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妖少女  作者: 龍華ぷろじぇくと
第一節 タテクリカエシ
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新人研修二日目1

「全員揃ったね。じゃあさっそく、定例報告を始めようか」


 隊長席に座った小林さんに促され、黛さんが鹿煎餅を食べながら告げる。

 ……鹿煎餅って人が食べるものじゃなかったような気がするんだけど、いいのか?

 黛さんだから問題は無いか。


「もぐもぐもぐもぐも、もむもごもぐもぐ……」


 何を言っているのか全く意味不明だった。

 新人たちも何が言いたいのかわからず困惑気味である。

 いつものことなのだろう。彼女の報告を知っている小林さんと翼は苦笑いである。


 しばらくして、口に何かを入れたままの報告が終わった。

 意味は全く分からなかったが、概ね問題は無かったのだろうと思う。

 前田さんの報告も似たようなものだし、この二人を組ませると新人の報告に期待するしか何してたか全く分からないと思う。


 「あぁっと、次俺っすかね。俺と小林さんと羅護で琴村騨雄が逃げそうな駆凪市への橋を張ってた。まぁ、結局それらしいのは来なかったけどな。今は夏だし何度かアイス買いに行ったりしたから経費で落としときました」


 翼は無難に報告を終えた。

 なんだ。小林さんがシャドーボクシングしたりとか報告しなくていいのか?

 昨日そんなこと言ってただろうに。


「あああああああああああああの、わ、わわわわたしはままままままゆずぅみさんとととととととぉ……」


 次に話し始めた前田さんだったが、やはりその言葉は震え過ぎていて聞き取りづらかった。

 いうなれば、進展なしということだろう。

 今回隣に座っていた佳夕奈が思わず前田さんの頭を撫でていたのは見なかったことにしておこう。

 彼女は前田さんを妹みたいに扱っているようだ。先輩の威厳は既にないのだろう。


「では、次は徳田姉弟から報告してくれ、その後高梨君、斑目君、し……羅護君の順に頼むよ」


「あ、はい。それじゃ、私の報告ですよね」


 言われた佳夕奈が慌てて姿勢を正す。


「えっと、黛副指揮官と前田先輩とで一緒に琴村騨雄さんの家周辺を調べてました。大して進展はなかったです。お昼は黛副指揮官に連れられて美味しいオープンカフェの店教えて貰いました。後は……えっと、ない……ですかね」


 必死に報告内容を思い出そうとしているようだが無いらしい。

 まぁ、仕方ないだろう。初めての報告だしこれでいいのかと戸惑うのは仕方ないのだ。

 ここの報告は緩いしね。


「あ、じゃあ、次俺……ですよね」


 と、姉から引き継いだ弟の魁人だが、私に視線を向けて困ったようにしている。

 どう報告したものか考えあぐねているようだ。

 なにせ琴村騨雄に出会っただけでなく闘って、しかも上官である私が彼を見逃したのだから。


「遠慮しなくて感じたありのままを伝えなさい徳田魁人」


 だから私は告げた。

 彼の葛藤を失くし、背中を押すように。

 例え上官であろうとも、遠慮無く告げればいいと言ってやる。

 それで、彼も決心したようだ。何も見なかったと言うことなく、真実を告げる。


「高梨先輩と斑目先輩とで、その、駅周辺ではなく、琴村騨雄が殺人を犯した現場に向いました」


 この報告に小林さんが私に視線を向ける。

 私はそれを横目に気付きながらも、魁人をしっかりと見つめ続けた。

 嘘を付くことなく全て報告しろとでもいうようにだ。


「結果、その、琴村騨雄を発見、戦闘に入りました」


「お、おいおい、マジかよ!? じゃあ昨日の時点でこの件終了か?」


 話の腰を折るな翼。


「あ、いえ、その……高梨先輩が、その……」


 言いあぐねるように私を見る魁人。

 しかし、私がしっかりと見ていることに気付き、吐き出すように真実を紡ぎだす。


「高梨先輩が、見逃しましたっ。俺と斑目先輩を倒せるようなら逃げて構わないと言って、本当に、俺、本当にあんなことしていいか分からなくて、これ、報告していいか分からなくて、その……」


「うん、よく報告してくれた。上司の行動に問題があった時、揉み消すでもなくしっかりと告げる。その覚悟を賞賛するよ魁人君」


「……あ、はい」


 小林さんに優しく諭され、力が抜ける魁人が椅子に座りなおして息を吐く。

 彼にしてみればかなり気力の使う報告だったらしい。


「それでは高梨君。先程の報告、どういうことか教えてくれるかな?」


「では、報告します」


 立って報告しようかと思ったけど、今日も抱き枕と化している稲穂が邪魔だったので座ったままにしておいた。


「私達は本来駅周辺の警戒でしたが、琴村騨雄の行動パターンを私なりに分析した結果、隊長の最後と同じものだと判断できたので独断で殺害現場に戻ることにしました。騨雄はやはりそこにいたので、稲穂をけしかけました。その時稲穂を殺すことなく無効化したため、相手を殺す事にまだ躊躇いがあるのを感じました。結果、殺害については過失致死であると思い、彼の人柄を考慮し逃す事にしました。その後事件のあらましを確認後、このことは支部長に報告してあり了解を得ています」


「そうか。できるならその辺の事はこの係の指揮官である僕にも教えて貰いたかったね」


「……それは、失礼しました」


 考えに無かった。そこは反省すべきだろう。

 隊長相手だったら私の暴走はいつものことだと言わなくても大抵伝わるし、支部長から伝わるだろうと踏んで報告の必要性を感じなかったのもある。

 でも、今は小林さんなのだ。報告は必要だろう。


「次からは、気を付けます」


「ああ。ところで、その話から察するに、何か理由があるみたいだけど、何をする気だい?」


「それはまだ秘密で、明日の報告会でお伝えすると思います」


「そうか、では斑目く……はいいか。羅護君頼む」


「はい。それはいいですけど係長、言いにくいのなら白滝と言わなくていいですよ、無理に言おうとしなくても羅護で構いません」


「あ、ああすまない。隊長以外の人を白滝と呼ぶのに抵抗を覚えてしまってね。悪気は無いんだ」


「理由はわかりますよ。気にしないでください。ところで、今回の警戒任務ですけど、係長は途中でシャドーボクシングを始めるし、志倉先輩は家族連れを掻きわけて入ったお店から買ってきた女の子の人形を真っ二つにもいで下半身片手に笑み浮かべていましたけど……皆さんいつもああなんですか?」


 と、なぜか私に疑惑の視線を向けてくる羅護。


「グレネーダーに入れば欲は自由に発散できるから人前で遠慮する必要が無いの。他人の欲発散はよほど目に余る行為でなければ見て見ぬふりしておいた方が良いと思う。聞いた話じゃ隊長が日記帳読んでる横で小林さんがシャドーボクシングして、その横を裸で走り回っていた。なんて人がいたらしいし」


 羅護の疑惑の視線が一層白くなった気がする。

 先輩たちの威厳は地に落ちてしまったようだ。

 元からないだろうけどねこの処理班には。

 名前:  徳田とくだ 佳夕奈かゆな

  抹消部隊にやってきた新人。

  魁人の姉。

  元気ッ子で恥ずかしがり屋。稲穂と有伽の関係性を見てある性癖に目覚め始める。扉を開くかどうか迷い始めている少女。

 特性:  ムッツリ

 妖名:  鈴鹿御前すずかごぜん

 【欲】: 一途恋慕

 能力:  【悪逆非道】

       悪事をすればするほど悪に染まっていく。

      【身体強化】

       鬼としての力を発揮できるよう身体が強化されている。

       人の腕くらいなら千切り取れる。

      【自在刀】

       手に持たずとも自在に刀を操れる。

       三本まで動かす事が可能。

      【同族感知】

       妖使い同士を認識する感覚器。

       個人によって範囲は異なる。

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