表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生して人外娘と恋がしたい!  作者: こま
第三章 囁く狼
87/300

巨大鎧狸2

突然メルカリが仲間であるはずのラクマの背中に矢を放った。


完全な不意打ちを喰らったラクマは片膝をつきメルカリを睨みつける。


「おのれメルカリ、裏切ったな!!」


だが、メルカリが返事をする前に巨大鎧狸の攻撃がラクマに直撃し、吹き飛ばされ何度か地面を転がると動かなくなった。


するとメルカリが今度はこちらに向かって弓を構えてくる。


「いやさ、確かに候補者潰すのはアリだけど今やるかね」


ヒロの問いかけにメルカリは答えない。


「待って、あれ多分人斬りにされてるんじゃないかなぁ」


「それって村だけじゃないの?」


「そんな事言ってる場合じゃないニャ」


ケティに突き飛ばされ、矢が顔のギリギリをかすめていく。


「それで、止める方法は?」


「取り敢えず気絶かなぁ」


「カラスさんできますか?」


「承知」


すぐさまカラスはメルカリの方へ向かう。


「じゃぁミカゲは攻撃を防ぐのに専念、ケティはラクマを回収して。アストリッドは回復を」


「は~い」


巨大鎧狸が飛ばしてきた炎の塊をミカゲが金棒で軽々と撃ち落とす。


それを確認してケティがラクマを回収しに走り出す。


「お覚悟を」


カラスが接近したのに気付きメルカリが弓をしまい刀を抜く。


一方カラスは刀を鞘に納めたまま構えじりじりと近付いていく。


抜刀術か?と思った時には一瞬紫色の稲妻のようなものが走り、カラスは5メートルほど先に移動し既に何かを切ったようで刀を鞘に納める動作に入っていた。


居合、抜刀術の違いはヒロにはよくわからないが、元の世界で一度だけ見たことがある。


たしか日本刀のイベントだっただろうか。


職場にいた日本大好きの外国人がスマホでとった動画を見せてくれた。


その動画には60は過ぎている老人がパフォーマンスとして居合術を見せてくれるのだが、スマホのカメラでは抜刀の瞬間が早すぎて捉えられないのだ。


彼の解説によると鞘をカタパルトにして刀を高速で抜いているらしいのだが、この世界に来て本物の刀で試したが全くヒロにはできなかった。


しかもカラスはその高速の抜刀を行っただけではなく5メートルもの距離を一瞬で移動もした。


魔法がある世界だからだろうか。


だとしたらあの紫の稲妻が秘密なのかもしれない。


「ねぇいつまでこれやってるの?」


ヒロがカラスの技に見とれていたせいかミカゲが声をかけてくる。


「案はある?取り敢えずあの炎を防げるのはミカゲしかいないんだけど」


「え~っと」炎を打ち落としながら前に出ていたミカゲが振り向きニコッと笑う。


「わかんない」


「わかんないのかよ」


「取り敢えず持ってきたニャ」


ケティがラクマを引きずってきてヒロたちの後ろに置くと直ぐにアストリッドが矢を確認した後、矢を抜いて回復をする。


そこにカラスが気絶させたメルカリを横に並べた。


「セラ!」


「ホエールキャノン!」


セラの目の前に巨大な魔法陣が現れそこから圧縮された大量の水が放出される。


だが、巨大鎧狸の腹に直撃する瞬間に障壁が現れ攻撃を無効化した。


先にメルカリたちの戦いを見ていてもしかしてと思ったが、巨大鎧狸は攻撃力はさほどないが防御力はずば抜けているようだ。


「あいつの足遅いなら逃げたいんだけど」


「多分無理だと思う。もしオーガの村まで付いてきちゃったら?」


「まぁそうだよな」


先ほどまで終われていたセラが言うので恐らく逃げるのは難しいだろう。


それに気絶した二人もいるので戦うしかないかもしれない。


「ケティ、エンシェントドラゴンの時に使ったあれは?」


「ニャー、さっきゴッドノウズ使っちゃったニャ。明日までは使えないニャ」


「カラスさんは」


「セラ様の魔法ほどのものは」


「私なら出来るかも」


攻撃を打ち落としながらミカゲが話を続ける。


「私の魔法ならあの狸のお腹をぶっ飛ばせると思うけどなぁ」


「魔法で?」


いや、野暮なことを聞いたかもしれない。


もし仮にミカゲがダメージを与えられるとしたら誰が飛んでくる炎の塊を打ち落とせばいいのだろうか。


ハルトがいれば悩む必要もなかったが……。


「ケティは……無理だよな」


「無理ニャ」


「私が」


「出来るの?」


「すべては無理ですが、一部であれば」


「よし、じゃぁ気絶した二人をお願い。ケティはセラを頼む。アストリッドはセラにくっついてて」


各自頷くとそれぞれの役割の為に動き出す。


ミカゲが一通りの攻撃を打ち落とすと前に出て、カラスがその場所につく。


そのまま巨大鎧狸に近付くとミカゲが金棒でお腹を思いっきり叩いた。


ドーンと大太鼓のような音を立てて巨大鎧狸の腹が鳴る。


一瞬青い光が見えたので障壁を這っていたようだが、どうやらこの音はミカゲの金棒が障壁を貫通して腹を叩いたようだ。


続けてミカゲが金棒で腹を叩き、ドーン、ドーンと大きな音が響き渡る。


巨大鎧狸はかなり焦っているのか攻撃をやめ防御の障壁に専念している。


「セラ!」


「永久の波を眺めしもの 清らかなる心の源よ」


ミカゲが押しているように見えるが、巨大鎧狸の防御は高くダメージが入っているようには見えない。


だが、ここでセラが援護すれば突破できるかもしれない。


「フリーズダスト!」


セラが召喚した小さな氷の刃で出来た氷の霧が巨大鎧狸の顔だけを覆う。


両手でかき混ぜるよな仕草をすると氷の霧は回転し巨大鎧狸の顔を攻撃する。


魔法の障壁が発生し顔への攻撃を防いでいるがそれでいい。


その間もミカゲが巨大鎧狸の腹を金棒で攻撃し続ける。


やがて氷の霧が晴れるが巨大鎧狸は全くの無傷だった。


だが突然「ぎえええええええ」と声をあげ巨大鎧狸が苦しみ始める。


そこにミカゲが渾身の一撃をくらわすと巨大鎧狸の腹に金棒が突き刺さり、大量の血を流すと巨大鎧狸は倒れ動かなくなった。


「カラスさんナイス。ミカゲもお疲れ様」


ヒロが声をかけると巨大鎧狸の陰からカラスが現れる。


巨大鎧狸が当然苦しみだしたのはカラスの仕業だ。


巨大鎧狸はミカゲの攻撃に防戦一方だったので、炎の攻撃が止まった隙にセラのフリーズダストで視界を奪い、その間にカラスには後ろに回ってもらった。


後はフリーズダストが終わったタイミングで鎧と兜の間に刀を突き刺してもらったのだ。


「やったね。これ持ち帰って鍋にしようよ」


「ダメだって、早く戻ろう。こんなのが他にもいたらどうにもならないから。カラスさんとミカゲでラクマとメルカリを運んでもらえるかな」


悪食の記憶を見てしまったせいか、巨大鎧狸の味が少し気になったが急いでオーガの村に戻ることにした。


ラクマとメルカリが役に立たなかったことを伝えればウィズも喜ぶ結果になるだろう。


オーガの村まであと少しというところであることを思い出しケティに話しかける。


「そういえばヤバいって何だったの?」


「ニャー、忘れてたにゃ。なんか黒いウンディーネが」


「あれ見て」


突然メルカリを肩に担いだミカゲが金棒で村の方を指す。


どうやら村から大きな煙が上がっているようだ。


いったいなんだろう?


胸騒ぎがしてケティと跳躍強化を使い一足先にオーガの村に向かう。


到着して目に入ったのはウィズの居た屋敷に火が放たれており、オーガ達が互いに戦っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ