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妖少女  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二節 チュパカブラ
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新人研修三日目5~羅護主観前編~

 私、白滝羅護は田舎で過ごす人見知りの少女だった。

 少女でしかなかった。

 時折顔を出してくれる柳宮おじさんだけが私の話相手だ。


 毎年、柳宮おじさんは家に来るとそれまでの話をしてくれた。

 半年以上前に来た時は凄く辛そうで、何があったのか聞いたら彼女が出来たんだって言われて悔しかった。

 その時だ、私がおじさんに恋心を抱いていたことに気付いたのは。

 ただ、その彼女さんは死んだらしい。

 自分で殺す事になったって、凄く辛そうに話していた。


 何故そんなことになったのか、私は尋ねた。

 それで、いろんなことを教えて貰った。

 任務に忠実にいること、幼馴染の居場所を守ること、正義を貫くこと、その犠牲に、彼女を諦めざるをえなかったこと。


 報われない話だね。とその時の私は大して気にもせずに告げていた。

 むしろ、彼女候補が消えたことに嬉しささえ覚えていた。

 これでおじさんの彼女は私が一番可能性があるんだ。などと愚かにも考えていたのが、今では浅ましいとすら思える。


 そんなおじさんも、数ヵ月後に会った時は持ち直していて、新しく高港市に移動して、新人も出来たと楽しそうに語っていた。

 まだ彼女さんのことは吹っ切れていなかったみたいだけど、それでも新人さんが楽しい人たちで心の支えになっているのは理解できた。

 安堵と共に少しの嫉妬を覚えた。

 なぜ、おじさんの心の傷を癒せたのが私ではなく新人の名も知らぬ女達なのかと。


 ある日、一人の少女を連れておじさんがやってきた。

 一瞬、誰かに産ませた子供なのかと本気で殺意を覚えた程だ。

 それとも新しい彼女? そんな幼女に手を出すくらいなら私に手を出してよおじさん。

 なんて思ったけれど、違った。

 ある事件で両親が死んでしまい身寄りを失くした少女らしい。

 行き先が決まるまで預かることになったんだって言っていた。


 細本流亜という少女だ。ついでに彼女のペットらしい鰐のピナちゃんもいた。

 結局その子は妖研究所の方にあるアルカディアに行くことになり、そこはペット禁止ということでピナちゃんは私が貰う事になった。正直鰐とか飼えないんだけど。

 ということで世話はお父さんとお母さんに任せきりにしてある。


 そして、それが私がおじさんと出会えた最後の日になった。

 数日前、知らされたのだ。

 おじさんが、部下に殺されたと。

 いや、おじさんが裏切り、グレネーダーの反逆者として抹消されたのだと。


 意味がわからなかった。

 あなたは留守番してなさいという両親に無理を言って一緒に葬式に付いて行った。

 グレネーダーでもう一人誰かが死んでいて、合同葬儀が行われていた。

 同じグレネーダー員である斑目さんの話では、この二人が付き合い始めていたらしい。

 折角新しい彼女候補ができたのに、今度は二人して死んだらしいのだ。

 意味が分からない。


 ふざけんな。って叫びたかった。

 駄々をこねるように葬儀場をぶち壊せたら、どれ程気持ち良かっただろう。

 でも、きっと今よりさらに後悔する事になっていたはずだ。


 そして、そこで私は知った。

 上司であるおじさんを殺し、親友を失った女の存在を。

 そいつの存在を知って、思わず睨んだ。

 憎悪を向けた。殺意を向けた。蹴り殺してやりたかった。


 でも、その顔を見た瞬間、私のちっぽけな憎しみは吹き飛んでいた。

 そこにいた女の顔は、いつか見たおじさんと同じ顔をしていたのだ。

 大切な人を自分で殺さざるをえなかったおじさんと同じ顔。

 空虚な瞳がガラス細工のように光を灯していなかった。


 いつ死んでもおかしくない様な。むしろ死に場所を求めるようなその瞳に、おじさんが死んだ理由の複雑さを理解させてくれた。

 だから、私は志願した。

 支部長であるらしい常塚さんに無理を言って、小林さんと常塚さんに見られながら試験を受けた。


 合格して、その日に来る予定だった新人二人と共に、グレネーダーに入ったのだ。

 おじさんの死んだ、本当の理由と、彼女がおじさんを殺さなければならなかった理由を探るために。

 正直、その女、高梨有伽の印象は最悪だった。


 新人紹介の時、一人だけ自分の膝上に女の子を乗せて抱きしめていたのだ。

 きゅっと腕を締めると膝上の女の子が物凄く嬉しそうな恍惚とした表情で痙攣する。

 恐かった。

 何故か未知の生物に遭遇した様な、恐ろしい何かがあった。

 けれど、ついついその二人が気になって見てしまう。


 後々小林さんや志倉さんに聞いたところによれば、あれは百合という女の子同士で愛する変態行為らしい。

 高梨さんは自称ノーマルだと言い張っているのだが、ファーストキスは女性、その他にも学校ではレディキラーという名をほしいままにしていて、ハーレムなんてものを作っているらしい。


 私もハーレムに入れられない様気を付けろと志倉先輩に言われた。

 冗談ではない。私はおじさん一筋のノーマルだ。

 ただまぁ、私の年からするとオジサンコンプレックス、オジコンと言う名のアブノーマルらしいのだが、おじさんの魅力に敵う者などないのだから仕方ない。同年代の男子なんて女子のスカートめくってはしゃぐ程度の知れた芋だし。


 二日目、黛さんと前田さんと三人で琴村騨雄を探っていたのだけど、成果なし。

 正直グレネーダーの仕事がわからなくなってきた。

 こんな甘いやり方で本当にいいのだろうか?

 私の夜行さんとしての欲望が疼く。


 もっと厳しくやるべきだと。

 悪を徹底的に追い詰め挫く、そのくらいの激しさと真面目さが必要だと。

 そんなことを思いながらついに三日目。二日目に高梨さんたちと一緒だった徳田佳夕奈が軽い百合化していて驚いた。

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