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022_正々堂々卑怯に頑張る



最終的には押し切られてジルを連れてくはめになったが、気を取り直してバーニーズ団のアジト見に行くか。


「じゃあ、さっさと片付けるためにスラム行きましょうか」


「あ、その前に。バルツァーさん,うちのドルキーからお礼持ってけって言われてたのよ」と、ジルが思い出したかのように、懐から1枚のスクロールを取り出し「よしよし、ここは当然いけるわね」と言いながらスクロールを目の前にかざしたかと思うと、急に目の前にエール樽が召喚された。


「何時見てもその魔法は凄いな。っとあの野郎は俺に酒気帯び業務をやれってか……いや、しょうがないよな、俺は飲みたくないんだが、頂いたもんはなー、人様のご好意を無駄にしたら罰が当たるってもんだよな」とわざとらしくやれやれと言った感じで、腰ぐらいまである酒樽を少しにやけた顔で撫でていると、トリーが扉を開けて入ってくる。


「はい、樽は回収しますねー。朝からバカな事言ってないで仕事してください」呆れた顔でトリーがヴァルツアーの手を払って、樽を少し斜めにして、手際よくゴロゴロと元来た入り口の方に転がして行く。「お仕事終わったら飲んでいいですから、大人しく仕事してください。直哉さん達もあまりギルドマスターを甘やかさないで下さいね」


「すごい、うむを言わさず樽を持って行ったな。あれ、結婚したら絶対旦那を尻に敷くタイプだ」


「昔は可愛げあったのに、今じゃカミさんが仕事場にもいる気分だ」ため息交じりで軽い愚痴をこぼしてると、扉がドンと叩かれる。聞いてたんかい、怖。横から後で菓子でも買ってこないと、エール樽返してもらえないかもなとぽつりと弱弱しい声が聞こえてきた。


「ねえジルさん、先ほどの魔法は一体?」セシリアが本当に不思議な物を見たと言う顔で質問を投げかける。少し嬉しそうにジルが懐からさっきのスクロールを少しだけもったいぶって取り出す。


「これは、私が九尾の狐になった時に習得した固有魔法の転送魔法。特殊な魔法陣の上に置いた物を、このスクロールに書いた魔法陣から取り出すって魔法なんだけど、まあ距離制限やらサイズ制限やらで、お酒の配送ぐらいが関の山なのよね」


いやいや、凄いなこれ。さらっと言ってるけど、普通に考えてとんでもない魔法だ。「バルツァーさん、こう言った固有魔法って当たり前なんですか?」


「いや、固有魔法ってのは相当珍しいもんだな」少し考えてたみたいだが、なかなか思い出せないらしい。「本来固有魔法なんて、王家やダイヤ級で上位ぐらいからの冒険者が持ってるもんだ。特に冒険者でも無いので持ってるなんてのは稀だな。鍛冶屋の有名な職人とかも持ってるとは聞いたが、うーん。そう言えば、直哉の紋章魔法も聞いた事ねーし固有魔法なのかそれ?」バルツァーがそう言えばという感じで聞いてくる。


「どうなんでしょうね、一応1500年前には居たそうですよ紋章師」


バルツァーが目を丸くしてる。「なんだそりゃ?その話が本当なら、今は誰も使ってないから事実上の固有魔法だなそりゃ」


「あら、直哉さんのこれ固有魔法だったんですか。どうりで私でも強くなれるわけですね」お腹の紋章を愛おしそうにさすりながら、セシリアが妙に納得していた。


「へーその紋章でセシリアは強くなったのね。ねえ直哉、それって紋章を刻印された人って貴方の言う事聞かなきゃいけないとか、何かデメリット有るの?」


「デメリットと言うか、僕との関係値を積み重ねていかないとレベル?みたいな物が上がっていかないので、事実上僕と一緒に行動する事になるぐらいですかね」


「あら、それは素敵ね。じゃあ私も直哉に刻印してもらおうかしら」ジルが俺の右手を手に取り、紋章を指でゆっくりとなぞっていく。


「い、いや、今はまだ一人しか刻印できなくて、そのすいません」ジルがふふっと悪戯っぽく笑い、セシリアが凄く凄く怖い笑顔でこちらを見て、バルツァーがお前死ぬ気かって顔でこちらを見て、トンキーに至っては足に刺さった枝を指さしながら警告してくれる。てか、あいつ足の肉大変な事になってるのに結構余裕あるな。忘れてた、行く前にあれの処理お願いしないと。「バルツァーさん、そこの犯人ですがお願いしちゃっていいですか?」さっきから、壁際のトンキーが一瞬だけビクッとする。


「あー、そいつか。とりあえず憲兵にでも引き渡すか……なあ、今気づいたがその足の枝なんだ、逃げないように抜いてないのか?」


「ああ、それですねセシリアさんが、その、ええ」なんだろう、凄く説明しずらいなこれ。


「それはですね、その方が直哉さんを殺しかけたので、自分がどれだけ愚かだったかご理解頂くために、枝を刺した後に成長させて太もものお肉を中からグチャグチャにしたんです」子供の躾を説明するかのように優しい笑顔で言ってるけど、内容はそんな生ぬるいものじゃ無いぞ。バルツァーの顔が少し引いてる。とりあえず、これがこの世界の一般常識じゃないって事がわかっただけでも良しとしよう。そんな事思ってると、バルツァーがそそっと俺の横にきて耳打ちする。


「なあ、たぶんお前とあれは恋仲かなんかだと思うが、絶対浮気するなよ……マジで」


「安心してください、紋章付与した時点で浮気……あれ、付き合ってとか言った覚えは無いけど、まあ、うん、はい、浮気する気は一切ないですよ……ええ、ええ」大の男二人が顔を見合わせて苦笑いする図はどうにも様にならない。


「とりあえず、そのまま憲兵に引き渡してあっちで対応お願いするとしよう。そんな怪我正直ここじゃどうにも出来んよ」バルツァーがお手上げという感じで俺に言って来る。


「了解しました、すみませんがよろしくお願いいたします。さて、二人ともぼちぼち行きますか」二人を連れてスラム行くか。


「おう、よろしく頼むなー。正直油断さえしなければお前らなら簡単だから頑張れよー」


しかし、落ち着いて考えると絶対この依頼無茶苦茶だよな。いや、彼が大丈夫って言うから行くけどさ。


「ささ、直哉さん。サクッと壊滅させて早く美味しいエールをたくさん頂きましょう」


「じゃあ、とびっきり美味しいの用意してあげるから、頑張ってねお二人さん」ジルが任せてといった感じで言ってくれる。


そんなわけでギルドを出て、3人でぞろぞろとジルに連れられてスラムの方に移動する。スラムの場所自体はこの街に住んでる人ならだれでもわかる場所らしく、すんなりついたがこれは酷い。街を歩いてるとある堺から急に雰囲気が変わり、冒険者ギルドが有る大通りとはもちろん雰囲気が違い、宿屋の有る裏通りですらこんな寂れた雰囲気ではない。道は荒れ果て建物の陰には子供がダランと座り込み、さっきまで2階建て以上の建物が立ち並んでいたのに、一応石造りだが壁が所々朽ちた平屋ならまだましな方で、木で簡易的に組んだワンルームぐらいの広さの家とも呼べないようなバラックが乱立してる。奥の方には話で聞いたとおり、壁は朽ちているものの2階建ての石造りのバーニーズ団のアジトが見える。


「さて、とりあえず奥の建物見に行きましょうか。でも、どうしよういきなり行って殲滅しに来ましたって言ったら、どう考えても頭おかしい人だしな」


「ふふ、直哉さんは部屋の中の虫を潰すのに虫に確認はとらないですよね」


「まあ、そうですね」


「そう言う事ですよ」とセシリアが当然でしょと言う感じで話してるが、まあ、うん、どっちみち方法はそれ以外ないし良いんだけどさ。一応様子見のつもりで来たけど、セシリアはヤル気満々だなこりゃ。


「セシリアさん、サーチを適度にお願いしていいですか。正直何あるかわからないので」


「はい、お任せ下さい」


さて、最低限の準備はしたし行くか。スラムを3人で歩いてくと、珍しいのか、木の建物の入り口や窓から時たま此方を見られてるような気がする。まあ、どう見てもここの住人じゃない3人がゾロゾロと来たら自分でも覗くわな。5分ぐらい歩いただろうか、例のアジトがだんだんと見えてきた。やっぱり2階建てと言う以外はあまり周りと変わらない。建物の前に今朝見たようなビール樽が積まれてるので、ああ、こいつらだなってのはわかる。


「直哉さん気づかれてます。あの建物の中を示す点が慌ただしく動いて、扉の横や窓際に移動を始めています」少し緊張した声がセシリアから聞こえてくる。まあ、部下が一人帰ってこないは、ギルドに連れてった時にバーニーズ団の仲間が見ていないとも限らないし、そもそもこんな3人がぞろぞろと一直線に来たらそりゃ警戒する……ジルいるじゃん。ジルが堂々と来てればそりゃ警戒するはな。今度から気を付けよう。


「ねえ、もしかして私のせいかしらこれ。その、御免なさい」シュンとした声でジルが謝ってくれる。


「いえいえ、此方こそ考えが及ばず申し訳ない。まあ、やる事は同じだし気にしないで」実際自分もここに来るまで気づいてなかったんだからしょうがない。さて、どうしたもんかこれ。これで不意打ちや奇襲の類は一切使えなくなったが……あ。「セシリアさんあの建物の中のどの辺りに居るか大体わかるんですよね」


「ええ、大体でよければわかりますけど、どうしました?」横にいるセシリアが、不思議そうにこちらを見てくる。


「あのですね、ショートシャワーの1本だけのやつでやっちゃいましょうかあれ」


セシリアさんが最初何を言われたのかわかってないようだったが、少ししてニヤッと笑い「あらあらあら、直哉さんそれはそれは素晴らしい案ですね。ふふふふふふふ害虫にはお似合いの駆除方法かと」セシリアが悪い顔で笑ってる。僕もつられて笑ってるが、ジルが少し引いてるのは仕方ない。


「ねえ、その素人が聞くのもおかしい話なんだけど、一体ここから何するの?」何が何だかわからないと言う風にジルが聞いてくる。



「ふふ、とても素晴らしい事ですよ。では、直哉さん初めてよろしいでしょうか」セシリアがショルダーホルスターの杖を引き抜き、真っすぐに敵のアジトへ杖の先を向ける。


「はい、セシリアさんよろしくお願いします」

セシリアがショートシャワーと唱えた瞬間、杖の先から指三本分ほどの水流が一本勢い良く打ち放たれアジトの壁に当たったかと思うと、水飛沫が飛び散り、アジトの中から悲鳴が聞こえてくる。壁をよく見るとさっきの水流で打ち抜かれたのか、いままで無かった穴が1個開いていた。


「うん、やっぱり問題なくいけますね。セシリアさんとりあえず、中の点が動か無くなるまで撃ち続けてください。そのさい魔力残量にも気を付けてくださいね」


「はい、お任せください」そして、セシリアがさっきと同じように何度も何度もショートシャワーで壁を打ち抜き続ける。中から反撃なんて有るはずも無く、ドタドタト走り回る音、悲鳴、何でこっちが見えるんだなどの大声が聞こえてくる。


そんな事を数分続けてると、もう壁が穴だらけで見るも無残なアジトの扉が破裂したかのように吹き飛び、中から人が飛び出してきた。


「何しやがるんだーーーーー!!!」色は薄汚れ、昔は銀が輝いてたんだろうなと思わせる重装備の鎧を来た男が、こちらに剣を向けながら喚いている。


「あらあらあら、直哉さん面倒くさそうな方が出てきましたよ」台所の掃除で面倒くさい汚れを見つけた時のような嫌そうな顔のセシリア。まあ、あれがバーニーズなんだろうけど、さっさと終わらせてエールが飲みたいな。



何時もお読み頂き有難うございます。ブックマークや下の方にある評価ポイントを頂けると、今後の励みになりますので、よろしくお願いいたします。


さて、ついに出てきたぞバーニーズ。こいつは咬ませ犬の匂いがプンプンするぜ。

あと、今日にはセシリア、ジル、マルケッタ、直哉の立ち絵も追加しますので、お暇な方は

是非是非見ていってください。威未図さんの本当に素敵なイラストは必見ですよ!!

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