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妖少女  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四節 恙虫
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七人同行と本当の死神

前半・有伽。後半・あの人主観でお送りしております。

 くそっ。

 私は思わず毒づいた。

 つい先ほどから追い付かれた七人同行のサラリーマン風男とやつれた男を引き離せない。

 相手は自分の身体が壊れるのも構わずこちらを攻撃してくるのだ。

 なんとか捕まる事はまだないが、不味い事態になるのは確定的だ。

 なにせ……折角撒いた抹消委員会どもまで追い付いてきたのだ。


 夜行さんがまだ邪魔してくれてるのか婆娑婆娑は普通に姿を見せてないし、八房の姿も見当たらないが……他の二人、【恙虫】ともう一人の女性が近づいて来ていた。

 四人相手に闘うとか無理だろ。


 こうなったら、なんとかあの女性を引き離してこちらに引き入れるか。

 あまりやりたくないが女性相手なら土筆に使った手を使うのもアリだ。

 男性相手に使う気にはなれないけど。


 サラリーマン男の鞄によるフルスイング。紙一重で避けつつヒルコが金槌のフルスイング。

 脳漿が飛び散り男が倒れ込む。

 その隙を目掛けてやせ細った男が突撃。

 そいつを蹴りつけ宙空を一回転した私が着地する。


 ああもう、面倒臭い。

 もうすぐなのに、このままこいつら引き連れて行く訳にも行かない。

 どうすれば……


「走れ、高梨有伽っ」


 不意に、そんな声が聞こえた。

 戸惑いつつも、懐かしい声に私は走り出す。

 その背後に、誰かが降りて来た。

 思わず振り返りそうになる。


「振り返るなッ、お前を斬らねばならなくなるっ」


 その人物の怒声に私は振り向きそうになる顔を必死に前に向けて走り去る。


「ありがとう……龍華」


 姿は見えないけれど、そいつに御礼だけは言っておいた。

 きっと、彼女が助けてくれるのはこれが最後なのだろう。

 何の気まぐれかは知らないけれど……助かった。


 ----------------------------------


 私は高梨有伽が遠ざかるのを見送って、迫り来る二人の男に目を向ける。

 【七人同行】か。私でもきっと殺しきる事は出来まい。

 だが、まぁいい。今回すべきはここにこいつらを縫いとめることだけだ。


 高梨有伽は殺さねばならない訳ではない。

 折角【黴】が居付いているのだ、彼女という器は貴重だ。

 問題は彼女が暴走しないかどうかだが、今の状態ならまだ大丈夫だろう。

 降りかかる火の粉を払う程度ならまだ救える価値はある。


 人を巻き込んででも潰すとなれば、私も完全に敵に回らねばならんだろうが、今はまだ、手伝おう。

 というわけで……だ。

 私は青龍神鎌を引き絞る。二連刃の血紅の刃がきらりと光った。


「ここから先は通行止めだ。通りたくば私を倒して罷り通れ」


 【七人同行】が思わず立ち止まる。

 その異変に気付いた抹消委員会の二人もさらに後方で立ち止まった。

 が、ここで止まる訳にはいかないと思ったのだろう、【七人同行】の二人が突撃して来た。


 限界に引き絞った鎌を振るう。ビュオンと風を引き裂き二つの上半身が宙を舞った。

 さらに返しの一撃で両の足がこま切れとなる。

 さすがにこれは危険だと思ったらしい、抹消委員会の二人が別の道に消えて行った。


 問題はない。

 私のやることはこの道の封鎖でありこの二人の足止めだ。

 死ぬ事のない二人を死にたいと思うまで殺し尽くす。

 ソレ以外私がすべきことはないだろう。

 後は奴自身の問題だ。


 黴、ヒルコ、天井下と無数の仲間を作ろうとしているようだが、果たして上手く行くと思っているのか高梨有伽。

 妖研究所は本当にしつこいぞ。どこへ逃げても、何をしても、奴らは少しずつ確実にお前の大切なモノを一つ一つ奪い去って行く。

 耐えきれるか? 抗い切れるか?


 もしも道半ばで絶えるならそれもよし、絶望に沈むならば介錯しよう。だが、もしも屈服するというのなら……私がお前の死神だ。

 そうならない事を祈っているぞ高梨有伽。


「姓は聖、名は龍華。字は青龍。この青龍神鎌を恐れぬならば、無限の時を斬り合おう。いざ!」


 復活した二人の男を再び細切れに戻す。

 彼らは一歩たりとも動けなかった。

 前進も後退もできずただただ停滞しながら死に続けるだけ。


 命乞いも反論も行えず、ただ回復と同時に死が訪れる。

 ソレの繰り返しだ。

 なに、私も不死身の身だ。既に2000以上の時を生きた。

 この程度の繰り返しを続けることなど飽きる以前の問題だ。

 ゆるりお相手しようじゃないか、永遠にな。


「放浪の不死者……か。こんな場所で出会うとはな」


「【うわん】か。何か用か?」


 何度殺しただろうか? すでに100を数えて以降は無心にやっていたので、数えてはいない。

 【うわん】が近づいてきたのは直ぐにわかっていたので、そちらを見ることなく聞いた。


「彼女は強いな。父を間違って殺されたことでラボへの復讐という大義名分を経て立ち上がってしまった」


「天井下だけに任せておけば即座に殺せただろうにな。まぁその時は【黴】が周辺に蔓延していただろうが。【天井下】は巻き添えを食ったかもしれんな。どの道殺すつもりだったのだろう」


「……あなたは、彼女を救いたいのか?」


「答えはなしか。まぁいい。私は約束の大地で待つだけだ。辿りつけるかどうかはあいつ次第。違うか?」


「危険な妖使いは確実に潰して回るあなたとは思えませんな【天津神祖】」


「その名で呼ぶな。手が滑って貴様の胴を薙ぎそうだ」


「それは困る。では私はここで消えるとしよう……不死者よ、我等研究所はあなたを敵に回したくはない。協力してくれる事を願っている」


「何が協力だ。ハイエナ風情が囀るな」


 無心に鎌を振る私の近くから、【うわん】は直ぐに立ち去って行った。

 後はただ、再び機械のように殺し続ける私がいるだけだ。

 さぁ、辿りつけるか高梨有伽。私はずっと待ち続けるぞ。お前があそこに辿りつくその時を。

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