてスープにするしかなかったけど。

 食後にはピーターだけでなく、トムからもありがとうの一言があって、ヴィオラは大満足だった。


「私を置いて、どこ行ったの?」


 それから、少し経って、ヴィオラは薬草を握りしめて叫んでいた。

 課題の薬草採取に三人で出かけ、ヴィオラは夢中になっていた。植物の見極め、正しい採取方法ができているかなどがチェックされるから真剣だ。

 せっせと摘んで、ふと、顔を上げると、トムとピーターがいない。

 どこにいったんだろうと、あたりを見回したヴィオラはかすかな血の匂いに気づいた。

 匂いの元に歩いていくと、草ネズミという魔獣の死体が転がっていた。きれいに首を切られ、血が流れている。

 魔獣を狩っても課題の点数は上がらないが、狩っても問題ないことになっている。

 草ネズミは群れで行動する。トムとピーターは群れを追いかけて行ってしまったのかもしれない。


「トム! ピーター!」


 ヴィオラは名前を呼びながら後を追った。草を踏んだ跡が残っているから、難しくはない。時々、草ネズミの死体が転がっている。そのまま、ほったらかしにするのは気になるが、二人を見つけるのが先だ。

 ふと、ヴィオラの鼻が血ではない腐臭のようなものを感じた。

 ザンッ。

 何かを切り伏せるような音がした。慌てて、そちらに駆けて行くと、トムとピーターがいた。ゴブリンの群れと向かい合っている。


「トム! ピーター!」

「馬鹿、こっちに来るな。逃げろ」


 足元の石をいくつも拾うとヴィオラは身体強化をかけた。トムの言葉を無視して駆け寄りながら、石を投げる。石が当たったゴブリンはギャっと叫んで倒れる。


「なぜ、こんなところにゴブリンが?」


 学校のキャンプ場にいるには危険過ぎる。


「数が多すぎます。私が食い止めますので、助けを呼んで来てください」


 ピーターが何だかカッコいいことを言ってるけど、背中がざっくり斜めに切れて血が流れている。


「馬鹿なこと言ってないで、大人しくしてなさい!」


 ヴィオラは近くの岩をつかんだ。持ち上げにくいけど何とかなる。


「ほらっ」


 勢いよく投げると、二、三匹のゴブリンに当たった。少しゴブリンが後退したすきにピーターとついでにトムの手もつかんで、治癒魔法。


「痛いの、痛いの、飛んでけー」


 ピーターの目が丸くなった。


「な、治った?」

「それより、何でこのゴブリンたち、逃げないの?」


 グラント領でもゴブリンと出会ったことはあるが、ヴィオラが一匹倒せば、すぐに逃げて行った。


「王都のゴブリンは一味違うわね」

「いや、魔法で操られているようだ」


 トムの言葉によく見ると、石が当たって、ボロボロのゴブリンまで立ち上がろうとしている。


「えっ、それじゃあ、操っている人間を倒さなきゃダメってこと?」


 大ざっぱなヴィオラは探査魔法が苦手だ。


「私が探す」


 トムが目をつぶった。何か聞き慣れない外国の言葉をつぶやく。再び、目を開けると、黒かった瞳が白くなっている。


「こっちだ」


 スタスタと歩き出すトムの後ろをピーターが守る。ヴィオラはとりあえず、雷をゴブリンの上に落とした。火の方が得意だけど、山火事は危険だしね。あ、雷も山火事の原因か。発火していないみたいだから、まあ、いいか。


「雷魔法もできるのか」

「でも、広い範囲にしたから、威力が弱いかも。麻痺するだけでまた、動き出しそう」

「じゃあ、急ぐぞ」


 誰が何の目的でゴブリンなんかを呼び寄せたんだろう。クラスのみんなは無事だろうか。でも、元から断たないとキリがないし。

 ヴィオラは今さらながら、気づいた。

 キャンプの定番がカレーなのは日本の現実のキャンプで、乙女ゲームの定番は魔獣の出現だった。


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