オベロン
―――妖精王オベロン。
彼は歴代の王とは違って、妖精は変わるべきだと思っていた。
魔王軍との戦いで大陸のあらゆる種族が団結したあの日、何もせずに見ていたことに違和感を覚えていたからだ。
そんなある日、エルフ達が人間と交易し始めたことを知る。
エンシェントドラゴンのもとに住み着いて、人間嫌いであったエルフ達がどうしてと思ったオベロンは一人の妖精に様子を見に行かせた。
その妖精の名はエレナ。
彼女が言うにはエルフの里に二人の人間が住み、エルフ達に知恵を与えているらしい。
人間の何倍も生きるエルフに知恵を分け与えることのできる人間。
オベロンもエレナも彼らに興味を持った。
そしてある日、エレナがその人間に見つかるのだが、彼らは快く受け入れてくれたのだ。
エレナはその人間と頻繁に会うようになり、やがて恋に落ちる。
オベロンは大妖精たちとの話し合いの末、エレナの相手を妖精の森に受け入れ、二人が夫婦になることを認める。
その後、その人間、つまりはマサミチの提案でオリーブを育て始めて妖精の森は変わった。
妖精達は働くということを覚え、最も親しいドーワーフ達のもとで簡単な仕事をすることも認めた。
秘かに人を救い大妖精になるだけの人生しかなかった妖精たちに選択肢が生まれたのだ。
しかし、妖精の魔法は強力で、特に妖精の粉を使った魔法は願いを力に変えて発動する。
もし、底なしの悪意を持った人間に妖精の力が渡ってしまったらどうなってしまうだろうか。
だからこそ妖精は秘かに誠実な者を助けてきたのだ。
そうこう考えているうちにオベロンは必要以上に自分が人間の事を知ろうとしていることに気付いた。
そこから彼の行動は早かった。
彼は自らの羽を切り落とし、王の資格と共に妻であるティタニアルに渡した。
妖精の力を失ったオベロンはロンと名前を変えて、冒険者となり世界を冒険したのだ。
そして妖精の森に戻ったロンはティタニアルに世界をまわって見てきたものを話し、あることを決めた。
決意をもって掟に背く妖精が現れ、それを悪意のない人間が助けるのであれば妖精の在り方を変えようと。
これが妖精王の話。
どうやらヒロはオベロンに認めてもらえたようだ。
だが、それじゃアストリッドをよろしくねとなるわけではなかった。
「願いをかなえてほしい?」
ティタニアルから出された条件にヒロは驚いた。
願いを叶えてもらうために願いを叶えて。
まぁよくある話だと思ったが、妖精の女王様からのお願い事が来るとは思わなかった。
女王が叶えられない願いとなるととんでもない事を要求されるに違いない。
「で、妖精の女王がわざわざ人間に叶えてほしい願いって何です?世界平和とかの規模は無理ですよ」
「いえ、そうではありません。私を自由にしてほしいのです。」
「自由?」
初めは意味が分からなかったが、話を聞いているうちにとんでもない事を頼まれていることに気が付いた。
ティタニアルは元々アルラウネという下半身が赤い花の植物のモンスターだったらしい。
サイズは人間と同じサイズだったのだが、オベロンから妖精王の力を授かって今の姿になったのだとか。
彼女の願いは元のサイズに戻ること。
そして夫に抱きしめてもらいたいという事だった。
なら、願いの力を使う妖精の魔法を使えばいいじゃないかと思ったがそうではないようだ。
ここでエンシェントドラゴンが関わってくる。
どうやらエンシェントドラゴンを中心に大地の汚染が広がっているらしく、ティタニアルは大地に根を張ってそれを抑えているそうなのだ。
つまり、ヒロたちはエンシェントドラゴンの元へ向かって原因を調査して解決しなければならない。
ハリー達がゾンビになったあの場所に行かなければならないのはかなり難易度が高い。
そして、ただ行って帰ってくるだけでなく解決もしないといけないとなると想像すらつかない。
猶予は一ヶ月。
それ以上たてば妖精たちは今の森を捨て移動しなければならないようだ。
妖精の森の移動は大量の魔力を消費するらしく、最悪ティタニアルの命が危なくなるらしい。
正直即答は出来ない。
だが、仲間たちの顔を見ると皆決意が決まっているようだ。
ただヒロの決断を待っている。
「わかった。できるだけの事はやってみます。」
どうせ断っても仲間が反対するに違いない。
それに、ヒロ自身もここまで来たらできる限りの事はしてあげたい。
ヒロが答えると、ティタニアルは笑みを浮かべ大妖精たちに合図した。
大妖精たちはそれぞれ杖を取り出してアストリッドに魔法をかける。
「この魔法はあなたが使命から逃げた時あなたの羽を奪います」とレッドフェアリー。
「私のはあなたが悪しき心の持ち主に掴まった時、あなたの羽を奪う魔法」とグリーンフェアリー。
「最後に私の魔法は一ヶ月後に貴方の羽を奪いますよ」とブルーフェアリー。
3人が魔法をかけ終わると
「その魔法はすべてが終わったら私が解除しましょう」とティタニアルはアストリッドに告げた。
今から一ヶ月。
それなりの準備をしなければならない。
だが、その前に一つやらなければならないことがある。
アルラウネがいるなら会わなくては。
――――――
アルラウネ。
一説によれば、絞首刑になった童貞の精子やらなんやらが地面にかかった時に生まれるモンスターで、男の精をむさぼる植物版サキュバスという噂だったが全然違っていた。
ティタニアル同様の白に近い緑色の肌で下半身は大きな花。
服装はティタニアルとは違って、自身のツタで胸を隠していた。
言葉は喋らないのだが、近寄ると愛想がよくハグで出迎えてくれて、瓶に蜜を汲んでいっていいよと身振り手振りで教えてくれた。
アルラウネの花びらを避けて下半身を見ると腰から股までが密に浸かっていて、そこから瓶に蜜を汲んだのだが、なかなかすごい体験だった。
セラが見ているので鼻の下を伸ばす訳にもいかないし、オグとハルトは恥ずかしいのかずっとよそを向いていた。
そんな中ヒロは紳士?の顔をキープして蜜を頂戴したのだ。
この蜜はどこから湧き出たのだろうか。
場所が場所だけに夢が広がる。
これは宝物にしようと抱いて眠りについていたころだった。
「起きるニャ、起きるニャ」
ケティに体を揺すられて目を覚ます。
よく見るとセラがいない。
「どうした?」
「どうしたじゃないニャ。ハルトとセラが密会するニャ」
「え?」
ケティの言葉に急に目が覚めた。
セラとハルトが真夜中に密会?ふざけんな
ケティによると、昼間のうちにハルトが今夜会えるように声をかけていたようだ。
いったいどんなけしからん事をするつもりだ。
「ケティ案内して」
「そういうのを待ってたニャ」
ケティの案内の元小屋を出る。
ハルトのやつ、そうはいかんぞ




