25.体術だけが取り柄では無いんでね♪
今回は後半から視点変更されています。
訓練場に到着し我ら一年A組は整列する。これからグレン教官の説明が始まる。説明は良く聴いとかないと後々、わからなくなるからしっかり聴こう。
「では、本日より実践科目の授業を開始する。」
その瞬間教官は一つの端末を取り出す。大きさは手のひらサイズ。外装は銀色で至ってシンプル。画面らしき物が見える。
「これは端末と言ってこれらにリンクさせると武器を召喚できる便利な代物だ。後は通信、連絡が可能で個人情報もこの中に入っている。今から全員に配布する。」
一人一人配布され受け取る。この端末はノーザンベルク大陸一の技術者IAN教授を中心とした開発チームが完成させた六大陸最高峰の物である。
今の時代、一般の人は手にすることは難しく価値も相当なもの。これらを生徒に無料で貰えるとか得すぎないか?因みに外装や内装はカスタマイズ可能である。後で改造しとこ。
「君たちには武器を配布する。まあ自分の武器とか持ってる人も居るかもだか最初はここにある訓練用を使用した方が助かる。」
武器ね.....当然俺は剣を使用する。え?武術用のガントレットやナックルを使うと思った?馬鹿言え。剣の方がロマンがたっぷりあって良いだろう。
そんなこんなで各自が武器を取りに行った。俺も行くか...。
「やっぱりこれだな。」
一人が何かしらの武器を持ち上げる。
「お。それは斧だな。お前さんの体格とマッチングしているから良いと思うぞ。」
斧か.....。鋼で出来た馬鹿デカイ斧。刃のついている部分が禍々しくあれで振り回されたら危なそう。
斧は重量系の武器。戦略的に動きは不利になる代わりに周辺を凪ぎ払いまたは攻撃力も高い。重量系だったら好みだけど斧は嫌いかな。
「わたくしはこれかしら。」
如何にも貴族の優雅な女性は細剣を手に持っていた。
レイピアは軽く剣先が細くスピーディー系の女性に人気があるタイプだ。
一度使用した事があるが俺的に軽いのが難点なのでもう一度使いたいとは思わない。
「私はこれかな。普段愛用しているのと同じタイプが使いやすいです。」
マリーが手にしたのは───小太刀。小太刀は東方の国に伝わる武器で小さな片手で持つような物。
詳しく言ったら刀を小型化した物なら分かりやすいだろう。
彼女は普段愛用と言ってたので東方出身なのか?
それからというと数々の個性ある武器を使用するものいた。例えばハンマーや剣先が伸びる特質系統など。
興味深く見ていたので武器選びを出来ていないのは俺だけになっていた。
これだと目立つ。早く決めて皆からの視線を外して貰いたいが中々決まらない。
というか俺に合う武器が存在しなかったのだ。流石に学院にあれは置いていなかったそうでこうやって悩んでいる。
「おーい!まだ決まらないのか....てお前さんか──ソフィア・アストレア。」
余りにも選ぶのに遅い為、教官は走り込んでやって来た。思わず顔を隠す仕草を取ってしまう。
それを見た教官は『?』だった。
おっと何で顔を隠したんだ。今の俺はあのアルフじゃなくソフィアだ。バレて顔を隠さなくても.....。顔を上げる。
「すみません。私に合うような物無くて....。」
「おっ?そうだったか。アストレアはどんな物が望みなんだ?」
どんな物って、俺は重量系統のバスターソードを使いたい。生前の愛用してた物を出来るだけ使った方が使いやすいから。
でも生憎学院にそのようなのは無かった。正確には斧よりも重く学院生には使えない代物なのでわざと置いていないのだととらえられる。
「あの~ば、バスターソードが欲しいんですけど.....やっぱり無いですよね?」
「「「は───?」」」
その時、騒がしかった空気が一瞬にして静寂に包まれた。先程まで外されていた視線は此方に集中攻撃するような勢い。
あれ?俺何か不味いこと言ってしまったか?
ポカーンとこの状況を理解していない俺。同時に首を傾げて教官の方を見る。
「バスターソードって言ったのか.....本気にそれが望みなのか?」
戸惑っている様子。グレンのこの様子を見るのは初めてなことで俺も驚いていた。
「そ、そうですね。でも無いので諦めます。」
無いことに諦め正直に持参しているガントレットを両腕に着用する。手をグーパーしながら馴染ませる。
「アストレア、それは。」
「ああ。これですか。武術用のガントレットですよ。.....もしかして駄目...でしたか?」
確か持参は駄目と言ってたのを思い出す。でも貫く為に手段を用意していた。
手を後ろに組んで顔を教官の方に向け可愛らしいく上目遣いをする。
「あ、ああ。わかった!特別に許可する。」(ヤバい。凄く可愛い。)
我ながら良い効果だった。流石!可愛いは正義だね♪
「良し!全員決まったからようやく訓練を開始する!」
教官の合図で二人一組で行う訓練が始まった。
ーーー
私は一人の生徒をあの時からずっと気にしていた。Eランクと呼ばれた今年の落ちこぼれ最弱の。
名前は確かソフィア・アストレアと言ってたわね。
正直最初は興味もこれっぽっちも無かった。普通に落ちこぼれの最弱の娘で気の毒ぐらいしか思っていなかった。
ある時、アリアと一部の男子生徒が揉め合いが勃発した。
その時近くにいた私はゾッとしたように血の気が引いてしまった。
あの娘がそんな事するわけが無い。出来るだけ私は信じた。
と思ったら男子たちが魔法を展開し始めたのだ。
ヤバい!逃げてって言おうとしてもあまりの唐突さと恐怖で声が出せなかった。
そんな時にあのアストレアさんが駆けつけてくれた。どうやって魔法を防いだのか謎のまま事は進んでいった。
私は悔しかった。ただ見ているだけの存在が辛かった。
怖じけついていた。アリアの友達失格だよね。
何時もと同じに接しようと考えた。模擬戦終了後、アリアは「ちょっと行ってくるね」と言い残し何処かへと行ってしまった。跡をついていくとそこは医務室。
はて、このような場所に何で.....。
こっそりと気付かれないように覗いた。居たのはベッドで寝ているアストレアさんとアリア。
アリアの顔は酷く悲しみの表情で「ごめんね。私のせいでこんなにも傷付いて....親友失格だよね。」と。
今なんて言ったの?親友?
ようやく理解できたことが一つ。入学式から何時も一緒だったのは彼女だ。
ただしEランク判定を受けた後、関係は酷く変わったかのように二人一緒にいる時間が減っていた事に気付く。
お互いが気を使っているようにわざわざ関わらなかったのだろう。気づかれる前に医務室を後にしようとした。
しかし、何故か悔しかった。一番の親友は私だと思い込んでいた事に。短い間だったけどアリアは私に『友達になってください!』と言われた時嬉しかった。私がこの娘を護るから。
護れ無かった私と護った彼女。
私は一つ決断をした。彼女に負けないぐらい強くなって私が一番の親友になると。マリー・クルシュアンの戦いは幕を開けた。
「ねえねえマリーちゃん。」
「どうしたの急に。」
アリアに声を掛けられて何の用かと考え込む。
「あの~その~。何て言えば。」
呼んでおきながら言葉考えていなかったの!はあ~本当に呆れちゃうよあんたは。でもそんなところが可愛いわ。
「恥ずかしがらずに言ってみなさいな。」
「うう~わかったよ。あのね....ソフィアちゃん一人じゃない?だから───」
二人一組での訓練で私はアリアと組んだ。他のクラスメイトたちも次々とコンビを組み訓練をしていた。
ただし一人だけ孤高でしていた者がいた。アストレアさんだ。
持参した拳に何かを着用して一人で訓練していた。動きも角度も正確に素振りをしていた。
本当に体術プロ並みの力は有るんじゃないの?体も柔らかそうで羨ましいかも。
でもアリアの反応で勘づく。これ一緒に訓練しようってパタンだね。
「なるほどねぇ~一人だから一緒にと言いたいんでしょう。」
いたずらぽく言う。
「やめてよぉ~。私だってね....それはソフィアちゃんに距離を置かれて悲しんだよ。なのにソフィアちゃんは全然悲しんでいない平気な状態なんだよ。可笑しいよ。」
「わかった。わかったからグイグイと勢いに声をあげないで。」
この無地格天然ちゃんを落ち着かせる。周囲から目立ってるから。
皆から変な目で見られていると言うか逆に男子たちは鼻の下を伸ばして見てますよ。
「ごめんごめん。えへへ。」
はあ~本当に可愛いんだから。早く訓練の続きを再開しよう。小太刀を構えようとした時、彼女と一瞬目があった。
急だったので慌てて視線を外す。ちょっとないしてもう一度見る。
何かジロジロと見られてるんですけど!
目を細くして遠くからみると睨んでいるように見える。不機嫌そうなオーラが漂っている。
怖い怖い。何々、私もしかして何か予かならぬ事しちゃった?気になりすぎて近付くことにした。
「じろ───」
「てやぁぁぁぁ!」
豪快な足蹴りを噛ましていた。痛くないのだろうか。足の心配をしてしまう。
でも──近くでみると格好いいかも。顔付きはシャキッとしていてフォームが格好良さを引き出しているようで。
「あの、先程から見ていましたけど何か用でしょうか?」
は!夢中になっていた為、気付けば彼女は私の存在に気付かれていた....というか最初から隠れて観ていたことに気付かれていた!?
実は様子を伺いに来ましたー!何て言えない。誤魔化そう。うん。
「た、体術お得意ですね。な、習っていたんですか?」
挙動不審に話を逸らせる。何か目付きが怖いんですけど。まじまじと見ると可愛らしい娘なんだけど怖い。体なガタガタと震えている。
落ち着け私。怖じけない、怖じけない。別に怒っている訳では無いんだから。
「あの~お疲れのようですか?」
「っ!ごめんなさい。怖かったですか?昨日あまり眠れなかったものですので目に疲労が貯まって。」
急に頭を下げてきた。何事かと思ったが悪気があっての事では無かったらしい。いやぁー良かった。怒らせていなくて。
しかし、この後私は予かならぬ事を言葉知ってしまう事をこの時は気付かなかった。
「それにしても体術がお得意ですのに剣術....ましてや一番重たいバスターソードがお望みって凄いですね~。てっきり体術専門の方だと──」
「まあそう思うかもしれませんが私も体術だけが取り柄では無いんでね♪」
ニコッと返事を返してきた。もしかしたら私は誤解をしていたのかもしれない。彼女は実は優しいお方なのだと....。それを感じたのも一瞬に終わりを迎える。
「もし、良かったら手合わせしてみません?」
「そうですね.....はい?」
え?今なんて言ったの。手合わせ。私と。彼女からそのような申し出を来るとは思っていなかった。
読んでくれてありがとうございます。ブックマーク登録宜しく。評価、感想もどしどしと宜しくね。
(今日の一言) 眠いzzz...




