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28話 許可

「あの、田中さん。その、僕たち結構仲良くなったので、そ、その、すずさんと呼んでもいいですか?」


「え……」

私、田中すずは驚いた。前一緒に帰った時にはつい恥ずかしくなってしまい言い逃げのような形で鈴木くんのことを拓朗くんと呼ぶようにしてしまった。だが、まさかこの段階で拓朗くんが私のことを名前呼びにしてもいいか聞いてくるなんて思いもしなかった。

「う、うん!もちろん!嬉しいよ。拓朗くん!」

驚いたが、やはりそれ以上に嬉しかったのだ。とてもよかった。素晴らしいよ拓朗くん。

「な、なんか照れるね。改めて名前を呼ばせてくれって。」

「うん、そうだね。わかるよその気持ち。ちょうどここで私は拓朗くんのこと勝手に名前呼びにして走ってったからね。」

「やっぱりあの時ちょっと照れてたんだね。頬が赤い気がしたから。」

「そういう時は、夕焼けの色に当てられてるんだと勘違いしてよ。」

「最初はそう思ったんだけど、そんなに夕焼け当たってなかったしね。」

「もぅ!なんか意地悪だよー!」

名前呼びにしてからも私たちは変わりなく会話を楽しんだ。いや、少しフレンドリー?な感じになった。拓朗くんと本当に友達になったみたいな気分。このまま交際するぞ!そして、そもあとはお互いに大学に進学して、そのまま就職。そして結婚かぁ……。子供はサッカーチームが出来るくらいっていうのが定石みたいだけど、私は男の子と女の子1人ずつがいいなぁ〜。もちろん、一人っ子でも問題ないし、兄弟姉妹でもいい。楽しみだなぁ〜。って、まだ告白も何もしていないのに変なも妄想をしてしまって、拓朗くんの顔が見れない。

「すずさん、大丈夫?さっきから返事が少し疎かになったり、顔が赤くなってるけど流石に夕焼けじゃないよね?気分が悪かったら教えてね。」

「だ、大丈夫!ちょっと脳が勝手に関係を加速させてしまっただけだから。」

「えぇ……本当に大丈夫?今日は家まで送って行こうか?」

「流石にまだテスト週間だし大丈夫だよ。それに妹さんが家で待ってるんでしょ?早く帰ってあげないと。」

「う〜ん、そこまでいうなら僕は普通に帰るよ……。」

「何だか残念そうだね?もしかして私のお家に着たかったのかな?」

「ま、僕を揶揄える様子なら問題ないか。って、話してたらもうお別れだね。またね、すずさん。」

「うん、拓朗くんまたね。それと後でスマホに連絡するから、よろしくね。」

「うん、わかったよ。」

今日は、家に帰ってからお風呂に入って、寝る前に拓朗くんに連絡を取る。テスト期間最終日付近の土曜と日曜に一緒に勉強しようというお誘いである。前回は伊藤くんが企画してくれたが、今回は私主催で参加者は私と、拓朗くんの2人っきりである。頼む、拓朗くん、一緒にお勉強しよう。この誘いをすることを決意してしまったがために、緊張しながら家の扉を開けた。

◇◇◇

僕、鈴木拓朗は、田中さん。いや、今日の帰り道にすずさんと呼ぶ許可を得たのだ。許可を求めた時はとても緊張してしまって、変に吃ったりしてしまった。これが他の人だったら気持ち悪いと言われすげなく断れてしまうだろう。

「おにぃ、なんかご飯食べてお風呂入ってから、ソワソワしながらスマホの周り練り歩いてるけどなんかあるの?」

「ん?あぁ、琳か。うん、何か面白いことではないんだけど友達から連絡が来るみたいなんだ。予定では。」

「ふ〜ん。もしかしてそのお友達って田中さん?」

「おぉ……。まぁ、すずさんだけど、何でそんなに興奮した感じで詰めてくるんだ?」

「おぉ、おにぃ。昨日田中さんのこと好きかどうか聞いたばっかりなのにもう名前呼びになってるってことは付き合ったの?」

この世界が漫画の世界だったら、シーンって効果音が入っていただろう。

「ち、違うよ。昨日、琳に言われてから寝る前に僕は田中さんのことをどう思ってるのかしっかり考えてみたんだよ。その時、僕がこうやって学校に旭のような親友とまでいかないにしても、気軽に話せる友人ができたのは田中さんのおかげなんだ。だから、田中さんのことは友人だと思ってるけどそれと同じくらいか、それ以上に恩人だと思ってるんだよ。でも前から田中さんはそんなこと気にしなくていいって言ってるし、それに僕のこと名前呼びしてくれたのは嬉しかったから、僕も田中さんのこと名前呼びにして旭みたいな関係になれたらいいなって考えたんだよ。」

「へぇ〜、なんかそんなこと考えてたんだね。てかいつの間にか田中さん呼びに変わってるよ。それにスマホも通知が来てるみたいだよ。それじゃ、お幸せにね。」

「待って、琳。僕の気持ちを理解してくれたのは嬉しいなんだが最後のお幸せにはちょっと違う意味が入ってると思うんだが……」

僕が言い終わる前に琳は自分の部屋に戻っていた。まだ中学生だし夜はちゃんと寝てほしい。まぁ、また何か勘違いがあったらその都度訂正していけばいいか。そう思い僕はスマホの通知に目をやった。



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