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トリスタンの皇帝  作者: Jota(イオタ)
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ララ16

二つの太陽の照りつけるような陽射しがやわらぎ、海の彼方にもくもくとそびえていた入道雲は、空高く宇宙を透かす絹雲になった。


ロコウには、秋の花、夜光華の香りが漂い始め、赤、紺、紫、緑、黄、ピンクなど様々な色の、高山トンボが飛び始めた。


高山トンボは、夜になると夜光華のように眩い光をはなつ。光を放ち多量に飛ぶ様子から花火虫とも言われる。


高山トンボは、それぞれ好む夜光華の蜜によって、発色が違う。夜光華は、アルマタイト地盤のメロウ、ヒモン、シカムの純度の高さに応じて様々な色に発色する。


ハイドラ全土に里帰りしていたスサの弟子達は、少しずつセクトルジーナンに戻り、ザブル州組のキューガ、ベルナー、シントラが最後になった。3人はセクトルジーナンに入り、大水郭城にたどり着いた。


ベルナは思わず声を上げた。


「あっ...。」

「な、なんだ...これは...。」


「正体門が崩落している...。」


「オーライ、オーライ、オーライ、はーいストップーー!。」


ダッターンが言った。


「ダッターン!。ヘルメット似合ってるぜ。」


「ありがと。ってうるせーんだよ!。殺すよ!。つまんないこと言ってねぇで、さっさと運びな。」


「おぉ怖え。」


ダッターンは、セメントを積んだ小型のエルタンカーに指示をしていた。


ダッターンは、女だが、現場監督であり、親方だ。


「ダッターン姉さん!。」


「あぁ、シントラ。お帰り。」


「こ、これは一体。」


「あぁ、これかい。トラフィンが壊しちまったんだってさ。リューイをここまだ見せに来て。」


「ユナタイに行く前に、ここに...。」


「で、うっかりリューイを正体門にぶつけて、おじゃんてわけさ。」


「なんと...。」


「歴史ある正体門が...。」


「で、あたいが修復の発注受けたわけ。修復ってか殆ど立て直しだけどね。」


「他の弟子達は何て?...。」


「みんな、クロカゲやリューイを倒した功績に大喜びさ。正体門のことなんて誰も気にしてないよ。」


「大喜び...。」


「おーい!。何ボサッと突っ立ってんの!。日が暮れちゃうよ!。全く...悪いねシントラ仕事に戻るわ!。」


そういうと、ダッターンは、作業員の方に走って行った。


「おまえらサボってっと、殺すよ!。」


「ひぇー...。」


コルシカは、次々と運ばれくる、おひつと、具材を受け取り、作業員と手伝っている弟子達のために、お茶やおにぎりを用意していた。


「コルシカさん、本当に手際が良いな。」


「コルシカのあの踊り、見てるだけだ立ってくるぜ。笑」


「昼間っから何言ってんだよ!。笑。でも、おまえ、ボリューミーなの好きなんだな。」


ダッターンが、走って戻ってきた。


「あんた達!コルシカのケツばっかり見てんじゃないよ!。」


「あぁぁ。さぁーせん!。」


トラフィンは、正岩石を軽々と持ち上げ、クレーンが積みやすいように並べて行く。


トラフィンに次いで怪力で、年長のメルウガも、他の弟子に先立って、ダッターンのエルタンカーから新しい岩を取り出して、所定の場所に並べている。


「トラフィンやメルウガみたいな怪力がいると助かるよ!。って言ってもトラフィンあんたが壊したんだけどさ!。笑」


ダッターンは笑い、トラフィンは首をすくめた。


「トラフィン兄者!。」


「おぉ、キューガ、無事じゃったか?。」


「兄者!只今戻りました!。」


「おぉ、ベルナー元気そうで何よりじゃ。のんびり過ごせたか?。」


「はいっ!。兄者!。サブルで兄者の噂は持ちきりで!。」


「大旋風が起こっておりましたぞ。連日のニュースでも大変な取り上げ方でございました。」


「はっはっは。そうか。シントラ。おまえも元気そうじゃの?。」


「トラフィン兄者。兄者は、どうお考えなんですか。俺は、皆ほど手放しでは喜べない。気をつけた方が良いと思います。」


「おい!。シントラ!。まさかおまえ、妬んでるんじゃないだろうな?。」


「おまえ、ララさんのことを嫉妬しているのか?。」


「揉めるでない。まあ、良いではないか。シントラよ。すまぬが、ついてきて蔵の戸を開けてくれんか?キューガ、ベルナー。笑。シントラはそういうつもりで言ったのではない。決めつけては可哀想じゃ。のう?シントラ。」


「トラフィン兄者。扉ならワシが開けましょう。」


「メルウガ。すまぬが、待たせてある皆の指揮を取り、ダッターンを手伝うてやって貰えまいか。他の者も連れて行っても良い。」


「兄者...な、なんと...。正体門の修復など、兄者を差し置いて...ワシなどが...。」


「メルウガよ。おまえが、そろそろ皆の拠り所となるべき時じゃ。」


「兄者!...。兄者がおられるのに、ワシなど...。ワシは、シントラにすら及ばない。祈日で帰省した折、今年でロコウに戻るのは最期と家族に話しましたのじゃ。」


「メルウガよ。父様と母様をがっかりさせてはならない。」


「こんなワシですら家族は誇りに思っくれております。しかし、これ以上大剛様にも、大母様にも迷惑をかけられませぬ。」


「メルウガよ。キドーにおまえの力を貸してくれ。寧ろ最も辛い道となろうが、おまえが、次のハイドゥクを父と共に育てるのじゃ。」


メルウガは、泣き出した。


「ワシには、ワシのような者に...。もったない。」


「良いな?。」


トラフィンはメルウガの肩をそっと叩いた。


メルウガは泣きながら、足元の端材を抱え大闘技場に戻っていった。


シントラは、トラフィンについて蔵まで歩いた。


「首長達はご年配の方が多い。そもそも、アンティカが複数いることが受け入れられぬのだ。目立たぬようにせねばならなんだのじゃが...。」


「なぜあのような騒ぎを?。」


「ワシが元来のがさつ者だからじゃ。はっはっはっは。」


「兄者は、幸せ過ぎてアンティカとしての心構えをお忘れなのではないですか!。」


「手厳しいのぅ。はっはっはっは。」


「お笑いになっている場合ですか!?。」


「ところで、シントラよ。ザザルスにも不穏な動きがあるのを知っておるか?。」


「...。兄者!。今はそんな話を...。...ザザルスならば、アマルではないですか?。」


「いかにも。ワシはもう帰って来れぬかもしれん。」


「な、何ですと!?。」


「一度ここを離れれば、戻っては来られぬかもしれん。そう言うたのじゃ。」


「そ、そんな...。事態はそこまでひっ迫しているのですか?。」


「そうじゃ。」


「それでも、兄者が戻って来れないなどと...。」


「ワシがいない時は、ララを見守ってやってくれぬか。」


「ちょ、ちょっとお待ち下さい!。そんな、そんなに次々とポンポンと大切な話を...。都合が良すぎますぞ!。兄者が留守をするなら、俺がララさんを奪うかもしれません!。それでも兄者は良いのですか!。」


「構わぬ。それでララが幸せなら。」


「なぜです!。人の女を見守れなどと。なぜそのような無神経なことを言えるのですか!?。兄者は!。」


「まぁ、そう怒るな。ララにとって何が最も良いのかを考える。それこそが愛ではないのか?。」


「......。」


「シントラよ。ワシはバイキールに行かねばならない。首長達が動き出す前にな。」


トラフィンは、樹海の方角を見て、続けた。


「ララは、普通の女ではない。ララは、これまでヒモン石によって自らの力や宿命を封じていた。」


「ヒモン石のことは、私も分かっておりました。」


「はっはっは。流石にララを愛する者同志。注意深く見ておるな?。だからおまえに頼むのじゃ。いつかは、シントラ。おまえがワシをも越え護ってやってくれ。戦士としても人としても。」


「まるで死戦にでも出向かれるようなお言葉。おやめ下さい!。」


「シントラよ。アマルの赤碧が来る。アブドーラが。覚悟はしておかねばならない。」


「そ、そんな!。そんなこと!。兄者なら必ず勝利できます!。デフィン様も、モルフィン様もおられるではないですか!?。」


「頼むぞ。シントラ。」


トラフィンはそう言うと大闘技場に戻った。


「兄様〜っ!笑」


メルテはトラフィンの足に抱きついた。


トラフィンはメルテを抱き上げ、優しく抱きしめた。


「メルフィンよ。母様と父様のことを頼むぞ。うん?ネフィアよ。サビアノーアよ。お前達もじゃ。」


メルテはなぜか、顔を真っ赤にして大声で泣き出した。


ネフィも、サビオも堪らずトラフィンに抱きついた。


「兄様、トラフィン兄様...。どこかに行ってしまわれるわけではないよね?。」


トラフィンは、優しくネフィも抱き上げた。


サビオだけは、俯いている。


「どうした、サビアノーア。」


「兄様はどうして急に僕達を本名で呼ぶのですか?。おかしいですよ。もう会えないみたいじゃないですか...。」


サビオは走って大水郭城に戻って行った。


「い、一体どうしちまったんだい...。あの子達もトラフィンも...。」


ダッターンが言った。


「虫の居所でも悪いのかね?。シーアナンジンの。笑」


コルシカは言った。


「ちょっと!。止めなあんた!。殺されるよ?。」


ダッターンはコルシカに囁いた。


二人は笑った。


-----------------------------------


弟子達達は、大水郭城の食堂にいる。


100人近い弟子達の中に、メルウガや、シントラ、サビオの顔もある。


サビオは、成長が認められ晴れて本修行を行う弟子達の一員となった。


幾つもの円卓には、橙色か、深い緑に金の刺繍が彩られたテーブルクロスが、交互にかけられており、食べた後の、食事の大皿が重なっている。


時折、コルシカや何人かの女が出入りしている。


門下生は、メルウガとサビオの座っている、緑の円卓の上を凝視していた。


円卓の上は、ホログラムが映し出されている。


「...ハイドラの軍が公開を許可した映像をご覧下さい。この映像は、我が国の軍事衛星オグワンが撮影したもので、およそ2週間前のものと思われます。」


立体的に浮きだして見える記者の小さな映像は、解説をしながら、ゆっくりと円卓を歩いた。


そして、円卓の上は、ハイドラの南端、アルバーンの近くに集結した、デューン軍の映像が映し出されている。


デューンの宿営の周辺にはまるでバルデスの大艦隊が。


まるで天気図の前線のように空は艦隊一色に染まっている。


弟子達からどよめきが起きる。


続いてそれから、シアバール沖150kmに集まるアマルの海の大艦隊。


更に、ザザルスに近い基地に、アマルの新しい軍事兵器の映像。


それが何のための物なのか分からない。


しかし、もの凄い数だ。


食堂は弟子達は騒然とした。


弟子達は、にわかに浮き足立った。


「静まれ!。」


メルウガは一喝した。


食堂は、一瞬水を打ったように静かになった。


「メルウガ兄者は、不安ではないのか!?。」


「アマルだけでも、絶望的だと言うのに、デューンまで...しかも凄い数だぞ!。」


「我らはこんなことをしている場合か!?。」


「そうだ!。我らも備えねば!。」


「静まれと言っておろうが!。」


再び食堂は静まり返った。


「部族長、そして、ハイドラ軍の判断を信じようではないか!。我らの仲間が真剣に下す判断を!。」


「しかし、兄者!。アマルは物凄い軍事力です!。物凄い数です!。このハイドラなど...。」


「落ち着け!。それぞれ役割があるのじゃ!。素人のワシらが出て行って何の役に立つ!?。ワシらは、ワシらの役割を果たすのじゃ!。」


「私達の役割とは何です!?。メルウガ兄者!?。」


「鍛錬を続け、大剛様のご指示に従うことじゃ!。」


「こんなことしていて、大丈夫なのですか?!。あの数なんですよ!?。」


「皆は、我らのハイドゥク、三大アンティカの力も信じられぬのか?。修行中である己が、族長や大酋長よりも賢いと言うのか?。我らが全員かかればトラフィン兄者を倒せるのか?。」


弟子達はうなだれた。誰も反論する者もいなかった。


「我らの今できることを、精一杯こなそうではないか。ヒドウィーンの仲間と誇りを信じて。」


「そうだ...。」


「確かに...その通りだ。」


「私は、メルウガ兄者に賛成だ。」


「兄者の言う通りじゃ。」


弟子達は口々に言い始めた。


弟子達の揃ったキドー一門は、再び鍛錬の日々に戻った。


-----------------------------------


その夜、大水閣城の中で、鍛錬の初日には必ず行なわれる一門水入らずの宴会が行われた。


大宴会場の半分は星空の見える野外で、中央に大釜のある土間がある。


それを囲むように、草で編んだ絨毯がひかれ、木の丸い大きな座卓がいくつも置かれている。


広い部屋は、中庭につながっていて、裏ミョウセンと言われるロコウの滝の片方が見渡せる。


上座のスサ達の場だけ少し高くなっている。


コルシカ達が次々と料理が運び、コンフとベルナ達は、樽酒を運んで来た。


サビオはジャイナ梨のジュースを。


酒の飲めない年齢の者は、本修行を行っている者では、サビオともう1人シンリキだけだ。


「大剛様、大母様。準備が整いました。大剛様、トラフィン大兄様。ご発声とご挨拶を。」


「うむ。」


スサは言った。


「皆、また無事に1人も欠けることなく、ここに集い、また高みを目指して鍛錬できることを、誇りに思う。皆、また明日から厳しい日々になるが、ハイドラの守護者となるべく頑張り抜こうぞ!。」


...オーーーーーーーー!...


弟子達から大きな掛け声が響いた。


「今日は無礼講じゃ。明日に備え、存分に楽しむが良い!。」


...オーーーー!...


更に大きな掛け声が響いた。


「トラフィン兄者、乾杯の音頭を!。」


メルウガは、満面の笑顔で言った。


ヒドウィーンは、酒の弱いタント族も含め、みんな宴会好きだ。


「メルウガよ。何を血迷うとる。乾杯の音頭はもはやおまえの役目じゃ。はっはっはっはっ!。」


トラフィンの笑い声が、大宴会場に響いた。


一瞬どよめいたが、すぐに門下生達のメルウガに対する割れるような拍手が響いた。


メルウガは泣きだした。


「兄者ーー!。しっかり!。」


「兄者!リラックスじゃ!。」


「喋らんでも伝わっとるぞ!笑」


「えー...わた、私...メルウガ...くっ...泣」


「どうした!。どうした!。」


「ワシらの心の在りどころじゃ!。しっかり!。」


真面目なキドーの若者達は、酒を飲み熱く語り出した。


トラフィンはいつもの様に穏やかに、ララはいつものように隣に座り始終笑顔でいた。


二人は、楽しそうに話をしている。


「トラフィン大兄者とララ殿...楽しそうじゃな。何を話しておられるのじゃろう。笑」


「本当に楽しそうじゃ。何を話されておるのか...大兄者、マンガみたいな顔されとるのに、べっぴんのララ様と不思議と良くお似合いじゃ。」


「ララ様は、トラ大兄者と一緒の時には、本当に良く笑われるな。妬けるな。」


「ああ...トラフィン大兄者は、本当に幸せ者だ。」


宴会は深夜まで続いた。


「それでは、私達はお先に失礼いたします。大剛様、大母様、トラフィン大兄者!。明日からよろしくお願いします。」


「キリュウよ。それはメルウガにすべき挨拶じゃぞ。」


「あ!?。そうでした...メルウガ兄者...あれ!?。寝ておられる。笑」


「はっはっはっはっ。メルウガのことを頼むぞ?。」


「それでは!我らもお先に失礼します!。」


「おぉ。ゆっくりと休めよ。」


スサは言った。


一人、また一人と弟子達はスサとカルラに礼をして帰って行く。


寝ているメルウガと、スサとカルラ、トラフィンとララだけになった。


ララも、トラフィンにもたれかかり、舟をこぎ始めた。


スサは、メルウガに肩を貸し3階の部屋に連れて行った。


「親父殿は、随分と変わられたな...。」


トラフィンは呟き、ララを赤子のように抱き上げ、カルラの後に続いた。


「コルシカさん。後を、よろしくお願いしますね。」


「あいよ。大母様。」


「すまぬな。いつも。」


「あはは。仕事だよ。ゆっくりと休みな。笑。エマ!。暖炉の火!。先に消して!。」


トラフィンは、カルラとともに、ララの部屋に行き、ララをカヌカ(ベッド)に寝かせた。


カルラは先に部屋を出た。


トラフィンは、ララの髪をそっと撫で、頬にキスをした。


トラフィンは立ち上がろうとしたが、寝ているはずのララは、トラフィンの手を握りしめ離さなかった。


トラフィンは思い直し、カヌカの横に座り両手でララの手をそっと包んだ。


しばらくすると、ララは深い息をして、眠りに入った。


「ララよ。約束の石を取って参る。少しだけ待っていておくれ...。」


トラフィンは、もう一度ララの頬にキスをした。


ララは、微笑んで頷いたように見えた。


その夜、すぐに戻るとの書き置きを残しトラフィンは居なくなった。


-----------------------------------


それからひと月。


トラフィンは帰って来なかった。


洗濯物を干す時、外で食器を洗う時、ララは毎日セクトルジーナンから、タンジアの海を見下ろしていた。


冷たく透明になっていく大気を感じながら、来る日も来る日も。


「トラフィンは、一体どうしてしまったのかしら。」


「わからん。トラなら、メロウ石でもヒモン石でもバイキールの底から簡単に拾って来れるというのに。」


その日、スサとカルラは、ララを不憫に思い、再びユナタイへと連れ出した。


当番のシントラは、新しくなった正大門まで3人を送った。


入れ違いに、外環道から人が現れた。紺の衣装に赤い帯。ルビキョウだ。


ルビキョウは、トラフィンから預かった一つの小さな荷物をシントラに渡した。


ルビキョウは、首長会からのトラフィンへの臨時通達を告げて帰った。


翌々日には、首長達による公告が全ハイドラに報道されると。


ルビキョウが帰った後、シントラは、トラフィンからの小さな荷物をずっと見つめていた。


そして、おもむろに正大門を出て樹海が見える崖まで行った。


シントラは暫くタンジアの街を見下ろした。


そして、小さな荷物の中身を見ることもなく、樹海へ投げ捨てた。


-----------------------------------


タンジア州のドーラナジミールは、ハイドラの首都だ。


ハイドラ政治の中心である、16首長会や、部族長会が所在を置いている。


僅か300万都市のドーラナジミールが、首都となり得たのは、首長会議の決定を覆し、国民投票が、ドーラナジミールを首都に指名したからだ。


自然と科学が調和した生き方をハイドラの国民は選んだ。


首長達による公告の日、各家庭でも見られるにもかかわらず、タンジア最大の公園、ドーラナジミール国定公園には、数十万の人々が集まった。


ホログラムに首長達が順番に現れ、自分の担当地区や、担当範囲の施策を、映像や画像を交えて市民に伝える。


公告は始まった。


賞罰相のミラボレールが、事実関係を説明し、大首長シーアハーンが決定を伝えた。


許可なく伝説を覆し、ハイドラ最大の山岳都市セメティームハイドラの人々を危険に晒した罪により、トラフィンに対する無期限のタンジア州追放、そして、アンティカの剥奪が言い渡された。


人々は騒然とした。


ハイドラ全土でそれに抗議する、数百万人規模のデモが起きた。


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激しいハリーケーンの日、キヨタは再び見た。


本来の姿に戻り悶え苦しむララを。


その日、姿を変えたララに、シンワートは吸い付けられるように近寄り、その愛らしい生物は、次々と黒焦げになり死んで行った。


ロコウの全てのシンワートは焼け焦げて死に、そればかりか、森の全ての生き物は死に絶えた。


ララとキヨタは再び視線を合わせた。


しかし、ララはそれ以上タンジアを破壊することなく、激しく吹き荒れるハリケーンの中、ゆっくりとロコウを降り、静かにタンジアの海に入っていった。


数日後、再びルビキョウは来た。


ミノス事変を知らせるために。




ララの章 終わり


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