表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生して人外娘と恋がしたい!  作者: こま
第二章 龍喰らいの悪食
41/300

チキンレッグ

腹をすかせた獣の目。


例えるならそれが一番しっくりくるだろう。


もし闇夜にいたならば赤く光り、見たものに恐怖を与えたに違いない。


今その目をした3匹の獣がヒロを出迎えた。


「ご飯を……ご飯をください……」


「――ごはん」


オグとハルトがゾンビのように近寄ってくる。


セラは既にヒロの右腕に噛り付いてカジカジやっている。


「ごめんセラ。今は笑えないからそれ辞めて」


ゾンビ問題のあったエルフの里から戻ってきた夜にこのゾンビ風の出迎えは少し不謹慎だ。


話を訊くとセラ達は狼討伐のクエストを受けに行ったらしいのだが、既に粗方の狼は討伐されクエストがなかったらしい。


残された食料を昨日の昼には食べ尽くした3人は今の今まで空腹に耐えながらヒロの帰りを待っていたのだ。


「食事にする前に仕事の話をしたかったんだけど」


「ガルル」とセラは犬か狼のようにまだ腕をカジカジしている。


「わかったよ。先に食事にするから冒険者ギルドに行こう」



――冒険者ギルド内の酒場に来るのはかなり久しぶりだ。


この一か月間ほぼ外に出なかったこともあって一度もここには来なかった。


一ヶ月とは短いようで実は長い。


今日はそれを実感することになった。


「さぁ野郎ども!準備はいいか!?」


『うおぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお』


恐らくは何らかの魔法だろうか、マイクのようなものが男の声を大きくしている。


「さぁ今宵も一本試合の時間がやって来たぜ!ルールは簡単だ!酒場中央にある円の中で男たちが素手でぶつかり合う!武器防具、殴る蹴るは禁止!魔法も禁止!円から押し出すか、投げ飛ばす、膝をつかせた方が勝ちのシンプルなルールだ!」


『うおぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお』


「そして今日初めの挑戦者はこいつだ!身長2メートル越えの大男!自称最強のハンマー使いハンマだ!」


酒場の中央にハンマと呼ばれた筋骨隆々の男が立ち両手を上げる。


冒険者たちからは「よっ」とか「ハンマー使いとかまんまじゃねーか」など声援とヤジが飛び交う。


「そして迎え撃つは最強のディフェンディングチャンピオン!オークの強さに人間の柔軟さ!おぉぉぉぉぉぉぉぐぅぅぅぅぅぅぅぅ!」


『オグ!オグ!オグ!オグ!オグ!オグ!オグ!オグ!オグ!オグ!オグ!オグ!オグ!』


突然のオグコールに「え?」と呆気にとられているとオグが席から立ち上がり中央へ向かっていく。


「さぁみんなどちらに賭けるか決めたか!?今日のオッズはこちらだ!オグ1.2、ハンマが4.3」


『うおぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお』


盛り上がる酒場の冒険者たち。


2階からも「オグ今日も頼んだ!」「頼むからたまには負けてくれ」など声が聞こえる。


「なお、この試合での収益は酒場の修繕費とオグのパーティへのチキンレッグ代になります」


それを聞いてセラ、ケティ、ハルトが


『チキンレッグ!チキンレッグ!チキンレッグ!チキンレッグ!チキンレッグ!チキンレッグ!』


と両手で机を叩き盛り上がり始める。


「さぁまもなく試合開始だ!準備はいいか!3,2,1――」


酒場の女の子がゴングを鳴らすと試合は始まった。


オグよりも体が大きいハンマがオグにつかみかかる。


だがオグを掴んだかと思うと次の瞬間にはオグがハンマを投げ飛ばしていた。


流石オグ、どういう理屈か知らないが本当に強い。


カン、カン、カンと試合終了のゴングが鳴らされる。


『オグ!オグ!オグ!オグ!オグ!オグ!オグ!オグ!オグ!オグ!オグ!オグ!オグ!』


盛り上がる冒険者たち。


『チキンレッグ!チキンレッグ!チキンレッグ!チキンレッグ!チキンレッグ!チキンレッグ!』


狂気とかした仲間たち。


酒場の女の子がチキンレッグを運んでくるとオグも戻ってきて4人はそれに齧り付く。


話によると、オークのオグに興味を持った冒険者が腕相撲を挑み、それがエスカレートして今のような相撲や柔道を混ぜたようなルールでオグに挑むのが冒険者の間で流行ったらしい。


酒場の中央の机はどかされ今は特設リングになっている。


オグはお爺さんに合気道を習っていたせいか攻撃をいなすのがとてもうまい。


その結果、最強のチャンピオンとして酒場に来ると毎晩試合を申し込まれ、報酬として食べ物を受け取っていたようだ。


「なぁ3人ともさ……昨日の夜もここに来ればチキンレッグは食べれたんじゃないか?」


チキンレッグを貪り食う3人の動きが一瞬ピタッと止まる。


え…まじで気付いてなかったの?……


「さぁ他にチャンピオンに挑みたいやつは居るか!?」


「俺が相手をするぜ」


司会の男の問いかけに答え、ギルドの外から一人の男が入ってくる。


身長はオグとあまり変わらない様に見えるが190センチくらいだろうか。


それでも十分にデカい。


その男を見て「あれガトーじゃないか?」「あ、ショコラのパーティの」と冒険者たちがざわつきだす。


「なんと西に遠征に出ていたショコラのパーティ!その前衛にしてその肉体は最強の盾!モンクのガトーの登場だ!」


『うおぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお』


『チキンレッグ!チキンレッグ!チキンレッグ!チキンレッグ!チキンレッグ!チキンレッグ!』


酒場の盛り上がりは収まらない。仲間たちの興奮も収まらない。


オグとガトーが中央のリングに立ち、観客たちはゴングが鳴るのを待っている。


――酒場の女の子がゴングを鳴らす。


「ブースト」


ガトーが自身にスキルをかけ、その巨体に似合わない速さでオグの周りをまわりだす。


流石のオグも目で追うのが精いっぱいのようだ。


でも、あれ身体強化のスキル使ってるけどいいのか?


そんな事を考えているうちにガトーはオグの後ろから腰に手を回し、そのままブリッジをするようにオグを投げ飛ばす。


ジャーマンスープレックスだ。


これはオグの負けだと思ったがそうではなかった。


オグはガトーの腕を抑えたまま見事に着地し、その勢いでガトーを投げたのだ。


投げられたガトーは派手に冒険者たちが座っていた机に激突した。


だが、誰も声を上げない。


酒場の中は静まり返っている。


オグの切り返しに驚いたのか、それともどちらが勝ったのか困惑しているからだろうか。


「あれ、オグの足が線から出てるよな?」一人の冒険者が沈黙を破る。


確かにオグの片足が円から出ている。


だが、ガトーも身体強化らしきものを使っていた。


身体強化のスキルは魔力を使うので魔法のようなものだ。


それ故に今まで誰もつかってこなかったようで、皆審判の判定を待っているようだ。


「えっと……身体強化はどうだったっけ?」と司会の男が頭を掻く。


冒険者たちも困惑の顔をしている。


「俺の負けだ!」そう言って投げ飛ばされたガトーが立ち上がった。


「こんだけ綺麗に投げ返されたんだ。ルールは知らんが俺の負けだ」


『うおぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお』


『オグ!オグ!オグ!オグ!オグ!オグ!オグ!オグ!オグ!オグ!オグ!オグ!オグ!』


『チキンレッグ!チキンレッグ!チキンレッグ!チキンレッグ!チキンレッグ!チキンレッグ!』


この瞬間酒場の熱気は最高潮に達した。


酒を酌み交わす冒険者たち。


互いの健闘を称えるオグとガトー。


チキンレッグを餌を待つ雛鳥の様にまつ仲間たち。


てか、ハルトってこんなテンション出せるんだな。


と、意外な一面に驚いているともっと驚いたことが事が起きた。


何人かの女冒険者がオグの頬にキスしている。


マジかよ!


1カ月とは短いようで長い。


知らない間に仲間たちは社会に馴染んでいたようだ。


というか、馴染んだって言っていいのだろうか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ