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異世界転生して人外娘と恋がしたい!  作者: こま
第一章 ゴブリンキング
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おはよう

体が揺れている。


目を開けると馬車の天幕と――眠っているセラの顔が見えた。


泣いていたのだろうか、目の下が赤く少し腫れている。


右手を挙げて視界に入れる。


グローブが取り外されて、腕の部分の服はなくなっている。


傷は――綺麗に治っている。神官のフレイのおかげだろうか。


腕に噛みついたまま絶命していく狼の目を思い出す。


生きるために命を奪った。わかっていたけれど何か心に痛みを感じる。


自分も死んだらああなるのかな。


「狼に噛まれた位で気絶するなんて結構か弱いんですね」


「腕がぐちゃぐちゃになったのは初めてだったので…」


フレイに話かけられて体を起こす。


馬車の荷台にはフレイとセラしかいないので、どうやらハリー達は先頭の馬車のようだ。


「冒険者はそんな傷、日常茶飯事よ」


「覚悟はしてたんですけどね」


「あなた達、冒険者を続けるなら早めに回復スキルのある仲間を見つけないとダメね」


回復スキルか……確かにそうだ。今回はかなり運がよかった。


先輩転生者たちの50%はゴブリンに殺されているらしい。


ゴブリン以外も含めたら80%がすでに亡くなっている。


ゴブリンではなかったけど、狼だってサザラテラ周辺。つまりは超序盤の敵になる。


もしハリー達のパーティが同行してくれていなかったらどうなっていただろうか。


少なからずヒロが気を失う直前には全部で10匹はいた。


2匹でこの様なのだ。10匹に襲われていたら間違いなく先輩転生者たちと同じ末路をたどっていただろう。


「それにしても、狼が人間を襲うのって珍しいんですよね?何かあったのかな」


「私たちもそれについて話したけど、結論は出なかったわ」


カシミール商会のアルノに今回の同行の許可をもらって出発までの3日間、ゴブリンの相手をするためにスキルの習得と、ゴブリンに対する知識もある程度つけていた。


なので実際、初日は止めが刺せなかったけども怪我をすることはなかった。


そして狼はゴブリンを捕食対象としているため、馬車で移動する8人組の人間を襲ってくることはないと思っていたのだ。


というか、出発前にも相談したのだが、ハリー達も狼に襲われることはないと説明してくれていた。


野生の生き物に絶対はないという事かな。


「後数時間したら集落があるから今日はそこに泊まるわよ」


「今何時ですか?」


「11時ってところかしら」


「って事は…」


「4,5時間は眠っていたわね」


4,5時間か…。気絶ついでに大分寝てしまったな。


セラの横に腰かける。


フレイと会話がしたかったけど、セラが起きたときにそばにいてあげる方が大事な気がした。



――――――



近くの集落に付いた。


日はまだ高いが今日はここに泊まることになるらしい。


右手にしていたグローブは爪と牙でボロボロになっていたので新しい物を買った。


始めにしていたグローブは肘まで護れるタイプだったので、小盾を固定する紐で腕が痛くならなくて良かったのだが、集落にはそんなにいい物がなかったので仕方なく右手だけ短いグローブをつけることにした。


港町に付いたら手甲か籠手にした方がよさそうかな。


セラは目覚めたときに「おはよう」と言ったら、涙をいっぱい瞳に貯めて抱き着いてきた。


涙だけではなく鼻水も服に付いた気がするが、怖かったから仕方ないよね。


「ちょっと二人ともこっちに来てくれ」


ハリー達が集まって話している所に呼ばれた。


「どうしたんです?」


「狼が俺たちを襲った理由が分かった」


ハリーは来た道の北側を指さして言った。「どうやら大きめのゴブリンの巣ができたらしい」


「ゴブリンの巣ですか」


「そこのゴブリン達がかなり厄介で、狼たちもなかなか苦戦していたみたいだ」


「――だから俺たちを襲った…」ウォータがボソッとつぶやく。


「ぶはは、ならば俺たちでぶっ潰しに行くか!」


「――それは今回の仕事と違う…」


「そんなこと言ったって、どうせ帰りにまた通るんだ。ここで潰したってかまわないだろう」


ランドはどうやらゴブリン狩りに行きたいようだ。


「冒険者ギルドに依頼は出していないんですかね?」


「それがすでにクエストを受けて二組の冒険者のパーティが向かったが帰ってこないらしい」


「二組って事は8人ですか」


「いや、先に4人、後に6人の計10人だ。俺たちでやるにはちょっと敵の数が多いのかもしれないな」


ハリーの言うことが正しければ、間違いなく駆け出しのヒロたちは関わるべきではないだろう。


「いざとなれば100匹のゴブリンだって何とかなるだろ!なぁ、フレイ」


「私は嫌ですよ。お金にもなりませんし」


「何を言っている。クエスト報酬は5シルバーだ!」


「今回の護衛の報酬の方が高いでしょ」


「戦いのないクエストなんぞなんも楽しくはない」


「じゃぁあなた一人で行ってくれば」


「――さよならだなランド…」ランドとフレイの会話にウォータが「くくっ」と笑いながら言う。


「で、どうするんですか?」


「どうするも何も、俺たちの仕事は護衛だ。ゴブリンは他の冒険者に任せるよ」


ハリーがそういうといったん解散することにした。



――――――



敷き詰めた藁の上にセラが布をかぶせる。


「じゃぁ毛布かけるよ」


今日は集落にある馬小屋に泊めてもらうことになった。


あのあと、集落の食事処でみんなで食事をしたのだが、セラがフレイに懐いたのか、フレイがセラのオーロラソースを気に入っていたのか、二人はずっとくっついていた。


その関係で、セラの今日の魔力消化が終わっていないのだが、どうしたものかな。


セラの攻撃系の魔法はファイアボールだけで、どうやらこの集落では練習できそうな場所がない。


かといって、日常生活用の魔法もほぼマスターしてきているので、新しい魔法を思えるまでは魔力量の増加しか練習の意味がなさそうだ。


「今日の魔法の練習はどうするの?」


察したのかセラの方から訪ねてきた。ちなみにヒロの方はセラとフレイがいちゃいちゃしている間に終わらせている。


「今日は大変だったし、お休みにしておこうか」


正直、今朝の狼との一件は魔力が回復した朝方だったからよかったが、もし寝静まった直後であれば魔力がなくてセラのアシストがなかったかもしれない。


そう考えると、完全に安全が確保されたところ以外では魔力をしっかり残しておくことは大事なことかもしれない。


まだまだ詰めが甘いな。


そう思いながら眠りにつく事にした。


―――とりあえず馬糞臭い。

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