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異世界転生して人外娘と恋がしたい!  作者: こま
第三章 囁く狼
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水車村の真実

「水車村を滅ぼしたのはこの猫ではない。私だ」


オーガの族長とカラスの一騎打ちを止めたのは意外にもだった。


「何を貴様」


「30年前。あの水車村にいたナオトと住んでいた女。あれが私だ。久しぶりだなやんちゃ坊主」


「まさか……」


族長の様子が疑い、戸惑いと顔色を変え怒りに変わる間にウンディーネがヒロ、リロイ、アストリッドを水で包み自分の元へ移動させる。


そして仲間たち全員を水をドーム状にして包んだ。


「おのれ!」


族長が水のドームに刀を振り下ろすが、かなりの量の水を圧縮したもののようで水の壁が刀をはじき返した。


「そういう事?てか、なんでここに来たの?」


「私の住処はすぐそこだ。他のウンディーネたちは海を眺めているが私はずっとここを見ていた。私の愛したものがいた場所をな。そうしたら契約した娘はやたら上級魔法を使い、火の手が何度も上がっているではないか。挙句の果てに見に来てみれば化け猫がこのありさまだ」


「それで、話は聞こえなかったんだけどなんで今こうなってるの?」


「水車村を滅ぼしたのは私で、こいつは何もしていない。それを伝えただけだ」


「なるほどね。リロイ、ケティの様子は?」


ヒロの傷をいったんアストリッドに任せ、リロイがケティの体を調べる。


「大丈夫、怪我とかじゃないみたい」


「ニャニャ、ちょっと変身の感覚が短すぎただけニャ」


「無理させて悪いな。ちゃんと治るよな?」


「ニャー、どうかニャ。美味しいもの一杯作ってくれたら治るニャ」


「俺のこの手治ると思ってる?」


「ならその手が治らないとニャーも死んじゃうニャ」


「だってさ二人とも」


なんだかんだ和やかなムードになっている気がするが、ヒロの後ろではその名の通りの鬼の形相をした族長がドームを攻撃し続けている。


「で、ウンディーネ。この状況どうするの?俺はオーガの村を救いに来たはずなんだけど」


「男の嫉妬や妬みとは恐ろしいな。あの小僧は若いころ私に恋心を抱いていてな。ある時には詩なんぞ歌いおって」


「おのれ!おのれ!おのれぇぇぇえええええええええええええええええええええええ」


「ちょっとマジで止めて」


族長の御乱心に他のオーガ達が止めに入ったが、どうやら話を聞いてヒロたちが出てくるのを待っているらしい。


「このまま移動することもできるが和解をしたいのか」


「俺的にはね。娘がさらわれているから助けてあげたいし鵺の事も気になる。」


「お前は化け猫の言った通り面白いやつだ」


「化け猫っていうニャ」


元気がないのかケティが弱弱しく答える。


その後、ヒロの足を枕にして眠りだした。


「カラスさん、鵺を見たのっていつ頃ですか?」


「恐らく村に狂人が現れたころからかと」


「って事は狼がらみかな?実際に見た人は」


「死者村に偵察に行った者が数名。その時はサイズも小さかったかと」


「見た目はどんなか知ってる?」


「いえ、ですがあれは鵺だと全員が口をそろえて言っておりました」


「見た目は分からないけど、たぶん鵺って事か……」


たぶん鵺。


見た目も言ううことが出来ない。


狼が嘘を吹き込んだ可能性があるが、だとしたら何でだろうか。


だが、実際に鵺がいる可能性もある。


「この中で鵺の見た目知っている人は?」


全員に確認するが誰も知らないようだ。


「なら俺の仮説を聞いてほしいんだけどさ。俺の知識だと鵺ってサルの顔、狸の体に虎の足。最後に尻尾がヘビなんだよね」


「あ、わかったぁ。ヘビも出てくるかもしれないんだね」


「正解」


自然過ぎて気付かなかったが、ミカゲも仲間としてこのドームの中にいる。


カラスはさっきの一件があるからいいのだが、ミカゲはここにいていいのだろうか?


というか、ウンディーネもよく彼女がオーガ側ではなくこちら側とわかったな。


「俺たちは刀を持った大猿。魔法を使う大狸。物理エネルギーを力に変える虎の猫又と戦ってる。こいつらが鵺に関係してるとしたらまだ大蛇が残っていることになる。それに加えて狼の件もあるからほっといたらオーガだけじゃなく鬼もまずいかもしれない」


「なんでそこまでオーガにこだわるんだ?」


「え?だって可愛いミカゲの故郷だよ?守ってあげたいじゃん」


「きゃー!ほんとぉ!」


ウンディーネへの回答で喜んだミカゲがヒロを抱きしめようとするが、「だめ」とアストリッドが怖い顔をしてそれを止めた。


「で、本音はどうなんだ?」


「半分本当で、残りは鬼が居なくなると米の生産量が増えなくなるどころか減って食べれなくなるから」


「はははは、お前はそんな事で命を賭けるのか?」


「いや、米は俺の命だから」


腹を抱えて笑うウンディーネに寝ていたはずのケティが「ナオトもそんなこと言ってたニャァ」とつぶやいた。


「ナオトってケティの御主人の事?」


「そうだ、私たちは3人で住んでいたんだ」


「うわぁマジか……。それでウンディーネはその人に未練があってうち来てくれないんだ」


「あっ」


ウンディーネが何か言おうとしたが、セラが何かに気付いたらしく声を上げた後すぐに自分の口を手で押さえた。


「どうしたセラ」


「な、なんでもない」


明らかに何かに気付いたように感じたが、どうしたんだろう。


「そっか。とりあえず俺の手当てはあとどのくらい?」


「とりあえずの左側は終わったよ。後は二人で右側をやったとして……」


「まだ全然かかるわ」


「二人ともありがとう。セラ、能力石持ってたらカラス、セラの分の魔力を図って。ウンディーネは戦力に数えてもいいんだよね?」


「まぁ仕方がない」


「なら、リロイとアストリッドの魔力も尽きるだろうし魔力の回復をしよう。魔力残ってる人たちは極力見張りということで」


――転寝していたが気付けばヒロの回復が終わっている。


まだ少し痛いがぐちゃぐちゃの状態からここまで回復したと思えばかなりいい方だ。


魔力はウンディーネとカラスがほぼフルの状態で、セラが180程度、残りはほんのり回復したがほとんど残っていない。


辺りは日が昇り始め明るくなってきている。


オーガ達は相変わらずヒロたちを囲んでいるが、なにやら後ろでもめているようだ。


ケティが寝ているので詳細は分からないが揉めているのはタップル達なので庇ってくれているのかもしれない。


仮眠なのでみんな大して魔力は回復していないだろうがそろそろ行動しなければならない。


幸い壁越しに話すことはできるのでとりあえず話しかけてみよう。


それにトイレにすごくいきたいので早くこの壁の外に出たい。


たぶんヒロ以外にもそう思っている者はいるはずだ。


「あの、こちらから提案があるので族長と話せませんかね」


ヒロが話しかけた時だ。


何かが通り過ぎたと思ったら二人のオーガの首が切断され地に落ちた。


それを見て他のオーガ達が騒ぎ出す。


いまのはじっくり見れなかったが水の威圧(ハイドロプレッシャー)だ。


圧縮された水でウォーターカッターの様に首をはね落としたのだ。


でもいったい誰が。


ウンディーネは膝にセラの頭をのせ、撫でながらこちらを見ている。


目が合ったが首を振って自分ではないと意思を伝えてきた。


ならだれが……。


そういえば辺りは明るくなったが霧が濃い気がする。


まるで水車村に行った時のようだ。


嫌な予感がして水車村のある方角を見る。


すると少しずつ霧の中から何かがこちらに歩いてきているように見える。


「なんで来たの?なんで‥‥なんで!?」


突如聞こえた声にみんな驚く。


しかし、その中でも一番驚いたのはウンディーネだ。


驚きで行き成り立ち上がったのでセラの頭が重力に任せて地面に激突する。


「痛っぁ~」


「なんで来たの?なんで…なんで来たの?」


「どうしたのウンディーネ?」


セラがウンディーネと間違えるも仕方がない。


その声はセラと契約したウンディーネとそっくりなのだ。


やがて霧の中から声の主が現れる。


その姿はウンディーネそっくりだ。


髪型はポンパドールではなく下ろしていて、ウェーブのかかっていない綺麗なストレート。


服装は着物のようなものを着ている。


そして何より特徴的なのは全身が真っ黒なのだ。


まるで墨汁のような質感のそのウンディーネはこちらを見ながら黒い涙を流していた。

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