女性問題が凄いヒーラー
カタカタカタカタという音を立ててリガニーが追いかけてくる。
「ライトニング」
セラの杖から稲妻が放たれリガニーに直撃する。
「よっしゃ今だ!」
ヒロがスレッジハンマーでリガニーの頭を粉砕する。
合計20匹。
武器が全く通じないのでヒロは一度町に戻り、柄が90センチほどのスレッジハンマーを買ってきた。
重さが4キロほどで、重い部分も先端の部分だけなので比較的に持ち運びしやすい。
何よりも刃物が役に立たないリガ二―の甲殻を破壊できるので、ヒロは敵によって武器を変える大切さを身をもって知った。
不思議なことに狼と違ってリガニーの命を奪っても、さほど何とも思わなかった。
命を奪う事になれたのか。犬猫の様な身近な動物がダメなのか。赤い血を流す生き物がダメなのか。
多分最後だ。
「ニャー達大分上達したニャ」
「確かに連携がしっかりできたね」
「うん!」セラは嬉しそうに頷く。
「もうすぐ日も暮れるし今日はもう戻ろう。ケティはどこに泊まってるの?」
「ニャーは自分の家があるニャ」
「じゃぁご飯だけ一緒に食べよう」
「ニャー、それなら美味しい店を知ってるニャ」
「それじゃぁギルドに報告してから向かおうか」
リガニーの死骸をそのままにしておくわけにはいかないので、一カ所に集めると3人は町へ向かった。
――――――
夕食の席で訊いた話だと、ケティは色々なパーティに入れてもらい、人間の街を回って美味しいものを探していたらしい。
結局、捕れたての魚が一番美味しいということで故郷のジャポンに帰ってきたようだ。
ケティは肉体強化系のスキルを集中的にとっているようで、状況に応じて組み合わせてかけるらしい。
そして、ぱっと見ではわから無かったがメスだそうだ。
「それでキングゴブリン討伐のクエストは参加するのかニャ」
「う~ん、それが決めかねてるんだよね」
「参加しなかった場合、約2週間はサザラテラにはもどれニャいよ」
「――そうだけど、ゴブリンキングは危険そうだから」
「話を聞く限りでは心配なさそうニャ」
ここから前に宿泊した集落までは馬車で5日ほどかかる。
参加しないでゴブリンキング討伐の知らせを待つ場合、討伐に向かった日にゴブリンキングが討伐されたとしてもジャポンにその知らせがくるまで5日かかる。
クエスト開始日が7日後なので最短でも12日後にやっとここを発つことができる。
お金には困ってないが、ケティがいる今なら参加してもいいかもしれない――と思ったが、セラに何かあっても回復する人がいない。
「参加したいけど回復役がいないからダメだ」
「パーティの募集を見てきた人はニャーだけかニャ?」
「そういえばあれからギルドに行ってないよ」セラが謎の期待を口にする。
「ニャーみたいに食べ物につられて誰か来てるかもしれないニャ」
「たしかにたしかに」
「確かめに行ってみるニャ」
――――――
「パーティの参加申請者が一人いるニャ」
「え?本当に?クラスは何ですか?」
「ニャー…っと…ヒーラーですニャ」
「ヒーラー!?」
冒険者ギルドのケットシーの言葉にヒロは驚いた声が出る。
願ったり叶ったりだ。こんなタイミングよく回復役が来るのはかなりありがたい。
「名前はなんですか?」
「ニャーっと…ハルトですかニャ」
名前を聞いて少しはっとする。ハルト…聞いたことある気が…。
「どんな人です?」
「結構いろんなパーティに参加していたみたいニャ」
「直近のパーティを離れた理由わかります?」
「そこまでは分からないニャ。でも、女性問題や男の仲間が変死することがあったみたいニャ」
「――あ、ダメだ思い出した…」
ヒロの顔が真顔になる。
ヒーラーのハルト。サザラテラの冒険者ギルドでも聞いた女性問題で幾多のパーティを解散させた男だ。
しかも仲間が変死するとか危険すぎるんだけど。
「どうかしたの?」
「セラ、あれだよ。サザラテラの冒険者ギルドでも噂になってた例の…」
「あぁ、あの人だ」
セラもどうやら気付いたようだ。
「とりあえず考えます」
そういって、ヒロは冒険者ギルド内の酒場に向かう。
ここジャポンの冒険者ギルドも半分は酒場になっている。
そこの一つのテーブルに座るとヒロは全員分の飲み物を注文した。
「なんでお願いしなかったニャ」
――ケティにサザラテラでのハルトの話をする。
「ニャー、それは怖いけどちょっと気になるニャ」
「私も気になるかも」
「そうニャ!気になるニャ!」
「一度会ってみてもいいんじゃないかな?」
「会うのも危険なんじゃないか?」セラとケティは興味津々だが、ヒロは乗り気ではない。
幾多の女性問題でパーティを解散させてきた男だ。
今この段階で年頃のセラと雌猫ケティが興味を持っている時点で嫌な予感しかしない。
それに仲間が変死しているのも気になる。
女の取り合いで殺したんじゃないのかとさえ思ってしまう。
「それに男の仲間が変死してるっていうのはちょっと怖いし」
「ちょっと待ってるニャ」
ケティが受付に行ってなにか紙をもらってくる。
「ニャにニャに…冒険者ギルドの調査によると仲間の男の変死の原因はモンスターの仕業らしいニャ」
「モンスターのせいって言っても、わざと回復しなかっただけかも」
「それはニャいニャ。ギルドの方で調査をしているし、故意の仲間殺しは冒険者ギルド永久追放ニャ」
「ギルドの調査が甘かったのかも」
「嘘を見抜く魔法道具を使って尋問も行ったと書いてあるニャ」
「なんでそんなに推してくるんだよ」
「推しちゃダメニャ?このパーティには回復役が必要ニャ」
「回復役がいたって俺たちが死んだら意味ないだろ?」
「そんなこと言ったって面白そうニャ!」
ケティは全く引く気がない。てか、面白そうってなんだよ。
結局、数時間にわたるケティとセラの強い推しに負けたヒロは、明日そのハルトというヒーラーにあうことになった。




