021_殲滅依頼
そんなわけで、太陽も上り街に少し活気が出てきてたので、トンキーを連れてギルドに行く事に。結局足の枝はここでは抜けず、ギルドでどうにかしてもらう事に。
「じゃあ、ドルキーさんギルド行ってきます」
「おう、まさか初日で犯人捕まえるとは流石だな。気おつけて行けよー。あと、ジルすまねえがヴァルツアーにエール1樽を俺からの礼だと言って持ってといてくれ」
「はいはい、じゃあ何時もの場所に置いといてね」
「おう、よろしく頼むな」
ドルキーが朝来た時に昨日の報告をすると、彼からもとりあえずギルドに報告で問題無いと確認が取れたので、当初の予定通りギルドに行く事に。
「それと、ジルさんとトンキーは外套で全身を隠して下さい。一応ですが、彼を捕まえた事を可能な限り隠していきたいので」
ドルキーから深めの外套を2個借りて、ジルに渡す。ジルがトンキーに外套を着せようとして、太ももの枝に少し当たって彼がうめき声をあげるのはまあ、ご愛敬。一応彼が歩けるように松葉杖を渡してある。
「しかし、お前ら甘ちゃんだな。俺が言うのもなんだが、腰縄も付けないとか俺に逃げてくれって言ってるようなもんだぜ」
「あらあら、その足で逃げれるのでしたら是非是非そうして下さいな。その際は追加のグリーンブーストを唱えるだけですので楽しみにしておきますね」
「……止めとくは逃げるの」
「遠慮しなくていいんですよ、私は直哉さんを危険に晒した害虫に、お仕置きできるだけで凄く凄く楽しいので」
とても楽しそうなセシリアさんを見てトンキーの顔がただただ青くなっていく。
「ほら、セシリアさん必要以上に虐めないでいいですから。さっさと行きますよ」
セシリア、トンキー、僕、ジルの順番でぞろぞろと朝の忙しいギルドに到着。ギルドの中は何時も通り朝の活気にあふれている。受付所のトリーの所に僕だけで並び、順番が来たら、こちらから話す前にギルド長を呼んでくれた。本当にこの子優秀だなー。
「おう、早いな直哉。流石俺が見込んだ男だな」
相変わらず書類まみれの机に埋もれたヴァルツアーが出迎えてくれた。とりあえず、昨日と同じ席に座る。
「お早うございますヴァルツアーさん。少し相談が有って」
「おうどうした、ジルにでも惚れられたか?」
よし、殺そう
「直哉さん!!だから女狐は止めとけとあれほど。私だけでは満足……英雄色を好むと言いますし、確かに直哉さんのような素晴らしい方は複数人女性を傍に置いてた方が見た目は良いですし、うーん」
「なに、直哉は私が好きだったの?ふふ、それも悪くないかもね」
「お、お前この二人を相手にするのか……浮気だけは止めとけよ、俺の膝みたいになるぞ絶対」
トンキーがものすごく実感のこもった声で忠告してくれる。彼が言うと重みが違うなー。
「はいはい、冗談は後にして下さい。そんなわけでヴァルツアーさん今喋ってたこいつが今回の犯人のトンキーで、黒幕がバーニーズ団と言う人たちなんですけど、これどうしましょう」
「どうしましょうって、お前本当にもう犯人捕まえ……護衛任務じゃなかったっけこれ」
「捕まえた後にそれ思い出しました」
「なるほど……とりあえず結論だけ先に言うと、お前そのままバーニーズ団潰してこい」
「は?」
「いやな、前にも言った通り正直困っていてなそいつら。お前らならまだ街に馴染み薄いし、ドサクサに紛れて潰しても大丈夫かなって」
「なるほど……ってなるかい。何より20名近い野盗崩れで、二人は元シルバー、一人は元ゴールドですよ。それだからわざわざ朝から相談に来たのに、これじゃあ意味ないじゃ無いですか」
ヴァルツアーがよっと言いながら席を立ち、俺たちの座ってるソファーにドスンと座る。
「そうは言うがな、お前さんの相棒のダークエルフはつええぞ。俺と殴り合えて、索敵までできる奴なんてそうそういねえよ。それにトロルを瞬殺だろ確か。大丈夫、お前らならやれるやれる」
「そんな無茶苦茶な」
「まあ、騙されたと思ってやってみろって。俺もお前らぐらいの強さの頃には、それぐらいの強さの野盗なら一人で壊滅させてたし、経験じょういけるから安心しろ。それに、ダークエルフのねーちゃんは必要ならちゃんと人間も殺れるだろ?」
ヴァルツアーの顔がすっと真面目な顔になり、セシリアの方を向く。2秒と見つめられない目線をじっと受け止めるセシリア、彼女がフッと笑った。
「直哉さんの脅威は私が全て滅ぼします。ただそれだけですよ」
ヴァルツアーが笑い、俺の肩をバンバン叩いてくる。
「がっはっはっは、お前も大変だな。こりゃ尻に敷かれる未来以外見えねーな」
「はは」
セシリアさんは嬉しそうに笑ってるし、ジルはわかるーって感じで頷いてる。異世界ってもっと平和だと思ったんだけどなーなーなー。
「さて、アジトが有るって言うスラムは街の南の方にあるやつの事だな。あそこは基本平家だが、奥の方に確かに2階建ての建物が有るから多分それだろ」
「トンキー、有ってるかそれで?」
せっかくいるので、トンキーに再確認しとこう。
「ああ、それだよ。絶対見間違えないから安心しろ。その中には俺たちの関係者以外は居ないよ」
「よし、今までわからなかったあいつらのアジトの場所も分かったわけだし頼んだぞ。一応俺からの指名依頼って事で書類は用意しといてやる。報酬はそうだな、アジトで倒した奴の首は全部俺が責任をもって騎士団に買い取らせてやるし、大金貨2枚もギルドから用意しとこう」
「買い取りなんてそんなに上手く行くもんなんですかね?」
「なーに、20人規模のアジト2人で壊滅させたやつに言われたら普通逆らわねえよ」
なるほどな?
「さて直哉お話もまとまったようですし、私からも一つ良いかしら」
「あ、ジルさんどうしました?全員にタンクと同じ穴開けて来いとか勘弁してくださいよ?」
「あら、それも悪くないわね。でも今回はそれは我慢しといてあげる。もっと簡単なお願いよ、私を一緒に連れてって」
何言ってるんだこの人。今度は敵地のど真ん中なんだぞ。
「無茶言わないでください、流石に今度は守り切れませんって」
「お、なんだジルも行きたいのか。ちょうどいい、今後は護衛しながらの戦闘だってあるかもしれねえし、つれてけつれてけ。地道な練習が将来の自分を助けるぞ」
「んな、無茶苦茶な。セシリアからもなんか言ってやってくれよ」
さっきから、楽しそうに会話を聞いてるだけのセシリアに助け舟を求める。
「直哉さん、1発までなら誤射ですよね」
ヴァルツアーが楽しそうに笑っている。よーし、味方はここには居ない。とりあえず、行くのは確定っぽいし、もろもろ準備だけ進めるか。死なないと良いなー俺。
何時もお読み頂き有難うございます。ブックマークや評価ポイントを頂けると、今後の励みになりますので、よろしくお願いいたします。