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妖少女  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四節 恙虫
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生きていたのか?

 羅護たちと別れた私はさらに逃走を行う。

 でもその歩みには惑いが見られる。

 それもそのはず、自分は誰にも見つからない様飛行場に向っているはずなのに、まるで見透かしたように様々なチームが襲ってくるのだ。


 これはもう、誘導されてると見た方が良い。

 稲穂の言っていた逃走予想ルートとやらと一致してるのか、別の道に向おうとして実はそっちを予想されているのか。

 どうなってるのか全く分からない。

 でも、漠然とした不安というか、嫌な予感がある。


 バレている。

 自分の動き方が見透かされている。

 見えない誰かに自分の行動が筒抜けになっていることに、私は嫌悪感を抱きつつも発散できないストレスを抱え始めていた。


「やっぱこっちに来やがったな高梨」


 ああ、まただ。

 結局この道も予想ルート内だった。

 現れたのは翼、小林さん、魁人。


 これでグレネーダー員は最後だけど……

 いや、それはどうでもいい。

 なんとか彼らを突破しないと。きっと翼は任務に忠実に私を殺しに来るだろう。

 それが分かる。


「残念だよ高梨君。君がこうなることは、本当に……僕は次の隊長は君だと思っていたんだけどね」


「私が次期隊長? 買い被りですよ小林さん」


 溜息を吐いてメガネを直す小林さん。

 その横で、魁人が苦虫噛み潰したような顔をしている。

 そして、代表するように翼が前に出る。


「手加減は、しねぇぞ高梨」


「でしょうね。押し通るわ翼」


 グレネーダー員では、一番私との時間が長かったのが彼だ。

 よくよく思い出せば、初デートもこいつとだったな。

 なんやかんやで自分にとっては一番近い男性だったかもしれない。

 まぁ、翼ちゃんはないかなぁ……出雲美果に殺されそうだし。


「行くぜ?」


「斬る時は気をつけなさいよ? 黴次第じゃ道連れだから」


 私の背後にテケテケが出現する。私は自分の首元をとんとんとチョップしながら軽口を叩く。

 振り向きたいと思う気持ちができるが、ヒルコが察して私の首を固定する。

 ありがとうヒルコ。コレの御蔭で後ろを見ないで済むなら問題はない。


 まぁ、背後を見ずに他の二人を相手にできるかは問題だけどね。

 小林さんが走る。

 相対したことは一度も無い。その威力、【弁慶】あいてのストレートを見たくらいだ。

 でも、あの巨体が一撃で沈む程の威力、決して侮っていい相手ではない。


「歯をくいしばれ、高梨君ッ」


 ぐんと踏み込んだ足に力を入れ、体重を乗せた拳を振り抜く小林さん。

 その一撃は騨雄の喧嘩殺法よりも洗練され、速度の速いまさにボクサーの打ち出すストレート。

 当然、ド素人の私が付いて行けるはずもなかった。


 攻撃が来る。と身構え避ける前に、既にストレートが顔面に突き刺さっていた。

 ヒルコのガードがあったとはいえ衝撃を殺しきれずに私の身体が面白いくらいに吹き飛んでいた。

 咄嗟に通り過ぎた電信柱に舌を巻き付け、それ以上後方に吹き飛ぶのを防ぐと同時に電信柱を起点に旋回。速度を殺さず小林さんに向けて身体を発射。


 驚く小林さんが咄嗟に両腕でガードする。

 その中央に、私は全身を使って突撃していた。

 強い衝撃音。しかし小林さんは少し背後に下がっただけで止め切った。

 けど、やっぱりそれで安心してしまったようだ。


 不意打ちの様に襲いかかるヒルコのアッパーカットを無防備に受け、浮き上がっていた。

 騨雄同様自分が何を喰らったかすらわからなかったんだと思う。

 地面に着地した私は草薙を引き抜く。


 背後を振り向くと同時に草薙の一撃。

 私が振り向いたので即座に動き出したテケテケの鎌をしっかりと受け切る。

 半年前、隊長がパイプ椅子を使って受け止めたのを私は見ている。


 鎌を振う時、テケテケの身体は実体を帯びる。

 倒すなら、そこが狙い目だ。

 目を見開くテケテケ。女版の翼の顔をしていた。ちょっと可愛い。


「嘘だろ!? 振り返って生きてるなんてっ!?」


「あんたの自動能力は既に見切ってんのよ。しばらく寝てなさいっ!」


 鎌を弾いて真っ二つに切り裂く。

 が、ちくしょう。テケテケ自身は実体じゃないか。

 スカッと剣が空ぶった。

 再び振われた鎌をぎりぎり草薙が受け止める。


「あ、はは。そうだ。攻撃時は確かにヤバいかもしれねぇが斬撃は効かねぇぞ高梨!」


 また千日手か。

 攻防してるように見せかけて翼を昏倒させるしか……!?

 突如、テケテケの手が止まった。

 いや、止められていた。


 そこにあったのは無数の腕。

 半透明の腕がテケテケの身体を背後から掴んで私から引きはがしている。

 その無数の腕の先に居るのは……


「う、嘘だ……なんで……」


 彼女を見た翼の反応は如実だった。

 まさに幽霊を見たように、絶望的な、ありえないという驚愕に目を見開く。


「み、美果……なのか……?」


 出雲美果がそこに居た。

 それは、翼には絶対にありえるはずのない現象だ。

 なにせ、彼女を自分が殺し、その死体を確認したのだから。

 では、ならば、目の前に居るのは……誰?


「久しぶりだね、翼お兄ちゃん」


「生きて……いたのか?」


 不敵に微笑む出雲美果に、翼は生唾を飲んで思わず呟く。

 しかし、それはありえないと被りを振る。

 自分が殺し確認した。その人物が生きているはずがない。


「た、高梨、これはどういう。いや、違う、アレは……どうなって……」


「有伽お姉ちゃん。ここはわたしが請け負うよ。今、あなたを引き入れることはできないけど、動き出したあなたに死なれるのは困るから。事情が変わったの。ここはわたしたちに任せて逃げちゃって」


 そう言うと、出雲美果の隣にぼわんと出現する男が一人。

 伊吹さんも来たのか。

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