ララ15
...ドゥン...ドゥン...ドゥン...
...ドゥン...ドゥン...ドゥン...
...バリ...バリ...バリ...バリ...
...ボババ...ボボババ...ボ...
...ボババ...ボボババ...ボ...
地面が振動し、ガラスが音を立てる。
「母様!。来たよ!。」
「そうね。ネフィここお願い。キヨタさん、皆さんに指示をお願いします。ミサエさん。飲み物とおにぎり出すの手伝って。」
「お兄ちゃんしっかりね。」
「まかしときー!。ミサエーあんたこそ。本当はあたしとあんた逆な方が良いんだけど。笑」
「そうね。でも、診察してるから、タンジアのみんなはお兄ちゃんのこと知ってるし...。」
「僕はー?。」
「メルテは、お野菜洗っててちょうだい!。」
「えーー。」
「あら、大事なお仕事よ。プスマケが食べれなくなっちゃうでしょう。」
「うーん..。」
...ビュウーーーーーーーー...
...ゴゴゴゴーーーーーーーーーーーーーー...
全長300mの大型エルタンカー アーククルーゼ号は、大水郭城の前の、大闘技場に横向きに着陸する。
爆風で、闘技場の土や砂が吹き上がる。
「ち、着陸したわ。行きましょう。」
「あっ、お、大きいっっ!。」
「これ、ハノイの1番艇じゃない。見てよあのマーク!。」
エルタンカーの中央には、ハノイ州で最も輸送力のあるタンカーであることを示すシンボルが描かれていた。
ハノイのシンボルである水色のサメに数字の1が描かれている。
「そうですって。ハノイのメインタンカーの操舵手の方と偶然知り合ったんですって。」
...ウィーンーー...
「ゲート開くわよ!。」
エルタンカーの後部のゲートは鯨が口を開けるように、ゆっくりと開く。
...ワーーーーーーーーーーーーーー...
...ワーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
...ワーーーーーーーー...
「わ。何この人数...。」
1000人近いヒドゥイーンが、荷物を持ったまま、タンカーの荷台に立っている。
ヒドゥイーンは一斉に降り始め、巨大エルタンカーは揺れた。
「ど、どうしよう!。む、無理...。」
「お兄ちゃん、しっかりっ!。イケメンが見てるかもっ!。」
「えぇっ!?。マジで!?。」
「乾きものはこっちへー!。食べ物以外は、とりあえず、あちらの黒い蔵の前へ!。」
カルラとミサエは笑った。
「皆さんーありがとうございますーーっ!。こちらにお茶がありますのでーーっ!。」
「おにぎりがこちらにありまーーすっ!。」
...ワーーーーーーーーーーーーーー...
...ワーーーーーーーーーーーーーー...
...ワーーーーーーーー...
「あれっ!。先生。キヨタの先生!。ここで何を?。」
「本当だ、キヨタだ。」
「先生、この樽はどこ!?。ハァハァ...。」
「先生これ使ってよ!。」
ルビキョウは、無線、拡声器を渡した。
〈...ピンポンパンポーン 樽は、北側の黒い左から2番目の蔵にお願いしまーす。何これ、恥ずいわね...。 ピンポンパンポーン...〉
「いやいやいやーー。これがキドーの大水郭城かー。土産話ができたぜ。」
「おいっ!。オヤジっ!。ぼーっと腹出してないで、とっとと働け!。」
「チッ!。気にしてることを...。誰が腹出してぼーっとしてんだ!。この野郎!。」
「あんただよ!。この歯なし腹出しダコっ!。みんな忙しく働いてるだろうがっ!。」
「な、なんだ...。褒めてるのか...。文句言ってるのか思ったぜ...。照れるぜ。イケメンなんて言われても...。」
「この人あのタンカーの操舵手さんよ。丁寧にね?。」
「えっ!。これはこれは...。大変失礼しました...。」
「カルラさん。あの人が操舵手さんだって...。」
「あら、お礼しなくちゃ...。」
「大母様!。家から樽酒持って来たわ。今年はついてるわー。お正月でもないのに、ここでお祭りできるなんて..。」
「カルラさん。お肉持ってきた。」
「あ...あら、そ、そんなに...。」
「こんなに野菜あるんじゃ、いらなかったかな...。今年は豊作だったからネギこんなに持ってきちゃったよ。」
「大母様!。私達手伝うわよ!?。来年のお手伝い係だし。」
「大母さんよ。生ものどうする。魚とか肉とか...野菜とか...ざっと300人分はあるぜ!。」
「そうだ。皆さんもいらっしゃることだし、大プスマケ会にしましょう?。」
「え?。いいんですか?。」
「まずいな、かみさんにすぐ帰るって言っちまったよ。恨まれるなこりゃ。」
「キヨタさーん。キヨタさーん。それで皆さんに...。」
「ちょいと先生に言ってくるわ。」
「今何時?。」
「うーんと。20時49分...。」
大型タンカーの荷物は、ほぼ蔵や倉庫にきっちりしまわれた。
大闘技場には、樽酒や、食材が山のように残されている。
〈...ピンポンパンポーン すいませーん。大母さんが今日は大プスマケ会にするそうですぅ。手の空いてる人ー。城の裏の倉庫から大釜5つ全部出してくださーい。大釜ってあたしは入れないでよー?。 ピンポンパンポーン...〉
...ワーーーーーーーーーーーーーー...
...ワーーーーーーーーーーーーーー...
...ワーーーーーーーー...
人々は、一気に倉庫に押しかけ、複数の大釜や、大まな板、包丁類は数十人がかりで運ばれて行く。
毎年、正月には、田舎に帰らないロコウの人々は、キドーの総本山に参り、大釜料理を振舞われる。
皆、手配には慣れている。
「ねぇ。ルビキョウさん。セメティームの放送塔で流さなくても良いかな?。あとで、文句言われそうで...。」
パンタが言う。
「いいだろ?。手伝ってくれた人だけってことで。あとで、市長に言っとく。あ!?。市長だけ呼んどくか?。」
「そうですね!。」
「キヨタさんっ!大蔵に入ってる樽酒、全部出しちゃってちょうだい!。」
「ぜ、ぜ、全部っ!?。か、カルラさんっ!。」
「そう。全部よっ!全部っ!。」
「本当に全部!?汗。ジジイに聞かなくても大丈夫?。」
「そうよ。出し惜しみしても仕方ないじゃない?。キドーの会計の総責任者は、主人ではなく、大母である私です。皆さんあってのキドー一族ですもの。誰も怪我しなかったんだから、これくらいして丁度良いのよ!。」
「わ、分かったわ。汗」
(...や、ヤケクソになってるわ...。完全に頭おかしくなってる...。)
「ねぇ、カルラさん。大剛さまは、どちらに...?。見かけないけど。」
「ミサエさん、ありがとう。子供達と一緒にいるわ。子供と一緒にプスマケを作っていますわ。大人用だとお酒が一杯入っているから...あの人、サビオが心配で仕方ないんですよ。」
「あら、サビオちゃんなら、もう大丈夫よ。あたし言ったのに。多分もうそろそろ目が覚めるわよ。」
「あれでも、キヨタさんには、本当に感謝しているんですよ。」
「大母様!そろそろ乾杯の音頭を、大剛様に...。」
オルセーが言った。
「それが...今サビオにつきっきりで...一回目が覚めたので大丈夫だと言ったのですが...。」
「じゃ、オルセーさんお願いしますよ。」
「あ、そうだ、課長にやらせよう。ルビキョウさーーん!。」
オルセーは走っていった。
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トラフィンと、ララは手を繋いでセクトルジーナンに向けて歩いている。
「あと、一周じゃ。あと、少し。何やら、賑やかじゃの...。」
「とても、明るいね..。」
大勢の笑い声や、タンジアの民族楽器を使った、陽気な音楽が聞こえて来る。
「はっはっは。親父殿は、また大勢呼んで酒盛りじゃな...。母様に後で叱られなければ良いが...。笑」
「おっ!兄者!。」
「トラ兄者!。」
「ララさんも!?。」
「メルウガ!。コンフ!。シンバ!。帰って来たのか?。」
「トラ兄様!1カ月ぶりになります!。」
「兄様!。お噂は聞きましたぞ!。何でも、リューイとクロカゲからこのタンジアを護ったとか?。」
「我らの故郷、ミノスではもう、大変な騒ぎになっておりますぞ!。」
「先ほど、ハマヌカーン組とビルヌ組と、船で一緒になりました!土産が多いので、外環を歩いて来るそうです!。みな、兄様のニュースを聞いて、ご家族がいても立ってもいられなくなって、追い出されたそうな!。ハマヌカーンは、モルフィン様の本拠地にも関わらず!。」
「ほう。そうか。笑」
「ララさんも!。お元気そうで!。」
「こんばんは。お久しぶり。メルウガさん。シンバ。コンフ。」
「うわっ!ララさんが喋った!。」
「おぉ...。ララさん喋れるようになったのか!。」
「こぉりゃめでたい!。」
「兄者!。ワシらは先に行っておりますぞ!。今宵は、再開とララ様のお祝いじゃ!。大剛様にお願いしよう!。」
メルウガ、シンバ、コンフは、最後の崖を登り始めた。
ララと、トラフィンは3人に手を振り、3人も振り向き手を振った。
「さ、ワシらも向かおう。」
「はい...。」
ララは俯いた。
「どうしたのじゃ。ララ。」
トラフィンは、ララの顔を除いた。
「怖い...。」
「それでも、ララ、ワシを信じてくれ。ワシはいつでもおまえの盾となり、剣となり、そして、人との架け橋となろう。そして、そして、ワシは何よりララの心に寄り添おう。」
「トラフィン..。」
「ララ、ワシと供に歩もう。おまえがいなければ、ララがいてくれなければ、ワシにとっての人生は、過酷で孤独なだけの道じゃ。」
ララはトラフィンに抱きついた。
トラフィンもララをしっかりと抱きしめた。
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「ぎゃはははは。」
「おい!ぽっちゃりーーピンポンパンポンでやれーー!。」
「じゃあ、乾杯の音頭に引き続いて、俺が司会やるよーっ!って、何で俺がやってんのかわかんねー。汗」
「頑張れー!ぽっちゃりー!。」
「おい!ぽっちゃりは、失礼だぞ!。」
「失礼しました。ぽっちゃりさん。」
「あっはっはっはっは。」
「わはははははははは!。」
「おいおい...ぽっちゃりさんって?。そっちの方がイヤだよ。」
「パンタさーん!素敵よー。」
「おい!。ぽっちゃり!...さん。てめぇモテるじゃねえか!。」
「キャーーパンタさん。こっち向いてーーっ。!。」
「パンタ!パンタ!大好きっ。きゃははは。」
「誰だっ!呼び捨てにするちびっ子は!?。メルテだな!。」
「はははは!。はははは!。うー。」
「こらーぽっちゃり。子供を大切にしないと上司のらっきょうに言いつけるぞ!。」
「サビオ兄様、らっきょうってなーにー?。らっきょう。」
「課長さんの名前。ダメだよ。メルテ。呼び捨てにしちゃ。」
「良かったなぁ、サビオ兄ちゃん。元気になってよ。メルテちゃん。兄ちゃんの膝の上いいなぁ!。」
「兄ちゃん好きかい?。」
「普通〜。」
「ギャハハハハ。」
「降りろバカ。重いんだよ。大人しくしてりゃあ。ガキが。」
「あっはっはっはっは。ガキが!。だって。あっはっは!。」
「ところで、サビオちゃん。らっきょうって漬物の名前だぜ。ハクアから伝わった。課長さんの名前じゃねぇよ。あっはっはっはっは。笑かすねぇ。」
「誰がらっきょうですかっ!。逮捕します!。わははは。」
「ダメだ。笑。課長さんキマってるぜ。笑」
「ねぇ、メルテ、さっきの父様の顔の真似して?。」
「サビオ〜。」
「アハハハハ!。ウケんだけど!。」
「えっ?。誰の真似?。大剛様の?。」
「もう一回。メルテ!。」
「ギャハハハハ!。だせえ。ワッハッハ!。」
「こらこらー。大剛様、本当に心配だったんだよ。悪いガキだぜ。笑」
「それ、やり過ぎだろ。でかいの我慢してるタコ見たいだぜ!笑。俺たちじゃ怖くてできねぇ!笑」
「メルテ!。もう一回!。」
「ギャハハハハ。」
「わははははははは!。あっはっはっ!。」
「誰がイケメンだっ!。冗談も休み休み言えっ!。」
「うるせー!。タコオヤジっ!。」
「誰がオルセーだっ!照れるじゃねえかっ!。」
「そんなこと言ってねぇよ!。タコオヤジ!。わはははははは!。」
「どういう耳してんだ!。笑」
「続きまして...次はお正月好評だった、コルシカ姉さんの変な踊り。」
「こら!。パンタ!。あんた殺すよ!。」
「こ、怖え...。」
「頑張れーー。パンタ!。」
「負けるなパンターー!。」
「お前たちもだよ!。死にたいのかい!。」
「ひぇー怖えぇ..。笑」
「ぎゃー...怖えぇなあ。おい!。」
「やっちまいなっ!。コルシカ!。」
「げっ!。ダッダン姉さんっ...。」
「洒落になんねぇ...。」
「に、逃げろっ。」
「待ちなっ!。こらっ!。友達をバカにする奴は許さないよっ!。待ちな!。」
「ご、ごめんなさーい。」
「待ちなー。」
...はっはっはっは...
...ギャハハハハ...
...あっはっは...
...わははは...
「はいー、皆さんステージに注目ーっ。音楽スタート!。」
...ズンズンズンズンズンズンズンズン ズンズンズンズンズンズンズンズン...
「コルシカ姉さん。ダンス凄いキレ!。」
「よっ!すげぇノリ!。」
...ズンズンズンズンズンズンズンズン...
...ズンズンズンズンズンズンズンズン...
〔くっ。これ、拷問だぜ...〕
〔これ見て笑うなって言う方が無理だろ...ヒヒヒ〕
〔プッ。ダメだ...〕
〔ば、バカねっ。殺されるわよっ。〕
〔怖いのか、面白いのか、分からなくなってきた...〕
〔キツイぜ、ここに来てあの踊りと音楽..。うひ〕
〔クゥッ。ご、ゴリラかっ。〕
「ぶはっ!笑、似てる。」
「(あんたっ殺されるわよっ!)コルシカ姉さんっ!。素敵よーーっ!。そっくりーーーーっ!。(ハッ!?汗)。」
「な、何だってお前ら!。コルシカが、コルシカが、ゴリラに似てるって?!。」
「ち、違うんだ。違うんだよ、ダッダン姉さん!。」
「そう。そうよ!。私似てるなんて...一言も...。」
「コルシカーーっ!。こいつら死にたいらしいよーーっ!。あんたのこのゴリラに似てるって。」
「あ、あたし達。ゴ、ゴリラとは、一言も言ってないわっ!。」
「なんだってーーっ!。」
「ま、ま、待ってくれ、コルシカ姉さんっ...ゴリラは、ハノイで...超絶美少女って...。」
「嘘ついてんじゃねぇよっ!。あたしゃハノイ出身だよっ!。こーいーつー!。故郷までバカにしやがってー!。」
「ヒィィ!。」
「に、逃げろっ!。」
「待てぇーーー!。」
...はっはっはっは...
...ギャハハハハ...
...あっはっは...
...わははは...
「宴もたけなわでございますが...。」
「うっせぇー。白ブタ。」
「誰が白ブタだ!この禿げちゃびん!。」
「あ、見ろ、キドーのお弟子さん帰って来たぞ!。」
「おーお帰りー。プスマケまだまだあるぜー。」
「酒!。酒!。樽持ってきて。」
「お帰りーー!。さあさあ、こっち来て。兄さんたち!ほれ、お椀!。」
「続きましてー。キヨタ先生の〜ボヨンスの口パクー。」
...はっはっはっは...
...ギャハハハハ...
...あっはっは...
...わははは...
「おっ、おい!。あれを見ろ!。アンティカだ!。」
「アンティカ!。」
「アンティカ様っ!。」
「トラフィンーっ!。」
「トラっ!。」
「マジトゥアンティカ様!。」
「トラフィンーっ。」
「トラ様だっ!。」
正体門のあった場所にトラフィンは佇んでいる。
サビオがトラフィンの前に出た。
「ララ姐様は...?。」
トラフィンの後ろから、紫色の髪の美少女が出てきた。
「ただいま。サビオ。ただいま。みんな...。」
サビオはララに抱きついた。
ララはサビオをしっかり抱きしめた。
ネフィとメルテが抱きついた。
ララは3人をしっかり抱きしめた。
後ろからトラフィンが抱きしめた。
カルラは、ネフィの後ろから。
最後に、スサはメルテを抱き上げ、みんなを抱きしめた。
地面が割れるほどの、鼓膜が裂けるほどの歓声が上がる。
誰もが飛び上がって喜んだ。
トラフィンは、ララを右肩に乗せ、ゆっくりと宴会場である大闘技場へ歩いた。
ララは、溢れんばかりの笑顔でトラフィンの頭にしっかりと抱きついている。
再び歓声が上がりと次々と口笛が鳴る。
「トラフィンと、ララが帰って来たぞー!。」
再び大歓声が上がる。
人々の笑い声は絶えない。
音楽は高まり、ますます宴は盛り上がり続けた。
いつまでも、いつまでも。




