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妖少女  作者: 龍華ぷろじぇくと
第一節 タテクリカエシ
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新人研修一日目2

「タテクリカエシとは出会い頭に人をひっくり返す怪異だそうだ。急に方向転換が出来ないらしいので寸前で躱せばいい。形状は手杵であったり肥桶だったりするそうだが、そこまで危険な妖怪ではない。危険度ランクもDに属している」


 Dランク? それって人より少し強い力を持った存在ってだけだよね?

 なぜそれが、抹消対象?

 もしもそうなる可能性があるとすれば……殺人か!


「高梨君は気付いたみたいだね。そう、彼は妖能力で殺害をしてるんだ。それも二人。被害者は彼と戦っていた不良だ。不良同士の殴り合いで思わず使ったらしい。それが運悪くアスファルトに後頭部を強く打ちつけたらしくてね、二人とも死亡した」


「そのうちの一人が有名議員の息子だったそうよ。私達がしくじるようなら妖抹消委員会が動くらしいわ。威信にかけて先に抹消しろと言われているの」


「そういうわけで、今から琴村騨雄の捜索、及び抹消を開始する。全員、行動開始だ」


 と、小林さんの言葉で動き出すグレネーダー。

 私は机に置かれた資料に目を落とす。

 出現予測地域……か。これ、当てになったこと殆ど無いよね。


「あ、あのさ、俺はどうすりゃいいの?」


 既に皆が出払ってしまい、私と稲穂と魁人だけが残された。

 私は胡乱気な瞳で資料を拾い上げる。


「魁人だっけ。君はさ、彼がどこにいるか、わかる?」


「はぁ? あ、いや。その。わかりません」


 彼の心情を察するならば、いきなり何言ってんのこの女。んなのわかる訳ねぇだろ。

 ってなところだろう。

 でも、なぜだろう。こいつの行動、わかってしまう気がするんだよね。


「じゃあ、行こうか」


「ああ。駅前だよな……ですよね」


 確かに、この予想地点に書かれているのは逃走ルートとされている駅周辺だ。

 他に可能性が記されているのは駆凪市への橋。こちらは小林さんが向ったようだ。

 もう一つが彼の家らしい。

 もしかしたら戻って生活しているかもという事らしいが、それもあるまい。

 一応黛さんが向っているらしいけど、出会えはしないだろう。


「付いて来なさい。多分、あそこにいる」


「え? 駅前に行かないんですか?」


「来るはずの無い場所に行っても意味はないでしょ?」


 私は稲穂が邪魔になったので床に降ろす。

 なんか幸せそうな顔でトリップしていたので放置する事にして魁人と二人で現場に向う事にした。

 さて……まぁ適当にやるかな。




「ここって……」


 やってきたのは事件の現場だ。

 二人の不良が不幸にも死亡したらしい乱闘の現場だった。

 袋小路の大通りからは全く見えない奥まった場所だ。


 そこに、一人の男が所在無げに立っていた。

 両手をズボンに突っ込み地面を見つめ。時折遠い目をしてビルに挟まれた空を見上げる。

 その人物を見て、魁人は思わず目を見開く。


「マジにいるし……」


 呟く魁人を放置して、私は一人、彼の元へ歩み寄る。


「後悔してる?」


「……後悔か。いや、後悔はしてねぇな。あいつらとは何度も争った犬猿の仲だ。でも、もう殴り合う事もないのかと思うと……なんかこう、な。寂寥感っつのか。俺の居場所はあいつらとの殴り合いの中にしかなかったってことに気付いてな」


 男、琴村騨雄は空を見上げたまま告げる。

 居場所を失くした犯罪者。それは、逃げる必要などないのだ。

 ただ、失くした居場所を追い求め、疲れ果て、逃げるのを止める。

 足掻きを止めた彼らは失くした居場所の在った場所に戻るのだ。

 そう、隊長の様に……


「あんたか。俺を殺すのは?」


「ええ。初めまして。抹殺対応種処理係、高梨有伽です。【斬首】、【黴】、【墜落死】好きな死に方を選んでください。あなたへのなさけを掛けられるのは、その位です」


「はっ。殺すの断定かよ。楽に死ぬと思ってンのか?」


「死にたいくせに生を引きのばしても壊れるだけですよ。ボクみたいに」


 初めて、彼は私に目を向ける。

 そして思わず舌打ちした。


「マジかよ。そんな目した奴に殺されンなぁまっぴらだぜ? せめてもちっとマシなん連れてこいや」


「……稲穂、さっさと来なさい。御所望だよ」


 と、魁人の背後から音も無く現れる稲穂。どうやらちゃんと仕事はしてくれるらしい。


「でもな。タダで殺される気はねぇぞ。せめて少しは足掻かせろ」


「どうぞ。ボクは手を出さない。稲穂と……そっちの魁人の攻撃から逃れられたら見逃すよ」


「いいのかよ?」


「もう、どうでもいいよ。どうせボクに先はない」


 二人で見つめ合うと、騨雄は何かを納得したらしい。

 拳を合わせてバキリと鳴らし、稲穂に対峙した。


「ちょ、いいんですかっ!?」


「魁人君も、しっかり闘いなさい。彼、格闘戦は得意だよ」


 ああもうっ。と展開に付いていけない魁人が【悪路王】の能力を発動させる。

 新人の実力を見る為だろう。稲穂も後ろに下がって魁人に任せるようだ。

 名前:  琴村ことむら 騨雄だおす

  喧嘩友達二人を殺した罪で抹消指定されている学生。

  喧嘩っぱやいが熱い性格で、弱きを助け強きを挫く性格。

  捨て猫を見付けるとミルクを与えるクセがある。

  犬は昔噛まれたトラウマで苦手。

 特性:  猫好き

 妖名:  タテクリカエシ

 【欲】: 転ばせる

 能力:  【タテクリカエシ】

       視界に収めた相手をひっくり返すことができる。

      【手杵カエシ】

       幽体の手杵を召喚し、触れた相手をひっくり返す。

      【神属性】

       この能力を持つ者は神意能力の強制を受けない。

      【同族感知】

       妖使い同士を認識する感覚器。

       個人によって範囲は異なる。

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