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異世界転生して人外娘と恋がしたい!  作者: こま
第二章 龍喰らいの悪食
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妖精の歌姫

ドワーク達の都市、ドワーフ坑道は外から見た以上に広かった。


今現在、鉱山の一角にある大きな空間を利用した酒場で夕飯を食べている。


まわりにいるのはみな身長150センチほどの男たち。


身長は小さいがみんな小太りで、顔は立派な髭とボーボーの眉毛で露出している顔の肌より毛の比率の方が圧倒的に多い。


そんな彼らこそがドワーフという種族で、毎日坑道で鉱石を堀り、加工し、酒を飲む。


ドワーフは男しかいないのだが、酒場のウェイターは女性が行っている。


彼女たちは実は人間ではなく妖精で、魔法によって一時的に人のサイズになっているんだとか。


背中の羽は人間サイズの時はなくなってしまうらしい。


なので、説明を受けるまでは分からなかった。


なぜドワーフの都市で妖精が働いているかというと、ドワーフと妖精は共存状態にあるからだ。


ドワーフ坑道の隣には大きな妖精たちの住む森がある。


ドワーフはダイヤを掘り、魔法の粉に加工する。


妖精たちはその粉を使って人間をはじめとする他種族に幸せを運ぶのだとか。


「それにしても、新しいスキルがあるなら教えておいてくれよ」


「だって、びっくりさせたかったんだもん」


「びっくりしたよ」


ご飯を食べ終わって、今日の反省会が始まる。


知らない間にオグとセラは魔法とスキルをいくつか習得しており、セラは下級魔法1、中級魔法を二つも覚えたようだ。


まずオグが敵を引き付けたあの魔力を帯びた声。


プロボーグというスキルで、ギルドによっては挑発とも呼ばれるそのスキルは自身の声に相手のヘイトを稼ぐ魔力をのせて注意を引くのだとか。


その効果は消費魔力量と熟練度によって範囲や効果が変わるようなのでオグはこれから積極的に練習をしていくらしい。


次にセラの下級魔法アイスバリア。


二枚の氷の盾を召喚し自身の周囲に展開する魔法だ。


盾は召喚したら終わりなのではなく、魔力消費によって維持し続ける必要があるらしい。


その消耗スピードはすさまじく、毎秒魔力を1ずつ消費するのだとか。


セラの魔力量は大分増えたが、それでも長期の戦いになる場合は魔力管理が大事になるだろう。


そして中級魔法の泡の監獄(バブルケージ)氷結の宴フリージングフィールド


泡の監獄は水の塊に敵を閉じ込め溺れさせる。


氷結の宴は冷気を閉じ込めた氷を召喚し、なかの冷気で周囲を凍らせる魔法だ。


全てウンディーネの力を借りる魔法を覚えたのはセラなりにウンディーネに感謝をしているのだろう。


にしても、ぶっつけ本番で一人ほったらかしで戦い始めたのは本当に驚いた。


いざというとき全員の能力を把握しているかどうかで戦略が変わるので、驚かすのもいいがもっと別の方法にしてほしかった。


「兄さんたち冒険者さんなんだろ?もうじきいいものが始まるからステージの方を見ててくれよ」


今後の戦闘の構成を話し合っていると一人のドワーフが話しかけてきた。


スキンヘッドにドワーフらしい立派な髭、まるでミニチュア版タカシって感じの男だ。


ステージの方を見ると今歌っていた妖精がお辞儀をして袖にはけていく。


先ほどからジャズやクラシックなどを演奏し歌も歌っていたのは気付いていたが、何か別のものでも始まるのだろうか。


「なにかあるんですか?」


「し、いいから見てて。絶対に気に入るからさ」


そう言うと一人の女性が舞台袖から出てきたが、何もないところでつまずいて転んだ。


転んだショックで魔法が解けたのか女性は小さい妖精に変身した。


「しっかりしろアストリッド」「まってたぜアストリッド」と笑い声と共にドワーフ達からヤジと声援が飛ぶ。


アストリッドと呼ばれたその妖精は魔法で人のサイズになるとステージの中央に立った。


「出だしは失敗しちゃったけど歌の方は任せてください。今夜も皆さんの為に歌います。」


そう言って彼女は深呼吸をして目を閉じる。


その瞬間、この場の全員が何かを待つように先ほどまでにぎわっていた酒場は静まり返った。


「一曲目です。聴いてください。シューティングスター……」


彼女が目を開きそう言うとステージの左右に小さな石を投げる。


石は空中で制止し、そこから音楽が流れ始めた。


その瞬間ドワーフ達は全員立ち上がり突然の大盛り上がりが始まる。


さっきまで演奏されていたクラシックやジャズ風の音楽とは違う。


ロック……?いや、ロックなのだがとても懐かしいジャンルに近い。


アニソンって感じの曲だ。


バトル物のアニメのオープニングと言われたら疑わないようなそんな感じの。


そして驚くのは今歌っている彼女の歌唱力だ。


見た目は美人というより可愛い系の女の子だが、声だけ聞けば確実に色のある女性の声だ。


まわりの空気もあるかもしれないが彼女の歌は心が躍る。


立ち上がって他のドワーフ達の様に騒ぎたいが、まるで心臓を掴まれているように動けずただ聴き入ってしまう。


こんな気持ちになったのはいつぶりだろうか。


どのくらいたっただろうか、一曲目が終わった時には何もしていないのにうっすらと汗をかいていた。


やっと動ける……、仲間たちを見るとみな同じだったようで、軽い放心状態だ。


「みんなありがとう。今日は2曲の約束なので次が最後です。後悔が無いようにみんな全力で盛り上がって!――ブレイクスルー!」


再び宙に浮く石から音楽が流れ始める。


そして盛り上がるドワーフ達。


ケティは酒を持ったままオグの肩に乗りオグに立つように頭をポンポンと叩く。


セラも私も乗せてとオグの腕を叩くとオグは反対側の肩にセラを乗せて立ち上がった。


2曲目の曲はさっきの曲よりもテンションがあがる――というか無理やりあげさせられている?


間違いなくアニメの戦闘シーンで挿入歌として使われたなら画面の前で熱狂していただろう。


現にセラ達は彼女の熱烈なファンと化し、もった飲み物をぶちまけながら腕を振っている。


そんなヒロもヒロで降りかかる酒や水も気にせず彼女の歌に聴き惚れていた。


曲を歌い終え彼女が袖へはけていくと、ドワーフ達は満足そうに新しく酒を注文して席について談笑を始めた。


「ね、気に入ったでしょ」さっきのドワーフの質問に


「もう最高!」とセラは満面の笑みで答える。


「へへへ」


セラの一言にドワーフは自分の事の様に喜んでジョッキに残った酒を飲み干した。


「ところで君は鍛冶職人のドワーフ?それとも鉱山で働いている方?」


「僕は全部やるけど、どちらかというと細工の方かな」


「お、ちょうどよかった名前と場所を教えてほしいんだけど。ぜひ酒が入ってない時に見てほしいものがあるんだ」


「もちろん大歓迎さ!僕はリロイ。君は」


「俺はヒロ。セラ、ケティ、オグ、ハルトね」


そう言って一人ずつ指さすとみんな軽い会釈をする。


「ねぇその人たちの友達になったの?」


そう言ってリロイの顔の横にさっきの妖精が飛んできた。


「そうなんだアストリッド。この人たちも君の歌を気に入ってくれたって」


「本当に!」と大喜びして彼女は人間サイズになり「ありがとう!」と握手をしてくれた。


「二人は知り合いなの?」


「うん、そうなんだ。彼女は僕が生まれた日に初めてドワーフ坑道に仕事に来たんだ」


「だからリロイは私の歌で目覚めたのよね」


「そうなんだ」と二人はお互いを見つめてはにかんで見せた。


「なに、二人は恋人か何か?」


そう訊いてみると、また二人は見つめ合って笑顔になった。


「実は僕たちここを出ようと思っているんだ」


「二人で世界をまわって、私の歌を聴いてもらうの」


「後は実行するのみなんだ」二人は嬉しそうに互いの手を取り合う。


「ちょっと待って、旅立つ前にさっきの話忘れないでくれよ」


「大丈夫、まだしばらくはここにいるからさ」


まさか頼みごとをする前に出て行ってしまうのかと焦ったが大丈夫のようだ。


彼の住所を聞き、食事を終えると二人に挨拶をして酒場を後にした。

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