38話 バンドメンバー集合!
さて、まずいことになってしまった。
「おにぃ、なんか今日帰ってきてからまた難しい顔してるけどまたなんか巻き込まれたの?」
心配そうな声で話しかけてくれる我が愛しの妹に僕は心が暖かくなった。
「今回は巻き込まれたんじゃないよ。すずさんにテスト勉強のお礼がしたいって言ったらコピバンのライブを見せてくれって言われちゃって……」
「あはは、コピバン?おにぃ本物のクライスじゃん。コピバンなんかしてたの?」
「してる訳ないじゃないか。旭が僕が決闘してる時にタクって呼んじゃってすずさんにクライスのボーカルっていうことがばれそうになっちゃって、咄嗟についた言い訳がコピバンしてるからっていうのなんだよ。しかも、なんかこの前のライブより上手いっていうからすずさんに頻繁にライブしてるって思われてるからさ……どうしようかなぁ。」
僕の言い訳を聞いていた妹は実に単純な答えを導いた。
「そんなのおにぃがクライスのボーカルって匂わせたあさひくんが悪いんだから責任とってクライスメンバーでコピバンしなよ。」
えぇ〜、まぁ、確かに琳のいう通りだし、1番の解決方法だから僕も考えてたんだけどメンバーを巻き込んじゃうのはなぁ……
「逆転の発想で有名バンドの色眼鏡なしで今の演奏を評価してもらえるって考えればいいんじゃない?」
琳が言ってるのも案外間違いじゃない。でも、普通に謝罪してメンバーに頼もうと思う。
「せっかく琳が慰めてくれたけど、やっぱりメンバーには頼むよ。」
「そっか。おにぃが納得して難しい顔しないならなんでもいいよ。」
「ありがとう、琳。」
「うん。ほら、さっさとご飯食べよ。」
琳との会話をして自分の考えをまとめた僕は、琳と二人でご飯を食べた。今日のご飯も非常に美味であった。
◇◇◇
しかし、すずさんは結構いいタイミングで僕にライブが見たいと教えてくれたと思う。今日は恒例のバンドの合わせの日であるため、メンバー全員が揃うのだ、クロエさんのお家に。
妹と晩御飯を食べ終わった僕は家を出る時間まで、次回のテストではいい点を取ろうと考え今日の授業の復習を行う。
「それじゃ、行ってくるよ琳。」
「うん、行ってらっしゃい。」
電車に乗り、クロエさんの練習スタジオに行く。
「こんばんは〜。」
「「「こんばんは〜」」」
どうやら最後についたのは僕だったみたいだ。
「おっす、タク。なんか今日はいつもより遅いけどなんかあったか?」
「うん、実はね……」
旭がちょうど聞いてきたので今日起きたことをバンドメンバーに説明した。
「ということなんで、その〜、ここで何曲か披露することってできませんかね?もちろん、未発表曲をやるつもりはありませんよ。」
「うーん、ことの発端が、俺のとっさについた嘘だからなぁ〜。俺は協力すんぜ。」
「私も〜ぉ、特に問題はないよ〜ぉ。」
クロエさんと旭は協力してくれるようだ。さて、我らがドラム担当はなんと返答してくるのだろうか。
「それは、本当にタクくんに必要なことなんだね?」
真剣な顔をして僕に聞いてくる。もちろん、音を返したい僕は首を縦に振った。
「はい、必要なことです。」
もしかしてメジャーデビュー直前の大切な時期に変なことをするなと言われてしまうかも知れない。
「そっか〜。それなら!お姉さんに、任せなさい!」
う〜ん、やっぱりまだこういう人だったか〜。
バンド『クライス』のメンバーはギター&ボーカルのタク。ギターのクロエ。ベースのヒメ。ドラムのナオ。の4人である。
タクはもちろんのこと僕である。クロエさんは師匠のことである。またベースの旭は意外なことに趣味が演奏と女装である。付き合っている彼女からの誕生日プレゼントが化粧品であるほどに凝ってる。そういうこともあってバンドで演奏したり、休日におめかしして出かけたりするときは女装なのだ。
そして最後のメンバードラム担当のナオ。彼女の本名は内田栞である。大学2年生で、クロエさんと同じ大学に通っている。身長が小さいことがコンプレックスであるため、特に年下である僕と旭にはお姉さんぶろうとしている。実際には年上なんだが身長に引っ張られているせいか、どうしても言動が幼く感じてしまうのは本当に申し訳がない。しかし、バンドでの演奏の時はその小さい体では考えられないような力強い演奏を行う。名前がなぜナオなのかはわからない。
「みんなありがとう。それじゃあ、いつにするかとかセトリとか考えようか。」




