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妖少女  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二節 チュパカブラ
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新人研修三日目1

 朝が来た。そろそろ、告げられるのだろう。

 私の最後の朝日になるかもしれない。

 いや。明日位は来るかもしれないな。


 部屋から起きると同居中のヒルコにおはようを告げて顔を洗いに行く。

 思い切り水を顔に掛けてすっきり。

 ふぅ。と息を付いていると、鏡が紫色に染まった。


 一瞬驚いたものの、見知った顔を見付けて呆れてしまった。

 斑目良知留だ。珍しい。

 稲穂の姉であり、私の親友だった、いやそう思っていた存在。

 【紫鏡】の妖使いだ。


 彼女は稲穂により首を切り落とされ、首だけを鏡の中へ戻された。

 どうもこの鏡の中では身体が無くても生きていられるらしく、斑目良知留は死ぬ事無く首だけで存在していた。

 そんな彼女の顔が、私をずっと見つめて来ている。

 口が開かれるが喉がないので声も聞こえない。


 唇に注視する。……ああ、なるほど。

 元友人のよしみで私を救ってやろうかと言いたいらしい。

 この鏡台に手を伸ばせば紫世界へご案内だそうだ。


「悪いけど、私は停滞するつもりはないよ。どの世界でも、もう存在する意味すらないから」


 私の言葉を聞いたのだろう、紫色が消えていく。

 数瞬後、そこにはもう普通の鏡しかなく、ビー玉のように空虚で冷めた視線の私の顔を映すだけだった。

 顔を洗い終えると着替えを済ませ、台所に行く。


 最後の晩餐と言う訳ではないけれど、ちょっと豪勢に弁当を作っておいた。

 居間で寝ている親父の尻後ろにお供えしておく。

 たぶん、尻で踏むだろうが気にしない。嘆くのは親父だ。


 それから酒瓶を片付け、雑巾がけをして、出来るだけ家を綺麗にしてから外に出た。

 結局、隊長が壊したドア、直さないままになっちゃったな。

 まぁいいか。親父が気になればなんとかするだろう。


 支部への道を歩く。半年でなんだか通い慣れてしまった道だ。

 休みの日はよく真奈香と待ち合わせをしてここを通った。

 何度か背中から不意打ちで襲われたこともある。

 あの胸はある意味凶器だった。

 窒息の危険が高かったし。


 支部の前にやってくる。

 いつものようにセキュリティーを外して支部内へ。丁度廊下を歩く総務係の係長と鉢合わせた。

 草壁くさかべ 狸狐りこだ。


「おはようございます草壁係長」


「あらあら、おはよう高梨ちゃん。ごめんなさいねあまり力になれなくて」


「気にしてませんよ」


「これから仕事?」


「ええ。たぶん最後の仕事です」


「そう……私、指令が来ても出来るだけあなたに攻撃しないように総務課には伝えるわ」


「別にそんなことしなくてもいいですよ。どうせ死ぬのは確定しますし、皆さんまで反逆罪になるのは避けた方が良いです」


「でも……」


「ああ、よかったらなんですけど、稲穂の心のケア、お願いしてもいいですか。あの子私以外あまり頼ろうとしないから、面倒かもしれませんけど、気に掛けやってくれると嬉しいです」


「あらあら。それじゃあその稲穂ちゃん、しっかり頼まれたわ」


 私は草壁さんと軽い会話をして別れる。

 作戦会議室に辿りつき、ドアを潜ると、既に全員が集合していた。

 私が最後か。隊長が居なくなったからか皆早いな。


「うん、全員揃ったようだし、報告会を始めよう。といっても大したモノは無さそうだけど」


「では真由、頼むよ」


「もぐむ」


 ……黛さんのもぐむ語報告はしばらく続いた。

 やはり皆理解はできなかった。

 彼女、わかっててやってるのだろうか?


「俺からは……魁人の奴が無駄に真面目過ぎるっつーぐらいかな。任務中のコーヒーくらい別に飲んでも良いだろ?」


「俺が飲まなかっただけじゃないですか。というか悪路王の特性上、そういう一つ一つの悪行から非道行為を行いだしてしまうので、自重してるんですよ」


 悪路王、鈴鹿御前にも言えることだが、悪逆非道という特性があるらしい。

 この特性を持つと、小さな悪行でも重ねるごとに心のストッパーが緩まって行くらしいのだ。

 それ、殺人がヤバいんじゃないのか? と思うのだけど、彼らにとってグレネーダーによる執行は正義の行為、つまりは悪行ではないとのことで、悪逆非道が発動する事は無いらしい。でも、買い食いや信号無視が切っ掛けでテロ行為にまで発展する可能性があるので欲望は抑えているのだとか。


 翼の言葉に反応した魁人は佳夕奈と視線を合わせる。

 互いに苦笑している所を見ると姉弟にしか分からない何かがあるのだろう。

 で、翼の話は以上で、次は前田さんの震える報告が開始された。


 当然、皆話を理解するのを早々諦めていた。

 小林さんなんて遠い目をして無感情になっているし、殆どの面々が視線を落としている。

 ああ、稲穂は私の上でのたうってるけどこれは例外だ。


「俺からの連絡としては……本当にシャドーボクシングしてる横で人形の下半身眺めてる先輩方を長時間眺める羽目になったっつーとこですかね。相手を待つ潜伏任務よりは内容があった分高梨先輩たちとの仕事の方が性に合ってる気はしました」


 足で歩くのは仕事の基本だしね。


「次は私ですね。えっと今回は斑目先輩と有伽お姉様に付いて縁ここなさんの情報を聞きに……」


「「有伽お姉様!?」」


 皆、喰いつくとこが同じだった……

 名前:  白滝しらたき 羅護らご

  白滝柳宮の姪。

  柳宮によくして貰っていたため、彼の死が信じられずに真相を確かめようとしている。

  殺したと言われている有伽を監視しているようだが……

 特性:  好奇心旺盛、本の虫

 妖名:  夜行さん(やぎょうさん)

 【欲】: パトロール

 能力:  【夜行さんが通る】

       自動発動。

       夜行さんが通る時、平伏して頭の上に靴を置いておかねば投げ飛ばされ蹴り殺される。

      【騎乗上達】

       生物系の乗り物に対して騎乗力の上達が速くなる。

      【首無し馬】

       霊体の首無し馬を呼び出し騎乗できる。

      【同族感知】

       妖使い同士を認識する感覚器。

       個人によって範囲は異なる。

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