表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖少女  作者: 龍華ぷろじぇくと
第一節 タテクリカエシ
443/485

新人研修一日目5

 資料を調べ終えたらしい魁人が全員の話を聞き終えた私の元へとやってきた。

 どうも資料は形式的なものにこだわり過ぎてイマイチ私には分かりづらいのだけど、彼にとっては十分参考になったようだ。


「この資料によると、琴村騨雄が殺人を行うに至った切っ掛けは、二人の被害者が人質を取っていたせいみたいだ……です」


「そう。人質の名は?」


「えと……よすがここな? どうやら同級生らしいです」


「こちらでもそれを聞いたわ。彼とたまたま校門前で話していた女性。彼女でもなんでもないみたいだけど、彼をおびき出すために拉致されたみたいね。どうも三人はライバル同士だったみたいで、なんとか騨雄を倒そうとやっきになったみたい。その時、余りに無防備だったここなさんを攫ったみたい。でも騨雄を倒そうと画策していた彼らは騨雄が妖使いだってことを知らなかった。怒り狂った騨雄はつい彼らに対してタテクリカエシの能力を使った。怒りに身を任せていたため、いつもは気を付けていた相手を殺さない程度の手加減を忘れていた。そして事件は起こった……と」


「それって……ある意味自業自得のような……」


「どう? 騨雄に抹消される程の理由があると思う?」


「で、でもよ。あいつは結局二人を殺したんだろ?」


「人を助けるために殺すなら、私達のしていることも一緒でしょ? それに、自分のせいで他人が迷惑被っているのに、助けに行って相手を殺すくらい、私だってしてる」


 妖タワーはまさにそれだった。

 私はヒルコを助けるために、殺したのだ。無数の人をたった一人で無慈悲に殺した。

 それに比べれば、彼は殺されるに値しない。


 そう、思うんだ。

 でも、これは私が思うだけであって他人は違う。

 現に魁人も納得できていない顔だ。


「まぁ、こんな思考回路だから私は抹消されるんだろうけど」


「あの……出会ってからなんかすぐ死にますみたいなこと何度も言ってますけど、どういうことですか?」


「ああ、私今反逆罪容疑が掛かってるの。坂出係長を自分の判断で殺したから。今は判決待ち。だから、私については反面教師として参考にしておくといいよ」


「ええっ!?」


「それじゃあ、そろそろいつもの場所に行きましょうか?」


「いつもの場所……ですか?」


「ええ。いつもの、ね」


 私と魁人は揃っていつものファミリーレストランに辿りつく。

 どうやら既に揃っているらしい。

 奥まった一角に机をくっつけ全員が待っていた。

 なんだ、稲穂もこっちに来たのか。


「稲穂、頭は大丈夫だった?」


「ん。問題無し」


 オレンジジュースを飲みながら答える稲穂。まぁ大丈夫だと言うのなら大丈夫なのだろう。


「ここがいつもの場所なんですか?」


「ええ。支部長がバイトしているファミレス。いつもの場所集合って言われたら大体ここだと思えばいいかな」


 魁人に説明しながら空いている席に座る。

 わざわざ稲穂が空けていてくれたようだが、何も気付いてない魁人がそちらに先に座ってしまった。

 前田さんがあっと声を洩らしていたが、別に気にしてないよ。


 私は残っていた空席、翼と佳夕奈の間に座らせて貰った。

 佳夕奈が何故か慌てているが、気にしなくていいよ本当に。

 翼もいいのかと目で訴えてくるが問題無し。


「ところで翼、またお子様ランチ?」


「はっ!? い、いいだろ別に。何か問題あんのかよ!?」


「いや別に……あ、そういえば特大パフェの代金返して貰ってなかったような」


「そ、そそそそういえば高梨、お前ウェイトレスはいいのか? ここに来た時ってだいたいアレに拉致られてただろ」


 と、働くウェイトレスさんに私の意識を持って行こうとする翼。どうやら余程1万以上の金額を返したくないらしい。

 まぁ、いいんだけどさ。どうせもう使い道ないし。


「問題無い。今日の被害者は……新人らしい」


 言った瞬間、背後に来ていたウェイトレス達が佳夕奈と羅護の腕を取る。


「は?」


「え?」


「ちょ、俺も!?」


 そして常塚さんに引き連れられたウェイトレスたちが佳夕奈と羅護、ついでに魁人を連れて行く。

 魁人は男の子ですが……まぁ、いいか。


「それで、皆どうだった? 新人だった君等が新人を指導する立場になった訳だけど。というか、僕らにしてもまだ一年経ってないんだよね」


「そういえば、そうだったわね」


 小林さんと黛さんが懐かしそうな顔をする。

 ということは、処理班って新人だらけでないですか?

 私も半年くらいだし、前田さんや稲穂もそれくらいだ。翼はいわずもがなという奴だ。

 考えて見れば、前々から居た処理班って隊長だけだったんだな。

 よく、皆を率いていたと思う。

 そして、たった一年で部隊長に就任した小林さんの出世街道が速いこと速いこと。


「これからは皆が先輩になる。後輩に先輩面をし過ぎないように、でも、締めるべきところはしっかり締めてくれ」


「羅護の目の前でシャドーボクシングしていた小林さんじゃ常時先輩面は難しいっすしね」


「なっ。志倉君だってトイ○ラスで人形買って下半身相手に不気味な笑みをしていたじゃないか。羅護君思い切り引いてたぞ!」


「そ、それは妖の欲だから仕方ないっしょ!」


 どっちもどっちだと思う。まともな欲持った人はいないのかここには?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ