謀略8
アトラの軍事スーパーシナプスフレーム スサノオは、ギガサニーの母体に「マナ」の識別名をつけた。
「マナ」はアトラの共通言語ハクア語で「創造的原種」の意味だ。
皮肉なことに亡国サルアの言葉 絶対的守護神の名前と、発音も綴りも全く同じだ。
サルア語とハクア語は全く別の言語であるにもかかわらず。
マナと言う言葉がより広く人々に知られるようになったのは、32000年前 第三古生代。
アマル帝国 第1123代 神帝〔※〕ラー(118世紀)の命によりサルア共和国が奪還されてからだ。
スカル•ヤク•ラー ペルーンは、ラーの命に基づきリムテスキからサルア取り返した。
〔※アマル帝国における絶対君主。寿命は2000年とも3000年とも言われる。姿を見た者はいない。外観は人のようでいて人と異なる。強力な霊能力を持っている。〕
リムテスキはケラムで進化したキツネ。
今は無いクロドネオリア生態系の覇者だった。
クロドネオリア生態系は、良く知られている通り、第三古生代でミルゲリア生態系に吸収され完全に姿を消した。
そして、リムテスキもアマル帝国の神帝が滅亡させた。
体長は1m20〜50cm。
祖先はキツネだが、進化の結果かなり人間に近い顔をしていた。
体毛は退化しても、なお全身にびっしりと生えていた。
顔は猿にも人にも似ているが違う。
耳の位置がかなり上にあり眉毛が異常なほど濃い。
鼻は未だにキツネや犬の特徴を残している。
目が極端に大きく宇宙人を髣髴とさせる。
一見獣に見えるのでそのつもりでいると突然話しかけて来る。
サルア語を理解している。
思わずギョっとしてしまう。
不気味だが慣れると愛らしさもある。
しかし、気を許してはいけない。
普通のキツネよりも知能が高く肉食で獰猛。
また繁殖能力が高い。
独自の言語を話しクロドネオリア生態系では社会を形成していた。
そしてそのマナの知能は人間を凌駕する。
女王を中心とした雄ばかりの群れを形成し女王は母として崇拝されている。
信仰と言っても良いくらいだ。
女王は体長が25mあり卵を産む。
その数は日に数回数百だ。
キツネであるにもかかわらず。
女王は、目、鼻、耳、口のついたけむくじゃらの脂肪の塊。
手も足も無い。
マナだけが移動することが出来、マナだけがメスを産むことが出来る。
メスを産み落とした後、マナには幼虫のような足が生え、這って新しい巣に移動する。
その時マナを護衛するリムテスキの数は数億に登ると言う。
サルアは、歴史上動物と共に生き、生き物を深く愛する美しい民族だった。
サルアは大きな間違いを犯した。
リムテスキをペットではなく人間のパートナーとして社会に迎え入れた。
当初リムテスキは控えめで従順。
とても利他的な性質だと思われていた。
しかし、リムテスキを迎え僅か1年で頻繁に人か失踪するようになった。
3年でリムテスキに疑問を抱くものは1人も居なくなった。
そして、サルアがリムテスキを社会に招き入れて5年。
リムテスキは政治の主導権を握り人間を差別するようになった。
それから10年。
リムテスキは、クロドネオリア生態系と同じ社会を築いた。
人間を食用の家畜として管理し飼うようになった。
サルアはアマル帝国の外れにあり高い山を越えなければ到達できない。
土地は痩せ神帝は興味を感じていなかった。
この歴史的な殺戮と虐殺を知った時、アマルの神帝は有史以来初めて激怒した。
神帝ラーの怒りは凄まじかった。
当時のアマル帝国軍のおよそ半分8億の軍隊を、人口4223万、総面積357,021㎢のサルアに送り込んだ。
そして、帝国軍はリムテスキにありとあらゆる究極の虐待を繰り返した。
延々と執拗に...。
例えば、リムテスキの親にその子供に硫酸を飲まさせたり、生きたまま調理して食わせる。すり鉢で自分の頭を死ぬまで擦らせるなど...。
簡単には殺さず半殺しにしては回復させる。
そしてまた虐待を繰り返す。
産ませては虐待を繰り返した。
ケラムに放ちまた生き残った物をまた捕まえて処刑した。
このミダウロン•ラクロ•ラー「ラーによる希望」と名付けられた政策(虐殺行為)は1000年間続いたという。
1000年と人々は簡単に言う。
しかし、この1000年は途方も無く重く苦しいそして長い時間。
数秒の苦痛が永遠に感じられる。
永遠よりも長く感じられる時間だ。
繁殖力の旺盛だったリムテスキは遺伝的に自ら消滅して行った。
無邪気に美味しい食べ物を食べたという罪は、途方も無く重い罰をリムテスキに背負わせた。
ラーは、ただのサディストではない。
究極のサディストだ。
遺伝子レベルでケラムの生き物に、人間の、いや神帝のしもべの尊さを擦り込もうとしたのだと言う。
アマルの神帝が人々の味方であったこと、人民の立場にたったこと、有史以来それが最初で最後だ。
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リムテスキは、生きる場所を求めてやっとサルアという国に辿り着いた。
クロドネオリ生態系を消滅させその覇者を惨めに追いやったのはギガサニーだ。
ギガサニーの出現は、ケラム地帯の食物連鎖を激化加速させただけではなく、ケラム地帯を人類にとって絶望的なほど危険な場所にした。
そして、今ここにいるのは、ギガサニーの女王中の女王。
創造的原種 マナだ。
...グチュ...グチャ...グヌュ...グチュ...グチャ...
マナの複眼が突き立てられたダブルトラゴンを身体に取り込もうとしている。
緑色の皮膚。
甲殻に近い。
一つ目の巨大セミ人間。
黄色い直径数十メートルの複眼。
亀裂がまるで口のようだ。
取り込もうとしてる。
鉄塔のように大きな武器、ダブルドラゴンを。
咀嚼しているようにも見える。
適応能力が凄まじい。
この獣は戦闘機や戦車でさえ身体に取り込み同化する。
そして操る。
しかし、ダブルドラゴンは神器と言われる強い意志を持っている武器。
自分の選んだ主人以外には従わない。
ましてや化け物の言いなりになど...。
...グゥオオーーーーーーーーーーン...
...グゥオオーーーーーーーーーーン...
マナの体内からダブルドラゴンの刃の回転音が聞こえて来る。
...シュゥアゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ...
...グツ...グツ...グツ...ボコ...グチャ...
...シュゥアゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ...
回転する度にマナの複眼が焦げて白煙を上げる。
臭い!。
嗅いだことの無い臭さ...。
まるで腐った嘔吐物を焼いているようだ。
ダブルドラゴンは、同化せず劇物としてマナを害し続けている。
...ピシィィィーーーー...
複眼のレンズにヒビが入って行く。
...ギュワッグワワワワワーーーーーーーー...
...ギュワッグワワワワォォォォーーーーーーーーーー...
咆哮がビルの間を反響している。
マナは苦しんでいる。
...ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド...
熱線を射出する。
砕けた複眼から範囲も方向もめちゃくちゃに。
苦し紛れに。
威力が弱まった熱線はサーチライトのように広範囲を照らす。
建築物の壁面が溶ける。
時々ランダムに焦点が合う。
それが厄介だ。
?
...ピシュウゥウゥ...
...ズガゴーーーーーーーーーーーーーーーーーン...
ガナン〔※2〕頂上の避雷針が吹き飛ぶ。
〔※2:高さ5000mのアトラ1美しいといわれる高層建築物。高さの違う7棟の高層タワーが重なって出来ている。鏡面ガラス状の金色と銀色の壁面。〕
予測がつかない。
方向も速度も角度も...。
...ピシュウゥウゥ...
...ズバーーーーーーーーーーーーーーーン...
!!
ユーライを直撃した。
右腕が吹き飛んでいる。
体液を噴きながら落下して行く。
鋼鉄の大きな腕。
腕だけで並の兵曹くらいの大きさ。
『...ユーライがやられた。...』
...バッスーーーーーーーーーーーーーーーーン...
...キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
ユーライの体内から破裂音そして回転音が轟く。
ジェットタービンのような音。
高圧炉を起動した。
吹き飛んだ右腕が、引き寄せられて戻ってくる。
まるでワイヤーで引っ張っているように。
肩から、そして腕からも無数の小さな腕が伸びていく。
小さい赤ん坊のような手。
エノキ茸のように真っ白く長い手が。
飢えた生き物のように。
空中でお互い絡み合い取り付き引き寄せ合う。
離れ離れの肉親のように。
『...ユーライが養生に入る...』
リンが振り向く。
飛馬艇の上で腕を組み佇んでいる。
まだ残る放電毛が風にたなびく。
青い光を纏った黄金の放電毛。
目下のビルにマナがしがみついている。
デカい茶緑色の物体。
「了解。バックアップに入る。」
流石に足元が冷える。
上空800m。
地上の物は豆粒。
『...あぁ。頼む。スターク。...』
レビンだ。
...ビュゥゥゥーーーーーーーーーーーッ..
ビル風が吹く。
落ちないと分かっていても。
人間の時の感覚が...。
高さと巨大な化け物のせいで脚がすくむ。
さすがに。
...ブゥオオオオーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッ...
飛馬艇が揺れる。
地上は雲で霞んで見える。
戦車も兵曹も豆粒の集団...。
...ピシュウゥウゥーーーーーーーーーーン...
...ピシュウゥウゥ...
...ズガゴーーーーーーーーーーーーーーーーーン...
...ズガゴーーーーーーーーーーーーーーーーーン...
マナの熱線放射が、頭上、足元を通り過ぎる。
「出る。」
『...DF7から入ってくれ。頼むぞ。スイーパー。...』
ユーライの右下から...。
「了解。シールドを展開する。」
回り込む。
メガラニカの銀色の身体を左上に見上げる。
放電翼を閉じ始めた...。汗
....キュウウゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーー...
!?
あぁ....汗
あぁぁ...。
『...おい!。一体どうした?。汗...』
レビンがこっちに振り返る。
明らかに動揺している。
あのレビンが。
唸りを上げていたユーライの高圧炉の回転音が静かになっていく。
ついに来た...。
ユーライの4つの目は光が弱まり赤く点滅を始めた。
『...ダメだ。おいリン。どうする。...』
...まさか...汗...
...キターー...
兵曹なら誰でも通る道。
...ここで?...
ラジュカムを幾千もの兵曹の声が交差する。
兵曹達はラジュカムを通し、意志を伝達している。
脳波、音声を両方言語化する装置を使っている。
精度は高い。
その兵曹の骨格や肉付きから縮小された実物に近い音声に変換される。
肉声は低過ぎて聞き取れない。
...なぜ今!?...
来る。
...ピシュウゥウゥ...
...ズガゴーーーーーーーーーーーーーーーーーン...
熱線をガナン側の兵曹がかわす。
ユーライが放電翼で自分の身体を隠しそのまま後退する。
サルファマスドラの方角に。
緑色の光の粒がユーライの周囲を回転し始めた。
周囲が薄い緑色の光で覆われ始める。
巨大な光の繭のようだ。
空中にとどまったまま。
『...スサノオからだ。ユーライは最後の変態に入る。全力で防御せよと...』
あの冷静なリンまで茫然としてる。
ユーライが最後の蛹化に入る。
...い、今か?。今するのか?...
...わざわざマナの目の前で?。無防備過ぎる。...
蛹は僅かな衝撃で死んでしまう。
一体どうやって...。
「どうやって移動させますか?。ここから地下施設までかなりの距離が。」
移動させるとなると私1人では無理だ。
ここの大半の兵曹を護送に使わなくてはならない。
『...無理だ。そんな余裕は無い。戦力的にも。時間的にも。...』
『...もう溶解始まってるぞ。こりゃ。汗...』
だが、これでクシイバ達と完全に並ぶ...。
人工シーアナンジンと胚以外は恐らくもうドロドロだ。
本来なら地下施設で厳密に管理され、人工知能に厳密かつ慎重に培養されるもの。
...護り切れるのか?...
...何の予兆も無かった...
何が蛹化のスイッチになるか分からない。
スサノオはこの事を予め指摘していた。
『...まぁ、倒しちまえばいい。...』
『...レビンの言う通りだ。我々には他に選択肢は無い。...』
リンまで。
...だ、ダンナ...。簡単に言うなぁ。...
『...リーン!。出るぞ!。...』
『...良し。スイーパー。バックアップを頼む!。...』
「ラジャ!。」
リンとレビンがマナに向かって行く。
『...防御シールドを最大展開!。...』
!
...ビーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
ラジュカムのブザーが鳴り続け制御灯が点灯する。
『...スサノオが連携しろと言っている。...』
シムゴートが地上から浮上して来る。
無数に。
黒い重厚な機体はそれぞれの軌道で飛ん来る。
ディアブロウBR 鋼鉄のカブトムシだ。
テスタロッサMK2より車高があり幅が狭い。
巡洋艦並みの装甲と粒子砲塔を持っている。
ディアブローはスサノオが直接制御することも多い。
複数のディアブロウBRがシールドを展開して行く。
バリヤー型シールド。
『...スサノオが制御を始めた。...』
...ビュオォォォォーーーーーーーウゥ...
...ブウゥオオーーーーン...
...ボボボボ...
ディアブローBRがマナの鋏をかわす。
反重力板が上に着いている。
羽根を開いて飛んるように見える。
車幅8メートル。
巨大なヘラクレスオオカブト。
全てのディアブローがあらゆる角度から、マナをロックオンしている。
ディアブロー隊は、瞬間、瞬間で様々なフォーメーションを取る。
スサノオの制御で。
まるで特殊な生き物。
...バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ...
BRの上下の粒子砲塔の間でスパークが走る。
...キュワァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
...ズゴーーーーーーーーーーーーーーーーン...
...ズゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...
...ズゴーーーーーーーーーーーーーーーーン...
...ズゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...
...ズゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...
...ズゴーーーーーーーーーーーーーーーン...
...ズゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...
集中砲火だ。
砲撃は全てマナを直撃している。
目下のマナを。
焼け焦げ、白煙が噴き上げる。
激しい爆炎で300m近いマナの身体が隠れている。
この強力な砲撃が全く効いていない。
ビルの躯体にダメージがあるだけだ。
...ググググクダダダダダダタググググクダダダダダダタググググクダダダダダダタ...
...キーーーーーーーーーーーーーーーーー...
マナの体内から回転音を轟く。
腕の形が変わって行く。
マナの吸盤のあるカエルのような手がカマキリかロブスターのような巨大な鎌に変形していく。
『...レビン下がれ。...』
リンから指示。
...ビュオオゥーーーーーーー...
畳まれた巨大な鎌がレビン向けて飛来する。
見えない...。
...シュッ...
明らかにレビンばかりを狙っている。
...ブシュゥーーーーーーーー...
レビンの体液が噴き出す。
左胸を掠った。
意表を突かれた。
『...奴はおまえを狙ってる。気をつけろ...』
あの2人は勇敢だ。
リンは右下。
リンはまだ腕組みをしてる。
飛馬艇の上で。
第一兵曹のまま。
レビンが左上。
レビンは大鉈を持ってる。
電波塔クラスのデカさの。
自分の倍はある大鉈。
軽々と片手で持っている。
『...あぁ。俺を狙ってんのかこいつ。...』
流石にこの形態では厳しい。
マナの爪がデカ過ぎる。
普通なら粉々に吹き飛んでる。
『...炉を狙ってる。...』
『...抜け目ねぇなぁ。マヌケ顔してる割に。笑...。』
...ドーーーーーーーーーン...
ディアブローが鋏の直撃を受けた。
火花が飛び散る。
...ドドドドーーーーーーーーーーーーン...
黒煙が噴き上がる。
あの重厚な航空戦車が一撃で変形する。
まるでティッシュの箱の様に。
凄まじいパワー。
『... スサノオから全兵曹に形態移行命令が出た。 ...』
リンからだ。
変形してディアブローが爆発する。
『... 取り敢えず2になるか。 ...』
『... いや3まで許可が出てる。 ...』
3は危険だ。
ダンナはエネルギー規模がデカい。
メガラニアほどじゃないが。
ダブルエックス級。
桁外れだ。
『... あぁホントだ。じゃ遠慮なくデカくならせて頂こう。メガラニアのためになぁ。 ...』
ダンナは雑だから...。
大丈夫か?。
「気をつけて下さい!。」
『... 気をつけろレビン。エネルギーの規模を考えろ。ガナンの躯体の耐久性が落ちてる。...』
「下の兵士は今装甲を着けてないですよ。」
『... 気をつける?。どうやって?。汗 ...』
確かに...。汗
『...おい。リン。待って..くれ。下が...まだ準..備出来てない。今の...兵士はデ..ブリ食..らっ...たら死んで...しまう。...』
将補だ。
スレーター•カーンが...。
『...あぁ?。早く言え!。怒。そう言えばクソハゲ!。あのおもちゃ。パイロットが乗ってる奴は下げた方がいいぞ。...』
『... ボルボックス ポインターM-6、M-18、M-24、M-27後退します。 ...』
スサノオの陣形から数機のシムゴードが外れて行く。
リンが手を回した。
リンもまたおっ始まるのを心配してる。
緊急時の大喧嘩...。汗
『... そういうのは直接スサノオに指示していい。人の乗ってる奴はスサノオが後退させた。 ...』
...ビュオオゥーーーーーーー...
『... おおぅ。ホントにこいつ俺ばっかり狙って来る。汗...』
『... カーン。エレーンがそっちへ行った。あいつは粒子線の広角放射が出来る。 ...』
『... リン。スサノオが第2ファザスを張ると言ってる。エレーンには地上からデカいデブリを吹き飛ばさせる。 ...』
...ビュオオゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
『... オーケー。それで良い。 ...』
...ビュオオォォゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ...
『...おっと。汗。マナと知ってりゃ外でデカくなって入って来たぞ。300超えてりゃそりゃマナだろ?。...』
...ビュオオゥーーーーーーー...
鋏はバネのように猛烈な速度で弾ける。
『...おぉぉ。この状況でお着替えさせられる気持ちになってみろ。...』
『...おい。デカくなるぞ!。レビンからだ。スターク!。援護頼む。エネルギー規模のデカイ奴からやる!。レビン!。ゆっくりやれ!。スターク!。レビンの援護を!。...』
『...強い順にな!。そう言え。リン。素直に。...』
いよいよだ。
『...つべこべ言わずに早くやれ!。ここの兵曹を蛹に回す!。...』
...ビュオオゥーーーーーーー...
レビンが辛うじて避ける。
...ビュオオゥーーーーーーーーーーーーーーー...
『...おい!。串刺しにされちまう。おーい!。地上部隊もういいか?。おいクソハゲ!。デカくなるぞ。もう限界だ。...』
『... いいぞ。さっさとなれ。エレーンも準備出来てる。レディエード〔※3〕が始まったら手遅れだろが!。...』
『... お待たせしましただろうが。このクソハゲ!。礼も言えんのか!。貴様は!。 ...』
レビン...。
その言葉は...。
〔※3:金属の極性に激しく変化を与え加熱させる。同時に仲間への遺伝情報を伝達する。〕
...ビュオオゥーーーーーーー...
...ビュオオゥーーーーーーー...
...バッスウウーーーーーーーーーーーーーー...
また鋏がレビンを掠る。
...シャアァッ...
『... 良し行く。援護頼む。...』
任せてくれ。
...ビュオオゥーーーーーーー...
「オーケー!。レビン!。俺が援護する。」
『... あぁ。スターク頼む。スターク。こいつを頼む。 ...』
あぁぁ...。
レビンが大鉈を投げる。
デカい。
鉄塔。
デカっ。
...ボボボボ...
キャッチできるのか...飛んで来る。
俺の身体の倍以上ある。
ていうか持てるのか、こんな物。
地上800m。
落としてたらエライこっちゃ。汗
来た!。
...ガツーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...
お、お。
お、重...っ。
重い!。
俺、わた、私の飛馬艇が沈み込む。
な、な、何という重さ。
やばい。
いや、そうでもない。
いや、俺も軍事兵曹だから...。
!
レビンが巨大化する。
...
...ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...
...ウッ...
腹に衝撃波が来る。
...キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
巨大化していく...。
来たっ!。
...ビュオオゥーーーーーーーーーーーーー...
爪が。
鋏が。
ヒッ!。
ディアブローの倍のデカさ。
だが、俺の方が質量は上。
レビンの大鉈で受ける。
...ガッツーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...
うわぁっ!。
ダメだ。
弾き飛ばされる。
何て力だ!。
何て威力だ!。
この俺を...。
「あぁぁ!。ダメだ。こいつパワーが半端ない。スサノオのデータが古い。 」
戦闘艦1000隻より力強いこの俺を...。
『... ス、スターク切れ!。構うこたぁねぇ!。ぶった切っちまえ!。 ...』
レビンが。
そうだな。
切っちまおう。
それしかない。
『... !?。な...な...何っ!。汗。バ...バカ!。 ...』
リンが慌ててる。
何回も弾けない。
...キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
レビンが巨大化してる。
2つの光る目。
『...このまま3まで一気に行くぜ!。頼むぞスターク...』
「おお!。一気にいっちゃって!。」
...ウゥゥゥゥオォオォォォォォォォォォ...
細く吊りあがった鋭い眼光。
真っ赤な光を放っている。
...ゴゴゴゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
金属の身体。
外観は凶悪でゴツいまま。
他の兵曹に比べてダントツでゴツい。
...キィィィィィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
はちきれそうな金属製の筋肉。
頑丈でタフさを世界で一番体現している。
ダンプカー、ブルドーザー、いや重戦車...。
頭部はアメフトのヘルメットにもゴリラにも見える。
下から牙が。
銀色の体毛が生えている。
背中にカジキの背ビレのような、透明で大きなヒレを三列背負っている。
これがレビンの放電翼。
レビンの飛馬艇が放電翼の中に身を隠す。
小判サメのように。
...キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
... あれ?。おいナムダ。見ろ。ダンナがデカくなってねぇか?。 ...
下の兵曹達が騒いでる。
... あ!。ホントだ。珍しい。そんなにヤバいのか?。デカっ! ...
無理もない。
ダンナが3になるのは珍しい。
... デュランダルだ!。見ろ!。デュランダル•レビンだぞ!。デカくなる!。 ...
地上部隊は初めて見るはずだ。
... でけぇ!。デッケェ。何だあれ!。デッケェ!。 ...
デュランダル•レビンの巨大化。
... ダンナだぜあれ。 ...
... 何だあのデカイのは ...
... あ、あれ、レビンだぜ。見てみろ。 ...
レビンに憧れ目標にしている兵曹は多い。
...見ろ!。レビンだ!。デカくなってる。レビンだ!。レビンだ!。すげぇ!。すげぇ!。...
...分かったから!。ソロコレート!。黙ってろ!。...
『... いいぞ。もうすぐ3だ。 ... 』
レビンの体長は中央軍の兵曹の中で一番大きい。
軍事兵曹の限界体長100mを超えている。
『... ん!。あ?。おい、ファザス!。ファザス!。 ...』
来やがったな!。
...ビュウウウウウオオオオオーーーーーーーーーーーーーーーーーーーゥゥゥッ...
「おおおおりゃああああああああああああああ!。」
...バッスゥッ...
...ブッシャアァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
やってやったぜ!。
吹き飛んで行く。
体液を噴き出しながら。
マナの棘だらけの緑色の鋏が。
回転しながら、ガナンに向かって飛んで行く。
デカい切口。
俺の身体と同じくらいの直径。
...ギュワワーーゴゴゴゴーーーーーーーーーーーー...
...ギュワワーーゴゴゴゴーーーー...
..,ギュワワーーゴゴゴゴーーーーー...
マナが咆哮を上げのたうち回っている。
「思い知ったかこの野郎!。」
が、レビンのこいつは重過ぎる。
俺には。
...バッシャーーーーーーーーン...
.....バリバリバリバリ...
...パリン...
...ガシャガシャガシャガシャガシャ...
マナのハサミは、ガナンの壁面を粉々に破砕しながら激突していく。
ガナンが揺れている。
...ババババババババババ...バシャーン...バリバリ...パリン...ガシャン...バリバリバリバリ...ガシャーン......ババババババババババ...バシャーン...バリバリ...パリン...ガシャン...バリバリバリバリ...ガシャーン......ババババババババババ...バシャーン...バリバリ...パリン...ガシャン...バリバリバリバリ...ガシャーン......ババババババババババ...バシャーン...バリバリ...パリン...ガシャン...バリバリバリバリ...ガシャーン...
残骸が、地上に降り注ぐ。
...バリバリバリ...バリバリバリ...バリバリバリ...
一瞬で鋏が幼体に。
幼体に変形した....汗。
切り落とした鋏。
鋏の形のままピンク色のムカデに...。
『...何ちゅう生命力...。...』
幼体化した鋏が、ガナンの壁面を食い破っている。
...ゴボボボゥ...
マナの腕が再生して行く。
新しく生えた腕は細くて白い。
しかし同じハサミをもっている。
『...レビン。終わったら。あのムカデの炭化を。マナは分離したらそれが別のマナになる。別の個体ではなくマナになってしまう。...』
『...あぁ。炭化させちまおう。...』
『... テスタロッサMK2が10機上昇中。全兵曹移動します。...』
『...ユーライの 蛹の防衛に就く。 ...』
...ブウウゥワーーーーーーーーーーーーーン...
鋏が桁違いに威力が増してる。
...ドーーーーーーーーーン...
...ドドドドーーーーーーーーーーーーン...
テスタロッサが爆発する。
破片が、分厚い装甲がガナンやラシンアの壁面に突き刺さる。
...ドドドドーーーーーーーーーーーーン...
テスタロッサがまた破壊された。
空中に真っ黒な爆炎が拡散する。
墜落して行く。
『...エレーン。出番だ。...』
『...ふぅ。やっと来たわ。...』
『...シムゴードの残骸を薙ぎ払え。...』
『...ガッテン承知の助よ!。総員対衝撃防御!。用意はいい?。強烈なの行くわよ!。みんな伏せて!。...』
...ズドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...
高圧炉の炸裂音...。
...キーーーーーーーーーーーーーーーー...
強烈な粒子線。
だが、拡散だからビルに優しい。
...キュワーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッ...
地上でエレーンの放電翼が展開していく。
白鳥の羽根に似た金属の放電翼。
真っ青に燦然と光を放つ。
...ゴォーーーーーーーーーーーーーー...
エレーンが口から粒子放射が発射した。
....ズドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...
...ズダダダダドーーーーーーーーーン...
...ドドドーーーーーーーーーン...
...ズダドーーーーーーーーーン...
...ズドドドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン.....
降り注ぐデブリが吹き飛んで行く。
『...スターク。兵曹を上げる。援護を。...』
今度はリンの番だ。
任せろ。
「了解っ!。」
爆炎が噴き上がる。
...ドーーーーーーーーーン...
...ドドドドーーーーーーーーーーーーン...
...ドーーーーーーーーーン...
...ドドドドーーーーーーーーーーーーン...
...ドーーーーーーーーーン...
...ドドドドーーーーーーーーーーーーン...
『...まずい。マナの攻撃がスサノオの制御を超え始めた。...』
『...レビン!。そっちへ行ったぞ!。...』
マナがテスタロッサやディアブローを破壊しながらレビンに迫る。
300mの体を悠然と浮かせた。
ナジミール高原の飛行虫のように細かい羽根足をヒダのように動かす。
反重力板の働きをしている。
...ズボウッ...
マナの体からまた、白い手が飛び出した。
『... 見ろ。腕が増えている。...』




