表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖少女  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二節 チュパカブラ
461/485

真夜中の暗殺者

 家から出た私は、真っ直ぐに目的地に向う。

 まだ深夜なので辺りは真っ暗だ。

 それなのに、一人の女が歩いていた。

 ジーパンに80年代位のジャケットを着たスタイリッシュとでもいえばいいのだろうか? 少し古い髪型のポニーテール女が颯爽と歩いている。

 正面から私の元へ、通り過ぎる瞬間、何か警報のようなモノが脳内に鳴った気がする。


 獰猛な肉食獣を思わせる女はなにやらぶつぶつ呟きながらそのまま私の後方へと歩き去って行ってしまった。

 気にはなったがもうすぐ死ぬ私には関係がないのでそのまま歩き続ける。

 しかし、止音君が何の用だろうか?


 私としては最後の日くらいゆっくり寝かせてほしいくらいなのだが。

 というか、もう眠った状態で殺してほしいくらいだ。

 その方が何かしらの反応すら必要無く楽に死ねる。


 やってきたのは草臥れた神社だ。

 駆凪市に存在する稲荷神社か何からしく、狐の像が鳥居の先に存在する。

 ただし、物凄く寂れている。

 神様が本当に居たとしてももう消滅してるか別の神社に引っ越してるんじゃないかな?


 一応、神頼みしてみるか? いいや、どうせ祈っても真奈香が返って来る訳も無し。

 むしろ神がいるとわかったら、私は怒りで神殺しに乗り出しそうだ。

 だってそうでしょう? なぜ真奈香を殺す運命を与えたのか、じっくり数年間くらい問い詰めたい気分なのだから。


「やぁ、良く来てくれたね高梨さん」


 私が神社を見上げていると、背後からやってきた止音君が手を振った。


「呼び出しといて後から来るってどういうこと? まぁいいけど」


「いや、悪いね。ここが運命の分かれ道だったものでさ」


 運命の分かれ道?

 ……どういう事?

 私がここに来る事で何かあるのか?


 怪訝な顔をしてるのに気付いたのだろう。止音君は頬を掻く。

 その横にやって来る静香。

 なぜか物凄くすまなそうな顔をしていた。


「何を……したの?」


「した。じゃない。俺達がしたのは有伽さんの死を防いだだけだ」


 死を防ぐ?

 なぜ? どうやって?

 ここに来たのはなぜだったか? そう、それこそが彼らのしたこと。

 彼らの目的は私をここに呼びだす事だ。

 それだけで死を防ぐことが出来るのだとすれば……


 不意に、先程すれ違った女性が脳裏を掠めた。

 まさか……まさかまさかまさか!?

 アレが……アレが刺客だった?


「なぜ、なぜ私だけを!?」


「……ごめんなさい。静香には、救う方法が思い浮かばなかった」


「ふざけんなッ! 私を呼び出した時に要件伝えれば……」


「それだと、有伽さんは死を選ぶだろう? 君が死ねば君のお父さん・・・・・・は殺されない。そう思って、実際は一家皆殺しだ。有伽さんを救う。俺達に出来るのはそれだけだ。すまない」


「くそったれッ!!」


 私は即座に駆け出した。

 視線を落とす止音君を突き飛ばし、何か声を掛けようとしていた静香を無視して全力で駆け戻る。

 急げ、急げ急げ急げッ! 最悪の結末が起こる前に、急いで戻れッ!!


 最悪だ。この世界は最悪だ。

 救いなんざ全くない。腐ってる。ふざけてる。そんな未来を私に見せるなんて、神様、もし、もしもそれが現実に起こるのならば、私は絶対にあんたを許さないッ。


 名前を呼んでくれたんだ。

 他人行儀なさん付じゃなく、有伽と。父が父らしく父親として呼んでくれたんだぞっ。

 ようやく、ようやく心の底からまた父さんって呼べる日が来るかもしれなかったのに、父さんが戻ってくれるかもしれなかったのにっ。


 マンションに駆け戻る。私の家のドアが破壊されたように開けられていた。

 もともと壊れていたドアが三つの爪後を残して二つに折れ曲がっている。

 クソ、落ちつけ、急げ。冷静になれ!


「ちょっと、有伽さんだけを殺す手はずではありませんの!」


「あぁ? 別にいいだろ。血が吸いたかったんだよ」


「これではまた失敗ではありませんの! やはりあなたを見た時点であった嫌な予感が現実になりましたわ」


 居間から二人の女の声がする。

 ああチクショウ。生きててよ、死なないでよ父さんっ。

 駆ける。罠があるかもなんてことは全く考えもせずに駆け付ける。

 居間の入り口にようやく辿りつき、荒い息を吐きながらも室内を睨みつける。


「あは。ようやく来やがった。つかあいつが高梨有伽だったのかよ。すれ違ってたし」


「あ……」


 部屋に居たのは、やはりだ。あの女がいた。

 そして、白いホワイトロリータ服を着た、天原土筆。

 そうか、グレネーダーには明日の連絡だけど、こいつら暗殺班側にとっては零時を越えた時点で私を殺していいことになった訳だ。


 部屋に向った彼らだったが、そこに私はいなかった。

 止音君に呼び出され、タッチの差で難を逃れたからだ。

 そして、家に残っていたのは、父さん一人だけだった。


 見せしめの意味を込め、彼らは父さんに手を掛ける。

 簡単な構図だ。

 だから、私にとっては最悪の結末が……そこにあった。

 名前:  倉敷くらしき 深子とうこ

  妖研究所暗殺班に所属する問題児。

  猫のような気まぐれな性格でやることなすことその場で判断する。

  ファッションセンスは80~90年代の昭和ファッション好き。

 特性:  ちょい不良娘なつもり

 妖名:  チュパカブラ

 【欲】: 血を吸う

 能力:  【舌変化】

       血を吸いやすくするためにストロー状の舌になっている。

      【身体強化】

       心臓を抉り取るために身体が強化されている。

       爪が鋭く尖っていて、猫の様に出し入れ可能。

      【吸血】

       相手の血を吸う事が出来る。

      【毒性耐性】

       舌で血を吸い取るため、白血球が強化されている。

       これにより風邪を引く事はないが強力な感染症には無力。

      【同族感知】

       妖使い同士を認識する感覚器。

       個人によって範囲は異なる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ