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011_お風呂と夜の黒い狼

「ええ、ええ、これです、この子に致しましょう。きっと素晴らしい湯船になってくれますよ」


そう言うと杖を持ったセシリアが、すぐ後ろに生えていた直径2メートル程の木の前に行きショートエッジと唱えると、杖の先から畑でケレルを収穫した時に使っていた、薄く青い刃が……改造怖い。全長2メートル程の両刃の青い刃で横一線に薙ぎ払い、倒れた木の枝も払い、長さ2メートル程の丸太にしてエアハンドでずりずりと引きずってきた。


「思った通り、ここまでは上手く行きました」


「お、おう」


何かをやり遂げたような、凄く良い笑顔だがこれってとんでもない事な気がするけど……黙ってよう、なんか怖いし。その後、丸太の側面を少しだけ垂直に切り落した後に真っ二つにすると、底が平らな為転がらない机の様な物が出来あがった。


「ここから先を思いついた時、私はもう感動で打ちふるえましたね。長年の夢のお風呂が作れるって」


彼女がウインドボールと唱えると、小樽程の大きさの風の塊が杖の先にグルグルと渦巻いて行く。それを木の断面に当てるとギュゥウウウウウウウンと大きな音がしたかと思うと、木がドンドン滑らかに削り取られていき、杖を端から端まで動かし、大人一人が入れそうな湯船が完成した。


「直也さん完成いたしました。セシリア特性森のお風呂です」


「家庭魔法って言っても、これ無茶苦茶だー」


「大丈夫ですよ、この家庭魔法専用ショートロッドハウスキーパーの売り文句が『貴方の生活を少し快適に』ですから間違ってません」


取り合えず、セシリアさんは少しの意味を辞書で今すぐ引きなおした方がいいと思う。


「では、お風呂と直ぐに言いたい所ですが、辺りも暗くなってきたので、先に落した枝を薪にして焚火を作っちゃいましょうか」


手際良く2人で薪を集めて、セシリアがテントの前に焚火作る。焚火を付ける際の種火は最初に竈に火をつける時に見た種火と同じで、なんか凄くほっとした。セシリアが丸太の湯船にホットウォーターと唱えながら杖の先からお湯をドバドバ出してるのをぼーっと見ながら、なんか非現実的な光景だなーと思う。とびっきり綺麗なダークエルフが、白い魔術服着て、森の中でお風呂を作ってる、異世界って凄いなー。


「ささ、直哉さんお風呂出来ましたよー」


いつの間にか丸太風呂の前には、大きな布が敷かれており、そこで着替えるらしいが、うん、丸見えだ。


「セシリアさん、向こう向いてて頂けると非常に、非常に助かるのですが」


「いえいえ、何言ってるんですが。いくら辺りにサーチで危険が無いと最低限確認できてるとは言え何が起こるか分かりません。私が見張っていてあげますから、お湯が冷めちゃう前に入っちゃって下さいね」


あ、拒否権無い奴だこれ。辺りは暗くなっており、焚火の光を頼りにしながら靴を脱いだ後に、布の上で装備を外していくけどこれは恥ずかしい。最後パンツを脱ぐ時何故かセシリアの目線が周囲ではなく、ある一点に集中してたような気がしないでも無いのは気のせいだろうか。とりあえず全部抜いで、ハンドタオルで息子を隠しながら片足だけ湯船に突っ込むと、ちょっと熱いけどこれぐらいがちょうどいい。


思い切ってざぶんと浸かると、あああああ、これが極楽か。見上げれば満天の星空、周りは美しい森、そして湯船からは木の香りがとても心地よく漂って来る。一日歩いたからか、汗もさっぱりと落ちて行く感じがただただ気持ちいい。


「湯加減どうですか?お湯たしますか?」


「いや、ちょうど良い温度です。最高ですよこれ」


「ふふ、気にいって頂けて良かった。私も次に入るのがより一層楽しみになって来ました」


誰が見張るんだろうとか、色々余計な事考えてしまい、お風呂から出たくても自己主張が激しくなっている息子のせいで、少しだけ長風呂になってしまった。風呂から出ると、タオルを渡されて体を拭いて、下着だけ新しいのにしたら、さっきと同じ装備に着替える。その間にセシリアは、エアハンドで丸太を少し傾けて中身を空にし、新しいお湯を張っている。


「では直哉さん見張り宜しくお願いしますね」


「えーと、何か隠すための布とかその……ね」


何故か、キョトンとしてるセシリアが逆に神々しい。見ても良いのかな、俺見ても良いのかなこれ。


「その、直哉さんに見られるのは構いませんよ、それとも後ろを向いて後方を警戒していて頂いても大丈夫ですが」


「いえ、大丈夫です。後ろ向いて後方警戒しておきます!!」


「あらそうですか。では宜しくお願いしますね」


馬鹿ーーー、俺のヘタレーーー。とっさに後ろ向くて言ってしまったが、許可降りてたじゃーーーん。後悔しても既に遅く、後ろからファサッと服が下に落ちる音がする。


「ふぅ、慣れない服を着てたからか、脱ぐと凄く開放的で気持ちいですねこれ」


脱いでるんだー、ふーん、脱いでるんだー。さっきの俺を殴り飛ばしたい気持ちになってると、トプゥンと脚が湯船に入る音がした。


「ふぁあああああ、これ最高ですね直哉さん」


体の奥底から絞り出すような声が、後ろから聞こえてくる。


「直哉さん、直哉さん!!凄いですよ、胸ってお風呂入ると浮くんですよ」


悪魔か!!何が浮くんですよだ、俺を殺す気か彼女は。必死に後ろを向かないよう前方の森に意識を集中するが、それからも念願の夢だったお風呂だからか、長風呂になった彼女からの精神攻撃は止む事が無く、最終的にはちゃぽんと言う音がするだけでもんもんとしてきて大変精神衛生上宜しくない警戒任務となった。


「ふう、さっぱりしました直也さん見張り有難うございます。もうこっち見て大丈夫ですよ」


「いえいえ、念願のお風呂どうでし……アーハン」


見ても良いと言われて、彼女の方を向けば装備を来てないのは100歩ゆずって良い、家で寝る時に着ていた白く柔らかそうな布で出来ていたワンピース型のネグリジェを着てるのも良い、そこに一応冒険者の自覚があるのか杖を収めてるショルダーホルスターをその上に付けてるのも良い……何で、何で、そこまでちゃんと装備してるのにポッチ2個出てるねん。何で、お風呂上がりは下着つけない宗教か何かなの。気付いてないの?それともアレか年上お姉さんが年下(約100歳差)をドキマギさせて楽しんでるのか。聞けない、あれは聞けない。彼女と行動してると藪に蛇を何匹飼わなきゃいけないか分からない。


「ふふ、どうしましたマジマジ見て。お風呂上がりのダークエルフが珍しいですか?」


まあ、ダークエルフが立ってるだけで個人的には珍しい光景だよな。


「いえいえ、お風呂上がりのセシリアさんが綺麗だなと思ってただけですよ」


「もう、年上をからかっちゃいけません。」


お風呂上がりだから顔がホカホカで赤いけど、それに加えてもう少しだけ赤くなるセシリア可愛いな。


「では、お風呂も入りましたし、晩御飯軽く食べて今日は早めに寝てしまいましょう。明日は朝から街まで一気に行きますよ」


焚き火に隣り合って座り、鞄から保存の効く黒パンと干し肉と干し野菜、それに杖から出したお湯でお茶を淹れる。味は可も無く不可も無く、これが1週間続いたら現代っ子なら駄々こねるぐらいの味。まあ、食べた後の片付けが直ぐ終るのは楽でいいかな。


「さて食べるもん食べたしそろそろ寝ましょうか」


「ですね、では寝床用意しちゃいますので少々お待ちください」


そう言うと、セシリアがテントに頭突っ込んで何やら中でごそごそしている。……その、なんだ、大きな戸棚締めマスターがふりっふりでぷりっぷりなんだよ。今なら赤い布見て興奮して顔突っ込む牛の気持ちがわかる。白いネグリジェふりふりされたらダッシュで顔ぶつけたいもんあれ。


「ささ、寝床出来ましたよー」


テントから顔と手を出して手招きしてる彼女とテントの隙間からライトの魔法だろうか、小さな明かりが少し漏れていた。


「有難うございます。とりあえず、鎧だけ脱いで失礼しまーす、失礼しましたー」


ガシ!!


「直也さん、どうしました。何か不都合でも有りましたか」


テントを除いて色々察した瞬間に焚き火に逃げようとしたら、セシリアに思いっきり手を掴まれる。


「不都合、そうですね不都合と言いますか何でその配置なのかなと」


テントは狭く、大人2人と持ってきた装備を入れれば余裕は無く、建てた時に荷物は真ん中で左右に別れて寝れば大丈夫だなと思った、思ったさ。今自分の目の前には、荷物は左端に寄せられ、下に2枚の毛布を横につなげた敷物1枚、毛布を丸めた横長の枕1個、最後に大人2人が余裕で入れる1枚の毛布が用意され、つい先日も見たような気がしたけど、毛布の口を右手で開きながら、左手で枕を楽しそうにポンポンしながら毛布に入ってるセシリアさんがそこにはいた。


「私は直也さんの紋章を刻印された者ですよ、直也さんを守れるように一番側に居るのは当たり前じゃないですか」


「凄く真面目そうに言ってますけど、無理有りますってそれ。ほら、せめて荷物真ん中にして、ね」


「うう、酷いです直也さん。せっかく40年ぶりに結界の外に出れて、それを実現さしてくれた人を守りたいだけなのに、直也さんはそんな私の小さな願いすら聞いてくれないと言うのですか」


う、なんか凄く断りづらいやつだそれ。なんか、断ったらこっちが悪者っぽくなりそう。


「そ、そうだ。見張り、夜の見張りです。二人共寝ちゃったら見張りが居なくなってしまうので、大変危険じゃないですか。


「それならご安心下さい。継続時間を長く、範囲を少し大きく、出力も少しあげて、最後に効果範囲を反転して、えいハンターサークル」


セシリアが枕元に置いてあった杖を振ると、テントの周りにホワイトラビットを捕る時に使っていた光の輪が出現して直ぐ消えた。


「これで、この周りに近づくモンスターや盗賊や何かが来ても、大きな音で絶対に気づきますね。まあ、気づいて外見たら既に終わってるとは思いますが。あ、サーチで周りも監視ししますのでご安心下さい」


誰だこのダークエルフに紋章刻印した馬鹿は、何時か鏡見たらぶん殴ってやる。


「ささ、直也さんどうぞコチラへ。暖かくて柔らかいから寝心地凄く良いんですよ」


毛布だよね、それ毛布の話だよね!!


「わかりました、今日だけ、今日だけですからね」


観念した俺は、ブーツと鎧を脱ぎ、毛布の横に剣だけ置いてセシリアが入ってる毛布に潜り込んでいく。彼女が毛布の口を広げていた手をどけると、ふわっと毛布が口を閉じていき、毛布の中で籠っていた、セシリアの香りをたっぷり吸い込んだ空気が入り口から逃げて俺の顔を包み込んでいった。もう、これだけで一週間は色々妄想に事欠かないなこれ。


「ふふ、いらっしゃいませ、ささ遠慮せずこちらに」


セシリアの両手が俺の首の後に周り、彼女の方に引き寄せられ、ふわっふわでふっかふかな天然枕の谷に顔の半分以上が埋もれてしまう。あ、死んだは俺。


「直也さん、あの場所から連れだしてくれて、おまけに凄い力まで下さった貴方に私は本当に感謝してるんですよ」


急に少し真面目なトーンになったセシリアさん。いや、それは此処に来るまでもう何回も言われてるし、自分がそうなったとしたら本当に感謝するってわかるなー。


「それなのに、この世界の常識はてんで疎くて、何時も危なっかしくて私が守らなくちゃとつい思ってしまいます」


いや、紋章師は刻印した人に守ってもらわないと死んじゃうし、あんまり重く考えなくて良いんだけどな。ほらwinwinってやつだ。


「それに、19歳という若さでとても可愛い顔で、ええ、ええ、とても、愛らしいです」


……ん?


「しかも、紋章を刻印されて強くなる方法がお互いの関係値を深める事と聞いた時には、女神様に生きていて一番の感謝の祈りを捧げた事は言うまでもありません」


お、微妙に方向修正されたか


「関係値、例えばそうこうやって肌と肌を重ねるのも普通の関係同士では有り得ない行動。これもお互いの関係値を作るための大切な儀式」


まあ、うん。


「それに、直也さんに悪い虫がついたら刻印された者のなおれ。絶対にそんな事私の目が黒いうちは絶対に許しません」


セシリアさんは俺のお母さんかな?


「となれば悪い虫がつく前に、より強い関係を結ぶのは至極当然」


雲行きが怪しいってレベルじゃない。


「なので、直也さんに悪い虫につかないよう、お互いの関係を深めるため責任を持って私が夜伽をするのは当然と言えます」


「ストーーーーップ、セシリアさんストー-ーーーーップ」


黙って聞いてたら喰われる。藪蛇何て言ってられない、黒い狼に今狙われてるんだ俺。これ全力で逃げないと駄目なやつだ。


「何を止めれば良いのでしょうか?避妊の魔法でしょうか。それなら既にハウスキーパーに改造するまでも無くセットされた物を使ってしまったので今日はごめんなさいね」


「なんで、そんな魔法が標準装備なんですかそれ」


「ハウスキーパーは明るい家族計画までサポートして下さるんですよ」


凄くいい笑顔で、ですよじゃないよ。あれか、やっぱお約束って異世界共通なのかな。


「そもそも、そんな関係で強くなるわけ無いでしょ。いくら何でも怒りますよセシリアさん!!」


「はいはーーーーーーい、スキルの話なら私におまかせ、マルケッタちゃんでーす」


「……聞かない。嫌な予感しかしないから聞かない」


「体の関係ももちろんカウントされますんで、じゃんじゃん盛ってOKです!!ご利用は計画的にー」


「おい、まて、色々デリカシーも糞も無い言い方しやがって、待てコラ!!」


あ、反応しねえ、あいつ逃げた。逃げやがった。


「直也さん、どうしました急に」


「何でも有りません、プハッ」


セシリアがやっと俺の顔を谷間から開放してくれて、空気を吸い込むついでに彼女の顔を見た瞬間悟った、あ、これバレた。


「スキルの質問ですもんね今の。ええ、ええ、私には聞こえませんが、直也さんのお顔を見たらわかりました。ふふふ大丈夫、痛くないですよ」


紋章の理解力って魔法以外も上がったっけかな。


「一応、その聞きますが、何が痛く無いんですかね」


「ナニですよ」


藪からコブラが出てきた。


「直也さんは少しだけ女の子に夢をいだきすぎてます」


「と、言いますと」


「花の80歳で色々思春期な女の子が、急に120歳まで1人で隔離されてしまったんですよ。色々想像してしまい40年もあれば1回や2回は1人で致してしまうわけで。直也さんは女の子が性欲無いと勘違い知てるようなので、是非その認識は改めて頂ければと思います」


「改めます、今直ぐ改めます。てか、何時も母みたいな感じで接してきてるのに、いきなり女の子ってずるくないですかそれ」


そう言うと、彼女は俺の顔を見て優しく微笑む


「ふふ、私は120才なので貴方にとっては母で有り、エルフとして考えればたった120才の女の子なんですよ。さ、直也さん観念して下さい」


毛布の中で手際よく俺の服が脱がされてテントの隅に放り投げられる。彼女も脱ぐのは1枚だけなので、一瞬で脱いだかと思うと同じ方向に放り投げた。そして、セシリアの腕が片方は後頭部に、もう片方は背中に回され、裸のままお互いの肌が抱き寄せられる。その瞬間彼女の全身ふわふわふかふかで滑らかな肌に俺の体がゆっくりと沈み込んでいき、もう、この瞬間に何も考えられないぐらい気持ちいい。そのまま彼女に口を奪われてゆっくりと何度もキスをされて、頭がぼーっとしてくる。



「直也さん、大丈夫ですよ全部私に任せてくださいね」

何時もお読み頂き有難うございます。ブックマークや評価ポイントを頂けると、今後の励みになりますので、よろしくお願いいたします。


なんかピンクの神様が俺に書けって言うんです。セシリアに紋章付与した時を書いた時と同じぐらい筆がグングン進んで凄かったです。

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