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妖少女  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四節 恙虫
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最後の刺客

「ふぅ……」


 座席について、私は一息ついた。

 とりあえずはここまで来てみたけど、相手に【件】とかいうのが居るなら私の未来は既に言い当てられているのだろう。

 不気味である。

 ここに待ち伏せされてるんじゃないかなってすら思えるんだけど……アレか、未来ではここで何かしても突破されるから放置して着いた先に待ってるとかか?


 まぁいいさ。離れれば離れるほど襲いかかって来る敵は少なくなる。

 それを少しづつ潰して部下に変えて、逆にラボを滅ぼしてやればいい。

 行き当たりばったりな戦術だけど、今の私の力なら十分可能だ。


「ここに居ましたのね」


 天井からにゅぅっと現れたのは【天井下】の土筆だった。

 ちゃんと生きて戻って来れたらしい。

 全身を出す事はなく、両足だけ天井に付けて私の横の座席に天井からつられている。

 ここの人がいなかったから良いけど、多分他人が来るよ?


「大丈夫だったみたいだね」


「当然ですわ。彼女、単純ですもの。楽に撒けましたわ」


 直接戦闘でなら間違いなく敗北必死だろう。

 けれど土筆はアサシンタイプ、戦場はほぼ天井のある屋内が主だ。

 そうなれば戦闘結果は逆転する可能性が高い。


 天井さえあれば九尾相手でも打ち勝てる。それが天井下。

 これ程に優秀な逸材なのに、失敗し続けたらしい。

 それというのも、本人の言うには不幸之手紙を破り捨てたせいで不幸に付きまとわれてると言う事らしいのだけど、その【不幸之手紙】は既に死んでいるらしい。


 思い過ごしだと思うけどな。

 でも、不幸なことが連続しているってことはあるかもしれない。

 その辺りは私がフォローして行けばいいか。


「でも、結構な人が助けてくれたね有伽」


「あら、そんなに救ってくれた方がいらしたの?」


 ヒルコと土筆が会話を始める。

 その間、私は窓の外を見た。

 どうやらこれから動き出すようでアナウンスが始まりシートベルト着用の義務付けが言われていた。


 ほら土筆、天井から降りてシートベルトを……って天井に引っ込むのか。

 飛び上がる飛行機、どうやら私の隣の人物はキャンセルしたかただただ空席だったようだ。

 結局、国外逃亡か。

 お金に関しては別に気にしてないけれど……


「それで、信頼できそうな方はいらして?」


「まぁ、それなりに。それとこれからの敵もある程度明確になったかな」


 敵対者は妖研究所。これに連なるグレネーダーも敵に回るだろう。

 そして危険妖抹消委員会。それとこまごまとした私の妖能力を危険視したり利用しようとする組織。個人的にあのマッドサイエンティストみたいな奴は要注意だ。

 それと……龍華。きっと次に会う時、彼女は何の呵責もなく私を殺しに来るはずだ。

 彼女の鎌から逃れる術は、今はない。

 きっと草薙でも防げない。黴も効かないとなると……やはりもっと強くならないと。


 味方としては妖新撰組だっけ? あと交渉次第じゃ逃がし屋も引き入れられそうだ。

 各チームにスパイを作っておけばそれなりに動きを把握できるし。

 【滝夜叉姫】みたいなのを数人作っておくべきか。


 中立は三嘉凪さんのところと止音君のところ、ついでに保護の会もだよね。

 そう言えば式森さんたちはこの飛行機に乗ってるんだろうか?

 それとも飛行場で別れてるとか?


 全く気配を悟らせないから何とも言えないな。

 もしかして貰ったお守りに任せて遠い場所でコーヒーでも飲んでんじゃないだろうな。

 あの糸目男の場合ありそうだからなぁ。




「ところでご主人様、これからどうなさるので?」


 十、いやニ十分程空の旅を満喫していた時だ。暇を持て余したらしい土筆が聞いてきた。


「うん、まぁとりあえず行き当たりばったりに向こうで仲間を創るかね。外人さんが妖使いにどれほど役立つかは分からないけど、とりあえず組織を立ち上げて打って出るか、あるいは襲撃者を迎撃しつつ仲間に引き入れていくか。考えてもどうせ殆ど企画倒れになりそうだし、追われる身なら仲間を作ってそいつを相手側に返してしまうのがいいかもね。スパイとして」


「内側から崩壊させるのですわね。トップの玉藻を襲ってしまえばよかったのでは?」


「私あいつ嫌い。なんか……ね。ほら、それに九尾って傾国の美女じゃん。仲間に引き入れたら裏切られそうな気。しない?」


「それは……あるかもしれませんわね」


「そういうわけで、とにかく反撃の狼煙を上げられる実力になるまでは潜伏するつもり」


「まぁ、そこまで生きられないんだけどねあんたは」


 ふと、土筆でもヒルコでもない声が混じった。

 思わず顔を上げる。

 見知らぬ女性がいた。


「っ!?」


 驚く私達を無視するように、メガネにボーイッシュな女はよっと私の隣の席に座る。


「初めまして高梨有伽。私は元町梓。【件】に言われてここに予約取ってたけど。まさか本当にくるとはねぇ」


「ラボか……」


「おかしいですわね、わたくし、こんな女知りませんわ。あなた、何者ですの?」


「あら、既に何度も顔を合わせてるわよ。まぁ、能力の関係で、私が殺した奴らばっかりだっただろうけど。安心して、次からは、あなた達も仲間になるから。この【七人同行】の仲間にねっ!!」


 ばっと、コートを開く元町梓、いや、【七人同行】。てっきりあの暗い感じの男が妖使いだと思っていたが、こいつが本体だったのか!?

 コートの裏には無数の……ダイナマイト!?

 導線には既に火が付いている。


「ご主人様ッ!!」


 咄嗟に土筆が私の身体を掴んで天井へと引っ込もうとする。

 刹那、ダイナマイトが、【七人同行】が、そして飛行機が……強烈な爆破に巻き込まれ吹き飛んだ――――……

 明日でエピローグを迎えます。

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