20.最大の収穫は-ではイリーナ中尉の機体を貸し与えて頂きたく-
全46話予定です
曜日に関係なく毎日1話ずつ18:00にアップします(例外あり)
※特に告知していなければ毎日投稿です
カズたち同盟連合は、旧トルコへの軍事侵攻を半年は止めてもらうという話で決着した。これで同盟連合の上層部が言う[落とされる事があってはならない]という指示も守った形になる。
だが、最大の収穫は。
「ではイリーナ中尉の機体を貸し与えて頂きたく」
というカズの言葉通り、ゼロフォーとスリーワンが武器を構えているところでイリーナは機体の関節をフリーにして降りてきた。その姿をよく見ればわずかに震えているのが分かるだろう。それくらいカズに捕まった事件というのが、彼女の中で深く、奥深く刻まれているのである。
「か、関節はフリーにした。そちらで持ち上げられると思う」
イリーナがそういうと、
「了解です、ではパイロットの方はそちらへ」
ゼロフォーが外部スピーカーでそう告げる。
その後の話し合いで起爆は絶対にしないという言質まで取ってある。帝国にしてみれば起爆させても良いのだろうが、それでは一体丸ごと失うだけという結果しか残らない。それに自爆モードは機体のみを破壊する行動だ、必然的に周りへの被害はほどんどでない。その辺りが、ただ単に爆弾を爆発させるのとの大きな違いである。同盟連合の場合で言えば、ほんの十メートルほど横に生身の人間がいても怪我無く無事なほどに内側へのみ爆発の威力が向かうのである。
イリーナは機体から降りると、相方の機体へと乗り移った。これでこの機体には人が乗っていない。
「これからどうされますか、マスター」
ゼロフォーがカズに連絡を取る。それは直ぐに繋がり、
「まずは良く踏ん張ってくれたと感謝を。一時は本当に全滅も考えてたからね。差し当たって港湾関係者に連絡を取ってトレーラーを用意してあるんだ。まぁ、じきに着くと思うから、ゼロフォーとスリーワンで機体を車に乗せて港まで運ばせて。それまではゼロフォーは警戒態勢を。念の為武器は構えておいて。スリーワンはトレーラーが来る間にゼロツーを拾いに行ってあげてくれるかな」
と指示を出す。それに対して、
「了解しました」
スリーワンだ。彼女も今回はよく頑張った方だろう。スリーツーという僚機を失い、一時は撤退すら危ぶまれた中での作戦である。
まあ、それもこれも、
「アルファワン、ブラボーワン、ありがとう。お陰で交渉事は無事にすんだよ」
と無線で呼びかける。この最新鋭機である三五FDI率いる部隊がいたからこそなしえた結果なのだ。特にカレルヴォ大尉はやはりゼロフォーと相性がいいようだ。
「いえ、今回もゼロフォーに助けられました」
「こちらはレイドライバーのパイロットを失わずに済みました」
それぞれが感想を述べる。
[では、今後の作戦指揮は現地司令部に任せるから、順次撤退して]という言葉を残してカズはトリシャに無線を繋ぐ。
「トリシャ?」
の一言に、
「ヒィッ」
の悲鳴とも何とも取れる返事が返って来る。
「あ、そうだ。ご褒美もお仕置きもあげないからね。ただし」
「ただ、し?」
疑問形のトリシャに、
「良くやってくれた、それだけは言えるかな。今スリーワンが支援に向かってるから、途中でこれからの事をよく話し合って」
と返す。
「戦闘は、終結、したのですか?」
当然の質問だ。今のトリシャはつぶれたコックピット内で、あと少しで自分も押しつぶされそうになっているのだから。当然、彼女が使用できるものと言えば無線と、辛うじてサブパネルくらいのものだ。
「ああ、ほぼ満点の形でね。ただし、それぞれ受けた被害も甚大だ。立て直しとかはこれからの話になるかな。まずは帰っておいで」
「私は、要らない子、ではない、のですよね?」
躰のそこらかしこが痛むのだろう、途切れ途切れに言葉が紡がれるのを、
「もちろん、要らない子だったら今頃助けてなんかいないよ。きみは重要な戦力だ、まぁ、オレとしてもちょっとやりすぎ……いや、何でもない。まぁ、まずは帰っておいで」
カズはトリシャにそう言い聞かせた。
この旧トルコでの戦闘は、ひとまずの終息を見たのである。
全46話予定です




